翌月…システィーナが飛行艇でセリビーラへやって来た。あの大荷物と共に…そして、何かを勘違いして、隣の先輩の屋敷へ荷物を運び込んでいる。今の時間帯はカリナと共にエチゴヤへ出勤しているはずだ。
夕方、先輩が転移してきた。
「あれってどういうことだ?」
「あれって何?」
ミトが応対した。
「システィーナと大荷物の件だよ」
「兄ぃが気に入ったんじゃ無いの?システィーナの胸に視線が釘付けだったし!」
ミト的な問題はそこらしい。ミトの胸は先輩のストライクゾーンにほど遠いから。
「え?それで、俺なのか?いや、興味はあるが…あの荷物はなんだ?」
なんだろうね?
「アール、なんとかならないか?」
俺?ストライクゾーンでないけど…
「なんともならないですよ。興味なし」
でも、先輩の裏稼業に影響が出るとまずいよな…システィーナの膨大な荷物を、王様の部屋へ強制転移させた。で、システィーナを…
「荷物は退かしましたよ。彼女は先輩のベッドの上に、全裸で頭に黒い袋を被せて、手足を拘束して、転がして起きました」
「先輩、エロマンガの見過ぎでは?」
って、ミト。そうかもなぁ~。ミトにしてみたいな…
バキ!
「私に?う~ん…ダメ!絶対ダメよ!妄想もするなぁぁぁ~!」
バキ!
真っ赤な顔で、涙目で俺を見つめるミト。こいつは、何を想像したんだ?
バキ!
う~ん…ミトの心の内が見えない…不公平だ!って、先輩は、もういなかった。自分の屋敷に戻ったのかな?
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翌日…先輩は凹んでいた。王女を助けようと…王女の豊満な乳を前にして…野獣になったそうだ。
「兄ぃが野獣?想像できないなぁ。先輩は容易にできるけど」
まぁ、野獣以下ですから…
「おい、そこ!早速妄想するんじゃない!」
野獣がミトをヒィヒィ言わしている風景…迂闊にも妄想してしまった。
「で、責任は取るんだよね?」
力無く頷く先輩。俺達にも言えない行為をしたらしい。どんだけ変態プレイだったのやら…想像すると、ミトが恐いので、やめておく。
「まぁ、両手に巨乳で、さぞかし幸せなんでしょうね」
怒りに塗れたミトの言葉。巨乳は人類の敵なのか?
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領地の見回り点検の日…面倒だ…広すぎるだろ、領地がさぁ。
「うだうだ言わないの!」
心に思っただけで、文句が飛ぶ。こいつ、どんだけ俺の心を見ているんだ?そうか、俺のことを本当は…
バキ!
「先輩は先輩であって、兄ぃではない。そこを勘違いするなよ!」
拳骨をちらつかせるミト。はぁ~、そうなのか…凹む俺…
まず、旧ムーノ男爵領…ニナの元へ。
「問題は税収くらいですよ」
だよな…
「留学生はどう?」
「鍛冶場を作る資金が…」
そうか、スミスを養成しても、仕事場が無いのか…
「それは、どうにかする。それで、作るのは武具でなくて、農作業具にして欲しいんだよ」
「あぁ領内で使うんですね。その方針を伝えておきます。それでですね…たまにはご褒美を…」
俺の耳元でゴニョゴニョ言うニナ…かわいいなぁ…ニナの要望を叶える。彼女の部屋で2時間ほど…で、満足そうな顔のニナを部屋に置き、次の視察先へ…
オーユゴック公爵領…公都へ転移した。セーラとリーンを義父さんの元へ届け、残りの者でテニオン神殿へと向かった。
「アール様、いらっしゃいませ。ミト様、お元気ですか?」
巫女見習いとなったリリーが出迎えてくれた。俺以外の者達は神殿へと入っていく。俺は、魔なる存在なので、入らない。そんな俺を申し訳なさそうに見つめるリリー。
「気にするな。慣れているよ」
「でも…」
「お久しぶりです、アルジェント卿」
神殿の中から神殿長が出て来た。
「お久しぶり♪どう、問題はあるか?」
「炊き出しが…」
調理出来る者が不足しがちらしい。安全面から、炊き出し自体は、神殿前の広場で行うようにしているようだ。なので神殿内の厨房で調理は出来るらしい。
