今後の方針を決める会議中だ。まぁ参加者は俺、先輩、ミト、メリー、ゼナ、リーン、アリサなので、寝たい時に寝られるので、苦痛ではない。新年の会議地獄…あれは、たぶん俺にとっての一番の苦痛であると思う。
「情報屋からの話なので、まぁ、信憑性は実際に見て確認だと思うが、パリオン神国と隣接する三国が連合して、パリオン神国に攻め入ったらしいのだけど、パリオン神国の『神の軍勢』という兵士達に蹂躙されて、追い返されたらしい」
全員羽川姿なのだろうか…それはそれで壮絶な絵面になりそうだ。
「攻め込んだ理由は、パリオン神国のザーザリス法皇が魔王だと主張したとか」
神はここにいるから、神無し国状態である。魔王がいたとしても可笑しくは無い。
「あと、サガ帝国との緩衝地帯にあるヨウォーク王国の迷宮内で魔族の目撃情報があったそうだが、国営の冒険者ギルドが情報を握り潰したらしい」
迷宮核の所有者として、こういう情報は握り潰して、速効で狩るのが一番である。
「でも、そこって、アリサが代行している領地だよね?」
既に迷宮核は俺の所有である。魔王も既に…
「あぁ、確かに」
って、ミトが俺を見て笑みを漏らす。
「あと、大陸東方のイタチ人族の帝国と、シガ王国の緩衝地帯にある小国群での噂ですが、イタチ人族の帝国に滅ぼされた虎人と蜥蜴人族の王国の残党が、流民となり、小国群を占領しているらしい」
占領するなら、プタの街に移民してくれれば良いのに…
「後は、ザイクーオン神の使徒と名乗る人物が、侵略者達を塩に変えたらしいぞ」
塩に変えてどうするんだ?魂はどうなるんだ?罰だから、魂にもそれなりにペナが無いと、安楽死に近いよな。
「まぁ、使徒は問題外ね。うちには神がいるし」
羽川似ですね。その羽川をいたぶる姉妹もいるし。問題無いでしょ。
『お前が言うな!』
って、ミト。あぁ、そうだった。俺は不死王だ。
「そうなると、魔王疑惑法皇の調査が先かな」
方針は決まったようだ。
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翌日、各々で新年を楽しむ。先輩は高級娼館経由で高級奴隷商館へ行くそうだ。趣味と実益を兼ねているらしく、楽しそうである。
俺は、メリー、ティファ、リーナ、アリサ、ミーア、タマ、ポチ、シロ、クロウと王立学院って学校へ。他の学校の見学である。アリサ以下は学生として体験で、俺達は視察になる。
「初めましてアルジェント公爵。私が王立学院の学院長リトゥーマイヤーです」
凜とした老女である。同じ老女でもリリアンより品がある。彼女が執務机の向こうから挨拶をしてきた。
「当学院に体験入学したいとの事ですが、後ろの子供達でしょうか?」
アリサ達の顔を一人ずつ見て、彼女はミーアを見て驚いたらしい。
「えっ!エルフ様…ま、まさかボルエナンの森のエルフ様ですか?」
「ん、ミーア」
名前を名乗って頷くミーア。
「ご主人様は、ボルエナンの森のハイエルフ様が、正妻なんですよ」
メリーが誇らしげに言う。
「ハイエルフ様が正妻…あなた!何者なの…」
メリーの言葉は逆効果であった。俺に恐怖を感じた学院長。
「しがない公爵ですが…何か?」
俺に恐怖を感じつつ、王様からの一筆を受け取り、体験入学オーケーにしてくれた。クラスはアリサ、ミーアが魔法学舎、ポチタマコンビは騎士学舎、シロクロウコンビは幼年学舎になったようだ。
「しっかり、勉強して来いよ」
「もちろんですわ、ご主人様♪」
学校に通えるのが嬉しそうなアリサ。ミーアは何時も通りで、残りの4名が楽しそうだ。
