ホグワーツ到着への汽笛が鳴るなか、バカップルへ盛大なお辞儀と握手を求めて、社畜妖精がどうやってか運んでくれるらしい荷物を置き去りにナナさんだけを握り締め、いざ!ホグワーツへ!
「イッチネンセイはこっちだ!」
生徒達でごった返すホームの中で、人より横にも縦にも大きい、ハリー・ポッターではどじっ子的な立ち位置のハーフの巨人ハグリッド氏だ!
「すみません!握手お願いできますか!?」
「握手?俺はただの森番だぞ?変わったイッチネンセイだなぁ?」
いぶかしげな顔をしながらも少し照れた様に手を差し出してくるハグリッド氏の私の倍どころじゃない手を両手で握ってがっしりと握手!
ふおおおおお。リアルハグリッド。リアルハリー・ポッター!!
「ありがとうございます!これからよろしくお願いします!あ!今度小屋に遊びに行かせてくださいね!」
「そりゃあ、構わんが・・・」
「うひゃあ!ありがとうございます!」
握手させてくれた相手にしっかりとお辞儀をして、ハグリッド氏が示す湖まで同じ一年生の波を縫って走り出す!うっひゃあ!テンション上がりますなぁ!
奇声が出ようが構うまい!人にどう見られようと構わない!今の私はテンションうなぎ登りである!
少ない体力で動き回った結果、湖に着く頃には肩で息をする羽目になったが、たまには運動も良いと普段の運動嫌いを手の平返す程のテンションだ!
暗い湖に浮かぶ小舟にテンション上げたまま近付くと、岸と小舟の間の空間が少し広く感じた。私にこれを乗り越えて小舟に乗り込めと?
誠に遺憾ながら、私の身長は平均以下を記録したまま成長期など夢のまた夢、そんな奇跡を迎える事なくすくすくと成長している。
よって、腕も短けりゃ、足も短い訳で。
これ、乗り越えられなかったら、沈むのでは?
入学式に?湖に水没?ねぇわ。
「あーー。」
「あ、あの」
ここはいっそのこと、ハグリッド氏を待って抱き上げてもらう?いや、諦めて小舟へと跳んでみる?あいきゃんふらい!いやいや、たぶんほぼ転ぶか足を縁に引っかけて転ぶか最悪湖にどぼん「あ、あの!!」
「うひゃい!」
「うわっ!」
またか!人が考え事してるときに驚かすのが本当に好きだな!ここの人らは!
バクバクする胸を押さえつつ、声のする方を見れば、私が乗ろうとしていた小舟には既に先客が居たらしい。あれ?居たっけ?
「居たっけ?」
「最初からね」
「あれ、声に出てた?」
「うん。」
小舟の先客は鳶色の髪に緑の目の少年だったようだ。目を少し自信無さげに逸らしながらも優しげな声をかけてくれる。
「小舟の前で唸ってるから、具合でも悪いのかと思ったよ。」
「あー、うん。具合は全然、むしろ絶好調なんだけどね。この隙間をどうやって越えようかと。」
「隙間?」
どうやら、いぶかしげな様子を見るにこの優しげな先客には、私には越えられない谷に見える岸と小舟の隙間は見えないらしい。
ならば!
「悪いんだけど、・・・手を貸して貰ってもいい?」
「・・・ああ!気付かなくてごめんよ。え、えと、どうぞ」
小舟と私を見て私の言いたいことに気付いてくれたみたいだ。小舟の上に危なげなく立つと少し恐々と差し出された。その手をしっかりと借りて、やっと谷を越え無事に小舟に乗り込むことが出来た。
「ありがとう。助かったよ」
「う、うん。気付かなくて、ごめんね」
「いや、悔しいことに私が小さいのが今回の落ち度だからね。というか、助けて貰ったのはこっちだし」
「えっ!ご、ごめん。」
「いや、だから」
「・・・・ごめん」
「・・・・・」
「・・・・・ふむ」
二人の間に流れる謎の空気。
極度のコミュ障らしい少年は俯いて黙ってしまったが、既に日本人ではないクリアさんは日本人奥義、エアーリーディングを捨て去った身であるからして。
そして、今のクリアさんはかつてないテンションアゲアゲなのだからして。
「あのさ!」
「っ!?」
「いや、そんなに驚かないでよ。
明らかに君のが身体大きいし、力も強いんだから」
「ご、ごめ「そうじゃないんだよ!」」
「っ!?」
「せっかくのホグワーツだよ!何でそんな暗い顔してるのさ!って、ことだよ」
「暗い、かな?」
「うん、お先真っ暗って顔してるよ。
いや、確かに湖真っ暗だけど。って、そんな話じゃなくてね?
さて、突然だけど質問だよ?ここはどこでしょう!」
「えっと、ホグワーツ、だね?」
「そう!ホグワーツ!ホグワーツ魔法魔術学校なんだよ!」
「そう、だね?」
「そう、だね?なんて小首傾げて可愛く言ってもダメだよ!ただ可愛いだけだよ!」
「か、かわいい?」
「魔法!魔術!学校!なんだよ!?
魔法が学べる魔法の世界なんだよ!?
人に迷惑かけても自分が楽しまくちゃ!
人生の中で輝かしい学生生活は二度と体験出来ないんだよ!
友達作って勉強して、遊んで満足出来る7年間にするんだよ!
その為には!」
「その為には?」
「悪いことしてないのにいちいち謝ってる場合じゃないじゃん!
今のだって私のこと、助けてくれただけでしょ?
私が謝るのは解るけど、助けた側が謝るのは違うでしょ!
ハイ!ってことで、私はクリア・アヴァロン、よろしくね!
改めて、さっきは手を貸してくれてどうもありがとう!」
声高らかに、一息に言い切って相手を見やれば目を俯いていた顔を上げて、鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔をしてやがるわ。
暗い顔よりは全然いいんだけどね。
「・・・・・」
「返事は?」
「あ、うん。・・・どういたしまして、かな?
ははっ、僕はリーマス・ルーピン。
これからよろしく、アヴァロン」
はい、握手ー。
おー。リーマス君かぁー。えと、穏やかな笑顔どうも。
なんだ、笑えるんじゃん。へー?同い年の子と遊んだことないんだー。
へー。リーマス君かぁー。
どうしてこうなった?
リーマス「少し変わった子だなぁ」