神託の巫女セーラ…神からの言葉を受け取れる能力を持つ巫女である。神は何故、魔王の出現場所を予告出来るんだ?予告するだけで、倒してはくれないらしい。無責任だろうと思うんだが…
うがった見方かもしれないが、神は地上に生きる者達へ、試練として魔王を送り込んでいるのでは無いのか?だから、神と交信の出来る者に、魔王を送り込めるとしたら…
どう思う?俺は目の前に少女に訊いた。
『どう思うって…答えは自分で見つけないとダメだよ』
笑顔の少女。そうなのか…
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「起きて下さい!ご神託がありました。ねぇ、お願いです。起きて下さい」
セーラの緊迫した声で目覚めた。
「どうしたんだ?」
「公都に魔王が降臨します…」
また、公都か…迷宮は無かった筈。いや、セーラのいた地下空洞が迷宮の一部だとしたら…
俺は起きて、アーシアと共に公都の地下空間へ転移した。そこは様変わりしていた。地下室って感じだったのだが、地下迷宮って感じになっていた。
「マスターズルームに行けるか?」
「はい。まだ所有者の登録は未だのようなので、マスターを登録しました」
マスターズルームと呼ばれる、迷宮核のある部屋に転移した。アーシアに設定をしてもらっている。アーシアの迷宮と同じ設定にである。
「怪しい侵入者がいないか、探査をしてくれ」
「了解です」
結果、まだ侵入者はいないようだ。中層以下においては。上層部には侵入されていたので、飢えたハウンドドッグと肉食スライムを配置していく。
中層への入り口手前にはヒドラを3匹設置した。勇者以外には難しいだろうな♪
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アーシアと共に帰宅した。ミト達が右往左往していた。
「おい!どこへ行っていたのよ~!」
ご立腹のミト。
「現地視察だよ。迷宮が出来ていたので、迷宮核を手懐けてきたよ」
「はぁ?4つ目か?」
先輩が呆れている。
「で、どうだったの?」
「上層部に怪しい侵入者がいたから、魔物を設置してきた」
「そう…これから公都へ向かう。兄ぃと先輩の転移術で、全員を運んで!」
馬車移動では無いのか?
「緊急性のある事案は、転移術よ!」
ミトがキレていた。どうしたんだ?
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数回に分けて、全員を公都へ運んだ。ミト、セーラ、リーン、ゼナ達は神殿へ。先輩は貴族達の元へ行き、情報収集のようだ。俺達は、迷宮の入り口周辺をパトロールする。
『リリーが…』
ミトからメッセージが届いた。巫女長がどうしたんだ?アーシアと共に、ミトの元へ転移した。
「先輩…リリーが攫われたって…」
はぁ?まさか…老婆の身体に…
「アール様…ダメ!戻って来て…」
セーラの声…俺は何かにチェンジしたようだ。
「アール…ダメだよ。戻って来てくれ、セーラの為にも…」
悲痛なリーンの声。俺はどうなったんだ?俺は…アーシアと共に転移した。リリーの元へ…
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生きている者は誰もいない。一面血の海である。俺の前にはリリーから脱皮したばかりの魔王がいる。リリーはセーラと同じようにボロ布のようになり、部屋の片隅に脱ぎ捨てられていた。
「貴様、この前はやってくれたな…だが、復活を遂げたよ。ふふふ♪」
魔王からの攻撃…俺の身体を射貫く。だけど、痛くない。狼狽えている魔王。
「何…攻撃が効かないだと…貴様、何者だ…」
「アーシア、リリーを丁重に確保しろ。後、このヤローをここから出すな!」
「了解です!」
「はぁ?迷宮核が仲間だと…貴様、何をした?」
「俺は不死王リッチ…いや、魔神と言った方がわかるかな?」
「魔神だと…なんで、貴様が…なんで、人間の味方をしているんだ?」
「俺は魔王も神も許さない!」
聖魔剣を手にした。後ずさりする魔王。
「死んでアンデッド化なんかさせない。だって、俺は不死王だよ。アンデッドの王だ。その俺が認め無いんだよ。ふふふ♪」
「狂っている…貴様、狂っているぞ!」
魔王ほどの理性すら無い俺。狂っている?上等だよ♪
「リリーにした行為…セーラにした行為…許さない!」
爆裂魔法が俺を襲う。身体が爆ぜるが、再生をしていく。
「近寄るな!化け物め!」
魔王に化け物って言われるって、賞賛の言葉か?ありがたく受け取っておく。
「お前の能力って、物理ダメージ、魔法ダメージの99%のカットだっけ?」
アイツの魔眼から、即死効果や石化効果の攻撃を受けるが、不死王である俺には意味を為さない。
「おい!来るんじゃない!この化け物がぁぁぁぁぁ~!」
「後なんだっけ…お前の能力は…」
「頼む…見逃してくれ…」
泣き叫ぶ黄金の猪王。見逃す?何でよ~。殺し合おうぜ♪
「欲しい物はなんでもヤル」
「リリーを元に戻せ!」
「それは無理だ。俺にその能力は無い…なぁ、止めろよ…」
