杖を手渡されては杖を振り、杖を手渡されては杖を振り。
そんなサイクルを繰り返す中で、オリバンダーさんは杖についての知識を色々教えてくれた。
そんな話をしてないと色々辛いのだろう。私もです。
なんでも、ちゃんとしたオリバンダー製の杖というのは、今のギャリック・オリバンダーさんが、若い頃に試行錯誤して、様々な材木や芯材を組み合わせ試していった結果、確立していったものらしい。
材木の種類は38種類、杖芯はなんと『ドラゴンの心臓の琴線』『ユニコーンの毛』『不死鳥の羽』3種類しかないらしい。そのうちの1種類は不死鳥の羽なのだから、実質2種類だ。
単純計算で38×2の76種類。
そこから、杖の長さや個性を見たりで更に種類は増えていくのだという。
そんな数を作り、様々な魔女や魔法使いにぴったりの杖を提供し続けるオリバンダーさんは物凄い職人さんだ。
更には他の素材を使って作られた杖もあるという。それはオリバンダーさんやオリバンダーさんのご先祖様達がいろんな素材で作ってきた歴史ある杖なんだそうだ。それについては、ちょっと目をそらされながらの説明だったけど。
そして、そんな凄い職人さんのオリバンダーさんをここまで手こずらせる私は・・・、ほんとに魔女なのだろうか。どんどんと不安になっていくのだが。
空を暗闇が覆い、ちらほらと星が輝き始め私の魔法界での夜がオリバンダー杖店にて過ぎていく。
その後もちらほらとやってくる他の客の相手をしつつもひたすら杖を振り続ける私をみなさん不憫な子を見るような目で見ては去っていく。
そうだよね。流石に夜中まで一緒にはいられないですよね。
教師の二人は私の他にも案内しなければいけない子がまだまだいるそうで、すでに居ない。
「これならどうじゃ!
柊の枝、不死鳥の尾羽、28センチ。
良質でしなやかじゃぞ!」
「とりゃあ!」
当然の様になんの反応も起こらない杖を前にして、オリバンダーさんと二人、もはやなんの感慨も湧かなくなってきている。杖を振るう機械に、私はなれる。
「ぬぬぬ、これもいかんかったか」
「さぁ!いくらでもきてくださいよ!どんな杖でも振ってみせますからね!」
「よう言うた!
・・・・・・とはいえ、この状態のままでは入学に間に合わなくなってしまう可能性もある」
「・・・・・・」
そんなに私は絶望的なのか。
オリバンダー杖店の薄暗さもあり、目の前が真っ暗になる心地だ。
2次元転生しただけなのに、何故に運営さんたちは私に試練と絶望ばかり与えるのか。別に、貴重な杖とかを望んでる訳ではないのに。
ごく普通の杖で、当たり前の様に魔法界を満喫したいだけなのに。
暗黒時代真っ只中だわ、買い物はろくに出来ないし、杖は見つからないわ、『付き添い』術は吐きそうなくらい気持ち悪いわ。
あれ?憧れの2次元でいいことが少ないような?
「そうじゃっ!」
「ひぇっ」
うわぁ、びっくりした。
危うく思考すら暗黒期に入りかけたよ。
せっかく2次元に来れたのだし、もっと前向きにせねば。
まぁ、2次元は2次元だけど結局この世界は実際にあるものだし、今の私にとっては、『ハリー・ポッター』って作品の世界ではなく、『私が生きてる世界』な訳で。
上手くいかないことだらけでも、納得っていうか、人生そんなに甘くないよねっていうか。
前世も割りと上手くいかないこと多かったしなぁ。
とかなんとか思ってる間に、オリバンダーさんがいつの間にか大きな木箱を慎重に地面に置いていた。
あれ?オリバンダーさん、いつの間にとりに・・・って、『アクシオ』使えば一発で取れるか。
「それは?」
「うむ、これは私の若い頃作った物だったり、父や祖父の作った物を詰めた箱だ。
とはいえ、どちらかといえば、失敗作が主なんじゃが」
「失敗作?」
「あのぅ、それって」
不良品の魔女には不良品がお似合い的な?
不安が顔に出たのか、慌てたように箱の中身を説明してくれた。
「ち、違うぞ?失敗作・・・・、そう!これは商品としてはちと難しいというだけなのじゃ。
今のオリバンダー製の杖は最低限の安定性と強さを備えた杖なのじゃが、この箱に入っている杖は万人が使えるがとても弱い力しか持たなかったり、その逆にとても強い力を持つが誰も選ばなかったりと杖職人としては出せぬ杖がこの箱に入っておる。
アヴァロン嬢ちゃん程うちの杖が合わない魔女は見たことがない。
ならば、この箱にお主の杖があるのではないかと思ったのじゃ。
杖として使えぬというわけでは決してないのじゃ!」
それ、結局は不良品なのでは?
なんてことを思いつつも、オリバンダーさんが持ってきた木箱の中身に妙に惹かれている気がするのだ。
この中に自分の杖があると思いたい願望なのかもしれないとは言い切れないのが辛いとこではある。
次回、杖選び編ファイナル!
※指摘をいただき、杖の種類について加筆修正いたしました!いつもありがとうございます!