私の未成年(中身は大人)の主張は、心澄んだハッフルパフの子達に温かく受け入れられた。
まぁ、マグル生まれでホグワーツに来れてる子って、よっぽど特殊な事情でもない限り、普通にマグルの学校行くよりも高額な学費やら資材費やら授業の道具費用やらを親に快く出して貰える程には裕福で、ハッフルパフに配属される程に真面目で優しいなら、親に愛されてるだろう子が殆どだから、愛され実感を持ってるんだろう。
ほとんどの子がキラキラした目でうなずいてくれている。
愛、友情、勇気、勝利。
幼き子供たちや大きなお友達すらも鷲掴みにする魔法の単語だよね。
難色を示してたシャーリーはともかく、他の魔法族の子達は『家族』発言に感激したのか新しい『家族』が困らない様にと自分達の知ってる知識をマグル生まれの子達に前に立ってあーでもないこーでもないと話し出した。それを必死に羊皮紙に書き込んだり質問したりするマグルの子達。あ、エヴァちゃん、羊皮紙片手に混ざりに行くんだね。真面目か!!
なんというか、すごく素直でいい子達だなぁ。
本当にハッフルパフって天使の住む寮なんじゃないかな?天使しか居ない。
その中の黒い染みとして私は居る訳だが。
なんだろう。大人って、汚いよねぇ。
天井をなんとなく見続けながらも隣からのシャーリーから突き刺さる様な視線に耐えぬいていられるのも、私が大人だからなんだろうね!うん!
「・・・・クリアちゃん?」
「・・・・・」
「・・・わたくし、さっきのこと、謝る気はないわよぉ」
「・・・うん、シャーリーの心配もわかってる。
これがそんなに簡単な話じゃないのもね」
「・・・ううん。クリアちゃん、貴女は全然、わかってないわぁ」
「・・・シャーリー?」
こっちを見るシャーリーの目には恐怖と嫌悪、あとは憎悪、なのかな。負の感情を煮詰めたみたいなドロドロした色が向かい合ってる私を通り越して、どこか別へと向けられている。
「わかってないのよ。クリアちゃんは。あの人達の怖さも、恐ろしさも、残酷さも。どれだけ・・・」
「シャーリー?」
「わたくしは、聖二十八家の一つ、フォウリー家の嫡子。見たくないことも、知りたくないことも、見なければならず、知らなければならない。
・・・・クリアちゃんは、クリアちゃんはわかってないのよぉ!!」
「・・・しゃー・・りー」
声は他の子に聞かせたくないからかな。小さく抑えた声なのに、どこか叫んでるようにも聞こえるのに。
表情も声色も、さっき見せた負の感情は全く見えない。何にも、シャーリーの今の感情がわからない。
昨日はあんなに笑ってたのに。優しく楽しそうに笑ってたのに。
さっきは怒って悲しんでたのに、憎悪と嫌悪にまみれた目をしていたのに。
話続けるシャーリーの表情から、どんどん感情が消えていく。言葉は鋭いのに、感情が、表情が、シャーリーから消えていってしまう。
「・・・・・」
これが、本当に夢のハリー・ポッターの世界?こんな可愛い天使みたいな子にこんな空虚な表情をさせる世界が?
主人公という希望が未だ無く、暗闇の中の物語だから?
同じ空間に居るはずなのに、シャーリーだけ、どこか別の世界に居るみたい。
・・・いや、実際にそうなのか。
聖二十八家には純血の魔法族しか居ないということになってる。
『例のあの人』側の人が沢山居るだろう。ハリー・ポッターという希望があってさえ、死喰い人や『例のあの人』寄りの思考の人間が居なくなったわけではなくて、更に今はハリー・ポッターの予言も存在すらないわけで。
それこそ、死喰い人や、そこまでいってなくても闇の陣営の思考寄りな人達は魔法族には原作時よりも沢山居るんだろう。
闇の陣営の攻勢が厳しくなってきているらしい昨今、この様子からして、もしかしたらシャーリーの両親あるいは親族連中も死喰い人、又は闇の陣営寄りの思考なのかな。
シャーリーくらい綺麗で聡明なら、どんな思惑に晒されるかわかったもんじゃない。
そして、その思惑を、例え隠されていても、理解してしまうのだろう。
見た目はこんなに儚くて頼りなげな天使でふわふわな性格だけど、シャーリーは頭が良いし、聡い。付き合い短くても、なんとなくはわかるよ。
ねぇ?シャーリー?
家に居て、ずっとそんな無感情な表情をしてるの?
笑えば花すら恥じらう可憐な笑顔なのに?
鈴を転がす様に可愛く笑うのに?
ハッフルパフの中のハッフルパフなんじゃないかってくらい優しいのに?
私が馬鹿な事しても楽しそうに笑ってくれて、知り合って間もないのに、私が危ないことしそうだからって本気で怒ってくれるくらい優しいのに?
前提からしてあり得ないけど、シャーリーならこんなこと言えば私が離れてっちゃうかもくらいは考えつくでしょ?
そんなに、優しいのに、そんな顔、するの?
