芋虫のようなモンスターを仕留めた。すると、リザが近寄って来た。
「ご主人様…私にナイフを頂けないでしょうか?あの芋虫は美味しいんです…」
と、言う。芋虫を食うのか…佐藤先輩を見つめていると、
「あぁ、俺か…では、肉捌き用のナイフをプレゼントしよう♪」
リザとタマに肉捌き用として、アサシンナイフがプレゼントされた。ナイフを手にすると、リザ達が芋虫を解体し始めた。
「ご主人様、この魔核を地上で売ると、お金になります」
と、リザか芋虫から魔核を取り出して来てくれ、俺が受け取ると肉を捌きに戻った。
「ミト、これってどれ位の価値?」
「うん?牛肉一人分かな?」
「結構いい値段で売れるのか。先輩、買い取ってくれますか?」
「うん?俺か?う~ん…魔核の買い取りはしていないけど…」
って、佐藤先輩。使えない商人だな…
リザ達が肉を解体し終わると、火を起こして、焼き始めた。
「この肉は焼くと美味しいのです♪」
尻尾が嬉しそうに踊っているリザ。美味しいのだろう。タマとポチはそうでも無いけど。そして、みんなで芋虫で食事…うん…美味しいかな。原型を想い出さなければ…
その後も、倒したモンスターで、リザが食べられる肉の場合、解体をしている。食べられない場合は、魔核だけ穿って終わりである。
「あっ!ご主人様、何かおかしいのです」
って、ポチが何かに反応した。先輩が狭域マップに切り替え、探索をし始めた。
「罠があるな…」
足元に転がっている小石を拾い、先輩が指差した地点へ投げ込んでみた。
ドン!
壁が崩れ落ち…狼みたいなモンスターが飛び出して来た。瞬動術で目の前に飛び出し、ダークエクスカリバーで首を切断した。あれ?聖剣を出したつもりなのに…
「リザ、これは喰えるのか?」
「食べない方が良いですよ」
そうか…って、魔核を『強奪』すれば勝てるような…はて?次で試すか。
で、試してみた。先輩にチートだと言われたけど、成功のようだ。だけど、倒した感がまるで無い。う~ん、充実感は欲しいかな。ちゃんと倒そうっと♪
--------
「先輩!寝る時に、危険感知をオンにしてください!」
迷宮生活2日目の朝、ミトに言われた。どうも、寝ている所を、魔物達に襲撃されたらしいのだが、俺は爆睡中で目覚めなかったらしい。そのスキルがあると、目覚めるのかな?でも、
「そんなスキル無いけど…」
「えっ!無いの?」
頷く僕。佐藤先輩が、俺のスキルの探索をしてくれたが、無いようだった。
「死にたがりには、無いスキルなんだろ?」
「ご主人様…死なないでください」
リザが半泣きで迫ってきた。
「わかったから…努力はする」
涙をポロポロと流すリザ…
「私達で、ご主人様は護りますから…」
「わかった…一生懸命努力します!」
あんなかわいい笑顔の子を、泣かしたらダメだよなぁ。少し反省するが、無い物はしょうが無い。
迷宮生活3日目…目の前に蜘蛛がいる。ポチとタマが糸に絡まっている。迂闊に突っ込んだせいだ。リザが戦っているが、劣勢である。
「先輩、あの部屋の次にいるよ」
蜘蛛の先の部屋に、迷宮生活に招いてくれた悪魔がいるらしい。
「アール、モンスターハウスだぞ」
マップで探索をした。真っ赤である。出口付近に青い点1つと緑の点が…青い点をチェックするとゼナだった。まさか、俺を探しに?
「ミト!突っ込む、リザ達を頼む♪」
「行っておいで♪」
蜘蛛の目の前に瞬動術で近づき、ジョブを殺戮者にチェンジして、まず蜘蛛を屠り、モンスターハウスへ♪装備はスルーアーマーだ。
「お前…勇者では無いのか?」
俺を見つけた悪魔。あぁ、今は殺戮者だよ♪ダークエクスカリバーでみじん切りにしている。なるほど、聖剣だと灰になるが、魔剣だと普通に斬れるようだ。
「貴様…俺が斬れるのか?」
普通は斬れないのか?魔剣だから、魔なる物は斬れるのかな?はて?
「待て!ここの利権の半分をやる!」
斬り刻んでいく。コイツを倒せば、ここの利権は俺の物だ♪
で、目の前には、悪魔の挽肉の山が出来た。魔核も手に入ったし♪
「アールさん♪」
ゼナの声だ。振り返ると、青い顔で震えている。ゼナの近くにいる兵士達もだ。あれ?
