お礼を伝えて取り敢えず満足した私は、繋いだ手を離し屋敷僕妖精さんを解放した。
屋敷僕妖精さんはこっちを溢れる様なお目目でしばらく眺めていたあと、びくりと一度身体を震わせた後、姿くらましで厨房へ戻っていった。多分。
最後に涙目になりながら、「お、お前!変!です!」って叫んでたんだが、真性の社畜種族にはお礼を言うことすら禁止項目に抵触してしまったのだろうか。
彼?彼女?の上司に怒られたらごめんね。
「かぁわいい~!」
「可愛いか?」
「え!あの可愛さがわかんないと!?」
「・・・あいにくと、わかんねぇなぁ」
「あの、明らかに慣れていない丁寧語!他とは格段に違った感情駄々漏れの態度!幼い仕草!!私は最初っからあの子には目を付けていたんだよ!」
「・・・・」
「厨房覗いててもさぁ、他のしもべ妖精に指導されながら一所懸命に仕事してる感じも可愛かったし、みんなが美味しそうに食べてたらこっそりその料理増やしたりしてるし!細やかな気配り屋さんでね!いい子なんだよ!!」
5つ星ホテルもビックリの気配りをして、約500人以上は居るホグワーツの住人の食事に掃除に多岐に渡る仕事をほんの数十人の屋敷しもべ妖精が回しているわけで。
普通の人間ならサボるところも一切サボらず過労死一直線の仕事ぶり。
お疲れ様です。いつもありがとう。
「・・・・」
「兄弟?どしたの?」
「・・・あのな、兄弟?」
「うん?どしたの?そんな真剣な顔と声で?」
「ここは、バレなきゃ校則破っても誰も咎める奴はいねぇ。
だがな?俺様が言うのもなんだが。
・・・・犯罪はバレねぇからってやっちまってもいい訳じゃあねぇんだぞ?」
「突然の犯罪者認定!?」
「その、なんだ。俺は兄弟が例え、犯罪者だろうと味方になってやるのもやぶさかじゃあねぇが、兄弟だって他の寮生とかに迷惑をかけたくねぇだろう?」
「え?待って待って待って!!突然の犯罪者認定は酷くない!?いじめ!?いじめなの!?」
「・・・・」
「えっ、なんで顔背けるの?背けても透けてるけど、突然過ぎない??
まだ何にもしてないよね?」
「まだ・・・か?」
「え?・・・っ!?ちがっ!!これは言葉の綾ってヤツだからね!?そもそも兄弟の中で私は誰に犯罪する予定なの!?」
「いいんだぜ?兄弟。俺様は味方だ、な?」
「優しい言葉と真剣な眼差しが、兄弟のマジ度を突き付けてきて辛いなぁ!!どうしてそうなった!?」
その後必死で兄弟を取り成してなんとか犯罪予備軍で認識を留めて貰って一安心したよ。やれやれ。失礼な兄弟だよね。
私は、そんな、幸せで平凡な日々がずっと続くのだと思ってた。
魔法の世界の常識と、私の常識に多少の誤差はあれどたいした違いもなく、私たちは同じ世界に居るのだと思っていた。
本編にさえ関わらなければ大丈夫。
なんて、ホグワーツに居る限り、そんな簡単な訳なかったのにねぇ?
ハッフルパフ生として穏やかに緩やかに日々を過ごす中で、私たちは最初のモノ慣れなさも落ち着いてゆっくりと魔法の世界に馴染んでいった。私だけ妙に馴染んでたとか兄弟は言うけどそんなことないよ。ちゃんと、緊張していたよ。ね?
兄弟がほぼ毎日私のそばにふよふよ浮かんで居るのも当たり前になりつつあるし、ハッフルパフ生のみんなも一塊じゃなくて、特に気の合う子達同士でグループ作って探検したり遊んだりご飯食べたりたまに勉強したりするようになっていった。
「くすん、エンジェル達も巣立ちの時期なんだねぇ」
「あのねぇ、学級単位でなんていつまでも動いてられないじゃない。
みんな、そんな小さな子供じゃないんだし」
「ふふふ~、そぉねぇ?
でもぉ、なんだかさびしいわよねぇ?
わたし、あんなに毎日賑やかに過ごしたの、初めてだったけれど、とっても楽しかったわぁ」
「そーだよね!そーなんだよ!いや、慣れるまでの数ヶ月だったけどさぁ!エンジェル達とわらわら移動したりとか日向ぼっことかオヤツタイムとか・・・まさに至福のひとときだったんだよ!!!勿論!エヴァもシャーリーもエンジェル筆頭なんだけどね!!」
「・・・慣れればみんな別々に行動するなんて当たり前のことでしょう?全く二人とも何言ってるんだか」
「エヴァ、ドライや。あんなに世話焼いてたのに」
「ふふふ~」
「ヒヒヒッ、そぉーんなこと言っちゃあいるがよぉ?
素直じゃあねぇなぁ?ミス・エヴァ~?」
「・・・ピーブズ、この風船野郎。何が言いたいのかしら?シャーリーも変に笑うのやめてよね」
「ヒヒヒッ、俺様は見たぜぇ~?ついこの前食堂でよぉ?
