先輩に呼び出された。ここはどこ?
「政治的な話なんだよ。アール、頼むよ」
って、先輩は俺を残して転移してしまった。
「あなたは誰?」
それは俺も訊きたい。ここはどこ?
「ペンドラゴン卿の同僚でアールと申します。御用件は?」
「奇跡の料理人であるペンドラゴン卿を、我がアシネン侯爵家の一門に加えます。そう、主に伝えなさい」
決定事項なんですか?
「それはどういう権限ですか?」
「権限?あなたは何も知らないのね…まったく、名ばかりの士爵なの?」
名ばかりの公爵ですが…
「アシネン侯爵家は、ここセリビーラの太守をしていますのよ。領地も無い名誉職のミツクニ公爵とは格が違うのよ。わかっている?」
太守?都市核と契約していないのに?
「名ばかりの太守に言われたく無いです」
「名ばかりですって?アシネン家を馬鹿にするの?有り得ないわ。あなたの爵位は没収します」
「なんの権限ですか?王様以外、権限が無いはずですが」
「あなた、何も知らないのね?士爵なんかは、王様の許可はいらないのよ。わかったら、出て行って、ペンドラゴン士爵はアシネン家の一門にいれる手続きをしておきます。あなたの主にそう伝えなさい!」
って、ミトが転移してきた。
「はぁ?なんの権限があるのですか?アシネン夫人!」
「小娘には用はないわ。出てお行き!衛兵よ!この方達を侮辱罪で牢へ入れてきなさい」
俺達に刃を向けてきたアシネン家の衛兵達。
「アルジェント公爵へ命じます。都市核でセリビーラの門を閉ざしなさい」
ミトの指示が出た。アーシアへメッセージで指示を転送した。
「アルジェント公爵へ命じます。迷宮への入り口を閉鎖しなさい」
これもアーシアに転送した。このおばさん、ミトを怒らせたようだ。
「アルジェント侯爵?この坊やが?何を言っているの?この戯言をいう偽公爵様達を牢へ入れなさい」
『ここは無抵抗で牢へ行くよ♪』
ミトからメッセージ。まぁ、都市機能は停止したも同然だからな。俺達は牢へ入れられた。暫く経つと、リリアンが駆け込んできた。
「ミト様…アールまでも…レーテルよ、何をしているのだ?」
リリアンが怒りを纏っている。尊敬するミトが牢へ入っているしなぁ。
「お二方をここから出し、謝罪しなさい!」
「何を言っているの?ゾナ、こいつらは侮辱罪なの。犯罪奴隷にして売ろうかしら」
犯罪奴隷堕ち?う~ん…
「そんなことをすれば、お前は反逆罪だ!いや、現時点でも反逆罪にしても良い」
軍部の方々が、犯罪人である俺達を引き取りに来たようだ。
「え?これは一体…」
将軍であるアルちゃんが俺を見て驚いている。
「そこのおばさんが侮辱罪で犯罪奴隷にして、売るって言うのだよ。アルちゃん、どうすればいい?」
顔から血の気が失せていくアルちゃん。
「アシネン夫人…なんてこと、彼に言ったんですか…これは反逆罪、いやクーデターと言っても良い行為ですぞ!」
アルちゃんも怒りを纏っている。
「どういうこと?偽公爵に騙されたの?」
笑い飛ばせる余裕のあるおばさん。強心臓だな。怒りを纏ったアルちゃんとリリアンを前にしても動じないなんて…
「ニセモノじゃない!本物の公爵様2名を奴隷にして売る?クーデターで無くて、何だと言うんです?アシネン公爵夫人!」
「ニセモノに決まっているでしょ?公爵が、こんなへんぴな場所に2名も居る訳ないわ。担がないでよ、エルタール将軍♪」
まだ、笑い飛ばせる余裕。すげぇ~!ここは格さんをするかな♪
「アルちゃん、そのおばさんを捕縛して、ミツクニ公爵と俺をここから出して」
「御意!おい!、アシネン侯爵夫人を捕縛しろ!」
部下達に命じたアルちゃん。ここへ来てオバサンの顔から血の気が失せていく。
「どういうことよ!私を誰だと思っているの!」
「お前は、単なる侯爵夫人じゃないか」
リリアンが、おばさんを睨み付けている。
「ゾナ!あんた、耄碌したの?」
あぁ、それは言っちゃダメだと思う。
「耄碌?しておらん!アルジェント卿は、私の上司に当たる迷宮資源管理大臣なんだよ!」
え?リリアンの上司?それはしらなかったぞ。
『私は知っていました♪』
って、ミトからメッセージ。う~ん、何故俺の事なのに、俺は何も知らんのだ?
