レッセウ伯爵の乱心のせいで、また領地が増えてしまった。太守代行が出来る者を育てないとダメだな。
「ティファ、将来的に太守代行も視野に入れてくれるか?」
「私ですか…私は…」
「リーナも太守代行を任せたいし。俺の補佐は、メリーがいれば、大丈夫だと思うんだ」
俺程度の者に、3人も帯同する執務補佐官は要らない気がする。
「ティファ、ご主人様のご希望を叶えるのも、眷属の努めですよ」
って、メリーが援護射撃をしてくれた。
「はい…努力したします」
真っ赤な顔で俯いているティファ。
で、今後の方針…ミツクニ公爵サイドのね。
「カレーライス食べたい♪」
って、ミト。ここは孤島宮殿である。常夏の世界である。なのに、カレーなのか?
「カレーか?スパイスは揃っているが、カレー粉もカレールゥーも無いぞ」
先輩の説明。無いと俺には難しい。
「はちみつと林檎の奴!」
それは、更に難しい。この世界では売っていないと思う。
「福神漬けは私が作ります」
って、ユイカ。漬け物担当になりつつある。
「カレー、いいですね」
って、シズカ。まぁ、確かにそそるのだが…問題はカレー粉である。
「肉?」
「ハンバーグ先生なのです」
「Tレックスならまかせてください」
って、肉食娘達も乗り気になっているし。はぁ~。
「カニはカレーって言うのに入るのか?」
ってカリナ。カニは無理な気がする。あれ?先輩は?
『カレー粉の研究する。具を頼む』
だと言われても…どんな粉にするんだ?インド風?ヨーロピアン風?それとも和風かな?
「アリサ、ニンジンとジャガイモの生育は?」
「初物なら行けるかな?」
「問題はタマネギだな…」
アリサ農園では栽培していない。リザ、タマ、ポチ、シズカ、ゼナ隊を連れて、セリビーラの中層にある植物地帯を探す。タマネギ似の魔物って、見た気がする。鬼オンって奴だっけかな?
そして、ソレを見つけたのだが、催涙ガス攻撃持ちだった。これは、強敵な予感…斬る度にガスが発生していく。換気扇なんか無い迷宮内。リザが目を瞑り、気配を感知して、尻尾ではね飛ばしていく。たまに、ポチを誤爆してるけど…タマは先読み能力で避けられるのだが、ポチは動体視力を生かして避けるので、目を瞑ると避けられないのだった。
「痛いのです~」
「ごめん!」
奥の手…『強奪』で魔核を奪って、倒す。チートすぎる攻撃。無事?にタマネギを採取出来たので、ジェラシックエリアへ…肉の採取である。
リザはTレックス狙い、ポチはトリケラトプス狙い、タマは…首長竜を包めなかったことで、首の短い始祖鳥狙いのようだ。ゼナ達はTレックス、シズカは俺の肩に頭を載せて、昼寝中である。体力不足かな?
「兜焼きカレーなのです♪」
って、ポチ…結局、キャンプファイアーでの兜焼きはポチだけが満足そうに食べていた。兜焼きにすると見た目がグロすぎたのだった。それに兜焼きで無くても、旨い肉だったし。
狩りは精肉が終わらないと、次を狩りに行けないルールにしてある。大漁に狩らせない為である。人間には少し肉が固すぎると言うか…大量にあっても困るというか。
--------
翌日、アリサ農園で米の脱穀作業。都市核の調整。日本と違って、梅雨と台風が無いので、土の水分の量と相談して雨を降らせる日数を決める。
徐々に農民の数も増えてきたようだ。
「やり甲斐があるよ~。前回は大失敗して、国を混乱させたからね」
って、アリサ。
「姫様、そんな事無いですよ」
って、元国民の人。
隣国の茶々入れが失敗の原因らしい。でも、他人のせいにしないのが、アリサである。
「今回は、もっとがんばるよ~」
いい汗かいているなぁ。10年後が楽しみである。
宮殿に帰ると、先輩が試作品を試していた。
「う~ん…」
ミトは敗因を考えているようだ。失敗らしい。
「スープが合わないのかな?」
って、シズカ。先輩はオーミィ牛の骨で出汁を取ったようだ。上品すぎるのでは?カレーは庶民の食べ物だしねぇ。
俺は鬼オンを捌いていく。手足があるタマネギ…真っ二つに割ると、内臓が出てくるが骨は無い。内臓を除くと、食べられるのは、外側の3枚程度しか無い。これは効率が悪い。
翌日、セーラと公都の市場へ…市場でタマネギ探しだ。そして、漸く見つけた。八百屋では無く、花屋の球根売り場にあった。なるほど、見た目は大きな球根である。この世界では食わないのか?