「へぇ~、領地経営や帝王学もあるんだ」
「興味がお有りですか?」
「興味はある。仲間に学ばせないとね」
「仲間に?領地経営をですか?」
鼻で笑った気がする学院長。
「今の態度、失礼では無いですか!」
あぁ、メリーが気づいちゃったよ。こういうマナーに、うるさいから。
「我々のご主人様は、私達眷属に、太守代行や太守補佐をまかせたいと思っているのですよ。それを鼻で笑うとは、失礼では無いですか」
「ご自分でせずに、任すのでしょ?それは、おかしいでしょ。太守が執務に専念するべきです」
まぁ、確かに…領地が1つならばね…
「一人では全ての領地に目を配らせることは難しいです」
「全ての領地?」
「えぇ、ご主人様、複数の領地をお持ちです。うち3箇所は代行が執務をしております」
「それは4箇所以上、お持ちってことですか?」
「王立学院のトップが、知らないとは…あなたこそ、勉強が必要では無いですか?」
メリーに口で勝てる者は少ないと思う。あのロリ勇者の下で従者をしていたくらいだから、根性は座っていると思う。
「アナタは何者ですか?失礼でしょ?その言い方は?仮にも私は王立学院の長なんですからね」
立ち位置勝負だと、メリーの右に出るのは難しいと思う。
「申し遅れました。アール・アルジェント公爵様の情報分析官をしております、メリーエスト・サガです」
メリーの名前を聞いて、顔から血の気が失せていく学院長。まさか、相手がサガ帝国の王女って…立ち位置はメリーの方が上である。
「サガ帝国の王女様ですか…どうして…」
どうして、正妻にならないのか、ってことか?
「どうして?ご主人様の正妻はボルエナンの森のハイエルフ様ですよ。一介の帝国の王女が、正妻に立候補なんか出来ませぬ。それに、私はご主人様の片腕として、働きたいのです。伴侶としてではなくね」
メリー…かっこいいなぁ。メリーの堂々として話し方をマジマジと見ているティファとリーナ。あぁ、なりたいんだろうな。
「ご無礼を…」
学院長は席を立ち、俺達に深々と頭を下げた。
その後、学院長計らいの下、メリー達に学校の運営方法を説明してくれた学院のスタッフ達。俺達の学校のシステムを紹介し、より良くすべきポイントのアドバイスを聞き入っていた。
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訓練場に向かう俺。一人の少年が、ポチ、タマにケンカを売っているようだ。
「さぁ、来い!二人一緒でも良いぞ」
ポチ、タマは困っていた。人間相手に戦ってはダメって言ってあるから。
「そのケンカ、俺が買う。俺の娘達に剣先を向けるって、どういうことだ?うん?教師は見てみない振りか?」
「ご主人様?」
「ご主人様なのです」
俺に飛びつく、娘枠達。
「なんだと?亜人が娘だと?お前、頭が可笑しいのか?」
鼻で笑う教師。教師が言って良い言葉では無い。
「ダメ?」
「ダメなのです」
俺の変異に二人が気づき、俺を制止しようとする。でも、ゴメン、俺はコイツが許せない。コイツらが許せない!教師に瞬動術で近寄ると、目の前に先輩とミトが転移してきた。
「ダメ!やめなさい。このクズ教師には、私から詫びをさせる」
ミトが俺に抱きつき止めた。
「俺のかわいい後輩を、キレさせた罪は重いぞ」
娼館若しくは商館から呼び出された先輩は、俺より怒りを纏っていた。
「なんだ、貴様ら~!おい、衛兵!」
教師は衛兵を呼び出した。俺達に剣を向ける衛兵。
「どうしたんだ!」
はぁ?ジュレちゃんがノシノシと近づいて来た。アイツなら殺していいかな?
