セリビーラの執務室で、領内の問題を、メリーと共に向き合っている。
プタの街、再建計画を建てていく。亜人だけの街も有りか?
ぼったくりの宿を閉鎖し、新たな宿を作っていく。まぁ、寝るだけの宿だ。食べ物は、港の店で食って貰う。問題は水だよな。上水が汚水はマズいだろうに。
「メリー、何かいい案ってある?」
「難しいですよね。船の物資補給がメインの街ですから」
観光名所は無いし。働く場所は港だ。他に産業か…
「太守代理はどうされます?」
「ルーニャに任せようと思う。元王女だし、亜人だけの街なら、安心して任せられるかなって」
元奴隷のルーニャ。元々は旧白虎王国の元王女である。プタの街の住民とも話し合いをしたら、俺の推薦する太守代理を受け入れてくれるそうだ。
「住民からは、神殿が欲しいって。火傷を治してくれた聖者様を、祀りたいそうですよ♪」
「俺は…そういう対象では無いよ。でも、そうだね、観光名所にはなるかな?」
「魔物対策は、冒険者学校の卒業生を向かわせるのは、どうでしょうか?」
「それもありだな。まぁ、問題は水だな…」
次の議題は、グルリアン市である。ここは、太守以外問題は無いか…産業はあるし。名物もあるし。問題が有るとすれば、砂糖が高い件だな。
「違う土地で砂糖を安定供給するしかないでしょう。港があるので、流通はしやすいと思います」
って、メリー。どこに作るかだな。当面はエチゴヤを頼るか。って、感じで、領内の問題をちょっとずつ片付けていく。
現状、浄化能力を持つのは、ナマコくらいか…中層のナマコの養殖場で、水の浄化実験をする。汚水にナマコ似の魔物を入れてみた。結果、水と砂にしてくれた。出来た水は見た目は綺麗だが…まだ、ちょっと微生物が気になる。エチゴヤ製の浄水器に通すと、飲める程度にはなった。これかな?ナマコの養殖も出来るし。
メネアの連れのアオイ・ハルカは発明家の素質があるらしく、次々に新製品を作りだしているらしい。浄水器もその1つだ。
さっそく、プタの街に、ナマコの養殖場兼浄水場を作った。
「おぉ、ナマコって言うか…旨いなぁ」
って、住民達には好評である。但し、ここでも飲んべぇに好評で、子供の受けは良くない。まぁ、大人向けの食い物と割りきれば問題は無いかな。
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新しい甘味の開発をアリサと先輩に頼まれた。エチゴヤの倉庫を見回る。何か無いかな…あぁ、微生物…材料を手にして、プタの街へ…そこで発酵をさせていく。良い微生物が見付かるかな。
で、お披露目…
「うっ!くず餅来たぁぁぁぁぁ~!」
アリサが喜んでいる。
「黒蜜の完成度が低い上、発酵日数が短いのが難点だよ」
「う~ん、こんな感じだよね。これ、保存食にもなるよね?」
「発酵食品だから、そうなるな」
「これはヨーグルトか?」
って、先輩。
「微生物が合わなかったようで、微妙だよ。穀物系の微生物だったから、甘酒は成功だよ」
米麹の甘酒を試飲してもらった。
「甘いしうまいな。良し、これをプタの街の名産で売るか」
「名産になるほどの量は無理かな」
現状、小さい作業場だし。
「エチゴヤで製造工場を作るよ」
商売熱心な先輩。
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「料理対決?」
う~ん、先輩と料理対決をと、ドハル爺が持ちかけてきた。
「奇跡の料理人VS邪道の料理人って、感じでどうだ?」
ドハル爺との間の誤解は解けたのだが、俺に詫びたいと色々な企画を持ち込んできた。その中の1つである。うちからの留学生達が、農耕具やら料理用品などを手がける物が多いこともあるが、販売促進企画らしい。
「大鍋料理でどうだ?」
って爺。う~ん…鍋かぁ…先輩はもうレシピを考え始めていた。勝て無いよな…って、俺の食いたい物を作れば良いのかな?