『ジョブをチェンジしなさい!リザ達も怖がっているわよ』
って、ミトからメッセージが届いた。あぁ、なるほど…ジョブを勇者レベル1にしてみた。目の前の者達の表情が緩んでいく。
「ご主人様!大丈夫でしたか?」
リザが近寄れたようだ。
「大丈夫?」
タマも
「大丈夫なのですか?」
ポチも
「大丈夫だよ。この肉は食えるのか?」
リザに確認をした。
「悪魔の肉は食べません。呪われると嫌ですから…」
なるほど、聖剣に持ち替えて、目の前の山を灰にした。
--------
迷宮を制覇し、悪魔を倒した功績は先輩の物になったらしい。で、先輩は、ベルトン子爵家の当主を助けた功績も有り、子爵付きの士爵相当になったそうだ。
「兄ぃ!チートすぎるよ!先輩の手柄だよ」
ミトが抗議している。
「俺が決めた訳では無い。貰える物は貰っておくだけだ」
「先輩は、これでいいの?」
「俺はどうでもいいよ。宮遣いは遠慮するよ♪で、その二人は何?」
先輩が女の子を2名連れている。
「褒美に奴隷を貰ったんだよ。配下の者に奴隷がいて、主に奴隷がいないのは、おかしいって」
「配下?俺か?それは違うでしょ?」
「だから、俺が言った訳では無い」
困ったような顔の佐藤先輩。
「俺は先輩の配下にはなった覚えは無い。ミトの配下になろうとはしたが」
ミトはミツクニ公爵だし♪
「そうだね。良し♪じゃ、兄ぃは助さんで、先輩は格さんってことで♪」
越後のちりめん問屋か…おいおぃ…
「ねぇ、あなた達も日本人なの?」
紫髪の奴隷が話し掛けてきた。
「あなた達も?じゃ、あなたも転移者?」
「いえ、転生者です」
この世界には、この世界の元からの住民の他に、何故か日本から召喚された転移者と転生者が多数いるそうだ。ミトによると、前者は勇者候補で、後者は魔王候補らしい。どう違うんだ?
「転生者は、ユニークスキルを使いまくったり、感情が暴走すると、魔王になるらしいんだよ」
って…そういう物なのか…
「そうだ、アール。この子達の奴隷ステイタスは剥がせるか?」
佐藤先輩からの依頼。強奪してみたが…強奪出来ない。
「ダメみたいだ。貼り付いているみたいだ。剥がれない…」
「あぁ、これは強制って呪いの一種だわ」
ミトは物知りである。この世界が長いし、元勇者だし。
「どうすれば、剥がせるんだ?」
「無理に剥がすとダメだよ」
「アール、他になんかチートな能力で剥がせないか?」
チートな能力って言ってもなぁ…あと、有るのは瞬動と転移…あっ!強制転移…これって、強制を転移出来るとも読める。誰に転移するかだが、理不尽な子爵にするか♪
その結果、
「アリサ 人間 所属:アール ジョブ:元王女な召使い」
「ルル 人間 所属:アール ジョブ:苦労人な召使い」
になった。
「あっ!そうか、アールの術だから、所属がアールになるのか…」
頭を抱える先輩。
「アリサは先輩付きの召使い、ルルはミト付きの召使いを頼むよ」
「がってん、しょうちのすけ♪」
「わかりました♪」
アリサって子は、俺達より、年代が古く無いか?
--------
ミトと先輩達は、宿屋に宿泊し、俺達はゼナの家に厄介になっている。
「君の家のように使ってくれてかまわないが、侍従の者達に不便を掛けさせてしまう。すまない」
ゼナの父上にそう言われた。亜人差別が酷いらしい。リザ達をこの家の使用人と接触しないようにしないと、ゼナ達に迷惑を掛けてしまいそうだ。
「迷惑だなんて、思っていませんが、ごめんなさい」
って、ゼナ。あの子爵が悪いのか?
ミト達とは、屋台の並ぶ通りの人気の無い場所で、会っている。リザ達を護る為だ。人目に付く場所だと、石を投げつけられることもあったので…
「この街は、住みにくいなぁ。ゼナ親子には申し訳ないけど…」
「亜人差別が根強い街だからね…って、あれ?先輩…なんで、ジョブが子爵になっているの?」
はぁ?ステイタスをチェックした。確かに子爵になっている。佐藤先輩は士爵で、ミトは元公爵だし。あっ!強制を転移させたから…まさかなぁ…
ミトと先輩に、この前の件を話した。
「はぁ?強制を転移させた?ベルトン子爵に…」
絶句したミト…これは珍しい。
「勘違いしているみたいだけど、強制って、強制力じゃないのよ…」
えっ?違うの?ミトの顔から血の気が失せている。やらかしたようだ。
「言ったでしょ、呪いだって!本来はウリオン神が罪人を裁く為の呪いで、命令に逆らうと死亡するって、極めて悪質な物なの」
じゃ、ベルトン子爵から、欲しい物を、もぎ取れてしまったのか。欲しいというか、エラそうに出来ない地位に、落としたかっただけなのだけど…
「じゃ、彼の爵位が先輩に転移したんだね。身分証を出して♪」
ミトが呪文を唱えると、俺の身分証が更新された。
『アール 人間 所属:マリエンテール士爵 ジョブ:子爵』
「う~ん、バランス的におかしな身分ねぇ」
って、士爵より子爵の方が格が上らしい。
「立身出世したってことだな♪」
「じゃ、俺が、一番格が下なのか?」
先輩の身分証も更新すると、
『サトゥー 人間 所属;アール子爵 ジョブ:士爵』
に、なった。あれ?俺の配下?