「ダメだって!先輩、落ち着いて!」
「えっ!お前達…何していんだ…剣を降ろせ。殺されるぞ…」
顔面蒼白になっていくジュレちゃん。
「どうした、ジュレバーグ…」
レイラスがやって来て、俺と目が合い固まった。
「アルジェント卿…これは…お前ら、無礼なことをしたのかぁ!」
レイラスが俺の代わりに、怒りを爆発させた。普段、温厚な人格者である、彼の怒りは、より一層の恐怖心を煽っていく。
「レイラス様、あのイカレた奴は何者ですか?」
教師がレイラスに訊いた。
「アール・アルジェント卿だ。この国一番の猛者だ」
更に恐怖心を煽るレイラス。
「はぁ?シガ八剣よりもですか?」
「俺達じゃ、止められない…」
ジュレちゃんは、完全に戦意喪失状態だ。ミトがいなかったら、この場の人間全てを殲滅したかもしれない。それ程の怒りを俺は纏っていた。
「アルジェント卿、何を言われたのですか…」
レイラスに訊かれた。
「タマとポチは娘だと言ったら、頭がおかしいんだろうって…亜人を娘にしちゃダメなのか、この国は…それならば、こんな国は…」
アーシア、ナナ、テンちゃんがやって来て、俺の隣に立ち、俺同様にプレッシャをかけていく。
「愚かなことを…」
羽川がそう人間達に呟き、俺に抱きついて、ミトと共に俺の怒りをクールダウンさせようとしている。
「ご主人様…ダメだよ~」
背中にアリサが抱きついた。
「私をおいていかないで…私を看取ってください。最後の時まで…」
アリサの心が、俺の魂を鎮魂していく。それに伴い、俺の怒りはクールダウンしていく。
『さすが、最強の魔王♪』
カグヤの声…アリサってそうなのか…
「アルジェント卿…この国を代表して謝罪します。ですから、この場は我ら、シガ八剣に任せてもらえませんか?」
レイラスが俺の前で、頭を深々と下げた。
「わかった。レイちゃんとジュレちゃんに預ける」
「ありがとうございます。おい!お前!教師として失格だ。亜人差別は無くす方向だと、王様もおっしゃていただろうに!」
レイラスが烈火の如く、教師陣に斬り込んでいった。
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ミツクニ邸に収容された俺。ミトと羽川が添い寝をして、俺の上に洋服を着たアリサが抱きついて居る。三人で俺のささくれた心をクールダウンさせてくれている。
「あの学院長もそうですが、プライドが高いのがネックですね。なので、どこの馬の骨かわからない者は、下に見てしまうのでしょう」
メリーが分析結果を口にした。セーラ、オーナが、俺の為に鎮魂の呪文を唱えている。魂が怒りに染まっているって、羽川が言ったからだ。まぁ。そうなんだろう。まだ、ブチ切れそうだ。
「魔神が人間を虐めたって伝承…魔神には魔神なりの理由があったのよ。私は彼をあれ以上傷つけたく無いから、竜神に召喚の秘術を習ったの。心を癒やす者を呼べれば良いと思ってね」
羽川が誰かに聞かせる為に、独り言を言っている。
「だけど、他の神は、そうじゃなかった。勇者に成りうる者、魔王に成り得る者達を呼び出して、この世界を混沌にしていったの。自作自演をする為の道具としてしてね」
羽川はアリサの頭を優しく撫でている。アリサの行く末が見えるのか。
「ご主人様、ケルテン卿がお見えです。いかがされますか?」
リーナが俺の返事を待っている。
「だいぶ、落ち着いた。今行く。応接室にお連れして…」
「わかりました」
俺は、皆にお礼を言い、身支度を済ませていく。そして、ミトとセーラの肩を借り、応接室にへと向かった。
「すまない…王立学院でのことを聞いた。本当にすまない…」
ケルテン卿が俺に頭を下げている。リーナは何かをいいたげであるが、黙ってメイドとして、秘書としての仕事を全うしている。
「もう、いいですよ。この街は、住みにくいってことです」
ミトは反論しなかった。俺の怒りの源に共感してくれているようだ。
「王の言葉は下々の者達へ届かないようだ。一度出来た枠は、壊れない。いや、壊さないようにしているのかもな」
亜人という枠は、この街では別枠なのだろう。いや、セーリュー市だって、そうだった。問題は、この国の根本なのかもしれない。
『ごめん…王祖として謝るよ、先輩』
ミトからのメッセージ。俺はミトを責めてはいない。
「エルテリーナが生き生きと生きている。その恩を仇で返してしまったようで…」
「お祖父様…」
リーナが職務放棄して、ケルテン卿に抱きついた。
「エルテリーナ…職務を全うしなさい。私は客人だ。主の許可無く、抱きつくな…」
そういいながらリーナを優しく抱くケルテン卿。
「リーナ、ケルテン卿を家までお送りしろ」
「えっ!」
俺の指示に驚くリーナ。
「リーン、ルスス、フィフィ、ガードで付いていってくれ」
「御意!」
三人が部屋に入って来て、俺に跪いた。
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翌日、学院にはアリサとミーアだけを送り出した。シロとクロウも差別対象なので、ナナに保育を頼んだ。その指示に喜ぶ、ナナ。
午後、アリサとミーアが小さい女の子をお持ち帰りした。誰?この子は?