『お兄ちゃんを怒らせたの?馬鹿なイノシシだね。うふふふ』
俺の隣に現れたカグヤ。
「お前…月の女神…お前が化け物を召喚したのか…」
『お兄ちゃんは化け物じゃないわよ。うふふふ』
「うぉぉぉぉぉぉ~」
影に飲み込まれて行く魔王。なまじ倒すから復活するんだ。闇の牢獄に閉じ込めておけば、復活の心配は無い。
『お兄ちゃん…怒りに飲み込まれたお兄ちゃんは痛々しいわ。元に戻してあげる。また、夢の中で遊んでね♪』
もちろんだ。
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血の海で目覚めた。何が遭ったんだ?記憶が曖昧である。俺は俺で無くなった気がした。戦闘ログをチェックしてみたが、魔王黄金の猪王を倒したとしか、出ていない。倒すことは出来たようだ。まぁ、いいか…アーシアが、リリーの遺骸を護ってくれている。
「アーシア、ありがとう」
「いえ…命令ですから」
アーシアにお礼の口付けを…一瞬、嬉しそうな表情を見せたアーシア。俺はリリーの蘇生を始めた。このまま蘇生では老衰が近い上、芸が無い気がする。どうするか…そうだ!閃きの神様が降臨してくれた。聖杯の力で、若返らせるかな?
って、若返らせる加減を間違えて、幼子になってしまった。マズいかな?アリサくらいには見えるけど…これでは抱け無い…
『ドジ♪』
あの女の子の声がした。そうだな、ドジったよ。凹む俺。
「アーシア、リリーを抱いてくれ。帰るよ」
「了解です」
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みんなの元へ3人で転移した。
「先輩ですよね…」
ミトが恐る恐る訊いてきた。
「何を言っているんだ?俺が俺でなかったら、なんだと言うんだ?」
「その子は?」
アーシアの抱いている子を指差すミト。
「あぁ、聖杯で20代くらいにしようとして…失敗しちゃった…」
「まさか…リリー?」
明後日の方を見る俺。
「そう言えば、出逢った頃も、これくらいかな…」
アーシアがミトにリリーを渡した。
「どうするの?こんなに幼くしちゃって…」
「10年も経てば、喰えるかな?」
バキっ!
セーラに叩かれた。こんなことをする子ではないはずだ。
「私がいるのに、リリー様を抱くんですか?」
泣き笑い顔のセーラが、俺に抱きついて来た。
「う~ん…」
「で、魔王はどうしたの?」
ミトに訊かれた。
「黄金の猪王ってヤツを倒したよ」
「それ、ミトと一緒に倒したヤツじゃん」
って、テンちゃん。そうなのか?そうなるとミトは66年も寝ていたのか?
「おい!そこ!歳の計算をするなぁ~!」
俺を指差し警告を発したミト。
「あれを一人で倒したのか…」
「なぁ、俺は俺でなくなっていたのか?」
俺の中でくすぶる疑問を、訊いてみた。皆、一瞬であったが、顔が強張った気がした。
「き、き、気にするな。こうして、帰ってきたんだし」
ミトの動揺が激しい。コイツが動揺するって、大変なことが起きたのだろう。
「セーラ、本当の事を教えてくれ。俺は何になったんだ?」
「ソレは…」
俺から離れようとするセーラ。そんな存在になったのか…俺は…
「もう…一緒には住めないかな…」
「そんなことは無い!考えるなよ!」
リーンが遠くから言う。近寄れない程の存在になったのか…俺は…
「わかった。俺は去るよ!」
俺は転移をした。
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一人で転移をした筈だったが、リザ、タマ、ポチ、アリサ、ルル、ナナ、アーシアが一緒にいた。
「どうして?」
「ご主人様…私はいつまでも一緒にいます。そう決めています。奴隷から解放してくださった。あの時から」
リザ…
「私が私でいられるのは、ご主人様のお陰だよ」
アリサ…
「行く宛ては無いよ…」
「迷宮で暮らせます」
って、アーシア。あぁ、迷宮核があるもんな。迷宮内に部屋を作るなんて、造作も無いことか。
「じゃ、迷宮核を集めるか…」
「それもいいわねぇ♪」
って、アリサ。
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アリサが行きたい迷宮があるというので、そこへ向かっている。行ったことが無い場所なので、陸路で…馬車を手に入れ、てくてくと…
心配そうに俺を見るアリサ。
「大丈夫だよ。心配するな」
「でも…」
「俺を頼ってくれるヤツがいる限り、ソイツの為に出来る事はする」
アルジェント卿と名乗ると、ミト達に見付かるので、ムーン卿と名乗っている。ニナに便宜を図ってもらい、ムーン士爵という身分証を作ってもらったのだ。
「路銀の心配はしないでください。私が工面しますから」
って、ニナが応援してくれた。アーゼもこっそりと支援をしてくれている。二人共俺が何かをやらかして、ミトから逃げていると思っている。
「後少し…」
アリサとルルが遠くを見つめている。う~ん、ワイバーンの縄張りに入ったようだ。若い血の気の多いワイバーンが威嚇をしている。どうするかな?