大人買いして、孤島宮殿に持ち込み、セーラに微塵切りと、飴色になるまで炒めて欲しいと頼んだ。ルルは霊園の管理で週末しか帰って来ないのだった。
翌日、羽川とパリオン神国へ。砂漠地帯なので、カレーに似た食べ物が有るかなって、淡い期待を持ってきた。後、法皇を塩像にしたので、トップがいない為、暫定的に俺がトップにされていた。パリオン神の神託によって…
神殿の中は塩だらけである。羽川によると、塩像は徐々に結晶化していき、全身が結晶化すると、琥珀色になっていく場合があるそうだ。なので、結晶化するまで、その場に放置してある。
街中にあった神官達の塩像は、住民の手で破壊され、単なる塩となって、風に舞っていた。畑がダメなのって、これが原因では?塩分の多い土では、植物って育たないんだよな。
「そうなの?」
俺の心を読んだ羽川が聞いてきた。
「土中の塩分を抜かないと…」
「お願い…抜いて…」
強奪すればいいのかな?って、どこに転送するかな?海かな?人塩は安いので、売ってもなぁ。で、孤島のあった辺りに塩を廃棄していく。パリオン神国内の都市を巡り、都市核を調整していく。土から塩分を除去して、雨を適度に降らせ、土に活力を与えて行く。
その後に、当面の人事を決める。トップであった法皇は塩像である。いや、神様関係者がトップではダメなんだろう。シガ王国のように、宰相を置くことにした。
「パリオン、ホムンクルスを作れるか?」
頷いたパリオンが、ホムンクルスを創造した。見た目は何故か美神令子である。何故?
「これなら、ご主人様がかわいがらないでしょ?」
まぁ、爆乳系は苦手である。
「神に仕える巫女は、爆乳系がいいのよ。民衆の目を引くし」
なるほど…では、コイツを女王にして、思考回路はニナを参考にした。良い太守代行になるだろう。令子に宰相などをスカウトしてもらう。腹黒系、無計画な奴は除外してもらい、数名をスカウトしてもらった。その中から宰相、軍事担当、経済担当、厚生担当などを任命した。
「しばらくは、一般の民衆より少しだけ高い賃金になるけど、頼めるかな?」
「喜んでお引き受けします。この国が良くなるのでしたら」
って、言ってくれた。さすがニナのスカウト眼スキルだ。
で、俺は太守になろうとしたのだが、閣議により新生パリオン神国の国王にされてしまった。女王はパリオンという名前の美神令子似なホムンクルスである。で、俺の名前は、アール・アルジェントでは、マズいので、アール・ウール・ゴーンにしてもらった。アインズ様にあやかってみた。
戦争中なので、国境警備には手懐けたゴキブリ君達を配備した。固い上、何でも食べててくれるのが良い。そして、子だくさんであるし♪民兵達は徐々に後退させていく。
攻め込んできた国々へ赴き、停戦を要求もしないとな。売られたケンカは買う方針とも伝えないと。俺は黒竜ヘイロン、パリオンと共に、停戦交渉に向かった。
その為、交渉する相手国家は右へ左への大騒ぎになった。不死王と最強暴竜、そして神本人が訪問したのだから…交渉相手は大国であるシガ王国、サガ帝国へ応援を要請したようだけど、それぞれの王家には事情を話してあるので、応援要請を蹴ったもようだ。
「停戦条件は飲みます」
停戦条件は二度と攻め込まないこと、食料支援をすること、パリオン神に祈りを捧げることである。破れば、防戦ではなく占領戦に出るとした。戦力的には、訪れた3体しかいないんだけど、インパクトが有りすぎたのか、すんなりと折れてくれた。
そして、パリオン神国へ凱旋帰国。本来の目的に戻る。カレー粉探しだ。あぁ、黒竜ヘイロンはお駄賃として、いつものように手合わせをして帰っていった。俺との戦いが楽しいらしい。アイツ、マゾなのか?毎回、ボコられているんだけど…
「パリオン、カレー粉ってないのか?」
「う~ん…それがどういう物かがわかりません」
パリオンは羽川翼姿では無く、本来の幼女姿になっていた。でも、見る人が見れば、神だとわかるらしい。俺にはわからないんだけど…カレー粉の説明かぁ。食った事無い者には難しい気がする。
「色々な香辛料をブレンドした黄色い粉だよ」
「う~ん…」
やはり、分からないらしい。二人で民衆の食べ物屋を喰い歩き、似た食べ物を探す作戦に変えた。その結果、分かったことが…塩分濃度の濃い土から出来る作物は、塩分濃度が濃いようで、香辛料など使わないでも塩辛いのであった。これにカレーを掛けるバカはいないと思われる。
住民の殆どが病弱なのは、塩分の取り過ぎではないのか?血色の良かった神官達の食事が気になる。
「パリオン、神官達は何を食べていたんだ?」
「たぶん、輸入した物じゃないかな?」
輸入した物を貯蔵している蔵へ案内してもらった。パリオンは俺といるだけで嬉しいようだ。いつもは見せない笑顔である。今まで、こうして二人でいる機会って無かったからなぁ。
「なんか嬉しそうだな?」
「うん♪二人っきりで、一緒にいられる…それだけでいいんだよ」
それでいいなら良いか。ヘタに妄想をすると、ミトが飛んで来そうだし。
「悪いけど、もう飛んで来ているわよ!」
って、ミト…へ?
