ホグワーツ初めての夜!
女子三人集まって!
さあ!
「「お休みなさい」」
え?
隣のベッドから聞こえてくるのは安らかな寝息!?
嘘でしょ!?もう寝ちゃった?
「「・・・・・」」
なんということでしょう。
いや、確かに私の試練のせいで随分遅くなってしまったけどさぁ。
そんな即刻で寝なくたっていいのになぁ。
どうせならキャッキャウフフの夜の女子トークとかさぁ。いや、まだ子供だし、夜更かしは辛いか。
でもなぁ、私達お互いのことまだ名前しか知らないのに。
そもそも明日の授業の準備してないけど、大丈夫なのかな?あの謎の時間割、私読み方わかんないんだけど。
最初はオリエンテーション?いや、ハリーさん達初日から授業してなかったか?ってことは教材いるよね?
あれ?何も準備してないけど。というか、授業場所知らないけど?
・・・・・うーん。
日本人としてのサガなのか、どうにも事前準備なにもなしというのは落ち着かないんだよなぁ。
うーん。上級生で何人か談話室で話してたから、まだ誰かしらいる筈。
ちょっと行ってこようかなぁ。
そーっと部屋から抜け出して、左右の蝋燭の灯りだけで浮かび上がる薄暗い一本道を一人逆戻り。なんか、お化けでも出そうな道だなぁって前世の私ならびくびくするんだろうけど、ホグワーツって当たり前みたいにゴーストふよふよ浮いてるからなぁ。
なんか、日本の幽霊とは怖さが別方向だし、あんまり怖くないんだよなぁ。
うーん?どうせならピーブズ辺りを教育して、由緒ある日本式幽霊の作法を教授するべきなのだろうか。
薄暗い一本道から樽蓋のドアを潜ると暖かな談話室には上級生らしき何人かが集まって話をしていた。
「あの~」
「あ?クリアじゃねぇか。どうした?寝られないのか?」
どうやらトンクス先輩も居たようだ。
流石にほぼ初対面の先輩方に聞くのは多少緊張してしまうので一安心である。
「テッド、またそんな乱暴な口調で」
「下級生が怖がっちゃうだろって、今話をしていたばっかりだろう?」
「う、悪ぃ」
「いや、トンクス先輩全然怖くないので、大丈夫ですよ?」
「そうかい?」
「まぁ、爽やかだったの最初だけで、あとは全部フランクというか、あれでしたが」
「「ぶふっ」」
「てめぇ、クリア」
「で、でも!トンクス先輩が優しいのは少し話せばわかるんで!気にしなくても大丈夫だと思うのですが!!さっきのも私のことを心配してくれてたんですよね!?」
「お、君はわかってるね!」
「そうさ!テッドは我がハッフルパフの中でも面倒見もよく頭がいいし、箒乗りまで上手いんだよ!
僕らの自慢の新監督生さ!」
「まぁ、口調が少し乱暴な所があるから下級生や女子生徒に怖がられるとこもあるんだが、テッドが良い奴なのは間違いないな。君は見所があるぞ?」
「~っやめろ!バカ共!」
「なんでだ?本当のことじゃないか?」
「バカ、我らがテッドは照れてらっしゃるんだよ」
「本当のことなのにか?」
「そこがテッドの謙虚なとこさ」
「てめえら!!」
「・・・・うわぁ」
ハッフルパフの純粋攻撃の被害者がここにも。もう一人はわざとだろうけど。
「で!クリアはどうして談話室に来たんだ?
もう寝る時間だろ?」
無理矢理話題を変えようとしてるのはバレバレだが、こっちが本題だし、ここはノらせていただこう。
「あ、はい。明日の授業のこと何もわからないので、誰かに聞こうかと思って出て来たんです。
時間割の読み方とかがよくわからなくて」
「え?」
「あれ、わからないのかい?」
「あー」
三者三様の反応だが、二対一で私が変みたいな扱いなんだが?唯一トンクス先輩だけは何やら納得がいってるみたいなのが救いである。
あの、四角い紙に真ん中から四角く渦状に書かれた意味不明な時間割を読めない私がおかしいとでも???