二~三人前を取り分けて隣に渡そうとしてたろぉ?」
「・・・それが何よ?」
「ありゃ?」
「ふふふ~」
「んでだ!そのあと気付いて無理矢理自分で食べてたよなぁ?あれは何のつもりで取り分けてたんだかなぁ~?ミス・エヴァ~??」
「・・・・ピーブズっ!!あんた!今日こそその青とオレンジの風船みたいな身体を本物の風船みたいに紐に括りつけて簡単には動けないようにしてやるんだから!!!」
「ギャッハハハハハ!!!ムリムリ!俺様はそう簡単にゃあ縛れねぇぜ!!精々腕を磨かなきゃあなぁ!!」
「も~~!!!なんなのよ!そういう時は見て見ぬふりするもんでしょうが!!!ほんっとにいらないとこばっか見てるんだから!!」
「・・・アカン、エヴァ尊い」
「うふふ、エヴァちゃんったらぁ、杖を無闇に振り回すと危ないのよぉ?どうやってもぉ、ピーブズにはまだ当たらないわぁ」
杖を振り回し、頬を染めてピーブズを滅多打ちにせんと駆けるエヴァとそんな様子を心底楽しそうに見ては逃げるピーブズ。
そんな穏やかに過ごしていた私たちに、掛けられる声。
「やぁ!君が噂のミス・アヴァロンだね?」
「は?人違いですけど」
「おまっ!せっかくジェームズが話かけてんだぞ!なんだよその態度は」
「黙れよ駄犬。金魚のフンみてぇなこと言ってんじゃねぇぞ」
「な~~~っっ!!」
「行こ、シャーリー」
「ええ」
「エヴァ~、きょーだーい、移動しよー」
私は何も見なかったし何にも声なんて掛けられてない。よし。
眼鏡のと、その友達三人なんてまるで見えない。
「ちょっ、ちょっと待ってくれよ!」
折角寒いの我慢して湖まで来てたのにさっきまでの楽しい気分が台無しですのことよ。全く。
「待ってくれってば!」
「~~どぅわっ」
通りすぎようとした手首を焦りからか思い切り引っ張られたせいで力負けした体が後ろに傾ぐ。
「~~いったぁ」
そのまま思いっきり冷たく湿気った地面に尻餅ついた挙げ句に握られたままの手首がぐぎりと捻られた。
くそぉ、今日は厄日か!?
「「クリア!!」ちゃん!」「兄弟!大丈夫かよ!」
「ごっ、ごめん!大丈夫かい?」
「な、なにしてんだよ!鈍くせぇなぁ!」
「あわわ、大丈夫?」
「クリア、痛いとこは?」
一斉に取り囲まれた。クリアは、逃げられない!!
「大丈夫だから!お尻が冷たい以外は本当に平気だよ、エヴァとシャーリー、しゃがんだら二人が濡れちゃうからしゃがまないの!兄弟はそんな顔しないの!キャラがぶれてる!!
ええいっ!メガネは、早よ手首離してよ!立てない!
駄犬は黙ってろ!あわわ、じゃないから!ありがとね、リーマス大丈夫だから。
てゆーか、みんな退いてったら!起きれないから!!」
わっちゃわっちゃしてんのは私抜きでしてください!!!
ようやっと立ち上がった頃には下着までびしょ濡れでお尻に冬の冷たい空気が吹き付けて非常に寒くなってしまった。
その場を着替えの為にさっさと寮に戻ると告げて逃げるように去る。なんなんだ、何故奴らは絡んできたんだ!?!?!?
「・・・はぁ、こんな一般市民に今ホグワーツ注目度No.1共が何の用事なんだか」
「なによ、クリア知り合いなんじゃないの?」
「・・・知り合いたくもない。出来ることならお近づきすらなりたくないよ」
「「「・・・・」」」
「・・・なに?」
「・・・別に?ねぇ?ピーブズ」
「・・・あぁ、ミス・エヴァ」
「・・・???」
二人とも、なぜにそんな息ぴったりで目を反らすの?本当に仲良しさんだよね。クリアさん、少し妬けちゃうぜ!
「・・・ところでぇ、クリアちゃん、さっきは転んでしまったけれどぉ?本当に、痛いところはないのぉ?」
「え、あ、うーん。実は微妙に手首捻った、かも?」
「まぁ!!それは大変よぉ。着替えたらすぐにマダム・ポンフリーに看てもらいに行きましょう?杖を振るのに影響が出てはいけないものぉ」
「え、捻ったくらいだし、我慢できるよ?」
「だぁめ、杖腕のケガは小さな事でも放っておいてはいけないのよぉ?それにぃ、私はクリアちゃんが痛い思いをするのは悲しいわぁ。クリアちゃんはぁ、私やエヴァやピーブズ、みんなに悲しい思いをさせるのぉ?」
瞳を潤ませた美少女に片手をそっと取られ、両手を包み込み心配げに小首を傾げ見つめられたら私の取れる行動は一つである!!!
「イエス・サー!!!」
あれ?本日はすんごい良い日じゃない!?!?!?
「クリアって、あんな嫌そうな表情も出来たのね」
「・・・実は、あの表情を俺様は一回だけ見たことあるぜ」
「本当に!?」
「あぁ。
・・・あれは俺様が兄弟の後ろから驚かせたせいで落としたプディングを見詰めた後に俺様に向けた表情にそっくりだったぜ」
「・・・」
「・・・」
「それはそうとぉ、クリアちゃん、どうしてあそこまで彼等を嫌がるのかしらぁ?
ブラックは純血派筆頭だからわからなくはないけれど、クリアちゃんはそもそも純血だとかマグルだとかを少しも気にして居ない子よねぇ?」
「ポッターは?」
「ポッター家は純血派じゃないわよぉ?」
「女の尻おっかけて、スリザリンの奴とケンカしてんのはよく見るぜ?」
「だからって、そもそもが人見知りするような子じゃないじゃない。この前森番の背中によじ登って困らせてたわよ?あのあと他の子にも群がられてたわ。あの人って、見た目ほど怖くないのね」
「彼等だって、今まで近付いてすら来なかったのに、何で今なのかしらぁ?」
「・・・そりゃ、あんだけハッフルパフで固まってりゃ近付いてなんかこれねぇだろうよ」