帽子さんを爽やかに脱いで黄色い集団に飛び込んだ私を待っていたのは、なにやら珍妙な生物を見たような眼差しである。
「よろしくお願いします!クリア・アヴァロンです!」
私渾身の満面の笑みでペコリとお辞儀!
私が怖くないことを全力でアピールすれば、流石の包容力!ふわりとした笑みを浮かべた先輩方に拍手で迎え入れてもらった!
「やぁ!ようこそハッフルパフへ!随分目立つ組分けだったじゃないか!俺はテッド・トンクス!5年生で監督生をしている。寮で困ったことがあればなんでも聞いてくれよな!」
「はい!よろしくお願いします!トンクス先輩!」
爽やか監督生!すごい!流石ハッフルパフ!
よろしくの握手をして暖炉のそばの暖かい座席にわざわざ案内してくれて、にこりと笑って座れば周りの上級生が手ずから皿にキレイに盛られたご飯を渡してくれる。
もっきゅもっきゅ。ううん!うまい、だと!?まさかイギリス料理がここまで美味しく感じるなんて!!
ヘルガ・ハッフルパフが考案した数々の料理!今後の食生活が大変楽しみである!
しかし、先輩方、そんなに次から次に盛って来なくても!そんなに食べれないんですけど!?
頭撫でながら笑顔で皿置かれたら食べない訳には!もっきゅもっきゅ。うん!うまし!
しかし、食べてる間にどんどん組分けが進む訳だが、ハッフルパフ配属がかなり少なく感じるのは気のせいか?新しい人が来る度に挨拶はするが、他寮に比べて間隔が長いような気がするし、ちらりと大広間を見れば黄色い机だけ列が短いような?
「はふぅ、トンクス先輩!」
「どうした?小動物後輩?」
「いや、私クリアです。じゃなくて、ハッフルパフって他寮に比べて少なくないですか?」
「・・・まぁな」
「他寮も素敵ですけど、うちだって負けてないと思うんですけどねぇ?」
「・・・まぁな!」
「まぁ、昨今の魔法界情勢的には尖った子が多くなりがちになるのはしょうがないのかもですけど」
「小動物は随分と難しい言い方を知ってるな。偉いぞぉ!」
「ちょっ!髪が乱れる!やめてくださいよっ!周りの先輩方も笑ってないで助けてくださいっ!」
「うんうん、なかなかの撫でこごち」
「うわーん!」
私の髪型が蹂躙されていく!周りはにこにこ笑ってて止めてくれる気配はないし!いや、どう見てもじゃれてる様にしか見えないのはわかるけども!
どうやって抜けだそうかと考え初めてすぐに、周囲のざわざわとした雰囲気がピタリと止まった。
「?トンクス先輩?どうしたんですか?」
「いやぁ。あれ、見てみろ」
「あれ?」
トンクス先輩が壇上を指差した先には、まさかの天使がいた。
「ふわぁ!」
波打つフワフワの金髪に空みたいな碧眼、唇はうっすらピンク色で肌は白磁の様に真っ白だ。ショーウィンドウに飾ってあるビスクドールみたいな顔してて、腕はほっそりしてて、まさに天使!完璧に天使じゃん!
「トンクス先輩!あの子、羽が生えてないです!」
「小動物、言いたいことはわかるが普通は生えてねぇ」
なるほど、突然ざわめきが止まったのは、あの子が壇上に上がったからか。
あんなド級の美少女が出れば、どこの寮に行くか気になってみんな黙るよね、そして神に祈るよね。
なにやら帽子とぼそぼそ話をしている様に見えるけど、果たしてあんな儚げな子が頑固一徹の組分け帽子氏に勝てるのだろうか。
みんなが一様に見守る中、帽子さんがぱくりと口を開く。
「・・・ハッフルパフ!!」
歓声と絶叫、今この大広間は天国と地獄に分けられた。
組分け帽子をとった天使は真っ直ぐこちらに向かって来るが、表情はふわりと笑ってるのに心なしか元気がない様に見える。日本人のエアーリーディング力の低い私だけど、イギリスの人って日本人に比べてかなり分かりやすいから、多分合ってるはず。
疑問はあれど、既に男女問わず声を掛けられながら暖炉のそばの席までやってくる天使にドキドキしながら挨拶。
「はじめまして!クリア・アヴァロンです!」
ファーストインパクトって大事!にっこりと笑顔で最大限の猫を被ってご挨拶。うん、なかなか感じいいんじゃないかな?
「はじめまして、シャーロット・フォウリーです」
小首を傾げつつニコリと笑って挨拶してくれる声はまさに鈴を転がした様に聞こえる。こんな完璧美少女って、この世にいるんだ!すげぇ!
私のテンションがうなぎ登りなのに、彼女の挨拶を聞いた途端、周りがざわめき出した。うんうん、わかるよ、美少女にこんな笑顔向けられてこんな挨拶されて冷静になれる奴なんていないよ!そいつは男じゃないもん!私も冷静じゃいられないしね!
「すっごい!」
「・・・・そう、かしら」
「名前まで美少女!」
「な、まえ?」
「だって!シャーロットだよ!シャーロット!外見天使で声は天上の美声!更には名前まで可愛いとか!完璧じゃん!完璧な美少女だよ!握手お願いします!」
「・・・・・」
「ありがとうございます!
ふおぁ!手までスベスベ!トンクス先輩!すごい!ここに究極可愛い天使が居ますぜ!」
「・・・・」
「・・・・」
「ちっちゃい!可愛い!素敵!マジでリスペクト!我がハッフルパフ寮の天使!」
「ふ、ふふふ」
「笑い方まで天使、だと!?」
「小動ぶ・・・いや、クリア。お前、変わってるな。
あと、小さいのはお前だ」
「なんですと!?」
「ふふふふふ」
「可愛い!」
「よろしくね、クリアちゃん。
わたしくしのことはシャーリーって呼んでちょうだいね」
「ちゃん!?」
「あら?いけなかったかしら?」
「いえ!滅相もございません!
え、えと。よろしくねシャーリー。」
「ええ!」
いつの間にか表情には陰りが消えて、輝かんばかりの笑顔!ま、眩しい可愛い!
周りの先輩方や同級生と話すシャーリーは麗しの天使さん。まさか、こんな可愛い子とお近づきになれるなんて、びば!ほぐわーつ!だよね!
「フォウリー家っていえば、聖28家でも、不透明な部分の多い貴族家なんだが、わかってるんだが、わかってないんだが。変なヤツだ」
「ふふふ、家柄と関係なく、あんなに見た目だけを純粋に誉められたのは初めてだわ!変わった子!」