「帰りが遅いから来たわよ!」
「何もしていない…」
「やらかしたよね?メリーとシスティにお願いをしたよね?」
あぁ、停戦交渉の後盾の件か…
「ふ~ん、知らない間に、国王になっているなんて…どこまで、仕事を背負うんだ?」
背負うつもりはないが、仕事が寄ってくるんだ。パリオンはミトが恐いのか、俺に抱きついて、震えている。
「まぁ、先輩らしいけどね。で、カレー粉は見付かったの?」
この国の問題点をミトに話した。
「塩分濃度が濃いのか…それは、身体を壊すよな」
ふと、脳裏に疑問が湧いてきた。
「パリオン、砂の下には何があるんだ?」
「えっ?!なんだろうね」
分からないようだ。ふと脳裏に浮かんだのは、昔見た映画…『猿の惑星』だ。違う星に着いたと思ったら、未来の世界だったってお話。天から7つの大樹が降りて来たとしたら、ディープインパクト状態で、その時あった文明は全て破壊しただろう。着地時に発生した衝撃波で…
砂は無機物が風化した物である。広大な砂漠地帯…何らかの無機物が大量にあったはずである。そして、濃い塩分濃度、生き残った現地人を塩像にした名残りって、考えれば、なんとなく辻褄が合う。
「先輩…その妄想は危険だよ…」
ミトの顔から血の気が失せていく。パリオンは、固まっているようだ。そこまで、思い至らなかったのであろう。
俺はある物を脳裏に浮かべ、土の中から『強奪』した。俺を襲う衝撃的な事実…強奪出来てしまったのだった。それを見たミトは、力無くその場に崩れた。俺の手にはレトルトカレーのパックがあったから。
「ここって、未来の…」
だから、日本の文化が沢山残っているんだろう。ほんの一握りの転移者、転生者だけで、あんなにも文化は浸透しないだろう。
俺の心を読める者達が、先輩と共に転移してきた。
「アール…」
先輩にレトルトパックを手渡した。それを見つめて固まる先輩、ユイカ、シズカ、そしてアリサ…え?アリサにも見えていたのか…ショックだ。
「そんな…」
パリオンが一言呟いた。俺を抱き締める力が強くなったようだ。
「この下に…」
いつか発掘しよう…砂の量が膨大すぎる。下手に除去すると、この辺りの地形が変わりかねない危険がある。住民を護ることは、国王の使命だと思う。
「アール…そうだな。生きている者が優先だな」
先輩はストレージに砂を全て入れようとしていたが、俺の心を見て思いとどまってくれた。
「だけど、いつか、砂の下を捜索したいな」
頷く俺。
------
レトルトパックの発見により、試食出来る状況になり、カレー粉の捜索に役立った。似た料理…いや、レシピが残っていたのだった。ボルエナンの里に…ここを訪れた日本人の転移者が伝えたようだ。更に驚いたことに、ネーアという日本料理の研究家もいた。灯台下暗しだった。こんな身近に存在していたとは…エルフがカレーを食べているイメージが湧かなかった為、捜索から除外していたのだった。
「これで、再現できる。レシピの足り無い部分は、わかっているし」
奇跡の料理人がカレー粉を作り始めた。カレーパーティーはここと、孤島宮殿の2箇所で行うそうだ。エルフの里に、魔王は入れないそうなので、シズカ、ユイカの為の処置である。
肉は、煮込んで型崩れしないTレックスの肉が採用になった。トリケラトプスはハンバーグに、始祖鳥はチキンカツになる。
「これがハンバーグなんですね」
って、ネーアが俺の調理を見ていた。横ではヨダレが流れ出ているポチが貼り付いている。
「肉を挽き肉にするのか…」
挽き肉って手法を初めて知ったようだ。今までは、切り落としや、コマキレ肉で試作を繰り返したが、あのフワフワ感再現できなかったようだ。コマキレを固めたら、包み焼きに近いだろうな。
ルルが始祖鳥でチキンカツを上げている。リザ達戦士組は孤島の海でカニと戦闘中である。力技は禁止で、武器による攻撃で倒すルールにしたようだ。タマはそれに参加している。カニの後にタコを希望しているから。
今宵の夕食は賑やかになりそうだ。