陛下の傍にいる者達は、既に俺に恐れを抱いているようだ。
「ムーノ男爵領は彼の領地です。ムーノ男爵は彼の従者でありますからね。後、セリビーラも彼の領地です」
「セリビーラって王家直轄では…」
「今は違います。アルジェントの領地ですよ」
自分のことの様に話すミト…
「彼は何者だ…」
「私の仲間であり、私の信頼できる執務官でございます」
執務官はメリーやニナである。俺だけでは無理だって。
「将来、シガ国王になられるのですか?」
この国の宰相が訊いてきた。
「興味ないでしょ?正妻は、王女では無いし」
「何?シガ王国の王女は正妻では無いのか?!」
陛下が驚いたのか、身を乗り出して訊いてきた。
「コイツの正妻は…言えません。申し訳ありません。そういう立場の者ですよ」
また、そんな脅すような言い方をして…
「王女より上の立場の者?まさか…」
誤認していないか…まぁ、誤認した相手は、ここにいるけど…そこに茶器の乗ったワゴンを押したメイド達が入ってきた。話題よ、変わってくれ…
「まあ、素敵な香り」
ミトが俺の心を読んだのか、話題を変えてくれた。
「ルモォーク産の青紅茶ですの。シガ王国のゼッツ伯爵領産と比べても遜色のない一級品ですのよ」
ミトの言葉に反応したのは、キウォークの第二王女のクリューだそうだ。童顔の巨乳美女で21歳、独身だと言う。勿論、先輩の視線はロックオンしていた。どんだけ、巨乳が好きなんだ、この人は…
「淡雪殿下はルモォーク贔屓ですな。他国の客人を歓迎するなら、自国の藻茶を出すべきではないか?」
「ガヌヌ将軍!」
筋肉質の赤毛将軍を宰相が窘めた。クリュー王女は淡雪姫と呼ばれているようだ。そのガヌヌの傍で、俺達を観察している無口な軍人がいる。万が一に備える。テンちゃんとパリオンがいるので、大抵の敵には対処できるとは思うが…
「この国のように、雪が続くと山村で暮らす民は、狩りどころか家畜の世話すら大変そうですね」
って、ミトが宰相に訊いた。
「わ、我が国の民は冬に慣れておりますから、ご安心下さい」
「噂では例年になく冬が続いていると伺いましたが…」
宰相の言い訳に、ミトが食いつく。
「ふふふ、ミツクニ卿はお優しい。冬が続いているのは、妾も承知しておる故、宰相に命じて税や賦役の全免除を通達してあるのじゃ」
都市核の制御が最優先課題では無いのか?おかしいぞ、この国の内政は…
「は、はい陛下。申し出のあった村には食料援助も行っております」
行っていないだろう!パリオンが俺の怒りのオーラを感じとり、宥めるように抱きついて来た。
『落ち着いて!』
ミトからもメッセージが飛んで来た。
「陛下も宰相殿も甘い!自助努力が足らぬのだ!税や賦役を免除していては、いつまで経っても、戦支度が整わぬ。兵力さえ揃えば、冬などに頼らずとも、忌々しいコゲォーク王国の蛮人など追い払ってみせる!」
「ガヌヌ将軍!」
戦闘意欲が漲っている軍人、それを咎める宰相。そうか、冬は人為的に続けているのか…防御の意味合いなのか?それにしても領民をなんだと思っているんだ、こいつらは!
『先輩、ダメ!』
セーラが抱きついて来た。怒りをクールダウンさせていく。
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女王達との会談後に、招かれた舞踏会で、先輩は貴族令嬢や姫君達から質問攻めに遭っていた。俺は仲間達と会場の隅にいた。ミトの指示で、俺は暴走しないように、付き添ってくれているのだった。
領民が餓死仕掛けているのに、この国の貴族達は裕福過ぎる。高価なドレスに立派な装飾品を身に付けている貴族の娘達。
「間違っている…」
「ダメですよ」
セーラが俺の腕を谷間にホールドして、俺の怒りをクールダウンさせていく。
「だって…」
「それは、この会場を見回せば、私達にもわかります。だけど、今は落ち着いてください」
俺をガードするように、リーン、ルスス、フィフィが立っている。メリーが周囲を警戒してくれている。が…
「こんな所におられたか、公爵殿!」
片刃の曲刀を手にした赤毛将軍が、俺に声を掛けてきた。身構えるメリー達…
「公爵殿は、幾つもの軍功を誇ると、聞き及びましたぞ!我が剣舞の相方として、その武勇をお見せ願いたい」
赤毛将軍の言葉により、舞踏会場が武闘会場に変化していく。やらないとダメなようだ。
「どうしました?武勲は偽りですか?」
俺は俺で無くなっていく。聖魔剣を手にした。俺の変化を感じ取った仲間達が、俺から離れていく。ふふふ♪剣舞?お前に舞う余裕があるのか?
