「ふふ、ふふふふふふ」
「おい、これで最後だからな」
「・・・・・あらあら」
「シャーリー、あれにはまだ近づかない方がいいわ。今は離れてましょ」
「ちくしょう!この樽め!往生せいやっ!」
ポコ・ポコ♪
ありったけの恨みを込めたこの二撃!届け!
樽底を射抜かんばかりに叩いたら、樽が私に恐れをなしたのか、ゆっくりと寮への扉が開きだした。
「おっ!」
「今度はバッチリだったわぁ」
「・・・嘘!信じられない!」
「エヴァちゃん!?」
そして、私はハッフルパフ寮へ英雄の如く迎え入れられたのだ。
穏やかだが賑やかなパーティー。
試練を乗り越えた私を暖かい暖炉の火が迎えてくれて、優しい同寮者達が、お皿に盛った軽食やらデザート、果ては飲み物まで差し出してくれて、労いの言葉をかけていってくれた。
曰く、最後まで諦めず挑戦し続ける忍耐力は素晴らしかった。
曰く、いつ終わるかもわからない挑戦の中、君に寄り添い続けた素晴らしい友人達とこんなにも早く出会えるなんて、すごいことだよ!
曰く、手の痛みはどうだい?辛かったら言って欲しい。
曰く、君の様な素敵な子が我がハッフルパフで嬉しいよ!
などなど。
・・・・つらい。
なにがつらいか?
同寮者達の純粋さが辛い。
数々の労いの言葉はからかってるとか馬鹿にしてるとかではなく、本気で本心から言っているのがわかってしまうから辛い。
誰しもが一発合格出来た『ハッフルパフ・リズム』を数十回もかけてやっとこさ叩ききっただけ。しかも、周りの方達よりも中身だけならかなり年上な私が。
これが、馬鹿にしてるとか、からかってるならいくらでも反撃出来るのに・・・。
ただただ手放しで快挙を成し遂げたかのように誉められ続けることのなんと辛いことか!!!
あれって、そんな誉められるようなことじゃないんだけどなぁっ!!
頼みのツッコミ役候補、トンクス先輩は涙ぐんで鼻を擦って近くの同輩だろうか?と肩を叩きあって爽やかに笑ってやがるし。貴方もハッフルパフ脳か!!
シャーリーとエヴァは二人でのんびりとお茶飲んでるし。私も混ぜて!助けて!
誰か助けてください!すごくすごくいたたまれないよ!!
ハッフルパフが善人の集団過ぎてすごく可愛いけど、恥ずか死ぬ!!
一通りの挨拶という名の拷問がすんだ頃だろうか?
裏切り者トンクス先輩の解散の声と共に本日のパーティーは終わりを迎え、各割り振られた部屋へとみんな帰っていく。恐ろしい羞恥プレイを集団で純粋にかましてくるとは、ハッフルパフ、なんて末恐ろしい子たち。
そりゃ、他の寮のひねくれ者とかがかなう訳なかった。
あの純粋ビームは辛い。騙すのすら恐れ多いと思わせる程の純粋さ。
どこで育てばああなる・・・って、そっか、ここハッフルパフ寮で7年培養されるんだった。
「お疲れ様、クリア」
「クリアちゃんったら、さっそく人気者さんねぇ」
「・・・エヴァ」
「なによ?」
「私達は強く、自分を持ってこうね!」
「意味がわからないわ」
「あら、二人だけなんてズルいわ。私も仲間に入れてちょうだいな」
ガッシリと手を握りエヴァと見つめ合えば、胡乱気な眼差しを注がれるが、その視線にほっとする自分がいる。
エヴァ、君は変わらずにいて欲しい。
シャーリー、君はハッフルパフに染まるのが早そうだ。ほわほわ天使が凄く可愛いことになるだろうけどね!時たま私の精神値と引き換えになる時もあるだろうけど。
「あ、そだ。
二人とも、部屋ってどこ?
今度遊びに行くねー」
「ええ、いいわよ。私は一番端って聞いたわ」
「へぇ?角かぁ。いいよねぇ。私も角らしいんだぁ」
「あらあら?私も端の方だと教わったのだけど」
「・・・みんな?」
「ふぅん。女子寮って三角形の形してるのかな?」
「そんなことはなかったと思うのだけどぉ?」
三人供が角部屋案内?この真っ直ぐな通路の角?
樽蓋みたいな扉が左右に並び、暖かなカンテラの火が通路を明るく照らしているのに、浮かび上がる予想がこの通路を寒々しいと感じさせてしまう。
バカなことを言ってみたが、シャーリーに無情にも撃墜されてしまう。
三人の歩みは誰一人止まることなく、とうとう通路の端に着いてしまった。
「・・・」
「・・・」
「・・・あらあらあら?」
「ねぇ、クリア?」
「なぁに?エヴァちゃん?」
「あら素敵!三人一緒の部屋なのね!!」
「の、ようね」
「わー。なにこの偶然。ホグワーツ怖い!」
「どうやって部屋決めてるのよ!」
「わかんない。ホグワーツ怖い!」
偶然仲良くなった子が偶然同室?それ、どんな偶然?しかも、部屋の中を見たが、私達三人部屋なのか誰も居ない。
普通は5人部屋のはずだよね!?
奥に山盛りになってる荷物とかあるけど、それを抜きにしてもどんな偶然!?
「二人ともー!中もとっても素敵よぉ?」
「シャーリーが平然としてるってことは魔法界じゃあ普通なの?これ」
「普通だとしても怖い!ホグワーツ怖い!」
「ハッフルパフでもこの子たちは少し難しい子達ですね。では、一緒の部屋にしておきましょうか」
「そうですな。あ、あのクリア・アヴァロンもハッフルパフでしたな」
「でしたら、あの子をこの部屋にするのはどうでしょう?彼女らの良い緩衝材になるかもしれませんわ」
「ほほぅ?マクゴナガル先生とフリットウィック先生両人が注目しておるなど、珍しいこともあるものじゃ」
「彼女は面白い子ですよ、ダンブルドア校長」
「人の心の壁を乗り越えるのに長けた子ですわ」
「ふむ、ならばそうしてみようかの?」
「はい、では、シャーロット・フォウリー、エヴァ・ブルーム、クリア・アヴァロンを同室にしますね」
実は本当に偶然だった恐怖の部屋割り