「専任の調理師が要るんだな…ペンドラゴン卿に相談して、調理師学校を設立できるか、検討してみるよ」
「ありがとうございます」
神殿からミト達が出て来た。お祈りをしてきたようだ。次は…クハノウ伯爵領か。
クハノウ伯爵と歓談。ここでも問題点を訊き出す。
「税収は少ないですよ。ここは都会では無いですから」
どこでも税収は不足しがちのようだ。まぁ、領民のことを考えると、高くは出来ないよな。ムーノ男爵のような高率には出来ない。
で、イネちゃんの処へ行き、イネちゃんの師匠である魔法使いと歓談して、今日の宿泊地であるセーリュー市に着いた。セーリュー伯爵とは明日、会う予定なので、宿泊予定のゼナの家へ行き、俺とアーシアだけ、迷宮核の調整へと出掛けた。
調整と言っても、特に問題は無いようだ。ゼナの家に戻り、夕食をご馳走になる。
「公爵就任おめでとうございます」
義父に祝って貰った。
「ゼナが幸せそうで、嬉しいですよ」
「もぉ、お父様ったら♪」
両親の前で、ゼナが饒舌である。気が休まる環境なんだろうな。この家は。
「で、この街の亜人差別は無くなりましたか?」
「根強いです。完全に無くすには、時間がかかるかと思います」
この街は、貴族だけでなく、街の人々も差別感情を持っているものな。公爵となっても、宿に泊まる際は、リザ達は馬小屋行きになるらしく、申し訳無いと思いつつ、ゼナの家に泊まらせてもらったのだ。
「差別が無くなれば、ここに家を持ちたいです」
「そうですか…なかなか、難しいですよ」
って、ゼナの父親のマリエンテール士爵。
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翌日、セーリュー伯爵と昼食会だ。セーリュー伯爵の城へ、俺、ミト、メリーエストの3名で出向いた。リザ達は、迷宮で狩りに励むらしい。
伯爵の侍従に案内された部屋には、すでに伯爵夫妻、キゴーリという騎士の夫婦、伯爵の家臣に当たるマリエンテール士爵、その娘のゼナ、あとパリオン神殿の神託の巫女が着席していた。
「遅くなって、すみません」
一声掛けてから、俺達も着席をした。
『巫女のオーナは伯爵の娘よ』
って、ミトから情報が届いた。なるほど…で、俺達は下座にいる。公爵って、伯爵より上だよな?まぁ、いいか。セーリュー伯爵はミトとメリーを値踏みするような目で見ている。こいつ、好き者かな?
特に会話らしい会話もなく淡々と、食事会が進んでいく。まずい、眠くなってきた。
『寝るなよ!』
ミトからメッセージ。はい、がんばります。
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デザートが出た後で、伯爵が本題を切り出してきた。
「――単刀直入に行こう。オーナを卿の嫁にやる。我が伯爵家の一員となって迷宮運営で差配を揮う気はないか?」
それは、俺の迷宮核狙いか?ミト、メリーは静観している。伯爵の本意が見えないから。って、サガ帝国の王女が一緒にいるのに、よく言えるな…
莫大な利権になりそうな迷宮運営で伯爵家に財を、だろうか?領地の赤字補填に使いたいんだけど…
「お断りします」
俺の即断に、呆気に取られる伯爵。しばらく間を置いて、深呼吸をして、再度アタックをしたのだが、この人、大きな勘違いをしているようだ。
「アール士爵よ。誤解があるかもしれぬが、伯爵家の一員とは単に伯爵家の者を娶るというだけではない。伯爵家の継承権も与えるという事だ」
「ぷっ!あははは♪」
堪えきれず、ミトが笑い出した。
「なるほどな。そういうことか。ボク達を誤解しているようだな、セーリュー伯爵よ!」
勝ち誇ったようなミトの表情。
「貴様、士爵の侍従のくせに、生意気だぞ!」
キゴーリという騎士が立ち上がり、ミトに圧力をかけ始めた。無駄な事を…
「誤解するなよ。俺の方がミトの侍従だよ♪」
「何?!」
キゴーリが俺とミトを見比べている。まぁ、ミトの方が華奢だよな。
「後、俺は士爵じゃ無いんだよ」
「何?貴様…何者だ?」
今度は伯爵が驚いている。今更、訊くなよ。食事会に招待しておきながら…
