アールさんの行方がまるで掴めない。う~ん、転移魔法で移動しているのかな?そうなると、お手上げである。
そして、ムーノ男爵領のムーノ市に着いた。
「う~ん、ここの男爵はお飾りのようだ。勇者関連のこと以外、お断りだって…」
イオナがプンプンして、男爵の家から戻ってきた。
「お~い、ゼナ!ちょっと一緒に来てくれ~!」
リリオに呼ばれた。彼女に付いて行くと、この街の執務官の部屋へ連れて行かれた。
「彼女が、ゼナ・マリエンテールです」
リリオが、私を執務官に紹介した。
「そう…彼女がそうなの…初めまして、私はアルジェント侯爵配下のニナ・ロットルです」
アルジェント…アールさんの…え?侯爵って?
「この街の実質的な太守はアール・アルジェント卿です。私は、彼に太守代行を仰せつかっております」
アールさん…鳥肌が立っていく。どこまで出世するんだ。こんなに短期間に…彼に恐ろしさを感じた。
「彼のプロポーズの返事をしに行くとのことだが、本当ですか?」
リリオ…何てことを言っているんだ…
「ですが、あくまでプライベートなことなので…その…」
「そう…彼の好みは、あなたみたいな女性なのね♪」
何も言い返せない。実際問題、どうなんだろうか?
「アルジェント卿は今、王都の迎賓館に、住まわれています」
王都の迎賓館…VIP待遇なんだ…スゴい。
「彼に伝えると、会わないって選択肢を、迷わず取ると思います。ですから、彼の上司へは伝えておきます」
アールさんの上司って、ミツクニ卿…えぇぇぇぇ~!
「彼は今、難しい立場にいます。王都へ行く前に、オーユゴック公爵様の公都へお寄りすると良いでしょう。そこにあるテニオン神殿の巫女長を頼りなさい。彼の身に起きたことを話してくれると思います。私は現場にいなかったので、詳しいことはわからないんです」
と、巫女長宛てとミツクニ卿宛ての書簡を2通作ってくれた。
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そして、公都にあるテニオン神殿の巫女長様と面会をした。
「そう…あなたが…ごめんなさいね」
私に頭を下げる巫女長様。どうして?
「彼は私の大切な配下の者を救ってくれました。それこそ、命に替えて…」
涙する巫女長様。まさか、アールさんが…でも、迎賓館に住んでいるって…はて?
「あなたは、彼が人間で無くなっても、愛せますか?」
人間で無くなった?はぁ?
「ど、ど、どういう意味ですか?」
たまらず、リリオが質問をした。
「文字通りです。彼は神託の巫女を、全身全霊を保って救い、彼女に第2の人生をプレゼントしてくれました。神の御業か、魔王の呪いか…彼はその代償で、人間では無くなりましたけど…」
魔王の呪い…まさか、魔王と戦ったのか…アールさん…
「彼は勇者なんですか?」
思わず、私が訊いた。魔王と戦える者は、勇者だけであるから。
「アルジェント卿は、もう勇者にはなれません。だって、人間では無いんですから」
「彼は何になったのですか?」
「それは、ここで口に出す事の出来ない存在です♪皮肉ですよね。神託の巫女を救った代償が、神殿では口に出せない存在になるって…神は無慈悲で惨いことをしました」
それは魔なる存在になったってことか…でも、王都の迎賓館で暮らしているって…なんか、話が合わないんだけど…
「後は、ミト様にお訊きくださいね♪」
もったいぶらずに教えて欲しいです。彼は、何になったんだろうか?
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そして王都へ…
「そうか…君がアールを振った娘か♪」
ミツクニ卿の第一声はそれだった。振った…あぁ、確かに振ったかも…
「落ち込みようといったら、半端無かったよ。その挙げ句にアイツ、外交問題を引き起こしてくれてねぇ」
えっ…私に振られた腹いせに外交問題を…アールさん、何をしているんですか…
「まぁ、話し合いで解決はしたけど…そうか、君みたいな娘が好み…だよなぁ~」
彼の好みを知っている素振りのミツクニ卿。
「実は、ゼナが振る前に、私も振っているんだよ♪」
はぁ?あっ!そう言えば、ミツクニ卿と体型が似ている…私。つまりは、そういうこと?
「うん、そういうことだよ、ゼナさん」
あ…心が読まれている。
「うん。読めるよ♪しょっちゅう、アールの心を読んで、弄んでいるし♪」
なんてことを…傷口に塩を塗り込むなんて…
「で、私達の直面している問題なんですが…」
困惑する私を尻目に、リリオが本題を出していく。
「それは、アールに言ってよ。軍部はアールの方が仲が良いからね。そうそう、丁度良い♪今アイツは昼寝中だ。ゼナに1つ仕事をシテ貰おう♪」
ミツクニ卿が私を見る顔…悪人顔なんですが…何をさせるのだろうか…