会議中である。参加者は俺、ミト、メリー、アリサ、ティファ、リーナ、ニナ、ルーニャである。赤字領地の太守代行もしくは、その予定者達である。
「どうするかな…」
って、どうにも成らない。ティファには旧レッセウ伯爵領をまかせたいと思っている。元々はあそこの秘書官だったし。
「魔核を大量に売り出すのは?」
「暴落すると、他の領地に迷惑をかけるからなぁ」
ナマコの量産化で、魔核は定期的に大量に手に入っているが…
「新たな事業を考えないとなぁ~」
養殖業は安定化してきた。農業はまだまだである。鍛冶もまだまだ。さて、どうする。
「税率をあげますか?」
って、ニナ。
「1年か2年は据え置きにしたい。それだけの苦労は住民に掛けたのだからな」
「そうですが…」
裏の世界の金持ちから『強奪』した金だけでは、補填も難しい状況である。それに、入手不明金が多大だとマズいので、ちょっとずつ補填しているし。
「ねぇ、あの砂で何か作れないかな?」
って、ミト。あの砂とはパリオン神国周辺の砂漠地帯の砂だと思う。何か、ちょっとずつ利用して減らす作戦なんだろう。
「焼き固めて煉瓦か?製塩の際の排熱が利用できるか。ルーニャ、労働力に余力ってあるか?」
「う~ん…少しくらいなら。でも煉瓦作りって、素人で大丈夫ですか?」
難しいかな…いや、問題があるな。
「ミト、あの砂は、あのままでは無理だ。塩を除かないと」
「あぁ、そうか…塩が混ざっているのよね」
塩害被害が深刻である。まず、国内の塩の除去が先で、砂漠地帯まで手が出せない。その時、閃きが舞い降りて来た。そうか、塩を結晶化してブロックのようにすれば…熱でも溶けない頑強な素材になりそうだ。水に弱い難点があるが…
「その手があるわね。塩像がブロックになったと思えばいいのね」
って、ミトが俺の妄想に賛同してくれた。が、結晶化は面倒だ。熱水に塩を溶かして、徐々に結晶化させていかないとダメだ。どうするか…
「パリオン神国には、神の制裁は無いはずよ。だって、神がトップの街だし♪」
って、ミト。先輩に創造してもらうのか。結晶化装置と、ブロック作成装置を…確かに、神によってもたらされた被害だ。神に責任がある。文句があるなら、俺が戦えばいい。
『私も一緒に戦う!』
って、パリオンからメッセージ…こいつも俺の心が読めたのか…負けた気分だ。
『どんまい♪』
って、アーゼ。だな…
「じゃ、次回は新規事業が動いたらにしよう」
会議は終わり、みんなをそれぞれの仕事場、赴任先に送り届けた。
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ガニーカ公爵領に来た。ミトの公務である隠密旅である。メンバーは、いつも通りの馬車2台である。ミトの偽りの身分は、エチゴヤ商会の新規出店候補地を、選定する調査官らしい。支店自体は既にあるらしいけど。俺はミトの補佐だそうだ。
ガニーカ公爵領は、王都とオーユゴック公爵領の間にあり、領地のほとんどが海に面した場所である。海に面しているせいか、海産物を扱うお店が多い。おぉ~、干物もあるのか…値段は王都の1/20程度である。ここは1つ大人買いをする。焼き魚定食狙いである。孤島宮殿において置けば、腐る心配もないから。
「干しアワビもある…これも買う」
「こんな買ってくれるの~。オマケしてあげる」
って、猫人族の女性。
「貝殻細工もあるけど、どう?」
「俺は、食い物担当なんで…」
「そうかい。じゃ、エチゴヤの支店に頼んでよね」
って、エチゴヤは有名らしい。俺の世界のドンキーとか7-11くらいに有名なんだろうな。
「わかりました。主に伝えておきます」
と、営業スマイルで答えておいた。
漁師らしい鰓人が、活きの良いサバのような青魚を持って来たので、それも大人買いして、孤島宮殿へ転移させておく。サバは足が速いから…
「タコ~?」
「ここのタコはちっちゃいのです」
魔物では無いからね…タマ、ポチは魔物の方を本物と思っているようだ。って、イイダコとホタルイカかぁ…これも大人買い。ミトが苦笑いして見ている。支払いは先輩持ちらしいので、大人買いでも安心である。
いきなりの転移は怪しまれるので、ポチとタマには魔法のカバンを持たせていて、それに入れると、孤島宮殿に転移するようにしてある。この世界の商人達も使う、容量が見た目とよりも遥かに多い魔具である。王都の商人は良く使っているが、ここの行商人は持っていないのか、珍しい物を見る目で見ている店員さん達。
「さすが、エチゴヤの先遣隊だね」
って…エチゴヤは有名過ぎるのか?