「ははは♪兄ぃ、手柄を横取りなんかするから♪」
腹を抱えて笑っているミト。頭を抱える先輩。
リザ達の所属も確認し直すと、みな「所属:アール子爵」になっていた。
「スゴいです。ご主人様♪」
喜んでくれているリザ達。なら、いいか…
「ミトの配下になるには、どうするんだ?」
一応、訊いてみた。
「そうだね…私の爵位を復活して貰えば、可能だよ」
王様に認定して貰う必要があるらしい。が、現在の王様とは、面識が無いらしい。ダメじゃん…
------
談笑中に、空気がドンヨリした物になった。なんだ?これは?
「魔族が来たわ!先輩、兄ぃ、出動よ!」
「ミト!アリサ達とリザ達を頼む」
「わかったわ」
俺は瞬動術で、原因となる者達の元へ向かった。
---------
路地裏を走り回る小さな戦士。白い何かを抱き締めている。それを追う魔なる者達。ジョブチェンジだ♪殺戮者になる俺…聖剣を手にして、屠りまくる。屠られた魔なる者達は、灰塗れの魔核に変化していく。
先輩達が転移してきた。う~ん、なんの苦労も無く、俺の元へ転移って、チートだろ?
「リザ!、小さな戦士を護れ!」
「御意!」
俺と先輩とミトで、魔なる者を屠っていく。いや、聖なるブーメラン遣いが大活躍している。魔なる者に吸い寄せられていく…タマがスローイングした聖なるブーメラン。効率がいいなぁ。
「兄ぃ!回復薬有る?」
ステイタスチェックすると、小さな戦士は瀕死と表示された。
「俺がやる」
『蘇生コンポ』を発動した。緑色の光に包まれていく戦士。
「え?なんで?殺戮者が神聖魔法を使えるの?」
って、ミトが驚いている。って、言われてもなぁ…
「チートだから…」
としか、言えない。
「これで大丈夫だ」
「包みの中に女の子がいる。この子はエルフのようだわ」
先輩が街のマップで探索をしていく。この街にエルフの者がいないかどうか。
「いたぞ。何でも屋の主人がそうだ。あの人、エルフなのか…耳が長くないけど」
「あぁ、兄ぃ。この世界のエルフもハイエルフも、耳は長く無いのよ。耳が長いのは、耳長族っていう、エルフ系では無い種族だけよ」
なるほど、流石は亀の甲である。
意識を失った戦士とエルフの女の子を、何でも屋へ運び込んだ。
-------
お店に入ると、先輩好みの女性が、先輩に声を掛けてきた。ウィンドウに「ナディ」と表示された。これが名前かな?
「サトゥーさん、今日はどんな商いに来ましたか?」
「店長を頼む」
ナディさんが呼びに行ってくれ…
「ミーア?なんで、ここにいるんだ?」
ミトが経緯を話した。
「この戦士が、ミーアを大切に運んで来てくれたのか」
戦士は鼠人族のようだ。この近くに、集落があるらしい。
「あの集落の辺りに攫われたのか?」
本来、エルフの集落のあるボルエナンの森って場所に、いるはずだったそうだ。
「サトゥー、悪いが、ミーアをボルエナンまで、連れ帰ってくれないか?」
「俺がですか…」
渋る佐藤先輩。
「わかりました。そのクエストを受けます♪」
って、快く引き受けたミト。器の大きさの違いか?
「サトゥーはミトの尻に敷かれているんだな」
って、店長。
「違いますよ~。俺はナディさんの方がタイプです♪」
バキっ!
ミトの鉄拳制裁。言わないでも、わかるって…大きいものね。
「じゃ、俺はここで…」
いざこざに巻き込まれたくないので、退散しようとしたのだが、
「ちょっと、待ったぁ!先輩も行くんですよ~!」
「えっ?!」
寝耳に水…
「護衛で付いて来なさいよ~!か弱い私と、巨乳バカのコイツだけでは、不安だって!」
先輩が、巨乳バカ呼ばわりされている。まぁ、そう思うが…ミトの前で、そういう話題はダメだと学習しないのか?
「いや、でも…」
渋る俺。この二人の問題には、巻き込まれたく無い!
「でも?でも何!色々教えたよね!色々味わったよね!」
「うっ…わかりました」
失恋した瞬間の心の痛みを想い出し、心を折られた気がする。惚れた弱み的な…そんな感じも、ちらほらと…
「馬車はこっちで手配する。だけど…その人数だと1台じゃキツいかな?」
「大丈夫です。サトゥーに1台、買わせますわ♪ねぇ、あなた!」
この二人は、夫婦を装っているのか?ミトの願望の産物なのか…先輩は、頷いている。まぁ、元勇者と商人では、商人に勝ち目は無いだろうな。マジケンカしたら…