「チーナ?」
リーナが声を掛けた。彼女の知り合いのようだ。
「エルテリーナおばさん?死んだのでは…」
奴隷堕ちした貴族は、死んだ事になるのか。
「誰?」
「ケルテン卿の曾孫です」
「で?」
「あぁ、あの…シロとクロウが学校に来なかったから…心配で…」
あの二人の友達なのか…。リーナにナナの元へ連れて行くように指示を出した。
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夜会に招待された。気分的に乗り気ではなかったけど、オーユゴック卿からの誘いは断る訳にいかない。セーラとリーンの祖父でもあるし、俺の祖父のような存在でもある。
大所帯での参加…オーユゴック卿は、イヤな顔をせずに、招き入れてくれた。両腕にはリーンとセーラが抱きついている。
「王立学院の件は聞いたよ。すまない、我が国の暗部を見せてしまったようで」
オーユゴック卿までも俺に頭を下げてきた。
「頭をお上げください。俺は大丈夫です。亜人を娘にしちゃダメなんですかね」
「私は問題無いと思います」
って、セーラ。
「差別の無い国作り、悪くないと思うよ」
って、リーン。
「孫達が応援しているのであれば、私も応援します」
今度、カニをプレゼントしないと…応援に見合うかな?
「なんで、死んだ者がこんなにいるんだ!」
大きな声…この空気の読めなさ…声の主を見ると、トルマだった。
「おじさん、なんでセーラもリーンも死んだはずでしょ?エルテリーナも死んだと聞いたが、どうしてだ?おい!ペテン師、この街で何をやらかすつもりだ!」
コイツ、キラい。俺の馬車を…あぁ、また怒りが再燃中…
「ダメっ!」
俺の変異に気づいたセーラが、谷間で腕を抱き締めて来た。その柔らかさの衝撃で、クールダウンしていく俺の怒りのレベル。
「おい!失礼だぞ、トルマ!」
「おじさん、騙されているんだ!このペテン師ヤローに!おい、衛兵、このペテン師をつまみ出せ!」
だけど、衛兵は動けなかった。夜会には、うちの全軍が参加していたから。
「ご主人様に刃だと!」
リザ、メリー、ルスス、フィフィが俺の前に立ちはだかった。
「おい!何をしている。ペテン師集団だぞ!」
「お前が消えろ!」
ズゴッ!
トルマの腹部に強烈な拳骨一発。ジュレちゃんだった。その場に倒れるトルマ。
「おい、コイツを牢に入れておけ。アルジェント卿は、我らシガ八剣のガード対象の者だ!」
「はっ!」
衛兵達が、トルマを片付けていく。
「だが、オーユゴック卿よ、孫二名の件は、この場で話して貰いますよ」
って、ジュレちゃん。まぁ、何時までも隠しては置けないよな。オーユゴック卿から語られた真実。俺は恥ずかしさの余り、逃走しようとするが、セーラとリーンに阻まれた。
「私達にもう一度、生の時間をくださったご主人様と、私達姉妹は添い遂げる覚悟です。ですから、ご主人様のことは悪く言わないでください」
リーナも自らの身に起きたことを話し、死亡疑惑を払拭させた。だけど…奴隷堕ちの過去は消えない。
「奴隷堕ちしましたが、私に生きる希望を与えてくださった、ご主人様に一生涯付いていく覚悟ですので、暖かい目で見守ってください」
と締めくくっていた。俺と一緒にいても良いことは無いよ。貧乏クジばかりだし…