「・・・・あり得ない」
「っっ!!まだ、信じられない、かしらぁ?」
我ながら相当低い声が出てしまった。目の前のシャーリーが怯えてるけど、ごめんね?
でもさ。
「あり得ないあり得ないあり得ないあり得ないっ!!」
「~~~っ!?!?」
「あり得ないっ!!!」
「く、くりあ、ちゃん?」
私の奇行にシャーリーの無表情が驚きに崩れる。
うん、シャーリーはそんな顔でも最高に可愛いよ。
「シャーリー!!!」
「く、くりあ、ちゃ~~ひゃっ!?」
椅子を蹴飛ばす勢いで立ち上がってシャーリーのふわふわの髪をぐしゃぐしゃにしながら頭を抱き締める。
ふんわりいい臭いするし暖かい。すみませんごめんなさい、変態じゃないよ。
「くりあ、ちゃん?」
「私ね?シャーリー大好きだよ?」
「・・・え、とぉ」
「優しくて温かくて可愛くて、シャーリーと最初の友達になれてすごくすごく嬉しい。こんな子に友達だって思ってもらえてすごくすごく嬉しい」
「くり、あ、ちゃん・・・」
「私はまだ子供で、なんの力もなくて、シャーリーの助けになんにもなってあげられない。
でも、私は!シャーリーがそんな顔するのは嫌だ!我慢出来ない!
私の自慢の友達が、そんな顔してるのは嫌だよ!
・・・・私は今後、心配も迷惑もたっくさん、シャーリーにかける!
・・・だから、だからさぁ。シャーリーも、私に心配も迷惑もかけてよ。力になれないかもしれないけど、頑張るから。今は助けてあげられないかもだけど、頑張って助けてあげられるようになってみせるから。
そんな、そんな顔しないで!!」
物語を知ってるから、全てを知ってるつもり、わかってるつもりで、実際の私は何も理解出来てない。
物語の暗闇でこんなに苦しんでる人が居るのを、全然、理解出来ていない。
きっと、今もよくはわかってない。
こんなシャーリーを見なければ、きっと欠片すらも理解出来なかった。
それでも、こんな私だけど。
友達が、こんな顔してるのを黙って見逃すってのは我慢出来ないのは理解出来る。
昔の、『前世の私』じゃこんなこと見て見ぬふりだろう。
でも、今なら、クリア・アヴァロンなら、もう、ありのままって決めた私なら、出来る、やってみせるよ。
「く、くり、あ、ちゃん」
「迷惑だって言われても、邪魔だって貶されても、まとわりついてへばりついて、シャーリーが根負けするまで付きまとうからね!」
「~~~~~っ」
「あ、でも、本気で鬱陶しいなら加減くらいはするし!押し売りだったら、その」
だから、笑ってよ。
「ひくっ」
「え、引いちゃう?」
「ぅ、うう~~!!」
「わー!!ごめん!怒んないでっ!!・・・って」
力の限りのギリストーカー宣言に引かれたのかと抱き締めてた頭を解放すれば・・・・。
「しゃーりー?」
「うっ、ひぐぅ、う」
「えと、泣くほど嫌だった?」
「う、うわぁ~~~あああん!!」
「ギャーーーー!!!シャーリー!?ご、ごごごごめんなさい!申し訳ない!お願いだから泣かないでぇええええ!!」
シャーリー大号泣である。
そんなに気持ち悪かった!?
とりあえずまた抱き締めて頭撫でたら泣き声悪化した。
おおおうぅ、ど、どうしたら!?
「アンタ!何シャーリー泣かしてんのよっ!!」
泣き声を聞きつけてエヴァ様がお戻りに!!
「え、エヴァ様ぁあああ!!!たす、助けっ!」
「アタシがちょっと離れただけでシャーリー泣かすなんてとんでもないことしたんじゃないのっ!?」
「と、とんでもないこと!?」
え、そんなに気持ち悪かった!?
「ごごごごめんなさい!シャーリー!!」
「うああああんん!!!」
「わ~~!?!?」
「・・・本当に、アンタ何したのよ」
「ごごごめんねぇ!!シャーリー!!!」
その後、しがみ付いて離れず泣き続けるシャーリーを手を繋いでくずるまで宥めるのに授業の時間を目一杯使ってもギリギリだった。
そ、そんなに気持ち悪かったのかな、ごごごごめんなさい!シャーリー!!
「アンタ、本当に何をしたの?まだグスグスしてるわよ?」
「わ、わかんない。え、ストーカー宣言アウトだったかな」
「すとーかー?なにそれ?」
「えっ、ストーカーって無いの!?」
「よくわかんないけど、アンタが悪いのね?」
「た、たぶん」
「しっっっかり、謝まって許して貰いなさいね!」
「も、勿論です!!」
(まぁ、クリアの手をしっかり握ってるし、そんなに怒ってはないんでしょうけど。
本当に何したんだか・・・)
(人に抱き締めて貰うのって、あんなに暖かいものだったかしらぁ。
本当に優しくてあったかいのは、クリアちゃんの方だわぁ。
・・・しばらくは握ったままでもいいわよねぇ?
ふふふ、誤解を解くのは後にしようかしら)