ムーノ男爵領を越え、魔物の領域を抜け、山脈の向こうにある東方小国群のキウォーク王国に入ると吹雪だった…トンネルを抜けると的な感じではある。
「ユキ?」
「大変なのです!ユキなのです!」
妙にテンションが高いポチ。犬ゾリって雪の上だよな。ポチは雪の上を走り回りたいのかな?
飛行酔いの俺は、戦力外である。アーシアとパリオンに支えられている。ゲロゲロになりそうだ。先輩とミト達は甲板にかまくらを作り、コタツを入れて、ミカンを食べている。
「大丈夫ですか?」
リザが心配そうに訊いてきた。
「ダメだよ。孤島宮殿に行きたい…」
違う国に入国するので、入国時には飛行艇にいろって…ダメだよ。俺は空の上って…
ようやく飛行艇は雪原に着陸してくれた。真っ先に降りて、揺れない地面で安堵する。
「ユキ、ユキなのです♪」
テンションの高いポチが走り回る。それをアリサとタマが雪玉で狙う。
「これが雪ってものなんですね」
セーラは雪が初めてみたいだ。
「シロップを掛けて食べたいな」
って、カリナ。さっそく、器に盛ってシロップを掛けて、カリナに差し出すチートな先輩。
「うん♪おいしい」
それを見たポチ、タマ、アリサ、ルルなどが、先輩に群がる。
飛行艇の傍に大きなカマクラを作り、掘りごたつを置いた先輩。そして、新雪のかき氷をみなに振る舞っていく。俺は、パリオンの膝枕でしばしのお昼寝タイム。
寝返りを打つと、ぜんざいの香りがしてきた。かき氷の次はぜんざいか…女性の心を掴むのがうまい先輩。
腹を満たした少女組は雪だるま作成を始めた。女性組は、先輩の手ほどきでスキーや、ソリを楽しんでいるようだ。
「どう?体調は戻ったかな?」
ミトが様子を見に来た。
「どうにか、ゲロゲロ感は消えた。ただ、怠いだけ…」
「これ、飲みなさい」
命令形のミトが差し出してきたのは、甘酒のようだ。栄養補給にはいいなぁ。冷ましながら飲む。興味を持ったようなパリオンとアーシアにも一口づつ、お裾分け。
少女組は、雪だるま作りに飽きたのか、今度はソリ遊びをしている。平和な風景…いつまでも続くといいな…って、ポチがソリを引いている。犬の習性か?
「うん?リザ、狩りの準備だ」
「はい♪」
何かがいる。瞬動術で気配の方へ飛び出した俺、相手が雪の中から飛び出した。狼のようだ。群れだし。遅れて到着したリザ、メリー、ルスス、フィフィ、テンちゃんに屠られていく。
「リザ、これって喰えるのかな?」
「たぶん、鍋にすると良いかもしれません」
ステーキ向きでは無いのだな。群れを屠り終わると、リザ達は精肉していく。うちのチームのローカルルール…喰える物は、新鮮なうちに精肉しておく、ってことらしい。
この狼達は何をしていたんだ?群れのいた辺りにいくと、傷だらけの少女がいた。俺は回復コンポを掛けていく。救える者は救いたいから。
「先輩、どうしたの?」
神聖魔法の緑色のオーラに気づいたミトとセーラ、オーナが近づいて来た。
「狼にやられたようだ」
抱えた少女を見せた。
「近くに集落があるのかも」
ミトがマップ探索をし始めた。遊びに熱中して、まだマップを探索していなかったようだ。少女は栄養も足りていないのか、意識が朦朧としている。飛行艇に運び込み、栄養ドリンクを飲ませる。いわゆる甘酒ではあるが…
「……ここかぁ天国、かの?」
少女が言葉を発した。目の前に『>「東方諸国語」スキルを得た。』と表示された。あぁ、違う言語体系なのか…
「……あの?」
戸惑っている少女が俺達を見回した。彼女の服は狼達によりボロボロにされたので、先輩に服を創造して貰った。今は白い木綿のワンピースを着ている。
「ここは飛行艇の中だ。君は狼達に襲われていたんだよ」
「飛行艇?」
「そう…まだ、動かない方がいい。これでも食べて、のんびりしていな」
少女を食べていた狼達の肉を使った鍋料理を、丼に入れて、少女に振る舞った。
「おいしい…暖まる…」
味噌仕立てなので、暖まるだろう。酒粕も少し入れて有るし。肉は消化しにくいので、ミンチにして、生姜などと一緒につみれ状態で入れて有る。
「これを飲むと良い」
先輩がゆず茶を差し出した。これは柚子マーマレードをお湯に溶いただけであるが、柔らかい甘みで飲みやすい。
お腹が満たされて、落ち着いてきたのか、助けたお礼を言わた。
「ありがとうございます。私は雪崩村のピピネっていいます」
「俺はシガ王国のミツクニ公爵に仕えるアールだよ」
「アール様?」
「様はいらない。俺はそんなにエラくないから」
「アール?」
「それでいいよ、ピピネ」
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先輩がピピネの村を探りに行って、戻って来た。村の9割が飢餓状態のようだ。なんで?上に立つ者がムーノ一族みたいなのか?