「リザ、ワイバーンの肉は旨いのか?」
「どうでしょうね?ドラゴン系ですから、食べ応えはあると思います」
って、じゃ、一狩りするかな?俺とリザ、タマ、ポチ、ナナで狩りを始めた。狩ったワイバーンは、ルルとアーシアが食べられる部分を肉へと加工していく。
「大漁ですね♪」
ルルが嬉しそうだ。その夜は、ワイバーンパーティーだ。料理の一部をニナとアーゼへ贈り届けた。支援の見返りって感じである。
「これって、竜白石だわ。ご主人様、これ、高く売れますよ」
ワイバーンの糞が堆積して、長い年月を掛け変質して、石のような物に変異したようだ。では、ストレージに入るだけ…同じ物は999個まで入るようだ。
では、先を急ぐか。追っ手が来るとマズい。
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ようやく目的地であるヨウォーク王国に辿り着いた。ここは、アリサ、ルルの祖国を併合した国である。全マップ探査をしておく。アーシアには、都市核と迷宮核の探査をして貰っている。
「都市核が2こ有りますが、契約者がいます。迷宮核が1こありますが、契約者がいます」
なるほど、奪うには、契約者を殺さないとダメか。
「ねぇ、無益な殺しはダメだよ」
アリサがそう言ってきた。
「お前達姉妹の仇だろ?」
「でもダメ…ねぇ、お願い…」
アリサの頭を撫でる、肯定って意味だ。
「亜人がほとんどいません」
ナナが探査結果を報告してきた。そうなると、リザ達が迫害に遭うか?注意をしながら、ヨウォーク王国の迷宮がある旧クボォーク王城跡地を目指す。
「酷い…」
アリサ、ルルの目の前に、クボォーク王城だった物がある。酷い有様である。無傷の王城を知るアリサ、ルルで無くても、それは分かる。城本体は無くガレキが転がっている。城を取り込む壁は総て崩され、壁に隣接していた塔のうち3本は倒壊して、残る一本は根元が圧壊していた。人骨が方々に散らばっている。皆殺しに近かったのであろう。
「あいつら上級魔族をここへ派遣したのよ…」
アリサは涙を溜め込み、怒りに震えていた。敵は魔族と契約したのか…
「迷宮内に冒険者が多数。所属は『ヨウォーク王国迷宮局冒険者ギルド』です」
アーシアが迷宮核とリンクをして、情報を報告してきた。周囲を見回すと、王城跡に木造の小屋があった。情報を見ると「冒険者ギルド」のようだ。迷宮の入り口では、職員らしき者が身分証のような物をチェックしていた。
「観光名所化か…許せないなぁ」
「だから、ダメだよ。ねぇ、わかっているよね?」
アリサが確認してきた。頭を撫でる俺。俺がまだ俺である証明である。まず、ギルドで登録だな。俺とルルとで登録しに行く。
「おい!兄ちゃん、金を置いて行けよ!」
はぁ?ゴロツキが3名ほど寄って来た。だけど、ポチタマコンビが音も無く近づき、意識を狩っている。グッドジョブ♪
俺とルルは無事に、ギルドの建物に入り、登録をしようとすると、
「登録ですね? ではこちらの鑑定板に手を置いて名前を言ってください」
ヤマト石か?名前だけ登録ではダメなのか…
「あぁ、ソイツらはボクの連れだよ」
後から後輩氏の声…
「あぁ、ミツクニ卿…そうですか…では、登録の必要はございません」
何故、見付かったんだ…
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迷宮の前にテントを張り、その中でミトの長い説教が始まった。
「おい!寝るな!」
あぁ、長いから、寝ちゃったよ。
「なんで、バレたんだ?」
「ふふふ♪私の能力を忘れていないか?心が読めるんだよ」
あれ?俺の心だけで無いのか?
「フィルターを張っている兄ぃを除いて、誰のでも読めるんだよ♪」
チートすぎるだろ…その能力は…
「ニナの心を読みました♪」
くそぅ~!
「なんで、逃亡犯のようなことをするんですか?」
セーラが言い寄ってきた。
「だって…俺は…」
「そのことだけど、ミツクニ卿も含め、全員で反省をした。アルジェント卿は、何者になろうと、アルジェント卿であるってね」
リーンが悠然と語っている。