デスマーチからはじまる異世界マン遊   作:もっち~!

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ミト視点です。

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SS:得た物、失った物

公都に着くと、セーラ、リーン、ゼナ達と、テニオン神殿へ駆け込んだ。予感は的中してしまった。リリーが攫われたそうだ。

 

先輩と兄ぃへ

 

『リリーが…』

 

とだけメッセージを送った。兄ぃは「どうした?」って、メッセージを返してきたが、先輩はアーシアと共に、直ぐに転移してきてくれた。やはり頼れるのは、先輩の方か…

 

「先輩…リリーが攫われたって…」

 

私の言葉がキーになったのか、先輩は先輩で無くなって行く。

 

「アール様…ダメ!戻って来て…」

 

セーラが叫ぶ。なのに、私は何も出来無い。肉体が透けていく、血管、神経もだ…先輩は異形なる姿へと変貌していく。まるで、オーバーロードのアインズ様のようだ。同じリッチなら、このすばのウィズのようになれば良いのに…

 

「アール…ダメだよ。戻って来てくれ、セーラの為にも…」

 

リーンの悲痛な叫び声。先輩には届いているのだろうか?生きる骸骨へと変貌していく。私達の呼び掛けに反応しない。何かを探しているのか?アーシアだけが、先輩に寄り添い…どこかへと転移して行ってしまった。

 

先輩のいた場所には、何も無い。先輩のいた痕跡すら無い。みな、先輩のいた場所だけを見つめていた。

 

「ミト様…、アール様は、戻れるんですか?」

 

セーラに訊かれた。だけど、私は答えを持っていない。

 

「ミト様…アールはどこへ?」

 

リーンの問いかけ…これも答えを持っていない。だけど…

 

「たぶん、リリーの元へ向かったんだろう」

 

--------

 

セーラを救う為、公都を護る為、魔王を倒す為、先輩は肉体を失った。自分の命と引き換えに、人間であることを辞めてまでも、先輩は最後の賭けに出た。今の先輩は、その結果である。神の御業…そうかもしれない。あんな姿なのに優しい。魔王の呪い…そうかも知れない。優しいのに、あんな禍々しい姿に…

 

「迷宮に入れないぞ」

 

兄ぃが報告してきた。アーシアを使って、魔王を迷宮に閉じ込めたんだろう。

 

「アールの仕業か?」

 

頷く私。セーラ、リーン姉妹は啜り泣いている。

 

「また、アイツ…」

 

「うん…」

 

無表情スキルを使っているはずなのに、兄ぃの瞳は哀しそうだ。

 

「俺なら、ドジは踏まない」

 

そうだろう。チートの百貨店状態の兄ぃなら、リスク無しで倒せただろう。

 

-------

 

日が傾き掛けた頃、先輩達三人が戻って来た。うん?三人?

 

「先輩ですよね…」

 

本物か?恐る恐る訊いてみた。魔王が混ざっているかもしれない。だけど、リザ達は臨戦態勢を取っていない。本物の先輩だって、分かるのか?

 

「何を言っているんだ?俺が俺でなかったら、なんだと言うんだ?」

 

魔王の手先とか…アーシアの抱いている少女は誰だ?

 

「その子は?」

 

指を差して訊いてみた。

 

「あぁ、聖杯で20代くらいにしようとして…失敗しちゃった…」

 

はぁ?何をやらかしているんだ?まさかなぁ…

 

「まさか…リリー?」

 

先輩は、視線を逸らせた。ビンゴのようらしい…

 

「そう言えば、出逢った頃も、これくらいかな…」

 

昔のことを想い出す私。アーシアが眠っている少女を私に手渡してきた。

 

「どうするの?こんなに幼くしちゃって…」

 

記憶とか残っているのだろうか?

 

「10年も経てば、喰えるかな?」

 

先輩の答えは、斜め上を行くものだった。緊迫した局面で、何をしているんだ?先輩らしいと言えば、らしいのだけど。

 

バキっ!

 

先輩を心配していたセーラからの鉄拳制裁。まぁ、そうなるわな。

 

「私がいるのに、リリー様を抱くんですか?」

 

緊迫した状況から戻れたのか、泣き笑い顔で、先輩に抱きついた。しまった、出遅れた。ここは無表情スキルで乗り切るか。

 

「で、魔王はどうしたの?」

 

大事なことを訊いた。あの状態で出撃して、討ち漏らしは無いと思うけど。

 

「黄金の猪王ってヤツを倒したよ」

 

えっ!あいつを一人で?

