第6王女システィーナ視点です。
新年を迎えた。と、いっても何か新しいことが始まる訳では無い。淡々と日々が過ぎていくだけである。王女と言って六番目にもなると、やることが無いので、城の地下にある蔵書庫へ行き、読書したり、歴史を調べたりして、時間を潰す。
うん?新しい地図が…改訂したてのようで、裏面の紙の色は真っ白であった。昨日まであった地図とは、どう違うのか興味を持ち、眺めてみる。
「えっ!」
目を疑うような記述があった。ここ王都も、王都直轄地であるセリビーラも、ムーノ男爵領、オーユゴック公爵領、セーリュー伯爵領、クハノウ伯爵領、あとヨウォーク王国もだ…(アルジェント公爵領)と追記されていた。これは、一体?
膨大な領地である。アルジェント公爵という人物に興味を持った。どんな人物なのだろうか?他国まで領地にするって、武力を大量にお持ちなのだろうか?そして、王家に挑み、王都とセリビーラも領地にしてしまったのか?
爵位名簿を見てみると、アルジェント公爵は載っていなかった。まだ改訂されていないってことは、昨日の会議で公爵になられたのだろう。それは、王様が認めた者ってことだ。いや。武力で脅し取った可能性もある。
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誰から情報を貰えば良いかな?今日も会議が開かれている。参加されているのだろうか?お付きの者達と、貴族達の屋敷のある辺りを散策した。誰か、知り合いに会わないかな?
「あれ?システィーナじゃない?」
勇者マサキの従者であるリーングランデが声を掛けてきた。他国なのに、勇者も王都に来ているのか?リーングランデとは叔母と姪の関係であるが…待て…彼女は死んだはずでは…
「どうした?顔色が悪いぞ。セーラ、回復術を頼む」
「はい、お姉様」
彼女の妹…テニオン神殿で神託の巫女をしていたけど、殉職したはず…なんで、生きているの…あまりの恐怖で、意識が飛んだ私。
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意識が回復すると、ベッドの上にいた。ここはどこ?ベッドから起き上がり、ドアを開けて、様子を窺うと、賑やかな声が聞こえてきた。その声に釣られて…
「システィーナ、もう大丈夫か?」
赤ら顔のリーングランデ…とても、死人には見えない。酔っ払いのようだ…
「どうですか?新年会しているんです。一緒にいかがですか?」
セーラの顔も血色が良い。死んだと思えない顔である。
「あぁ、もしかして、オーユゴック姉妹にビビっているんじゃないの?死んだことになっているから」
え?あの人は…サガ帝国の王女のメリーエストじゃないの…なんで、ここに?
「あぁ、なるほど。そうでしたね。私達は死んだ事になっていましたね♪」
死んだ事?
「なんで、死んだ事に?」
「う~ん…部外秘なんで、ご主人様の許可が無いと、理由はお話できません」
ご主人様?結婚ってことか…
「セーラ!誤解しているぞ。アイツと結婚したって思い込んでいるようだ」
男性の声、顔を見ると…噂の奇跡の料理人であるペンドラゴン卿がリーングランデ達と杯を交わしていた。何…ここは何??
「結婚ではなくて、私達はご主人様の眷属ですよ」
眷属…サガ帝国の王女、神託の巫女、勇者の従者、そして、奇跡の料理人までも?誰の眷属なんだ?
「どなたの眷属なの?」
「アルジェント公爵様です♪」
とても嬉しそうに、主の名前を口にするセーラ。こんな子だっけ…って、アルジェント公爵って…私の探し人である。
「ここは、公爵様のお屋敷なの?」
「ここはミツクニ公爵のお屋敷なんですけど、同居しているんです」
ミツクニ公爵?爵位が空位になっていたはずだけど…
「これ、食ってみな♪」
リーングランデが、色々な料理の載った皿を手渡して来た。受け取って、食べてみた…美味しい…さすが、奇跡の料理人の料理だわ♪
「おいしいだろ?」
「うん♪」
「奇跡の料理人に負けていないと思うんだよ~」
えっ?ペンドラゴン卿の料理では無いの?でも、おいしいのは確かである。では、誰の?
「珍味は主様の右に出る者はいない♪」
知らない女性が声を上げた。主様?まさか、アルジェント卿の料理なの?武勲に長けた人物では無いのか?他国を占領するって…アルジェント卿のイメージが定まらない。一体、どんな人物なのであろうか?
「ただいま~♪」
「あっ、帰って来たのです♪」
女の子が、声のする方へ走っていく。
「ハンバーグ先生が欲しいのです♪」
「ハンバーグ?あぁ、ちょっと休んでからでいい?」
「はいなのです♪」
疲れ切った青年が現れた。先程の女の子を抱き抱えている。
「ミト…30分…」
「わかった。起こしに行くよ。誰か、希望はある?」
「ゼナかセーラで…」
「わかったわ」
奥へ女の子と下がる彼。寝るようだ。あっ、女の子だけ戻って来た。
「この子は誰?」
今日二度目の目を疑う光景…なんで…この女性は、王祖様の顔に似ているの?
「システィーナ王女です。私達の叔母になります」
って、セーラ。
「ほぉ~、王女が新年早々、遊び歩くとは、この国は平和になったもんだ」
「あの…王祖様ですか?」
「それは部外秘だ。私はミト・ミツクニ公爵と名乗っている」
え…女性なのに、公爵なのか…って、ミツクニ卿?それは、王が引退した場合の爵位であり、現在は空位になっているはずの物である。
「えぇぇぇ~!ナマコ酢は?」
「もう無いです…」
「そんな…アイツを起こして作らせないと!」
ミツクニ卿は彼の元へと去って行く。ここはなんだ?興味が尽きない秘密がベールで隠されているようだ。