「ゾナの上司…まさか…」
「ミト様は、私の尊敬する方じゃ!それを牢へ?奴隷にして売るだとぉぉぉぉぉ~。ふざけるなよ!思い上がるなよ、レーテル!」
リリアンのこめかみがピクピクしている。切れないか心配だ。
『切れたら、蘇生してあげてね♪』
って、ミト。おぃおぃ…で、おばさんは捕縛され、俺達は牢から出られた。
「リリアン、冷えちゃったよ~。帰っていい?」
って、ミト。
「えぇ、お帰りください。アルジェント卿は置いて行ってくださいね。都市機能が麻痺しておりますので」
「えぇ♪」
『後、よろしくね♪リリアンに頼まれたら、解除して上げてね』
って、ミト。俺を置いて、颯爽と帰って行く。えぇぇぇぇ~!
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リリアンに頼まれて、はいはいと解除するほど、心が真っ直ぐではない。
「どうすれば、解除してくれるんだ?」
「謝罪、詫び、後は賠償金だな」
おばさんから謝罪が無い。詫びも無い。論外である。
「では1年間、アシネン家の収入の20%を天引きして、こちらへ入れてください」
メリーが、条件提示をした。
「わかった」
リリアンは条件を飲んだ。
「後、正式な謝罪と賠償は別に請求いたします。これらを受け取れるまで、迷宮上層へのマナの供給を20%カットします」
メリーは交渉上手だな。ティファリーザがメモに取り、交渉術を学んでいるようだ。
「それは…」
「早急に為されれば。被害は少ないと思います」
「わかった。被害はアシネン侯爵に丸投げする」
リリアンは条件を飲んだ。メリーはしっかり書面でリリアンの承認書を作っている。
「ご主人様、交渉は終わりましたので、条件に沿った設定にしてください」
俺はアーシアに丸投げだよ。
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迷宮上層だけの制限なので、うちの狩りには影響は無かった。資金不足も解消しそうだ。アシネン侯爵家は収入が多いようだ。
「あと、相手は太守ですから、都市核、迷宮核の利用料も取れるはずです」
メリーがいて大助かりである。
「相手の払える範囲で請求をしよう」
「わかりました。じゃ、ティファリーザ、このメモの額で、請求書を送ってくれる?」
「はい♪」
書類作りはメリーよりティファの方が得意らしい。
執務室を出ると、ミトがいた。
「先輩、学校は開校したから。1週間に10名ずつ受け入れる。まずは文字の読み書きの勉強をさせている。それで、給食に出す食材を狩って来てくれる?」
なるほど、ソレは行かないとダメだな。
「大変だよ~!」
リリオが走り込んできた。迷宮の構造を見学しに行っていたはずだが…まさか…
「ゼナか?」
「そうだよ、ゼナが攫われた。トレインが発生して。護衛の軍部の者達と交戦してんだけど…ゼナがいなくなっていたんだよ…」
リリオが泣き崩れた。
「リザ!出撃の準備だ!」
「はい!」
「アーシア、迷宮内の探査をして、ゼナを探してくれ!」
「了解です!」
「リザ!準備が出来たら、上層から探せ。トレインは殲滅だ」
「わかりました」
「ミト、指揮を頼む!」
「おまかせ!」
「マスター…上層、中層にはおりません」
って、アーシア…まさか、下層へ連れ込まれたのか。
「アーシア、転移するぞ!」
「了解です!」
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下層への入り口前に転移した。下層へ突入しようとすると、
「待って!私も行きます…」
声の主を見ると、ソーナ・シトリー姿のパリオンがいた。
「あぁ、使い魔のソーナです。しくしく…」
そういや、性欲を処理する使い魔をくれるって、誰かに言われたっけ…
「性欲処理専門では無いです。ちゃんと戦いますから、惨いことしないでください」
あれこれしたい。きっと、妄想が見えているのだろう。頬がピクついている。
「何故、こんな緊迫した場面で、そんな妄想が出来るの?」
「なんでだろうな。じゃ、挿入…じゃなくて、突入だ!」
3人で下層へと降りていく。全マップ検索をしてみると、ゼナのマーカーが表示された。誰かの城にいるようだ。
城かぁ…戦闘は避けられないなぁ。不死王にジョブチェンジした。って、俺は不死王なんだけどな?ジョブチェンジに意味があるのか、ないのか…それは問題だ。
「意味は有るわ。ジョブチェンジでなら、アールとしての意識下で戦えるの」
って、ソーナ。なるほど♪それは便利である。
で、下層は8つの区画に分かれていて、ゼナがいる場所は一番大きい区画のようだ。で、ゼナの傍には赤い光点がいくつかある。情報を確認すると『吸血鬼』のようだ。
「ソーナ、吸血鬼対策って、何かある?」
「血が通っていない私達に対策って無いよ」
なるほど、ソーナは血も涙も無いエム女なんだな。
「えっ!涙はあるもん。しくしく…」
泣き虫な女神だな。
「だって、まだ童女だよ…それなのに、出来る年齢になっているんだよ。しくしく…」
まるで、俺が鬼のようでは無いか。
「違うの?」
「いや、鬼よりも残忍かもしれない。一気に転移するぞ!」
ゼナのマーカーの傍へ転移をした。
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「ゼナ!」
声を掛けたが、反応は無い。吸血鬼にされたのか?ゼナを含む数名の吸血鬼が俺達に襲い掛かってきた。
「ゼナ!」
ゼナは俺を俺と認識せず、首元に噛みついて来た。咄嗟に、ゼナを投げ飛ばす。俺に噛みつけば、あのフェンリルと同じ末路になるから。ゼナを…許せない!