大人買いをしている最中、ボロを纏った猫人のお爺さんが現れ、
「聞け!皆の衆!この豊漁は深き海の底から海底人が襲ってくる予兆じゃ!今の内に海辺を捨てて山に逃げるのじゃ!」
と、告げた。神託の老人か?巫女には見えないし。お爺さんは、海を睨み付けながら演説をしている。だけど、ここの人達の目は険しい。
「ベムト爺さん、今はお客さんが来ているにゃ。寝言は家に帰って飼い犬にしてやる事にゃ」
猫人の店員が老人に声を掛けた。
「で、いくらになった?」
老人から俺に視線を移させた。
「皆で分けられるように、銅貨で払って貰えると助かるにゃ」
こんなに大人買いしたのに、銅貨100枚に届かない。物価が安すぎるだろ…
店を離れて、ミトにマップ探索をしてもらった。海底人っていうがいるのかのチェックである。深海豚鬼という知らない魔物がいたので、1頭を『強奪』で引き寄せた。手足がヒレになった豚のようだ。リザ、ポチ、タマが精肉にしていく。そして、肉を焼いて、みんなで試食をした。リザが捌いたってことは喰える肉だから。リザの能力なのか、喰えない肉は捌かないのだ。
「豚肉そのものね」
って、ミト。俺もそう思う。ポークカレー、生姜焼き…喰いたいメニューが脳裏に広がる。その途端「食べたい」ってメッセージが大量に送られてきた。みんなも、豚肉に飢えていたようだ。
で、海底人が気になるので、近くの宿屋にチェックインした。
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夕食…宿の料理の他、ユイカが鯖味噌煮をギフトしてきた。先輩からは生姜焼きである。うまい…ソウルフードだな。俺とミトがうまそうに食べていると、みんなも釣られて食べている。
「こんな料理あるんだ…」
セーラが驚いている。味噌自体が珍しいのだろう。更に味噌で魚を煮込んであるし。
「うっ!ハンバーグ先生のピンチなのです」
ポチが生姜焼きにやられたようだ。ハンバーグとは違う旨さであるから。
喰いながら、地図を見ている。ガニーカ侯爵領は、東西に長い領地で、全長1000キロ近い海岸線を有するようだ。豊かな漁場が多そうだな。海岸線には50キロごとくらいに、結界柱で護っている入り江が有り、そこの入港料が、主な収入源のようだ。ってことは、危険な海ってことか?ガニーカ侯爵領は赤字では無いし…
その晩は何ごとも起きなかったので、ガニーカ侯爵領の領都を目指した。領都に着くと、次期侯爵を筆頭に、領内の貴族達の出迎えがあった。隠密旅なのに、王様が事前に知らせたらしい。
「あの子らしいなぁ」
って、ミト。ミトが問題ないようなので、スルーだな。主賓のミトは晩餐会に招待されたので、俺達は自由に動けそうだ。
「あれ?先輩も行くんだよ。主君のガードしなさいね」
って、自由行動は出来ないようだ。
「俺の身分は?」
「ムーン士爵でもいいわよ」
俺一人では恰好が付かないらしく、メリー、フィフィ、ルススが同行してくれるらしい。だけど、俺より有名な元勇者の侍従達が目立っている。俺を勇者と勘違いする者もいる始末だった。
「ご主人様は勇者ではございません」
って、メリーの説明。そうすると、今度は勇者でなく、末端の士爵に仕えた訳を訊きたがる貴族達…メリーのことはフィフィとルススにまかせて、俺はその場から逃走した。有名では無い俺は、誰も気にしていないようだ。
中庭に出て、アーシアとパリオンへ連絡をした。二人には海岸線を監視してもらっていたのだ。
『問題ありません』
『こちらも大丈夫です』
今の所、大丈夫らしい。
「ここで何をしてらっしゃるのですか?」
少女に声を掛けられた。マップ情報を見ると、ガニーカ侯爵の姪にあたる伯爵令嬢で、ネーレイナと言うらしい。
「俺はミツクニ卿のガードだ。ここで、不審者や侵入者が無いかをチェックしているんだ」
「あなたのお名前は?」
「ムーンだ。爵位は士爵だよ」
「ムーン士爵様ですか…」
「これ、喰うか?」
フェイクの魔法カバンからプリンを取りだし、少女へ手渡した。いきなり転移や強奪だと驚かれてしまうので、フェイクでいいから魔法カバンから取り出したように見せろと、ミトに言われているのだった。
「おいしい…どこの料理ですか?」
「セリビーラだ」
俺の黒字の領地名を答えた。
「迷宮都市に、こんな料理があるんですか…あっ、私…ネーレイナと申します」
情報によると15歳とあるが、17歳くらいに見える。
「ネーレイナ、ねぇ、本当に海の向こうから海底人が攻めてくるのでしょうか?」
「姫様……それは私にも分かりません」
彼女に話しかけた女性は、マップ情報によると侯爵の長女だった。
「ですが、家臣達に調べさせたところ、漁師達が普段見かけないような遠海の魚や魔物を見かけたという話を、幾つも拾って参りました。更に、先月帰還するはずだったドンスデン男爵の船団も未だに戻りません」
