「すんまっせんでしたぁっっ!!」
授業日初日にして減点をマクゴナガル先生よりいただき、談話室の絨毯にて額を擦りつけ土下座を繰り出す私、クリア・アヴァロン。
「なにしてんだ!?やめろって!」
「だぁ~いじょうぶだって。
10点だけなんでしょ?俺らの代なんてクラス丸ごと遅刻して5点×人数分減点されたこともあったし、それに比べたら10点なんてどうってことないよ」
「あぁ~、あれは凄かったよなぁ。
丸ごと移動階段に連れ去られて何がなんだかわかんなかったもん」
あぁ、あの移動階段にハッフルパフは常に苦しめられ続けているのか。先輩方、ふんわか言ってますけど、一体何点減点されたんですか?
「あらあらぁ」
「・・・あの移動階段、本当にろくな物じゃないですね」
「お前ら!下級生に向かってろくでもない話してんじゃねぇ!!」
「「は~い」」
「・・・・ったく。
まぁ、あいつらも言った通りだが、悲しいことに我がハッフルパフでは初日に10点減点だけで済んだのはここ数年なかった事だ。
むしろ凄いことだぞ?
それに、減点を気にしてんなら、次同じ事をしないよう、気をつけてくれりゃいい」
「テッド先輩っ!」
え、そこは点を稼げとかじゃなくていいんですか!?
いや、凄くいい先輩なんだけども!
「ま、先輩の受け売りなんだがな。
しかしだ!その妙な代物は授業に二度と持ってくなよ。持ってったらインセンディオで跡形もなく燃やしてやるからな」
「テッド先輩っ!?」
私の力作が燃やされるだと!?
杖を構えるテッド先輩から我が『マクゴナガル先生応援うちわ』をひっしと抱きしめて庇う。
「というか、それなんなんだ?マジックアイテムの一種なのか?」
「え~、魔法界にはこんなの見たことないよ?マグルのなんじゃない?」
「えっ、すみませんが、先輩。
失礼な誤解をしないでくださいよ。
私たちマグルの文化にこんな変な物はありません。
それに、変な物は基本魔法界の物じゃないんですか?」
「ん~、でもねぇ?エヴァちゃん?魔法界の物であるとしても、これには何の魔法も感じなければ勝手に動く訳でも光る訳でもないじゃない?
特に面白みがあるわけでもないしねぇ?」
みんなで取り囲んで私のうちわを貶してくるだと!?
「応・援・うちわ!ですよ!!」
「「「「応援うちわ???」」」」
「畜生!!ここでもジェネレーションギャップかよ!!
2000年が遠過ぎる!!
いいですか!?応援うちわとは!
極東日本にて心の底から尊敬し、崇拝し、愛している推しを決して同志に迷惑をかけず、尚且つ推しに気付いて貰えるよう、心を込めて自作したり汗水垂らして稼いだ給料をかけて頼んでみたりして個人的な欲求を満たしつつ、推しに如何に応援する者がこんなに居ますよ、私は貴方を応援してますよ、と伝える為の個人が用意するのに適している素敵アイテムの一つなんですよ!?!?」
「「「「・・・・・・・。」」」」
一息に我が情熱を力説してみたが、皆さん目が点ですね、わかります。
「わかっていただけましたか!?!?」
「あ~。すまん、全くわからねぇ」
「ですよねぇっ!!」
現実がオタクに優しくないよ、この世界!!!
リアルOrzのポーズを取る私に皆口々に慰めの言葉をかけてくれるが、その、変な宗教にハマってる人を見る目はやめてくれないかなっ!?
「あー、なんだ。まぁ、それがお前にとってなんでそんなに大事なのかはわからねぇが、わかった」
「テッド先輩!!・・・・あの?それって結局わかってないのでは?」
「・・・とにかくだ!金輪際、そのうちわは
「あぅ、わかりました」
うぅ、せっかく作ったのに燃やすしかないのか、我がうちわちゃん。よしよし、私が痛くないように供養してやるからな。
「あらあらぁ?クリアちゃん、今のでも気づかなかったのぉ?」
「やれやれね。
アンタ、鋭いんだか鈍いんだか」
「はぇ?」
ふわふわニヤニヤしながら美少女二人が優しげな雰囲気で背を叩いてくるが、鈍いとは?はて?