会場は、テニオン神殿の前の広場だと言う。炊き出しのイメージであるが、どうするかな。先輩の助手はルル。俺の助手はセーラになった。
「どうします?」
セーラに訊かれた。
「俺の食べたい物を作る。邪道な料理人だし」
「主様らしいわね」
って、アリサ。
「材料は?」
「餡子と水と米粉だな」
「はぁい?まさか…白玉入りの飲む汁粉?」
「ビンゴ!」
「鍋料理?」
「俺が食べたいだけ…」
「…」
さすがのアリサも呆れたようだ。ふふふ♪
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対決当日、奇跡の料理人見たさに、観客がスゴい。俺は、俺の食いたい物を作るだけさ。
材料から判断するに、先輩は肉じゃがか、カレーのようだ。俺は鍋に水と黒い塊と白い粉を入れ、火に掛けて、ゆっくりと混ぜ合わせていく。隣では、セーラはせっせと白玉を作っていく。沸騰する手前で火から下ろして、冷ましていく。
「アール、お前…巨大水ようかんか?」
先輩にバレた…固まる俺…
「あれって、鍋料理か?」
頷く俺…
先輩が俺の料理に興味を失ったようだ。チャンスタイム到来か。
もう一つの鍋を火に掛けて、白い液体を温めていく。アチラからは、巨大の鍋が壁になり、見えないはずだ。
そして、器に盛る…
「何…水ようかんで無いのか…」
「珈琲ゼリーですが何か?」
珈琲ゼリーに自家製コンデンスミルクを掛けて、特製白玉を添えた。先輩は予想通りカレーのようだ。
「うっ!白玉の中に水ようかんって…」
アリサがビックリしている。
「ほぉ~、苦みと香りと甘さが良いバランスじゃないか」
オーユゴック卿の舌にマッチしたようだ。で、審査だけど、先輩の信者さんが多いので、結果はみる必要は無いので、とっとと、住処に退散した。
「うまいよ、これ♪」
って、ミト。
「う~ん?」
「う~んなのです」
「う?」
子供達には苦すぎたようだ。飲んべぇ達には、カルアミルクをコンデンスミルクの上から掛けてあげた。
「うまい…」
って、リーン。
「うん?何を食べているんですか?」
しまった。メリーに見付かった。みんなと違う物を、一人でこっそりと食べていた俺。
「これは何?」
一口食べた。
「おいしいです。一人でズルいですよ!」
「あっ…フレンチトースト…掛かっているのは、兄ぃのカレーかな?」
って、ミト。バレた。フレンチトーストは掛ける物によって、デザートになったり、主食になったりする便利物である。
「ほら…これは鍋料理で無いから…」
「こっちの黒いのは、珈琲ソース?」
一口食べたミト。
「あまぁ~…濃縮させた黒蜜か…」
試作した珈琲ソースのも食べて貰った、
「うっ、これはこれで美味しいなぁ」
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翌日、先輩、アリサ、ルル、セーラが住処に戻って来た。
「先に帰るなんて…ひどい…」
って、セーラ。
「なんで、帰っちゃうんですか?」
って、ルル。
「高評価だったよ」
って、アリサ。
「お前の勝ちだよ、アール♪」
って、先輩。あれ?何で?
「お前の方が色々な味の変化があったからだ。くそっ!水ようかんだと思ったのになぁ♪」
って、先輩。
「あれ?私達がいない間に、何を食べていたのかな?」
って、ルル。なんで、わかったの…
「あっ!うっすらと、バターの香り…」
って、セーラ。
「新作をこっそり食べてましたね!」
って、アリサ…いや、そのぅ~
「「「私達にも作ってください!」」」
「えっ…材料が…明日だな。時間がかかるから…」
「うん?それは計画的な逃亡ってことですか!」
セーラが怒っている。まずい…
「負けると決めつけて臨んだのですか?」
ルルも怒っている。
「作るまで寝かさないよ~♪」
って、アリサ…また、徹夜だ…
翌日の朝、三種のフレンチトーストを、三名を中心に全員に振る舞った。ダメ、もう寝る…
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先輩のお供で晩餐会へ…先輩が懇意にしているシーメン子爵の主催らしい。あのトルマの実兄らしいので身構える俺。ムーン男爵領の件やグルリアンの件、そして公都の件、全てを先輩の手柄として認識しているようだ。いや、先輩の正体がアルジェント卿だと思っているらしい。なんで、ムーン士爵として、参加である。
「はじめまして、ムーン士爵様。わたくし、王都と迷宮都市の間で商いをさせて戴いているオグーショと申します」
この晩餐会では、子爵の友人という幾人かの貴族と、お抱え商人を紹介された。だけど、商人は先輩だけで充分だし、貴族はあまり好きでは無い。