楽団による勇壮な曲が始まると、殺意を纏った赤毛将軍。
「ゆくぞ、公爵よ!」
二刀流らしい…何刀流であろうと、お前の死は確定だ。こちらからは攻撃はしない。最後の一撃に全てを込める為に…相手の攻撃を受け流していく。
「貴様…」
受け流すことで、彼の殺意は増していく。もっと、殺意を纏え♪最後にフルカウンターしてやる。
そして、演奏が終わると同時に、赤毛将軍の首を刎ねた。
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目が覚めると、女王が俺と添い寝をしていた。
「お目覚めですか…将軍がおろかな事を…すまぬ…彼を生き返らせて貰えぬか?」
それくらいなら、彼の死体に近づき、回復コンポを掛けた。切断された首は繋がり、魂が器に吸い込まれて行く。
「もう1つお願いが…湖に封印された魔族を倒してください。見返りは…娘を差し出します…お願いします」
娘?先輩好みだよなぁ…う~ん…
「娘は要らない。その代わりに、この国を貰う。お前は女王のままで、いていいが、内政は俺に任せてもらう。どうだ?」
「なるほど…そうやって、属国を増やして…救済ですか…わかりました。お願いします♪」
なんか、自分から貧乏クジを引いた気分である。誰からもストップの声が掛からないってことは、正解を選択したのだろうか?
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湖に封印されている魔族は、中級にしては高めのレベル50だ。スキルは「灰化」「下僕召喚」などがあるそうだ。「下僕召喚」が気になる。
で、隣国が攻め込んできたらしい。コゲォーク王国はケンタウロスの国らしい。う~ん…
『先輩、村が襲われている』
って、ミト。俺は現場へ転移した。村に攻め入るケンタウロス。それを阻止しているミトとテンちゃん。ウチの狩人達を転移させた。転移するとすぐに、リザ、ポチ、タマが、迎撃に向かった。
第二陣はリーン、ルスス、フィフィの元勇者の従属達だ。メリーを指揮官として、迎撃で出て貰った。
「我こそはコゲォーク王国第三王子レタロミーなり!魔族よ!我が宝槍の錆となれ!」
リザ達は魔族では無いのだが…リザと互角のヤリ捌き…見事であるが、ポチのスライディングにより、足を滑らせ、バランスを崩し、リザに仕留められた。
「王子の仇を取れ!火炎獣前に!」
これはまずいだろう。俺が前に出る。アリクイのような魔物が八頭が前に出て来たが、瞬動術で近寄り、聖魔剣で次々と首を刎ねていった。
村に侵攻したケンタウロスは殲滅できた。さすがのリザも亜人系のケンタウロスは、精肉にはしないだろうと思っていたが、精肉作業をしていた。
「私は口にしませんが、この国の食料にしましょう」
だと言う。リザが喰えない物を…まぁ、背に腹は代えられないか。タマ、ポチも精肉作業を手伝っている。
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ケンタウロス達の侵攻の翌日、俺達は重武装の淡雪姫と一緒に、痩せた白熊のような乗用動物に乗って、湖の中央にある紫水晶の塔まで来ていた。この塔に魔族が封印されているそうだ。
淡雪姫の直属の部下である白百合隊という15人ほどの女性騎士が随行しているが、平均レベル8というお飾りに近い部隊である。
氷の下から魔物の叫び声が伝わってくる。
「あれが、そうですわ」
淡雪姫の指差す先には怪しげな祭壇があり、封印系の魔法陣が刻まれている。この祭壇は紫水晶の塔の周囲6ヶ所に設置されていた。
「≪砕け≫ 破城戦鎚!」
いきなりの封印解除…
「さぁ、一緒に戦ってくださいね♪」
なんか戦闘狂のような王女。苦手だ…塔が崩れていき、下半身がタコのような中級魔族が現れた。
「パリオン、行くぞ!」
「はい♪」
俺とパリオンの二人が、魔族に近づいて行く。
「えっ!パリオンって…パリオン神様?」
王女が驚きの声を上げていく。その横を、聖剣を手にした先輩とミトが、通り過ぎていく。空には天竜のテンちゃんと黒竜ヘイロンが、戦いの火ぶたが降りるのを待っていく。まったく、ドイツもコイツも戦闘狂だな…
中級魔族が一声吼えると、足下の氷にひびが入り、割れた氷の間から触手が現れた。それを聖剣で斬り裂いていく。
テンちゃんとヘイロンが上半身に攻撃を加えている。俺とパリオンは、中級魔族の本体へ天誅を加えた。塩化していく中級魔族。塩化した部位を粉々に砕いていく先輩達。
「アーシア!逃がすな!」
「了解です」
既に、女王からこの国の都市核を譲り受けているので、アーシアに防御レベルをあげてもらった。
棒立ち状態の王女を、メリー達の部隊がガードしてくれている。勇者の元従者達である。こんな中級魔族に遅れは取らない。
かくして、キウォーク王国に封印されていた中級魔族は塩となり、湖は塩湖になった…