「あ~、だから、だな」
「あはは~、テッドもなんでそこ濁すかね?
あれだけ怒った手前、言いづらくなったんだろうけど。
あのね?
「・・・・・え?」
「というか、そんな見た目だけおかしな物よりもよっぽど取り締まらなきゃいけない物なんて、上級生の厄介な奴等はみんな持ってるんだな~、これが」
「・・・・・あれ?それは、つまり?」
「だからだな!休日に大広間とか廊下とかでそれを振り回してても誰も気になんかしねぇんだよ!
あ~、なんだ。
・・・そんなに大事な物なら下手に壊されねぇようにしろ?
んで!授業に関係ない、危なくないとこで遊ぶようにな。
ついでだし、今度、レパロって修復呪文教えてやっから。
・・・いいか?せいぜい真面目に授業受けろよ?」
言いながら、ぺしりと軽く頭を叩かれたが、そんな軽い衝撃、今のテッド先輩から受けた衝撃に比べたらまさにそよ風!!!
「ぐはぁっ!!!」
幻覚の吐血を吐きつつ、絨毯の海に沈む私に一片の悔いなど残るはずもない。
倒れた私を真剣に心配して集まり出す同級生に囲まれて、私は今!心の底から幸せです!ここは理想郷、天使しか居ないハッフルパフ!
この天使の集うハッフルパフ以外に寮杯に相応しい寮なんてある!?
否!あるわけがない!
この天使達の笑顔に勝るご褒美がある!?
否!あるわけがない!!
ならば!私はやらねばならぬ!
「私、決めたよ!!」
「きゃ!?ちょっと!急に立つんじゃないの!!」
「クリアちゃん?突然倒れるなんて大丈夫なのぉ~?」
「おい、大丈夫か?デコ赤くなってるぞ?」
「それで?何を決めたのかな?」
「あのテッドの攻撃を喰らってよく短時間で復活出来たね、ただ者じゃないね、君は」
心配と戸惑いと好奇心と感心と、その他の様々な視線を一心に浴びて、私はハッフルパフの談話室で宣言をしよう!!!
「私が!このクリア・アヴァロンが!
この楽園を守り!ハッフルパフを寮杯という栄光に導いてみせると誓います!!」
きっと、それが私がこの世界に生れた意味に違いない!
そうだ!そうに違いない!今決めた!
「ああ!びば!ホグワーツ!」
私、幸せだ!!!
「うわぁ~、かっこいいや!」
「私も力になれるよう頑張るわ!」
「先輩達、これからよろしくお願いします!」
「ああ!新入生達のお陰で今年は減点がとても少ないからな!
任せろ!今年の寮対抗クィディッチトーナメント、我がハッフルパフが優勝してみせるさ!」
「ひゅー!キャプテン、格好いいぞ!」
「俺達、キャプテンについて行きますよ!」
「お前ら!こんな時間に騒いでんじゃねぇぞ!!」
「いや、原因の半分くらいはお前だぞ?」
「俺がなにしたってんだ!?」
「・・・爆弾に火を点けた、のかしらね?」
「いつだよ!?」
「ふふふ~。賑やかで素敵だわぁ」
「普段より割り増しで賑やかだけどねぇ」
「ぐはぁっ!!」
「耐えろよ、新入生。
その気持ちわかるけどよ。
うち、マグルが多いせいで、他の寮はあんまり交流ないから知らないだろうけど、ハッフルパフって・・・いいだろ。
すげぇ毒気抜ける。実家に帰りたくなくなるもんな」
「はぁ・・・ですね。
あのクリア・アヴァロン、でしたっけ?
あのほんわか集団の真ん中でよく生きてられますね」
「いや、同じ生き物なだけだろ」
「なるほど」