先輩のお付きとしての参加なので、挨拶を素直に受けていく。で、晩餐会が終わり、先輩と共に、シーメン子爵の応接間へ行く。
「本日は同僚と共に、ご招待ありがとうございます」
先輩が頭を下げているので、俺も下げた。
「ペンドラゴン卿は、この街の太守と面識はあるのかね?」
って、訊いて来た。
「それは…公式のですか?実際のですか?」
子爵の真意が分からない先輩は訊き直した。公式にはレーテルの旦那であるが、実際には俺だから。
「うん?どういう意味だ?」
「いえ。そうなるとアシネン侯爵ですか?」
「そうだよ。先程の意味はどういうことかね?」
「いえ、気になさらずに」
「そうもいかないよ。実際に牛耳っている者は違うってことか?それは、大問題だぞ。王様に報告しなければならない」
「王様は知っていますよ」
って、俺。
「何?貴様には訊いていない。コイツを追い出せ!ペンドラゴン卿の眷属には用は無い!」
「では、失礼します」
『おい!待て!』
って、先輩。だけど、俺は住処へと転移した。眠い…
翌日、執務室でメリーと会議…そこにティファがやって来た。
「ご主人様、お客様です」
「どなた?」
「シーメン子爵です」
「帰ってもらえ!」
「どうして?」
ってメリー。
「あのトルマの実兄だよ。関わりたくない」
メリー達にも、以前のトルマとの件は話してあった。
「あぁ、あの空気読めない、ペンドラゴン卿大好き一族の方ですか…」
って、ティファ。
「そうだよ」
「あぁ、帰ってもらった方がいいわね。私が応対します」
って、メリー。メリーとティファが部屋を出て行った。
暫くすると玄関が騒がしい。現場へ向かった。
「あぁ、ご主人様」
ってメリー。子爵が衛兵を連れている。
「貴様かぁ~!この街を牛耳り、アルジェント卿の名を騙る、不届き者は?おい!捕らえろ!」
衛兵が俺を拘束した。先輩の名前を騙ったことは無いんだけど…この男的には、俺が太守なのは許せないんだろうな。
「ふん!王都まで連れて行く。さぁ、来い!このニセモノ風情が…」
う~ん…メリー達が展開に唖然としている。ミトは王都だし。まぁ、いいか…
「ちょっと、行って来る」
俺は、犯罪人として、牢へ入れられて、王都へ輸送されていく。
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俺の牢の前には『ペンドラゴン卿のニセモノ』という札が有り、道行く人達に石をぶつけられていく。ペンドラゴン卿は、この国の宝なんだな…俺は闇の部分だから、もういいや。終わりにしてくれよ~!
俺の腹部には何本もの剣が刺さっている。衛兵達が刺していった物だ。だけど、死ねない俺…いつしか牢の前の札は『魔物』→『魔族』→『魔王』と出世していった。
そして、オーユゴック侯爵領の公都で、さらし者にされる…沢山の見物人…だけど、皆顔面蒼白である。俺のことを知っているから。でも相手は子爵なので、助けられないでいた。
「アール様…なんで…」
そんな中、リリーが声を掛けてきた。
「俺を殺してくれ…リリー…」
「ダメですよ…今、助けます!」
神殿へ走って行くリリー。神殿長から義父さん経由でオーユゴック卿の耳に入り、俺は牢から解放された。やっと腹部から剣を抜いて貰えた。
「大丈夫か…アール君」
オーユゴック卿の声。一睡もしてないので、もう返事するのもつらい。
「シーメン子爵、これはどういうことだ?私に何の恨みがあるんだ?!」
「えっ!コイツは魔王です。王様の前で、首を斬り落とすのですよ」
「王様の命令か?」
「はっ!」
嘘吐き…
「アール君…」
うん?ミトが王様と宰相と共に転移してきた。
「アルジェント卿…これはどういうことだ!シーメン子爵!」
王様が叱責をしている。そんなことはいいから、俺を殺してくれ。
「コイツは魔王ですよ。今ここで、コイツの首を落としましょうぞ!」
「何を言っているんだ?彼は、システィーナ王女の婚約者だ。魔王では無い!」
ペンドラゴン卿に心酔しているシーメン子爵には、俺は魔王みたいな存在なのだろう。もう、どうでもいいけど。
「ご主人様…」
セーラが抱きついた。
「大丈夫だよ。良い経験が出来た。えん罪者って、こうやって作れられるんだな。魔王と誤認されたお陰で、犯罪奴隷落ちはしないで済んだよ♪」
「大丈夫か?」
声を掛けてくれたリーンの肩を借り、立ち上がった。
「王様、帰っていい?ベッドで寝たい…」
「あぁ、お帰りください。このバカには反省させて、詫びをさせます」
「ソイツの弟のトルマも頼むわ。じゃ」
セーラとリーンと共に家に転移して、久しぶりにベッドで爆睡♪
◇
「お兄ちゃんが死ぬと、この星も死ぬから…死なないでね♪」
って、カグヤ。そうなのか…