「海の向こうで、何が起こっているのかしらね――」
ネーレイナは真剣に訴えているようだが、侯爵の長女は他人事のようだ。
『酒場で聞き込みをしてくる』
って、先輩。相変わらず、俺の心をモニタしているようだ。
『あぁ、システィに王都の禁書庫を調べさせている』
仕事の早い先輩。
『こっちでも聞き込みをしてみるわ』
って、ミト。
「うん?彼は?」
侯爵の長女が俺に気づいたようだ。
「ミツクニ卿のガードをされているムーン士爵様です」
「ムーンと申します。よろしくお願いします」
「そう」
俺に興味はないようだ。まぁ、名の売れていない士爵だものな。
「そうだ♪ミツクニ卿の眷属なら、奇跡の料理人は知っているわよね」
「まぁ、同僚ですから」
「彼の料理が食べたいの。頼んでくれる?」
「まぁ、会った時に話しておきます」
「お願いね。さぁ、ネーレイナ、行きましょう」
ネーレイナは俺に、軽く会釈をして、侯爵の長女の後を付いていった。
『料理かぁ…海産物メインで攻めるか。お前はどうする?』
俺は料理担当では無く、喰う担当である。
『喰うのは、食い物だけにしなさいね』
って、ミト。俺は先輩と違って、通っていないんだけど…
『俺も通ってはいないぞ。あれは聞き込みだ』
ミトに言い訳をする先輩…
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晩餐会が終わった後、男女別に別れて、サロンで歓談らしい。ミトはまだ、出て来ない。
『沖合でしか見かけない魚が近海で獲れたり、強めの魔物が沿岸で暴れる事件が多いらしい』
って、先輩。
『システィが本を見つけたようだから、禁書庫に行ってくる』
暫く待っていると、
『書かれている下りはこうだ。「天地開闢のような地揺れが続き、海が干上がり人々は手掴みで海の幸を得、地上で動けぬ海の魔物を倒して使い切れぬほどの魔核を手に入れた。その幸福も長くは続かず、干上がった海の彼方から、海底都市ネネリエの忌まわしき住民達が押し寄せてきた。住民達は海底人を名乗り、沿岸の漁村の人々を頭から囓り、喰らっていった。だが、海底人達の暴虐も長くは続かなかった。神より授けられた海王五叉矛を操るガニーカ王によって海底人達は陸上から追い払われ、双海竜長杖を携えた王妃の魔法で深淵の彼方へ押し戻された」とある』
追い払われて、押し戻されただけなのか…それって、まだ生きているってことか。
『前兆として、食い散らかされた深海豚鬼の死骸が、大量に海岸に打ち上げられる事件があったようだ』
あのおいしいブタは、海底人のエサなのか?
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翌日、海上に来ている。飛べない俺はテンちゃんの背中に載っていた。そして、マップでブタさんの多い場所を見つけて、ダイブした。テンちゃんは水中では無敵にならないらしい。そもそも、息をしないでも大丈夫なのは俺くらいなようだし。まぁ、何かあれば、チータが揃っているから、助けてくれるでしょ。
海の底に着き、全マップ探査をした。黒塗りのエリアを発見。そこへ移動する。黒塗り箇所は別のマップってことなので、黒塗り地点に着くと、全マップ探査を再度行ってみた。
すると、海溝の底に「海底都市ネネリエ」という表示が現れた。これかな?
その都市を訪れ、問答無用で襲って来た海底人を灰にしていく。で、話し合いの出来る者と、話し合いをした。パリオン神国の国王、アール・ウール・ゴーンとして…
俺の提示した条件は、食い物は確保する代わりに、俺の海軍になれっていうものだ。話の通じない奴、敵対視するやつ、食い物にしようとする奴は、問答無用で灰にしていく。魔物では無いようなので、魔核は無い…
ネネリエの太守は俺がなることになり、代行を一番理解してくれた者にした。これで、安心かな?エサを確保かぁ…手懐け失敗のゴキ君達でも大丈夫かな?
そして、地上へ戻った俺。
「海底人を配下って…」
ミトが苦笑いしている。
「お前らしいがな」
って、先輩。
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ミトがガニーカ侯爵に、海底都市を見つけ、海底人を配下にしたと伝えたようだ。驚くガニーカ侯爵。存在を信じていないようだったそうだ。
そして、戦勝記念パーティー。奇跡の料理人の料理が振る舞われるらしい。って、材料確保は俺達の仕事らしい。配下の海底人達にブタさんを確保してもらう。話した結果。俺達の喰わない部分、ホルモン系を食べるそうなので、棲み分けができそうだ。
ナマコの内臓を試しに食べて貰ったら、喜ばれたので、ナマコの加工場から、海底都市へ、転移する装置を先輩に創造してもらった。これで一件落着かな?