「ミト・ミツクニ公爵付きの公爵、アール・アルジェントだ。覚えておいてくれ。あと、そこの騎士が愚弄したのが、俺の主のミト・ミツクニ公爵だ。更に言うと、今日の連れは、俺の片腕であるサガ帝国王女、メリーエスト・サガである。伯爵よ、頭が高いんで無いか?って、ミツクニ公爵を下座の席に座らすって、どういう根性だ?!」
って、格さんを演じてみた。う~ん、三つ葉葵の印籠が無い…
「公爵だと…」
目を白黒させている伯爵。
「もしかして、テニオン神殿の…」
何かに気づいたオーナが、俺に跪いて祈りを捧げだした。
「オーナ…何をしているんだ?」
伯爵が娘に声を掛けた。
「アルジェント卿はテニオン神殿の名誉祭司です」
え?それは聞いていないぞ。
「なんだと…」
伯爵も聞いていないようだ。
『(^^)v』
っと、ミト。こいつ、知っていたのか…凹む俺。
「まぁ、貰える者は貰っておく。お前の娘を貰う事には異議は無い。だけど、公爵なのに、伯爵家を継げって、何を言っているんだ?メリー、どう思う?」
「はい、主様を愚弄しております。領地没収が良い…いや、ここは主様の領地ですよ。あの無礼な伯爵は、主様の配下となります。爵位を奪うのが良いかと思います」
的確そうなお答えを堂々と述べるメリーエスト。
「何…あの地図は誤植では無かったのか…」
地図?何の話だ?また、俺の知らないうちに、何かの重責が与えられたようだ。
「じゃ、セーリュー伯爵は士爵に格下げ、代わって、マリエンテール士爵を伯爵へ格上げする。ミツクニ卿、いかがですか?」
一応、上司の意見も訊く。
「良いんではないか。こんな無礼なやつがトップでは、ロクなもんじゃない!王へはボクから伝えておく!」
「おい!、アイツら、狂っている!生かして返すなよ!」
キゴーリが叫んだ。それでは、水戸黄門の印籠出し前のチャンバラ劇では…う~ん、印籠が無いのに…
騎士が多数出て来た。伯爵はまるで悪代官のように、護られるようにして、奥へと下がっていく。無駄なのになぁ。
「なんで…ここにいるんだ!」
驚きの声を上げた伯爵。
「はぁ?カミナリ小僧!お前、ミト様に無礼を働いたようだな!」
ジュレちゃんの母ちゃんが伯爵を追い立てている。セーリュー伯爵家へ行くって、ミトが言ったら、護衛について行くて言うジュレちゃんの母ちゃん。その後にはジュレちゃんもいるし…母親に逆らえないシガ八剣の筆頭戦士。
「ジュレバーグ殿、どうしてここへ…」
キゴーリが声を掛けた。さすが、ジュレちゃんは有名人だな♪
「私は、アルジェント卿を守護する者だ。無礼を働いたのは、どいつだ!」
母親には頭は上がらないが、それ以外の者へは堂々としているジュレちゃん。きっと、この親子は、親子としては最強だろうな。騎士達が武器を放棄していく。シガ八剣を敵に回すことはしないか…
「セーリュー伯よ、アルジェント卿の言葉は、王の言葉として、受けとめよ!」
って、ジュレちゃん。俺はそんなにエラく無いって…
こうして、波乱の昼食会は幕を閉じた。
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城を後にして外へ出た。
「あの…私を連れて行ってください」
誰だっけ、この子は?
『パリオン神殿の神託の巫女のオーナよ』
って、ミトからメッセージが飛んで来た。あぁ、そうだったねぇ~。
「お前は、自由に生きろ!じゃあなっ♪」
って、格好良く去ろうとした俺の服の裾を、握っているオーナ…はぁい?
「では、私をつれて行ってください。名誉祭司様の元で、修行をしたいです。お願いです。何でもします」
何でも…イカン、妄想はダメだ…ミトが笑ってる。しまった。一瞬妄想をしてしまった。汚れ無き巫女を汚す俺の場面…
「メリー、次はどこだっけ?」
気を取り直す俺。意外に切り替えは早い方である、
「揺り篭の調整です。それが終わったら、農地の視察になります」
まだ、先が遠いなぁ。
「視察が終わったら、迎えに行く。簡単な旅支度をしておいてくれ」
「はい♪」
俺達は、揺り篭へ転移した。あっ、アーシアとナナを回収しないと…ミーアもかな?