コンパートメントでのんびりと他人様に奢ってもらった店内販売のお菓子をかじりつつ、穏やかな時間を過ごす私。
「あ、モリー!今回のお弁当もとても美味しかったよ!流石は僕の愛しいモリヴォブル!」
「やだわ!アーサーったら!
でも、貴方にそう言って貰えるなら朝から作ったかいがあったわね!」
「ははは!モリーはすぐにでも素敵なお嫁さんになれるさ!もちろん、僕のお嫁さんだけどね!」
「アーサー!」
「モリー!」
「・・・・・・・」
真向かいで広がる少女漫画もかくやという程に目の前に広がる遠慮のないいちゃつきっぷり。
燃やしてぇ。
・・・なぜ、私がこの様なバカップルのいちゃつきをコンパートメントの向かい側という一等地で観覧しなければならないのか。
それは、全て奴等のせいなのだ。そう、私の素敵なコンパートメントを襲撃してきた悪戯仕掛人コンビと幼なじみコンビ。
奴等4体の芋虫の追撃から逃れるべく、隣のコンパートメントに移動したまでは良かった。
しかし、私は気付いてしまったのだ!
そう!コンパートメントの扉に鍵が掛からないことを!!
私はおおいに焦った。それはもう!
私の『ルーモス』強化版によって視界をちょっぴり潰された奴等はきっと報復しにくるに違いない。私ならそうするし、みんなそうする。
隣のコンパートメントに奴等が居たのは悲しい事故だったのだ。
しかし、私は奴等が更正するまで関わる気はないのである。あと約5年はそっとしておいて欲しい。
なので、ホグワーツに着くまでに奴等に捕まる訳にはいかない!そして!出来れば関わりを持ちたくない!
しかし、奴等からホグワーツに着くまで逃げるのを目的としても、長大なホグワーツ特急といえど長さには限りがある。嵩張るカバンとキャリーもあるから尚更移動速度にも限界がある。私の体力的な意味で!
逃げ場は徐々に失われ、ついには・・・・・。
なんてことになりかねない!
そんなフラグはへし折らねばならない!
そこで私は苦渋の決断をすることにしたのである。
キングス・クロス駅で会ったバカップル。
アーサー・ウィーズリーとモリー・プルウェットの二人のコンパートメントに匿ってもらうことにしたのだ。
カバンやキャリーを引き摺りながら二人を探しながら進む廊下では、ホグワーツの神秘を見ることになる。
既にローブに着替えた上級生が多く、緑のローブにはなんだあれみたいな変なモノを見る目で見られ、青のローブには一瞥もされず。
赤いローブには大丈夫かい?お嬢さん?と声をかけられ、アーサー夫妻の名を出せば、死んだような目でコンパートメントの場所を教えられ、黄色いローブには荷物を運んでコンパートメントまで案内してもらった。
組分け帽子は末恐ろしくなるような精度でもって、生徒達を各寮に振り分けている。
帽子を作った魔法使いの偉大さには限りない尊敬の念を感じざる得ない。
そして、山ほど居るだろう生徒のなかで、ウィーズリーの名を出せば皆さん程度の差はあれど、死んだような目をするのがとても印象的でした。
ソンケイノネンヲカンジザルヲエナイ!
辿り着いたコンパートメントは一種の結界でも張ってあるかの様に二人っきりの空間だった。
手を握り、愛妻弁当を食べさせ合い、花を飛ばしあってる二人を見て、誰が立ち去らずに居られるだろう。
一瞬、ルーモスを放ちそうになったが、モリー先輩の暖かな母性愛溢れる笑顔と、社内販売のお菓子を差し出され、大人しくコンパートメントにお邪魔させていただいた訳である。
初めて食べる魔法界のお菓子は正直、美味しくはなかった。日本人の味覚を覚えている私には少し、まぁ、なんだ。
しかし、美味しくないお菓子とバカップルの砂糖を足せばまぁ、なんとか。食べなければやってられない現状で、惰性でかじり続けることは出来る。
あぁ、味噌、醤油、お出汁。控えめで優しい味わい。甘くとも、渋い緑茶でマッチする。そんな、日本食が懐かしい。
自分の母さんが料理上手だったばっかりに、舌はしっかりと肥えてしまっている。
遠い魂の故郷を偲び、美味しくはないお菓子をかじりつつ、目の前のバカップルを眺めながら行くホグワーツ特急。
正直、二度とごめんである。
全ては奴等のせい。
アーサー&モリー「「ふふふふふ」」