次の訪問先はルモォーク王国。メネアの祖国である。空中酔いの激しい僕は、メネア、ナナ、ミトと共に転移をして、入国をした。ガードとして、メリー達が付いて来ている。正式訪問は明日で、着陸した飛行艇に転移して、載っていたことにする予定である。
「食芋が名産品なんですよ」
とメネア。まさに今、食芋フェスティバルが開催していた。食芋を使った料理の屋台が並んでいる。
「シガ王国には持ち込み禁止食材なんだよ」
と、ミト。腹保ちはいいが、カロリーがゼロで、嵌まると餓死するらしい。
「ダイエット食にはいいかもしれないけど、一般人には危険過ぎるんだ」
「ですか、うちの国でも、おやつ程度の料理がメインなんです」
カロリーゼロのポテチなんで夢のようでは無いか。あぁ、揚げ油分のカロリーがあるか…目に付いた屋台で食芋とベリーの包み焼きを人数分購入した。
が、
「あっちから肉の香ばしい香りがしますよ」
って、フィフィ。食芋より、そっちが気になるようだ。なので、そっちへ足を向けた。先輩とカリナは別行動で、街を視察中である。ポチ、タマ、アリサは屋台では買い食い魔王になるので、残り物と一緒に留守番を命じてある。
『ヒカリ、浮遊城って知っているか?』
先輩からメッセージが届いた。
『あぁ、あそこね。知っているは。攻略失敗したのよ!』
ミトに訊いたら、その浮遊城がこの国にあることが分かった。
「行くの?」
「リベンジ?」
「う~ん…」
ミト的には行きたく無いらしい。
「これが香りの原因かぁ」
フィフィの声。彼女の視線の先には、城虎の後脚が、炙られていた。並んでいる列に並ぶ、フィフィとルスス。ポチ、タマがいたら並んでいただろう。リザがいたら、狩りに行きたがっただろうな。つれて来ないで正解だと思った。お忍びでの視察である。目立つ行為は禁止であるのだが、肉大好き娘達は、本能を優先しまいがちである。
列にならんでいるフィフィに、留守番部隊の分も買って来るように依頼した。しばらくすると、肉串を大量に持って来るフィフィとルススが戻って来た。買ってきた2/3くらいを、飛行艇へ転移させた。
「う~ん、リザ向きの肉だな。旨いけど…」
それは固いってことか。固すぎたのか、途中で断念した二人。残った分も飛行艇へ転移させていく。
「おぉ~、麦芽水飴だ♪」
ミトが目を輝かして、水飴を購入して、これも自分の分以外は、飛行艇へ転移させていく。
「あぁ~、山車ですよ。主様」
メネアが懐かしそうに見つめる先には、「真っ黒なシルエット状のお城」「お城のバルコニーのような所に座る桃色の髪の王女様と黒髪の王子様」「侍女風の衣装の貴族少女達」の山車が見える。
黒髪の王子様?転移者かな?この国も転移者の国なのか?
フェスティバル会場を練り歩く。警戒心を緩めた訳では無いが、突然、横から飛び出した少女と接触した。
「きゃっ、ごめんなさい」
「こちらこそ、失礼。怪我はないかい?」
「うん、大丈夫」
そう言い残し、走り去って行く少女。
「ルミアだわ。何かあったのかしら」
メネアが呟いた。その呟きを切っ掛けに、彼女の後を追う。追う先では、小さな悲鳴と袋に何かを詰めるような音がした。
「ミト!メリー!」
「「了解!」」
細い路地に入ると、チンピラ風の二人組が、ズタ袋の口を縛りながら、こちらを睨み付けてきた。手ぶらの男は、山刀を手にして、僕達を威嚇している。ミト、メリー、ルスス、フィフィは臨戦態勢に、ナナはメネアをガードするように立っている。
「はぁ?あんだよ?お前ら…見世物では無いぞ」
刀を振り下ろして来た男。ミトが反応して刀をガードし、メリーが男を制圧した。ルスス。フィフィペアも制圧したようだ。ズタ袋は『強奪』で、僕の手に引き寄せ、メネアが袋の口を開けている。
「大丈夫?ねぇ、ルミア」
「う、うん。大丈夫――お姉様…」
救出を終えた後に、お付きの者の声が聞こえてきた。
「お姫様!」
護衛騎士達が剣を抜いて、僕達を牽制し、ルミアを保護している。
「剣を降ろして…お姉様よ」
「え?!これはメネア様…」
騎士達が剣を鞘に収め、メネアに跪いた。
「今日はお忍びだから、秘密にしてね」
って、ルミアに声を掛けたメネア。
「お姉様…この方が、アール様ですか?」
「うん♪」
メネアの頬が髪の毛の色に染まっていく。どうして?はて?