「他の村も同じ感じだった。何かありそうだな」
「ピピネ、困っていることは有るか?」
助けた少女に訊いてみた。現地の人に訊くのが一番確かであるから。
「お願いします!村にはお金なんてないけど、私を含めて未婚の娘が9人います。シガ王国で奴隷として売り払ったお金で食料を売ってください」
奴隷は廃止したいからな…
「シガ王国は、奴隷を廃止する方向なの」
って、ミトが説明をした。
「食料の援助は、出来るだけするわ」
大きなカマクラを撤収して、飛行艇で雪崩村へ向かった。
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移動中に雪豹や、先程の狼の群れを見つけると、俺達狩人達が狩っていく。少しでも食料を増やしたいから。いや、先程の狼はオーミィ牛に少し劣る位の味だった為、ルスス、フィフィなどが欲していたからだ。
狩りをしながら、ようやく村に着いた。妙に男が少ない。ハーレム村か?立派な厩舎があるが、家畜は1匹もいない。エサが無いのか?
ピピネと共に村長の家を訪れた俺とミトとメリー。余り多いと、警戒されるとマズいから。
「ミツクニ卿、村人を代表してお礼申し上げます」
村長と村人達が俺達に土下座をしてきた。肉や野菜などを寄付したから…後、先輩が作った栄養補給魔法薬と流動食で、餓死の危機を避けられたからだ。
病人達は、ミーア、セーラ、オーナが治癒術を施している。
「これは些少ですが、村人達から集めた品です。是非ともお納め下さい」
村長が差し出して来た品は、様々な毛織物の衣装や小物、木彫りの置物や櫛、青銅製の剣や鏃などだった。
「じゃ、これは買い取ります。今、お付きの商人を呼びます」
すぐに商人として先輩がやって来て、品々を買い取っていった。
「買い取って頂けるのですか?」
「こいつ、エチゴヤの大旦那ですから、買い取らせます」
って、笑顔のミト。
「う~ん、素晴らしい織物ですね。ウチで働いて貰えませんか?」
「雇っていただけるのですか…」
「もちろんです。これなら、売れるレベルです」
っと、先輩と村長が新たな商談を始めた。
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商談が終わり、簡単な宴が始まり、村人達から、この国の問題点を訊き出していく。
「戦争?」
戦争貧乏なのか?
「ええ、冬が続くこの2年ほどはありませんが、それまでは毎年のように隣のコゲォーク王国との間で戦があるのです」
戦争の度に男性が徴兵されていき、女性ばかりの村になっていくと言う。う~ん…戦争と冬の2択なのか…そもそも、なんで戦争をしているんだ?
いや、冬が続くって…都市核が制御出来ていないのでは無いか?天候のコントロールは都市核で出来るんだし。
元々はヤクの乳で作るヨーグルトやヤク乳酒が、特産品だったらしいのだが、エサが無いので、ヤクを食料にしてしまったらしい。
冬が続く原因と戦争の原因を調べないとダメだな。
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キウォーク王国唯一の都市である王都キウォークの下町に、宿を取った俺とミト、先輩とカリナ。何が起きるかわからないので、後の者達は孤島宮殿で待機している。
この王都では隣接する湖に生息する食人藻という魔物の死骸を、食料にする事で飢餓から逃れていた。
王都の周辺の集落ではその恩恵を受けているそうだが、国全体をまかなうほどの収獲は無いようだ。更に言うと、それは旨く無いらしい上、収獲の際には命を落とす者が少なくないらしい。
食料なぁ…ナマコじゃ栄養にならないし…カマキリも栄養価はそうでも無いし…後、何があったっけ?