「ダメ!」
ソーナが抱きついて来た。
「落ち着いて!」
でも…許せない。
「アーシア!ゼナを確保しておいてくれ!」
「了解です!」
許せない…
「だから、ダメだって…」
俺は俺で無くなって行く…唇に柔らかい物が重なった。心がクールダウンしていく。ソーナが口付けをしてくれたようだ。
「ごめんね。そんな不憫な身体にしてしまって…私に任せて♪」
ソーナが瞬動術で、吸血鬼のボスを圧倒して、捕縛した。一瞬の出来事である。
「おい!彼女を元へ戻せ!」
「瀕死だったので、我が眷属にしたのだよ。元へは戻らぬ。それが吸血鬼ってものだ。うん?お前は何者だ?なぜ、束縛されぬ?」
「私は彼の使い魔となったパリオン神♪彼は魔神よ。神のツートップ相手に勝てると思うの?」
俺って魔神なのか?そう言えば、ジョブに魔神ってあったな。ジョブチェンジをした。
「マジ…マジ、魔神になっているじゃない…」
ソーナが驚いている。
「おい!吸血鬼…名前はバンっていうのか…ふふふ♪」
「来るな!」
吸血鬼がビビる俺って、何?
「ゼナを元に戻せ!」
「だから戻らぬ!」
「じゃ、お前を灰にするか…」
「待て!話し合おうではないか…」
「話し合う?ゼナが元に戻らぬなら、話し合いの余地は無い」
あれ?ソーナもビビっているんだけど…なんで?
「マスター、ゼナの様子が…」
アーシアが状況を知らせてくれた。コイツと遊んでいる暇は無い!
「バン!また来る!首を洗って待っていろ!」
4人で、中層へ転移した。そして、迷宮村に借りている家へ転移した。
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「どうしたんだ?」
転移したことで、村長が慌ててきてくれた。転移で、村を訪れたことは無かったから。
「仲間が吸血鬼にされたんだ。村長、どうすれば、元に戻せる?」
「心臓を一突きにして、火葬してやれ。魂は天国へ行けるはずだ」
殺せば良いのか…
「ソーナ、アーシアとここにいてくれ」
「何…何をするの…彼女を殺すの?ねぇ、愛しているのに?」
「ソーナ、愛しているから、俺の手で殺すんだよ」
ゼナと二人で転移した。
転移した先はトーヤの揺り篭…ここなら、誰も来ない。誰も…
「ゼナ、元に戻してやる」
『ヘアーランス』で心臓を刺した。傷口から、血は流れ出さない。つまりは、既に人間では無いってことだ。次に、ヘアーランスを薪代わりにして、ゼナを火葬した。燃えるのでは無く、溶けていくゼナ…待っていろ!
金色の珠が浮かんできた。マップ情報では『ゼナの魂』と表示された。コレを蘇生すれば良いんだな。ジョブを公爵に戻し、『蘇生コンポ』をゼナの魂へ発動した。浮遊する金色の珠が、うっすら緑の霧に覆われて、静かに全裸のゼナの身体出来上がり、魂が吸い込まれて行く。徐々に形の良い乳房が上下動していく。
『お兄ちゃん、大丈夫?』
カグヤが隣に現れた。
「たぶん…」
『まったく、パリオンときたら、役立たないんだもの…』
「いいよ。ゼナが助かったから…眠い…」
『マインドロスト…』
「なるほど…」
ゼナを屋敷にいるメリーの元へ強制転移させ、俺は意識が遠くなっていった。
死んだら、カグヤ…後は頼む…
『おにいちゃぁぁぁぁぁ~ん!』
カグヤの声が遠くなっていく。
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「おい!起きろ!朝だぞ!」
後輩氏の声…俺は、まだ存在しているのか?
「後10分…」
「しょうがないなぁ~♪」
後輩氏の声が妙に嬉しそうだ。何を仕掛けるんだ?うっ!なんだ、この感触は…誰だ?う~ん…まさかなぁ…ゼナは無いよなぁ~
『先輩、ビンゴ♪』
「えっ!」
瞼を開くと、俺のアレを口に咥えている、笑顔のゼナと目があった。