しんしん、しんしんと、空から際限無く降り続ける雪は今日も歴史あるボグワーツのお城に降り積もっていく。
そんな、壮大で雄大な景色が広がっているのだけども。
「さっっっっむ!!!!」
え???ありえないぐらい寒いんだけど!?!?!?
「いや、だったら戻れよ」
「お前!風邪引くですよ!!何してるです!?」
厚手の服に毛糸の帽子、マフラー、手袋、おまけの靴下にその上からすっぽりとローブを羽織って、城門前でガッタガタと震えているのは、そう、クリアです。
「なぁ〜、兄弟???生者にはこの寒さは堪えるんだろ?
すっげぇガタガタしてるじゃねぇか」
「そそ、そうです!!風邪引くですよ!こんな寒いとこでなにしてるですか!?お前!!」
「うゔぅー、ざむい。一応、全力で温かい格好してるはずなのに寒すぎる」
ガタガタする私のそばにはいつも通りに魂の兄弟たるピーブズと、今日も今日とて社畜全開でボロ布だけをまとった姿で城門前の雪かきをしていたしもべ妖精さんが。
・・・あの、このくそ寒いのにボロ布だけ纏って雪かきさせるとかイジメ?イジメなの???ダンブルドア、ちょっと私と屋敷しもべ妖精さんたちの労働環境について語り合わないといけないのでは???彼らの生態的に仕方ないにしろ、布を厚手にするとかないのか。
決闘するなら、魔法だとボロ負けするから拳で語ろう。
幼女の本気を見せてくれよう。
なんて、思いつつ、差し出したマフラーは凄い勢いで拒否されたんだが・・・。
貸すだけならいいんじゃね?ねぇ?・・・駄目?解せぬ。
「風邪引いちゃうのはそっちもじゃんかー。なんで駄目なのさ?」
「おおお、お前!!屋敷しもべ妖精に衣類をあげる意味わかってないんです!?」
真の社畜種族には借りることすら不名誉なのか。
この寒さでボロ布一枚は死に直結しかねないんじゃないかと思うのですが。
「いや、なんとなく、知ってるけどもさぁ、貸すだけならいいんじゃないかなぁって。こんなさむいのに、そんな布切れ一枚って。
キミ、骨と皮ばっかりでお肉全然ついてないじゃん。凍死しちゃうよ、いや、割と真面目に」
「だだだ、大丈夫、です!!こんなの、なんでもないですから!お、お前こそ、こんなところで何してるですか!?
いい加減、どっか行くです!!」
「え、行かないけどっふぇっくしゅん!!」
うう、さむ。二人からの優しい心配で心が温かいのに、物理的に寒い。
「おいおいおいおい、兄弟、大丈夫か??ほら、早く戻ろうぜぇ?」
「バカ!馬鹿です!風邪引きたいんですか!?
いつもみたいに暖炉の前でゴロゴロしてろです!!」
「いや、でも」
「でも?なんだってんだ、兄弟」
ぐいくいと裾を引っ張って私を城へと戻そうとする屋敷しもべ妖精さんと普段から愛嬌たっぷりな顔をしかめっ面にしてこっちに詰め寄る兄弟。
可愛過ぎないか??あっ、兄弟、あんまり身体寄せられると、あの、少しヒンヤリが増すんですが!?
しかし、クリアさんには大切は目的がある!兄弟たちの圧力に屈服するわけにいかないのだよ!!
「・・・今日、ホリデーシーズン最終日だから、みんな帰ってくる、じゃん。
お迎えしたいなぁって・・・。」
両手をもじもじさせて、チラリチラリと上下に視線を移動させる。さて、これで流されてくれまいか?
「「・・・・・」」
「うぅ、だって!兄弟居てくれたからそこまで寂しくはなかったけど、けどもさ!!
