デスマーチからはじまる異世界マン遊   作:もっち~!

53 / 86
エルテリーナ・ロンドンベールの視点です。

06/28 誤字を修正


SS:新たなる生活

 

お祖父様と再会できた。お祖父様を良く思わない連中に捕まり、奴隷として売られた私。もう、家族には会えないと思っていたのに。涙が止まらない。

 

「お祖父様…彼は何者ですか?」

 

先程は、彼の言葉で答えを訊けなかったので、再度訊いてみた。

 

「言わない約束だ。彼はそういう者だ。手柄を立てたい訳では無いのだよ」

 

正体が言えない人物?何者だ?金貨350枚を即金で払える人物。エチゴヤの大旦那様の知り合い…

 

翌日から、今まで忘れていた生活に戻った。お父様、お母様、お祖父様、お祖母様に囲まれた生活である。だけど、奴隷落ちした私には、貴族であって貴族では無い。外に出ると好奇な目で見られる。

 

家族には気にするなと言われるが…気にならない訳がない。私は性なる下僕になる為に調教された奴隷である…死にたい…

 

--------

 

戻って来てどれくらいかな?精神的にまいっている私。

 

「アルジェント卿…孫を頼めませんか?」

 

お祖父様の声…私の部屋の前から聞こえる。

 

「俺ですか?う~ん…彼女は太守代理を任せられる器ですか?」

 

はぁ?何をいきなり…太守代理って何…

 

「いきなりは無理です。アルジェント卿の元に置いてください。お願いします。王都では孫を、好奇な目から護り切れません」

 

「どこにいても、好奇な目にはさらされますよ」

 

「卿の元なら…お願いします」

 

「見返りは?」

 

見返り…腹黒いのか?コイツは…

 

「軍務担当ですよ、私は。税収の件ですよね?」

 

税収?彼は領主なのか?

 

「まぁ…赤字なんですよ~」

 

「う~ん、分かりました。軍部でも寄付金を募ってみます」

 

寄付金で賄っているのか、領地を…って、じゃぁ、あの金貨はなけなしのお金だったのか?一言言おうとドアを開けると、違う場所にいた。ここはどこ?

 

「ここは、セリビーラの私の屋敷よ」

 

って、知らない女性に言われた。知らない?いや、どこかで見かけたことのある女性だ。

 

「あの…彼の奥様ですか?」

 

「私は独身よ♪あいつは、私の片腕よ」

 

片腕?

 

「眠い…ミト、俺は寝るよ!」

 

「はぁ?まだ、昼間だよ~」

 

「ご主人様、カニを狩りに行きましょう♪」

 

「ラムネ?」

 

「ハンバーグ先生なのです♪」

 

「フレンチトースト」

 

「パンケーキ♪」

 

「えっ?!眠いんだけど…」

 

困った表情の彼に群がる少女達。ここは、彼のハーレムか?

 

「そうね、ハーレムかな。ご主人様は、そういうことを命じないけど」

 

また、違う女性…どこか貴賓がある…

 

「あれ?エルテリーナさん…どうしてここへ?」

 

私を知る人物がいるようだ。声の主を見ると…システィーナ王女だった。

 

「王女様こそ、どうして…」

 

「公式には、アイツの婚約者だから…」

 

って、彼を指差す王女。えぇぇぇぇ~!王女の婚約者?!

 

「彼は誰?」

 

「え?知らないで連れ込まれたの?」

 

頷く私。

 

「端的に言うと、バカ♪」

 

へ?なんだ、それは…

 

「でも、アイツのやることに間違いは少ない。アイツの肩は持ちたくないけど、賛同出来る」

 

よくわからない。

 

「あぁ、そこで寝ちゃダメ~!」

 

なんで…王様の外孫のセーラ…死んだはずなのに…

 

「しょうがないなぁ。セーラ、ソッチの肩を持てよ」

 

「はい、お姉様♪」

 

リーングランデ…彼女も死んだはずだ。ここはなんだ…

 

「新人さん?」

 

紫髪の少女に訊かれた。

 

「ここは何?」

 

「知らないで、来たの?命要らずねぇ~♪」

 

「命は…取らないで…」

 

「ここには、死神はいないから大丈夫よ♪」

 

死神はいない?何ならいるんだ?

 

--------

 

よくわからないまま、数日が過ぎた。食事はおいしい。素材がわからない物があるのが、不安なのだけど…

 

「そろそろ、ここの生活になれたかしら?」

 

初日に声を掛けてくれた貴賓のある女性に、再び声を掛けられた。

 

「なんとなくですが」

 

「そう。アナタには仕事を覚えて貰います。私は主様の情報分析担当のメリーエスト・サガです」

 

え…サガ帝国の王女様…まさか…

 

「あちらにいるのは、書記官のティファリーザです」

 

ティファリーザさんが頭を軽く下げたので、それに応じた私。

 

「私の仕事ってなんですか?」

 

「あなたには、将来的に太守代行をしてもらう予定です」

 

お祖父様が口にしていた職務だ。

 

「代行?」

 

「えぇ、太守は主様がなりますが、領地が飛び地状態の上、広大ですので、太守代行を置き、行政をスムーズに行う為です」

 

領地が広大?

 

「うん?全く何も知らずに来たのですか…困ったわねぇ」

 

メリーエストさんが爵位持ち人物名鑑を開いて見せてくれた。そこには…『アール・アルジェント公爵』について書かれていた。彼は公爵だったのか…あんなに若いのに…有能なんだ。お祖父様が頼るくらいだし。

 

「今後は私とティファリーザとあなたで、主様の執務を熟します。いいですね」

 

公爵様の秘書?でも…

 

「私は元奴隷です…」

 

「だから、何?ティファリーザもそうよ。主様の眷属には、元奴隷が沢山います。誰も、それを理由に職務を疎かにはしないわ」

 

だから、私は公爵様に預けられたのか…同じ環境だった者が多いから。元奴隷でも、それを感じさせない生活が出来る環境だから…

 

お祖父様、ありがとうございます。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。