◇
ルミア一行と別れて、フェスティバル会場に戻った。
「神の創りし浮遊城、桃色の髪をした美姫は神の花嫁なり――」
この国の建国譚の出だしらしい。ミトが口にした。
「神の伴侶って、ハイエルフだろ?この国の祖はハイエルフか?」
「人間なのよ。もしかすると、滅ぼされた神かもねぇ。墜落した浮遊城では、ピンク色の髪の王子と王女が助かり、神の花嫁である母親は助からなかったって」
まぁ、神だし。自分専用のダッチワイフを、作る事も可能だろうな。うん?その王子と王女は神と人間のハーフか?
「浮遊城の最奥の間を守る影絵の番兵が、強すぎて逃げ出しちゃったんだよ。だって、倒す傍から湧いてくるんだよ。根負けに近いよ」
無限増殖するのか…神はソイツらにやられたのか?ミトのように根負けをして…
フェスティバルを見終えたので、孤島宮殿へ転移した。先輩とカリナは、街中のホテルに宿泊だそう。
『事件が起きたぞ!ルミア王女が攫われたそうだ』
先輩からメッセージが届いた。これって、さっき、攫われそうになった子か。僕とミト、ナナ、リザが先輩の元へ転移した。
◇
ミトの案内で、影城へ続く門の前で待ち伏せしていると、ルミアの桃色の髪が外れ、地毛である金髪になった。あれって、カツラだったのか。
「桃色髪でないと、王族の血が薄いってことだよ。もう初代から代数を重ねて、違う血が混ざっているからね」
って、ミト。お前の本当の年齢は幾つなんだ?
「――偽物だと?」
「ニセモノ、じゃ、ないもん」
ルミアが泣きながら否定している。まぁ、本物の王女で間違いはないと思う。姉であるメネアが妹だって、証言していたし。
「王族の髪の色じゃなきゃ、意味がねぇんだよ!このニセモノがっ」
人さらいが暴言を吐いた。『強奪』で王女を手元に引き寄せた。
「アール様」
僕に抱きつく王女。
「何?いつのまに…貴様らは何者だ?!」
僕達に気づいた人さらい集団。
「シガ王国公爵、ミト・ミツクニだ。お前らの悪事…見過ごせないなぁ」
って、ミト。まぁ、代表者だし。名乗ってよし!で、僕とナナで王女をガードし、本当に楽しそうに敵を倒していくミト、先輩、リザのバトルジャンキー達。
「ありがとうございます。アール様…お姉様のナイト様…」
うん?メネアのナイトになった覚えは無いのだが…
「終わったよ♪」
って、運動不足を解消したミトの声。だけど、終わって居ない。空からお客さんが来たようだ。数機の飛竜騎士が飛来してきたようだ。何かの音がすると、伸された人さらい集団が、別の生き物のようになっていく。僕の出番のようだな。ジョブをリッチにチェンジし、魔剣で、よく分からない生き物を成敗していく。
飛竜騎士の方はテンちゃんが来て、撲滅してくれていた。
「先輩、兄ぃ~!結界内に侵入したやつがいるよ!」
お宝狙いか?そいつを追う。『結界無効』スキルで結界に穴を開け、仲間達と共に結界内に侵入した。あぁ、ジョブチェンジしておこう。ルミアが僕を怖がっていたから。
目の前から影の番兵らしき黒い霧状の者が多数近づいて来た。大多数はミト狙いのようだ。ミトは敵認定されているのだろう。僕、ミト、先輩は聖剣を手にして、番兵達を消し去っている。ナナとテンちゃんでルミアをガードし、リザが倒し漏らし奴らを消し去っていく。
「ねぇねぇ、頼ってよ~」
パリオンが横に転移してきた。
「こんなつまらない敵で?」
「うん」
「頼っていい?」
「勿論♪『天罰!』」
番兵は塩化されて、それを聖剣で砕いて、道を作っていく。そして、最奥の間に到達した。ここには敵がいないようだ。どうして?