おかえりなさいって、一番に言うのはホグワーツの家族である私の務めであるという、ね???」
「・・・本心は?」
「え??やだなぁ!兄弟?これが本心デスガ?」
「・・・・・・・・・?」
「・・・・・・・・兄弟よぉ。俺様が居ない間に、なにした??」
厳しい顔で腕を組んで近付いてくる兄弟。
待って、兄弟待って!!重なってきた部分から冷えがヤバい!タダでさえ寒いのに兄弟ボディで余計に冷えるから!!
「言う!!言うから!!!
・・・・・・・その、さっき、呪文で遊んでたら、その、管理人の、ヅラを、飛ばしちゃって。
でっ、でも!!
ルーモスで目潰ししてから逃げたから、私とはバレてないはずなの!
1年生は呪文の使用の為の授業ってまだやってないし!
でも、まだみんな帰ってきてないから校内に生徒少ないじゃん?
バレるのは時間の問題・・・。
だから!!いっそのこと、イタズラしそう、かつ!!呪文使える奴等が帰って来たらそいつ等に目がいくだろうから、有耶無耶にならないかなって、思った!!!」
「その間校舎の外に潜伏するつもりだった、と」
「うん!!!まさかピカピカ1年生の純真純朴なハッフルパフがヅラを吹き飛ばした挙げ句に目潰しして逃走したなんてこと、誰も思わないよ!!」
「それって、どうなん、です」
「で、でも!わざとじゃないし??」
「ローブの色でバレそう、です」
「あのときはローブ着てないし、念の為、赤いリボンつけてた」
「特定の寮になすりつける気しかないですよ!?こいつ!!」
「・・・・はぁ〜」
「ほらみろです!!流石のこのピーブズだってあきれ「兄弟!!俺様は嬉しいぜぇっっっ!!!」・・・へ???」
「あ・・・、うん、・・・うん???」
「俺様ぁ、てっっきり兄弟はイタズラには一切の興味がないもんだと、むしろ、あいつらへの態度から嫌ってんだとばかり思ってたってのに!!
この偉大なホグワーツの最高な管理人、あのエドモンドをヅラだと見抜いた上で『それ』を吹き飛ばした!
しかもだ!!バレないように周到過ぎる程の用意までつけてだ!!これが嬉しくなくて、何が嬉しいってんだ!!
なぁ!!兄弟!!!」
「えぇ〜〜。そっち〜?」
「・・・そういえば、ピーブズってこんな奴だった、です。
数ヶ月しか経ってないっていうのに、なんだか、遠い昔のことみたい、です」
「なぁなぁ!兄弟よぉ!!一体いつ偉大なるエドモンドがヅラだって気付いたんだぁ???
前に俺様が奴にヅラだと指摘したときはよぉ?もっと酷い出来だった!!だが!今のはかなり自然に見せかけてると思ってたんだがなぁ」
「え、いや、あんなのあからさまにヅラすぎるよ。魔法界の最先端ファッションかもはや魔法界流のギャグなのかと」
「ええー?そうかぁ?
前のやつなんかよりはかなりいいんだぜ??
俺様は、あれを見たときにエドモンドは本気なんだな・・・って、思っちまったってのに」
兄弟に感心されるのは鼻が高くなるけども、改めてエドモンド管理人の頭部を思い出しても、違和感しか感じないんだよなぁ。
「材質が明らかに人間の髪らしくないし、既製品だから髪の色が不自然過ぎるよ。土台も硬いのか本人の頭の形とあんまり合ってないから微妙に浮かんでるような違和感もあるし」
「へぇ!!そんなんわかるのかよ!?やっぱりすげぇなぁ!兄弟はよぉ!!」
「・・・・褒められ、てるんだよね?・・・うん」
現代の最新のヅラやウィッグなんかを見てると技術力の進化をしみじみと実感するんだよなぁ。なんか、似てる様な生き物の毛なんだろうけど質感とか艶とか、なぁ〜んか違和感だらけで。
「と、まぁ、そんな訳でさ、バレるとマズイんだよね。
エドモンド管理人、1年四人組+αのせいで随分お疲れ気味みたいでさ。安息期間だと思ってたホリデーシーズンにまさかのヅラ飛ばしされるって、こう、ね?」
「悪魔のような所業、です」
「いやっっっ!!わざとじゃなくてね??悪戯な風さんがね??
