あれから、ハッフルパフのうっかり者と言われ出したこの私クリア・アヴァロンであるが。
周囲?いや、主に魂の兄弟ピーブズが心配していたようなトゥシューズに画鋲的な目には一切あっていない。
あっていない所か、たいして注目すらもされなかった。
原因は四つ程なら考えられる。
まず一つ目、ハッフルパフのうっかり者って、正直誰のことだかわからないのが現状だ。
ハッフルパフにはのんびり屋さんな子が大変多く、うっかり者のが多い位だった。
ローブに食べ物溢すし、何も無い所で転ぶし、忘れ物は多いし、大抵どっか日向にて黄色いローブが集団で固まっておやつ片手に日向ぼっこしてるし。
ハッフルパフのうっかり者が選り取りみどりの状態である。
凄く、癒されます。
二つ目、私の見た目がまず目立たない。
親譲りのお気に入り、ザ・外国人!みたいな濃いビー玉みたいな青い目。
以外は平均より小さいことを除けば肩までの黒髪に、外国人にしては彫りの浅い顔立ちで特に目立つ所など無いのである。
普段一緒にいるエヴァとシャーリーが美少女過ぎて添え物感あるよね。
三つ目、ホグワーツ敷地内にあの、『暴れ柳』が植えられた為である。
原作知ってる身としては近づく者を無差別に蹂躙する恐怖の柳が何故植えられたのか理由がわかるから、ミーハー的好奇心から一目見れば満足なんだけど、上級生の方々は何故そんなものが突然植えられたのか興味津々だし、無謀な奴らは度胸試し感覚で暴れ柳に突撃かましてボコられ、保険医のマダム・ポンフリーに説教され減点されている。
刺激的な新しい物に夢中になるのは世の常だが、なぜ自らボコボコにされに行く人達がこんなに多いのか・・・・。
死に急ぎ野郎は別の世界線の子だったはずなんだけどなぁ。
そんな事をうだうだと考えつつ大王イカが時折水しぶきを飛ばしマーピープルが宙を舞う。
ささやかな太陽が近付く冬を思わせる、そんな大きな湖のそば。
穏やかなお茶の時間を満喫しつつ、そんなうっかり者達をエヴァがローブを拭いてあげて、シャーリーが『修復呪文・レパロ』で破けたりした所を修復したりしてる所を、集団から少し離れた木を背凭れにして魂の兄弟がそばに漂っているのを眺めつつ、おやつを持ってきてくれた屋敷しもべ妖精君を小脇に抱えのんびり卵サンドイッチを頬張る。私、クリア・アヴァロン11歳。
うん、うまし。
「は、離して!離してくれ、のです!!」
「・・・おい、兄弟?」
「むふー。うましうまし」
「は、離せ、離してぇええ!!」
「・・・・・」
「あ、この紅茶美味しい」
「うっうっうっ、なんで」
「兄弟、泣いてるぞ、それ」
小脇に抱えた屋敷しもべ妖精は少し暴れてはいたが、いつの間にかぐったりと哀愁漂わせながら泣いていた。
そんなに泣くなよ。かわいいな。
「兄弟は俺様達が目を離すと何しでかすか本気でわかんねぇな」
「やだな、兄弟!褒めるなよ!」
「褒めてはねぇな・・・はぁ。
まぁ、ほどほどで離してやれよ。そいつらも暇じゃねぇんだからよ」
疲れた様にため息を溢す兄弟を呆気に取られたように小脇に抱えた屋敷しもべ妖精が眺めていた。元々溢れんばかりのパッチリお目めを更に落っことしそうな程に見開いている。どこにそこまで驚きの要素が?大王イカが空でも飛んだのだろうか。
それは是非に見てみたい!!
「兄弟!そこら辺に大王イカ飛んでない!?」
「イカは飛ばねぇよ!?」
「何の話!?です!?」
三人仲良く叫んだ所で、上をふよふよ漂う兄弟に首が痛くなってきた旨を告げ目線を合わせるようにお願いして下に降りてきて貰い、それを見て更に驚く屋敷しもべ妖精を小脇に抱えるのではなく横に座って貰うよう説得?し紅茶を一啜りする。
尚、逃走防止に右手は屋敷しもべ妖精と握ったままである。
正直、130センチ程しかないマイボディで90センチ程の痩せ細った屋敷しもべ妖精を小脇に抱え続けるのはそろそろ限界だった。
魔法の行使が上手な屋敷しもべ妖精には腕力がほぼ無かったのが私のツイてた所だよね!日頃の行いがいいからだなぁ!
