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お祖父様と再会できた。お祖父様を良く思わない連中に捕まり、奴隷として売られた私。もう、家族には会えないと思っていたのに。涙が止まらない。
「お祖父様…彼は何者ですか?」
先程は、彼の言葉で答えを訊けなかったので、再度訊いてみた。
「言わない約束だ。彼はそういう者だ。手柄を立てたい訳では無いのだよ」
正体が言えない人物?何者だ?金貨350枚を即金で払える人物。エチゴヤの大旦那様の知り合い…
翌日から、今まで忘れていた生活に戻った。お父様、お母様、お祖父様、お祖母様に囲まれた生活である。だけど、奴隷落ちした私には、貴族であって貴族では無い。外に出ると好奇な目で見られる。
家族には気にするなと言われるが…気にならない訳がない。私は性なる下僕になる為に調教された奴隷である…死にたい…
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戻って来てどれくらいかな?精神的にまいっている私。
「アルジェント卿…孫を頼めませんか?」
お祖父様の声…私の部屋の前から聞こえる。
「俺ですか?う~ん…彼女は太守代理を任せられる器ですか?」
はぁ?何をいきなり…太守代理って何…
「いきなりは無理です。アルジェント卿の元に置いてください。お願いします。王都では孫を、好奇な目から護り切れません」
「どこにいても、好奇な目にはさらされますよ」
「卿の元なら…お願いします」
「見返りは?」
見返り…腹黒いのか?コイツは…
「軍務担当ですよ、私は。税収の件ですよね?」
税収?彼は領主なのか?
「まぁ…赤字なんですよ~」
「う~ん、分かりました。軍部でも寄付金を募ってみます」
寄付金で賄っているのか、領地を…って、じゃぁ、あの金貨はなけなしのお金だったのか?一言言おうとドアを開けると、違う場所にいた。ここはどこ?
「ここは、セリビーラの私の屋敷よ」
って、知らない女性に言われた。知らない?いや、どこかで見かけたことのある女性だ。
「あの…彼の奥様ですか?」
「私は独身よ♪あいつは、私の片腕よ」
片腕?
「眠い…ミト、俺は寝るよ!」
「はぁ?まだ、昼間だよ~」
「ご主人様、カニを狩りに行きましょう♪」
「ラムネ?」
「ハンバーグ先生なのです♪」
「フレンチトースト」
「パンケーキ♪」
「えっ?!眠いんだけど…」
困った表情の彼に群がる少女達。ここは、彼のハーレムか?
「そうね、ハーレムかな。ご主人様は、そういうことを命じないけど」
また、違う女性…どこか貴賓がある…
「あれ?エルテリーナさん…どうしてここへ?」
私を知る人物がいるようだ。声の主を見ると…システィーナ王女だった。
「王女様こそ、どうして…」
「公式には、アイツの婚約者だから…」
って、彼を指差す王女。えぇぇぇぇ~!王女の婚約者?!
「彼は誰?」
「え?知らないで連れ込まれたの?」
頷く私。
「端的に言うと、バカ♪」
へ?なんだ、それは…
「でも、アイツのやることに間違いは少ない。アイツの肩は持ちたくないけど、賛同出来る」
よくわからない。
「あぁ、そこで寝ちゃダメ~!」
なんで…王様の外孫のセーラ…死んだはずなのに…
「しょうがないなぁ。セーラ、ソッチの肩を持てよ」
「はい、お姉様♪」
リーングランデ…彼女も死んだはずだ。ここはなんだ…
「新人さん?」
紫髪の少女に訊かれた。
「ここは何?」
「知らないで、来たの?命要らずねぇ~♪」
「命は…取らないで…」
「ここには、死神はいないから大丈夫よ♪」
死神はいない?何ならいるんだ?
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よくわからないまま、数日が過ぎた。食事はおいしい。素材がわからない物があるのが、不安なのだけど…
「そろそろ、ここの生活になれたかしら?」
初日に声を掛けてくれた貴賓のある女性に、再び声を掛けられた。
「なんとなくですが」
「そう。アナタには仕事を覚えて貰います。私は主様の情報分析担当のメリーエスト・サガです」
え…サガ帝国の王女様…まさか…
「あちらにいるのは、書記官のティファリーザです」
ティファリーザさんが頭を軽く下げたので、それに応じた私。
「私の仕事ってなんですか?」
「あなたには、将来的に太守代行をしてもらう予定です」
お祖父様が口にしていた職務だ。
「代行?」
「えぇ、太守は主様がなりますが、領地が飛び地状態の上、広大ですので、太守代行を置き、行政をスムーズに行う為です」
領地が広大?
「うん?全く何も知らずに来たのですか…困ったわねぇ」
メリーエストさんが爵位持ち人物名鑑を開いて見せてくれた。そこには…『アール・アルジェント公爵』について書かれていた。彼は公爵だったのか…あんなに若いのに…有能なんだ。お祖父様が頼るくらいだし。
「今後は私とティファリーザとあなたで、主様の執務を熟します。いいですね」
公爵様の秘書?でも…
「私は元奴隷です…」
「だから、何?ティファリーザもそうよ。主様の眷属には、元奴隷が沢山います。誰も、それを理由に職務を疎かにはしないわ」
だから、私は公爵様に預けられたのか…同じ環境だった者が多いから。元奴隷でも、それを感じさせない生活が出来る環境だから…
お祖父様、ありがとうございます。