「うん?これは?」
ミトが玉座ぽい椅子の後ろで絵画を見つけた。黒髪の男性が桃色の髪の少女を抱き締めている絵である。転生者か?あれ?これって…
「先輩の絵ですよね?」
「俺の?」
「あぁ、ブラック企業にいたころの顔だし…」
どういうことだ?黒髪の王子が先輩?いや、始祖王…神ってことか…
「おいおい…この絵…嫌な予感がするんだが…」
「同感だよ~なんだ、これ…」
やばそうだ。
「ナナ!王女を頼む…」
「了承しました」
「パリオン…」
「隣で戦う。逃げないよ」
絵の隙間から、影が溢れてきた。まずそうだ。ジョブをリッチにチェンジしておく。最悪、僕が壁になり逃亡する時間を稼ぐか。
「テンちゃん、ミトと先輩達を頼む!」
僕とパリオン以外の仲間達を、孤島宮殿へ強制転移した。影は人型になっていく。そして…
『神の花嫁を奪う不届き者よ』
「人違いだ。あれはルモォーク王国の王女だぞ」
『小さき者よ、世迷い言は不要。花嫁の印たる桃色の髪を持つ娘を奪うつもりか』
うん?金髪だったぞ…こいつ、見えないのか?
「お前が神か?それならば、名を名乗れ!」
『我は神にあらず。神の留守を守る使徒なり』
使徒…う~ん。パリオンを見ても反応しないってことは、別の神格筋なのか?
『神の御名を尋ねるとは不遜なり。この世を治める主上の御名は尋ねるまでもなく、あまねく世界に知られておろう。至高の御方を崇め祈るが良い。しからば無痛の内に、この世を去り、あらたなる生へと廻るであろう』
それは無理である。女神と不死王相手に、何を言っているんだ?パリオンは苦笑いしているし。神の使徒が攻撃を仕掛けてきた。だけど、僕にもパリオンにも効果は無い。
「我が名はパリオン神…わが主様に攻撃をするとは、不届きな者よ『天誅!』」
神の使徒の身体が塩化していく。
『パリオンだと…馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁ!小さき者に、不可侵な神の眷属を、傷つけられるはずがない。貴様は、何者だ!』
「僕か?単なる不死王だよ」
完全に塩化した神の使徒を魔剣で粉々にした。そして、戦利品を孤島宮殿へ強制転移させていく。満身創痍で財宝を抱えていた冒険者達もだ。ミト達に処理を丸投げだな。
「パリオン…僕は何者だ?」
「主様は主様ですよ」
笑顔のパリオン。
◇
影城から王女を助けた翌日、次元潜行船アルカディアで、正式に訪問した。空間を破って出る時の衝撃…酔いが加速する…ゲロゲロだよ。セーラとオーナが笑いながら回復をしてくれている。う~ん、この空間酔いは酷い…
王城でロイヤルファミリーへ挨拶。
「ミト・ミツクニ卿よ。ルミアの件、メネアの件、感謝である」
王様とミト、先輩が会話をしている。僕は後方のベンチでダウン中である。セーラとオーナが両隣に座り、回復術をしてくれている。
「次元潜行船はダメだ…酔わない船をエチゴヤに発注だな」
「背中でもダメだったし、無理でしょ?」
って、テンちゃん。それはそうなんだけど…オンブで酔うのも最悪である。
「昨日はありがとうございました」
金髪の女の子が僕に頭を下げて来た。あぁ、ルミアか…
「そういうのはミトに言ってくれる」
「でも…」
「そうだ…朝の散歩で拾ったんだ」
彼女へ紫色の髪の毛の束を渡した。
「これって…これをどこで…」
「半分はメネアに渡してある。それはお前が弔う分だよ。ペンドラゴン卿に訊いたら、裏マーケットで高値で取引されているらしい。奪われるなよ」
それは転生者の王の妹で、ユリコ・ルモォークというメネア達の叔母の遺品であった。異世界召喚師であった彼女は、上級魔族に襲われて、亡くなったそうだ。亡骸が拾えない位にミンチ状態にされたそうだ。
しかし、その髪でも魔具が作れるらしく、彼女の亡骸、遺品と名のつく物がブラックマーケットで売買されているそうだ。
「本当にありがとうございます」
僕に抱きつくルミア。ゲロゲロ状態なんですけど…苦笑い気味の元神託の巫女二名。
「また、逢えますよね?」
「新年には王都へ戻る」
彼女はシガ王国の王立学院幼年学舎へと留学が決まったそうだ。
「はい♪」
◇
影城での宝物は先輩に丸投げした。そして、酔わない飛行艇を代わりにくれって頼んだ。
「お前が酔わない飛行艇…無理だよ。空中遊泳でも酔うんだろ?」
あぁ、テンちゃんと空のデートの件か?あぁ、ゲロゲロだったよ。ミトが上空で撒くなって、大変な事態になったし…
「じゃ、酔い止め薬の開発でいいな?」
なんか、要求がスケールダウンされたような…