「ふふふふ」
「・・・あー、んで?兄弟はなんでなんの罪もないコイツをその、いじめ、じゃねぇ。捕まえてたんだ?」
言葉を濁しきれてない兄弟が気の毒そうに屋敷しもべ妖精を眺めるけど、何故そんな目をされなければ?
「えっ!?兄弟わかんないの!?」
「わっっかんねぇよ!?というか、大半の奴らはわかんねぇからな!?」
「ぼ、私にもわからな、わかりません!!」
二人してそんなに怒るなよなー。
「えーー」
「ハッフルパフの奴らはお前のする事だからとおかしいぐれぇに全く気にしてねぇが、普通は屋敷しもべ妖精を取っ捕まえたりなんざしねぇよ!!」
「ぼ、私は悪いことなんかしてね、してない、です!!」
「俺はコイツらによくイタズラするが、コイツらただ働いてるだけの奴らだぞ!なんでこんなことしてんだよ!」
「無実だ!です!」
私を置き去りにいつの間に仲良くなったのか、二人で息ぴったりに説教してくるのは酷くないか!?
「なんで私が怒られてるの!?」
「「当然だろ!」です!」
何が当然なのか、甚だ遺憾である。
「だって・・・・」
拗ねくれた気持ちそのままにジト目を両脇に向ければ、魂の兄弟は自らの過去に疚しいことが山程ある身に、覚えがいくつもあったのか気まずげに目を反らしている。
昔のイタズラについては知らないけど、この前兄弟が突然机から顔出したせいで、落っことしたプティングの恨み忘れじ。
いや、食べ物に夢中で兄弟のこと無視しちゃってた私が悪いとは後からエヴァに言われたけど。
反対に、屋敷しもべ妖精は本当に潔白なので訝しげな眼差しをこちらに向けている。
やめろ、そんな澄んだ目をこっちに向けるんじゃない!!
「あー、なんだ。内容によっては怒るから言ってみろよ、な?」
「あれ?それ結局怒るよね?」
「あのピーブズが諭してる、です!?」
「てめえは、黙ってろ。いつまでもそのままでいいのかよ?」
「っ~~!」
「涙目で両手でお口チャックとか可愛すぎかな!?」
「兄弟!脱線すんな!」
「うぐぅ」
完全に場の主導権を兄弟が握ってしまった。
確かに、真面目に仕事してる屋敷しもべ妖精を拘束するのは少しは悪いかなぁとは思わなくもないけど、私の目的達成まであと少しなんだから、もう少しだけ我慢してもらう方向で、ひとつ。
「・・・で、なんでこんなことしてる?」
「・・・お、お礼を言いたくて、つい」
「・・・・・・え?」
「・・・・・・あ?」
「・・・・・・てへっ☆」
つまり、そういう事である。
「はぁ?
いつも真面目に働いてくれてる屋敷しもべ妖精にお礼ぇ?」
「そうなのよぉ。わたくしも聞いたこともないから驚いてしまってぇ」
「いや、まぁ、お礼くらいしてもいいんじゃない?」
「どうしてぇ?屋敷しもべ妖精はそういう魔法生物なのよぉ?お仕事が彼らの存在意義なのだからぁ、お礼ってするもの・・・・だったのぉ???」
「あ、魔法族的な考えはそうなのね。
まぁ、マグルでもわざわざ捕まえてまでってのはないでしょうねぇ。明らかにおかしなことなら尚更ね」
「そうなのよぉ。
それでねぇ?クリアちゃんが言うには、わたくし達のおやつを運んだりしてくれる屋敷しもべ妖精はいつも一緒の人だからってぇ。そもそも屋敷しもべ妖精の違いなんて見てもわからないわぁ」
「というか、屋敷しもべ妖精って、私初めて見たわよ。ご飯とかおやつとか、いつも勝手に出てくるとばかり思ってたわ」