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「ミト・ミツクニ卿、貴殿の功績を讃え、キウォーク青氷湖勲章を、授ける物とする」
「謹んでお受け致します」
授与式がつつがなく終了した。副賞は無しである。貧乏な国から貰う訳にいかない。いや、ミトなんかにあげる物なんか無い。
この国の実質の支配者になった俺。女王には代理執務官になって貰う約束である。
「今後も、この国のことをお願いします」
俺に跪く女王、宰相と将軍達。王女は、魔族の討伐の際に、俺達の戦力を見て、バトルジャンキーを止めたらしい。彼女にとっての、この世の終わりを見たらしい。まぁ、女神と不死王と、天竜、黒竜に勇者クラスが2名、勇者の元従者が4名、そこにアーシアである。規格外すぎる戦力を前にして、人間としての無力さを実感したらしい。
そして…塩化による天誅…この世界では最強最悪な攻撃方法だしなぁ。
アーシアと共に、都市核を再設定して、四季が来る様にした。ついでってことでは無いが、隣国であるコゲォーク王国を制服した。ゾンビ部隊、ゴキ部隊を投入して…
「鬼…なんだ、あの戦力は…」
ミトがゴキ部隊の実力に震えている。通常の兵器では死なない頑丈さ、高速で地面を移動出来、空も飛べる。最強の機動部隊である。そして、動作は速くないが、しぶとさはゴキ以上のゾンビ部隊。どんな敵にも怯ますに、確実に屠っていく。
「ケンタウロス部隊も編成しようかな♪」
これで戦争は起きないだろう。この二国間では…
「アール様がいなかったら、姫殿下も、白百合隊にいた私の婚約者も、無事では済まなかったはずです。感謝いたします」
と、冬将軍。
「今後は領民の為に、汗を流せ。いいな」
「はっ!」
この国の実権を握ったことで、この城の禁書庫の閲覧権をメリー、システィ、アリサ、ミト、先輩に与えて、必要な情報を探して貰う。
俺は宰相と、改革案を纏めていく。まず、贅沢な貴族達から財産の半分を没収。反発する貴族達。だけど、軍部も掌握している俺にとっては、痛くもない反発である。応じずに財産ごと逃げる貴族には、全財産の没収と、強制労働を課すことにした。労働内容は、炭鉱掘りだな。って、いうか逃げる場所が無い気がする。隣接するエリア全てが俺の領地もしくは協力関係にあるし。
逃げ場が無いことを伝えられた貴族達…渋々財産没収に応じていく。パーティーなどもなるべく自粛してもらう。飢えに苦しむ領民が、いなくなるまでの間だ。
「さすがです。名領主様です。飢えから領民が救えそうです」
と、宰相。産業を復興させないと、安心は出来ない。販路はエチゴヤの支店を置いて、そこから輸出をして、稼ぐようにする。ヤクのヨーグルト、ヤクの乳酒がメインだな。後、製氷した氷。これはシガ王国とイタチ帝国が、輸出先のメインらしい。
「まぁ、織物産業もあるし。ウィンウィンで商売が出来そうだよ」
って、先輩。
で、元バトルジャンキーな王女様は、諸国漫遊に付いて来たとダダを捏ねている。巨乳なので、先輩の判断に任せた。で、判断はパスらしい。カリナとシスティだけで手一杯だと言う。先輩曰く、今後の成長待ちと伝えたようだ。何の成長を待つのだ?
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飛行艇でも酔うのに、次元潜行ができる光船を貰ってしまった。今、アーゼの家にいるのだが…
「エルフのベリウナン氏族とブライナン氏族からの贈り物ですよ」
って、アーゼ。エルフ族の間では、アーゼの懐妊が知られてしまい、お祝いの品々が届いているそうだ。
「どこから、漏れたんだ?」
自分のお腹を指すアーゼ。そうか、見た目か…見るからに身重な姿である。神事の舞いは、出産が終わるまで、自粛するように各部族長の連名で嘆願書が届いた程だという。
みんなにバレるのは時間の問題か…
「ねぇねぇ、ダーリン。名前はどうする?」
って、アーゼ、エルフ流の名付け方があるだろうから、アーゼに任せたのだが、
「ダーリンが決めて下さいね」
って、頑固なアーゼ。
「考えて置くよ…」
で、光船…ミトと先輩に見せた。
「すげぇ~、最新鋭の奴じゃん」
って、ミト。勇者ハヤトの次元潜行船ジュールベルヌに引けを取らないらしい。スペック上では。
「で、船の名前は?」
って、先輩。
「アルカディアか、サウザンドサニーかで悩んでいるよ」
「じゃ、次元潜行船アルカディアにしましょう♪」
って、ミト。まぁ、ミト的にはそれだと思うが…
「ふ~ん、ハイエルフが懐妊すると、こんな物が貰えるんだ~」
って、耳を疑うミトの発言…なんで、知っているんだ…コイツ…
「みんな知っているわよ。ただ、口にすると先輩を追い込むから…ははは♪」
アーゼの元へ行くと、俺の心が見えなくなるので、不審に思ったそうで、俺の寝ている時に、記憶を読んだミト。そんなスキルがあるのかぁぁぁぁぁ~!で、みんなにバレたらしい。凹む俺…ミトの前では丸裸同然…
「うん、隠し事は無理だよ、アール君♪」
眩しいミトの笑顔が、俺を見つめていた。