」
「みなまで言うんじゃねぇよ、兄弟!!イタズラってのはよぉ、理屈じゃねぇんだよなあ!!」
「兄弟???違うからね?わざとじゃないんだよ??聞いてる?・・・ねぇ?ねぇってば!?!?」
そんなこんなで、ゴキゲンにふよふよと飛び回るビーブスを追いかけ回してる間に帰ってきた生徒達のおかげで、管理人のヅラの話は有耶無耶になったかと思われた、のだけど。
何故か、その後の噂によると、『ホリデーシーズン前に設置した、悪戯仕掛け人の時間式イタズラトラップがエドモンド管理人のヅラを吹き飛ばした』という話に取って代わってしまって、エドモンド管理人の胃痛が更に増した結果となってしまったらしい。
結局、新入生にもヅラだと大大的にバレてしまう結果に。
流石に申し訳なさすぎて、管理人室にストレス軽減に効くという薬草茶をスプラウト先生に譲って貰って差し入れしたら、涙目になりながら感謝されてしまった。
罪悪感に心がズキズキするんじゃあ。
「兄弟、これで悪戯の魅力に気付いてくれれば、一緒に出来ていいんだがなぁ〜。
しっかし、あの凹み様を見るに、兄弟がイタズラをやっちまっても構わないってぇ思える奴等でもいねぇと、そんなのは夢の又夢って、やつ、か。そんなとこも兄弟のいいとこではあるんだがなぁ。難しいぜぇぇ!!
・・・・・こんなことで悩む日が来るなんて、な」
「クリアはもう!!あたし達が居ない間になにやってんだか。」
「ふふふ〜、エドモンド管理人さん。カツラだったのねぇ。
全然気付かなかったわぁ。でもぉ、クリアちゃんが目立っちゃうのは、困るのよねぇ」
「・・・何、考えてるわけ?」
「ふふふふ〜?」
「まぁ、いいわ。シャーリーがやることでクリアの不利になるなんてことはないでしょうしね」
「そぉねぇ。
すこぉし、噂を流すだけよぉ?みんなが楽しめそうな、噂を、ね?」
「・・・噂、ねぇ?」
「大丈夫よぉ。誰かを傷付ける様な噂にはならないわぁ。エドモンド管理人さんのカツラはどうしようもないけれど、誰がやったかなんてみんな知らないんだから。面白いと思える噂を信じるものよぉ」
「う~~ん!シャーリーが味方で良かったわ」
「ふふ、エヴァちゃんだって、クリアちゃんの味方でしょう?」
「あんた程熱心なシンパじゃないわよ」
「・・・救われたの。だから、クリアちゃんにだけは、誠実で絶対の味方で居たいの。例え、どんなことがあっても。」
「・・・そ。いいんじゃない?無理しない範囲なら、止めはしないわよ」
「ふふ、ありがとう、エヴァちゃん」
「すっげええええ!ジェームズ!!お前いつの間にあんなすげぇイタズラ準備してたんだよ!?」
「う、んん??」
「俺にも一枚かましてくれればよかったのによぉ。こんなイタズラやるなんて、流石ジェームズだせ!!」
「ま、まあね?」
「やっぱり、ジェームズくんは凄いなぁ。僕、管理人がカツラだったなんて、わからなかったよ!」
「だろうとも!」
「(ホリデーシーズン前に準備する時間なんてどこにもなかったと思うんだけど・・・)す、凄いね。ジェームズ」
「はははっ!まぁ!当然のことかなぁ!」