「クリア、お前やっぱマグル系だったか」
「え?トンクス先輩には私が魔法使いの子に見えたんですか?」
「いや、あんだけ何にでもはしゃいでたらマグルにしか見えねぇよ。・・・・まぁ、そこが問題にもなるか」
「ですよねー。・・・はい?」
トンクス先輩?今、問題って言わなかったですか?
「あれな、月曜日から土曜日まで、真ん中から読んでくんだよ」
「真ん中から、だと!?」
「な、普通はそんなんわかんねぇよな」
「そんなに変なのかい?」
「真ん中からが当たり前だと思ってるんだけどな」
「お前ら魔法使い族だけだよ、あんな訳わかんねぇ時間割」
「ですよね!?もっと良いやり方ありますよね!?」
「まぁ、それはそれとしてだ」
「え!?時間割置いといちゃうんですか!?」
「置いとけ」
「あ、はい」
「あのな?クリア、お前今のホグワーツで自分からマグル生まれとか言うのはやめろな?」
真剣な声で言うトンクス先輩の忠告には心当たりがありすぎる。ハリーの存在どころか、あの予言すらない暗黒時代の魔法の世界。
「・・・・差別、と、『例のあの人』ですか?」
「・・・ああ、お前はバカの割りに頭がいいな」
「普通は逆では!?」
「お前は普通を語るな」
「ひでぇ!」
「正直な話、うちの寮内でさえも差別主義な奴は少しだが、居る。
他寮程過激な訳じゃねぇが、マグルを受け入れるのを怖がってるんだろな。
一番気を付けなきゃなんねぇのはもちろんスリザリンだが、レイブンクローやグリフィンドールにだって居ないわけじゃねぇ」
「・・・差別って、そんなに根深いんですか?」
「・・・まぁな。ここんところは特にだろうが、俺が一年生の時だって少なからずあった」
「テッドも最初はいろいろあったよな」
「今でさえ、実力を認められて監督生にまでなってるけど、その分風当たりも強かったりするからな」
「俺のことは今はいいんだよ。
特にうちの寮はマグル生まれが多い。その分他寮から差別的な扱いを受けることもある。何かあったらもちろん上級生や俺が助けてやる。・・・が、情けねぇ話だが、俺らがどこまで出来るかはわからねぇ」
「ハッフルパフ寮は基本的に気が優しい子ばかりだから、争い事は苦手な子が多いからなぁ」
「それに、マグル生まれが多いからそもそも魔法が苦手だったりするんだよな」
「て、ことだ。これはハッフルパフ全体がそうなんだが、気の良い奴が多いから他寮から目の敵にはされねぇが、対抗も出来ねぇ。
俺みたいなのはハッフルパフ内じゃあ特殊な方だな。
だからこその監督生でもあるんだが・・・」
「テッドは他寮にも顔が効くから凄いんだよ!」
「呪文も上手いし?」
「茶化すな!」
「でも、トンクス先輩、私は自分がマグル生まれだと恥じる気持ちは全くないです」
「俺だって無ぇよ。けどな、魔法界全体が今はそんなんばっかなんだよ。
俺は可愛い後輩も尊敬する先輩方にもそんな辛い目には合って欲しくねぇ。
けど、俺に力が足りねぇのも事実なんだよ。
・・・・・すまねぇ」
「トンクス先輩・・・」
「っと、悪ぃ。初日から怖がらせちまったな。
お前は危なっかしいからつい、な」
そう言って苦しそうに笑うトンクス先輩を二人の友人が辛そうに見ている。
「不甲斐ない監督生だよな」
「・・・テッドだけじゃないだろ」
「俺達だって」
「つまり?」