 

「それ、ミトと一緒に倒したヤツじゃん」

 

って、テンちゃん。そうだよ。天竜に跨がって、私が戦って倒したんだよ、66年前に…うん?先輩は何かを考え込んでいる。

 

「おい!そこ!歳の計算をするなぁ~!」

 

お約束…突っ込みを入れて置く。

 

「あれを一人で倒したのか…」

 

私の質問をスルーした先輩。先輩の口からは、聞きたく無い言葉が飛び出した。

 

「なぁ、俺は俺でなくなっていたのか?」

 

 

「き、き、気にするな。こうして、帰ってきたんだし」

 

どう答えて良いのかわからない私は、お茶を濁そうとするが、

 

「セーラ、本当の事を教えてくれ。俺は何になったんだ?」

 

セーラに矛先を向けた。

 

「ソレは…」

 

セーラはあの姿を想い出したのか、先輩から離れようと藻掻いている。

 

「もう…一緒には住めないかな…」

 

みんなから顔を逸らすように俯き。一言呟いた。

 

「そんなことは無い!考えるなよ!」

 

リーンが離れた場所から叫ぶ。それは逆効果だよ。抱き締めて、耳元で囁かないと…だけど、そんなことは私でも出来無い。あの姿を見た後では…

 

「わかった。俺は去るよ!」

 

先輩はどこかへ転移してしまった。先輩と共に、リザ、タマ、ポチ、アリサ、ルル、ナナ、アーシアの姿も消えた。彼女達は、先輩に恐怖を抱いていなかったのだろう。いや、信頼しきっているのか。

 

先輩に恐怖を抱き、その結果、置いて行かれた。私、兄ぃ、セーラ、リーン、メリー、ルスス、フィフィ、ゼナ隊。

 

「私は…悪い女です…助けて貰ったのに…アール様を…」

 

顔を手で覆い、泣き始めたセーラ。リーンが傍により、一緒に泣いている。

 

「う~ん、ここはどこ?え?ミト様…どうして?」

 

リリーが目を覚ました。彼女へ顛末を話した。

 

「そうですか…セーラだけで無く、私まで…って、聖杯を使いこなせるとは…」

 

使いこなせないから、年齢の設定をミスったのだと思う。

 

「彼は何者です?魔王に何もさせずに、封印しましたよ」

 

リリーは魂の状態で、一部始終を見ていたそうだ。あの魔王に、何もさせなかった?最強の魔王の筈なんだけど…

 

「魔王の方が半狂乱状態になり、命乞いをしていました。彼は何者なのでしょね」

 

魔王が命乞い…有り得ない。あいつらは、いつだって傍若無人な振る舞いであった。

 

「あと、私には見えなかったのですが、もう1名、誰かがいたようです」

 

もう1名?

 

「彼を召喚した者のようです…」

 

先輩を召喚?あの石鳥居の少女か?少女に関しての記憶は、曖昧なようだ。記憶にフィルターが掛かっているのか。

 

『月の女神』

 

リリーの記憶から、読み取れたのは、そのワードだけだった。月の女神?先輩を召喚したのか?なんで?先輩は何者なんだ…

 

---------

 

若返って生還を果たしリリーは、神殿長の計らいで、公式には見習い巫女という立場になったが、豊富な知識、記憶は健在なので、影の巫女長という立場に特命職についたようだ。

 

神殿はお祭り騒ぎである。魔王が討伐されたから。リリーが生還したから、リリーが若返ったから、などなど…だけど、それらの偉業に関わった先輩は、もうここにはいない。

 

「なぁ、考えたんだけど、あいつの為に出来ることをしようぜ、ヒカル」

 

兄ぃが言い出した。

 

「アールを探し出して、アイツが何かをやらかす前に、俺達でやればいいじゃないか。それだけの能力を俺も、ヒカルも持っているはずだ」

 

たぶん…チートさで行くと、先輩は微々たる物である。

 

「セーラもリーンも、これからアイツを支えて行けばいいだろ?万が一、アイツが変貌しても、アイツなんだから、尻ぬぐいをすればいいじゃないか。やることは残虐だけど、アイツは間違ったことはしないよ」

 

そう、その残虐性は問題なのだ。リリーのいたと思われた場所は一面、血の海だった。どうすれば、ここまでの事態になるのか、見当も付かないくらい。

 

「だから、アイツがそうしない、世の中にすればいいんじゃないのか?ミツクニ卿、メリーエスト皇女様♪」

 

新しい勢力で、この世界を制圧か…そして、理不尽な世の中に終止符を。

 

「俺達が召喚されたのは、そういうことじゃ無いのかな?」

 

たまには、兄ぃも良いこと言うなぁ…

 

 

 

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