「先輩、救済案を考えて居るんですか?」
「あぁ、助けられる者は助けたいじゃないか」
「先輩らしいな」
俺は俺らしくがテーマで生きているんだよ。で、甘酒が一番良いかな?栄養価的には…暖まるし。後は、粕汁かな。問題は鍋の場合、具だよな…
って、言うか移民させるのが、早い解決策の気がする。働き手にはなるし…
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王都を旋回する飛行艇…俺はゲロゲロ状態である。パリオンとアーシアが俺を支え、セーラが回復魔法を掛けてくれている。
眼下の仮設飛行場となった広場には、沢山の貴族や使用人達が集まっている。王女であるシスティーナがいるからかな。主な輸出先がシガ王国らしいから。
孤島宮殿にいる諸国漫遊チームのメンバーを、飛行艇に転移させていく。こんなことなら、寸前まで孤島宮殿に、俺がいても良かったのでは?後の祭りではあるが…
迎えの人達を軽く見回すと、その中央に女王陛下がいた。キウォーク女王はアラフォーとは思えない爆乳美女で、胸元の主張が激しい立て襟の黒いドレスを着ている。既に、先輩の視線がロックオンしているし…
ミトと先輩が女王陛下の前へ進み出た。俺はゲロゲロ状態から抜け出せないので、後で控えている。
「ミツクニ卿って、あの小娘なのか」
「あれが奇跡の料理人のペンドラゴン卿ね」
ミトと先輩の噂話が飛び交っている。
「ミツクニ卿を怒らせるとマズいって。あの女の下僕のアルジェントって奴が危険らしい」
俺はそんなに危険では無いと思いたい。
「そんなに危険なのか?」
「シガ王家に謀反を起こしたらしいが、その戦力を武器に、不問にしたそうだ」
謀反?トルマが無い事無い事を触れ回っているのだろうな。
「だが、我が国には『冬の守り』がある。そんな奴が攻めてこようが問題は無い」
いや、攻めないよ。アーゼに禁止されているし。
「アルジェントを見くびるなよ。シガ八剣を配下にした実力者だぞ」
「なんだって、シガ八剣をか…化け物だな、ソイツは…」
まぁ、化け物ですよ。どうせ…
『どんまい♪』
アーゼから励ましのメッセージ。暇なのか…いいなぁ…
「シガ王国のミト・ミツクニです。女王陛下にお会い出来、恐縮です」
ミトが挨拶をしている。続いて先輩…
「ミツクニ卿に仕えるサトゥー・ペンドラゴンと申します」
ミトが俺に合図を送ってきた。俺は先輩の斜め後に進み出て、
「ミツクニ卿に仕えるアール・アルジェントと申します」
と、名乗った。響めく群衆。ラスボス登場って感じか?
「キウォーク女王ヘイタナじゃ。あなた方にはヘイタナと名前で呼ぶことを許そう」
「光栄です、ヘイタナ陛下」
主君であるミトが代表して、言葉を掛けた。
先輩が一歩前に出て、女王の白い手袋の上から口付けをした。この国の習慣で目下の者が行う習わしらしい。まぁ、代表して先輩だけが行った。
って言うか、ミトが俺はしなくても良いって。パリオン神国の国王がすんなよ!ってことらしい。
だが、俺がしきたりに沿わないことで、女王の視線がガン付きに近いのだが…
「ヘイタナ陛下、アルジェントは、一応国王を兼務していますので、そのような習わしはさせられません」
ミトがきっぱりと言った。
「ほぉ~、国王を下僕にしているのか、ミツクニ卿は…」
「いいえ。下僕ではありません。仲間です。仲間になってから、国王になりました。事実誤認はしないでいただきたい」
さすが王祖様、言うべきことは、きっちり言うんだな。
「では訊こう。この国よりも上の国の王なのか?」
ミトが進みでて、陛下の耳元でゴニョゴニョと…陛下の顔から血の気が失せていく。
「と、言うことです。なので、公では言えません」
してやったりのミト。
「そうなのか…」
陛下が進み出て、俺の手に口付けをした。響めく観衆…なんで?俺?
「すまぬことをした。攻め込まないでくれ」
いや、攻め込む気は無い。ミト…お前、何を言ったんだ?
その後、爵位ある随行員の紹介…シガ王国王女システィーナ。大歓声が彼女を包み込む。
サガ王国王女メリーエスト。静まり返る群衆。まさかの登場だったのか?神託の巫女であるセーラとオーナ、元勇者の従者であるリーンが紹介された。
戸惑う群衆。いや陛下も戸惑っている。VIP待遇は、システィーナだけだと思ったのだろうか。ましてシスティーナは俺の婚約者ってことになっていて、残りの者達は、俺の従属である事実。
「アルジェントって、征服者か…」
そんなことを言う群衆の一部…パリオン神が従属なんてバレたら、ラスボス決定では無いだろうか?
狼狽える陛下を先頭に、城内へと入っていく。ミトから陛下へと贈った品々が、城内に置かれている。エチゴヤのデッドストックからシスティーナとメリーがセレクトした物
である。それなりに価値の有る物ばかりらしい。
「表敬訪問で、これほどの品を贈るとは……さすがはミツクニ公爵である。ミツクニ公爵は太守の任にも就いておられるのかや?」
「そういうのは、アルジェントに任せております。私は外交、ペンドラゴン卿は経済、内政はアルジェントが担当しております」
「アルジェント卿の爵位は?」
「コイツですか?公爵ですよ」
笑顔で言い切るミト。陛下の表情は更に狼狽えているように見える。あんまり、脅すなよ~。
「領地はどれほどなのか?」
「シガ王国の大半かな?その他に国を2つほど持っているし♪」
陛下には、俺は征服者であるラスボスに見えているのか?怯えた目で俺を見ているんだが…