次の訪問先…シガ王国とスィルガ王国、そして黒竜山脈に挟まれる場所にあるトナォーク王国だ。
そして、俺はミトのガードとして、謁見の間に続く回廊を歩いている。この地の料理は珍しい物が多いらしく、奇跡の料理人はカリナとシスティを連れて、食い道楽中である。
国王に土産品を渡し、貴族達と談笑しているミト。そんなミトを口説こうとする独身貴族達。ミトの地位狙いか?身体狙いなら排除するが…
『おい!私の身体は、お前の物では無い。ナンパ貴族は排除しろよ!』
って、ミトからメッセージ。まぁ、それなりに対処していく。
謁見も無事に終わり、孤島宮殿に戻った俺達。既に先輩達は戻って来て居た。
「鼬の皇帝に逢えるかもしれないぞ」
って、先輩。喰うだけで無く、仕事もしてきたようだ。鼬の商人と知り合いになり、デジマ島で待ち合わせをしたそうだ。
「信じられるのか?」
「正式な契約書を作った。これを反故にしたら、商人としてやっていけないだろう」
まぁ、商人絡みは先輩に丸投げだな。
◇
ハンター達が蟻の群れに襲い掛かる。ここはマキワ王国とイタチ帝国の間にある魔物の領域である。蟻の巣穴を見つけたので、うちのハンター達の経験値稼ぎに、出撃させたのだった。
既に女王蟻は『強奪』して、揺り篭に転移させてある。所謂、カマキリのエサを量産してもらう計画である。レベルの低い蟻達は、すでに転移させてある。
「しかし、多いなぁ」
って、ミト。確かに多い。間引きをたまにしないとダメだろう。マキワもイタチもお構いなしなのは、頂けないなぁ。まぁ、エサの確保にはなるなぁ。ゴキ軍団も投入して、食べてもらっているし。
「って言うか、先輩、ゴキ遣いになったんですか?」
まぁ、そんな感じである。うちの精鋭部隊だし。下手な近代兵器より優秀である。なんと言っても、レーダーに反応しないステレス性は、潜行部隊として重宝しているし。
「肉がいませんね」
ってリザ。確かに…蟻はゴキ達のご馳走のようだが、俺達のご馳走にはならない。っていうか、魔物を肉と言うリザをスゴいと思う。
って、先輩がいない。どこへ行ったんだ?何かを見つけたのか?
◇
『ちょっと、来てくれ』
先輩に呼ばれたので、ゴキ軍団を駐屯地へ戻し、仲間達を孤島宮殿へ転移させ、残りの蟻達を揺り篭へ強制転移させ、ミトと二人で先輩の元へ向かった。
そこは血煙が漂う村であった。戦闘があったようで、怪我人が多数いる。
「怪我人を頼む」
と、先輩。セーラとオーナ、後ミーアを転移させて、怪我人の治療に当たって貰った。ミトと先輩は村長らしき者と会話している。
「おい!この村の者達を移民させられるか?」
先輩に訊かれた。たしか、まだ余裕はあるが…
「うちの国でいいか?」
「あぁ」
「なら可能だよ」
全員の治療を終えた後、パリオンを呼び出して、一緒に転移して貰った。
◇
この村は、神への信仰を認め無い皇帝に見捨てられた、信仰を止めなかった者達の村だったそうだ。一種の流刑地である。
イタチ帝国自体、鎖国しているので、他国へ移民することを禁じられ、他国からのスパイ達に対して、人間の盾として利用されていたようだ。そもそも、他国へ通じる道は無いので、亡命も難しいらしい。
じゃ、あれって、どこかの国のスパイにやられたのか?
『違う。撃退に来たイタチの部隊の巻き添えを喰ったらしい』
と、先輩からメッセージが飛んで来た。
『イタチの部隊の第二陣が来るぞ。アイツらは、黒豹に載っている』
肉かぁ。うちのハンター部隊を呼び出して、迎撃した。
◇
先輩と共に、教区と呼ばれる流刑地を訪問して、移民の意志がある犯罪歴の無い者達を転移させていった。
うん??病気持ちがいる。ある教区で伝染病が流行っていた。先輩が分析をして、セーラ達の回復魔法で治ることを突き止めたので、セーラとオーナを呼び出して、治療をして貰った後に、転移させていった。
「帝国中央の人々は、教区送りにした者達を、見殺しのようだ」
吐き捨てるように言う先輩。怒りを纏い始めている。
「皇帝の教えは『不合理な神への信仰を捨て、臣民に富と幸福を与えた皇帝を崇めろ』だそうだ」
まぁ、神への信仰は自由だろうな。俺は信仰しないけど。
「神にケンカを売りたいのかな?俺には理解できない」
俺にも理解出来ない。売られたら買うけど、こちらからは売らない。面倒なことは、関わりたくないし。
「問題は、どうして天罰が降りないのかだな」
「このエリアの神が死んでいるからでしょ?」
「ザイクーオンかぁ…」
そうなるな。死んでいるのは、その1柱だけだったし。
◇
教区では無い村を視察してきて先輩。
「皇帝陛下万歳状態だ。教区の民とは大きな違いだったよ」
至れり尽くせりで、税金も安いらしい。どこから、収入を得ているんだ。資金があれば、俺も至れり尽くせり政策をしたいんだが…
「そうなんだよ。そこが問題だ。近代兵器を作り、大判ぶるまいの政策って、資金はどこから入っているのかだ」
そうなるよな。黒字にするのって大変なんだから。
その後も先輩は帝国内を視察していく。そんな或る日…
『おい!出番だぞ、アール♪』
先輩からお声が掛かった。俺は先輩の元へ転移した。そこでは戦闘中であった。相手は二刀流の耳長族の女性である。この程度なら、勝てるのではと先輩を見ると、少女を護りながら戦っていた。そういうことか。
「ここからは、俺が相手だ」
「貴様!何者!」
ジョブを魔神へチェンジした。短く悲鳴を上げた女性は、その場から数歩後じさり、足をもつれさせて尻餅をついた。
「名乗る程では無いよ。あれ?失禁か?それとも…」
「来るな!貴様…」
視線を逸らせた女性。
「ではご機嫌よう。この娘は責任を持って帝国外へと連れだそう」
と、先輩が言うや、俺達は転移して、その場から逃げた。あぁ、ジョブを戻さないと、恐怖を感じた女の子が泣いているし…で、この少女は『神託』持ちらしく、イタチ帝国内では死罪に当たるらしい。なので、リリーに預けてきた。彼女に託すのが一番安全だろう。
「さっきの女は誰?」
先輩に訊いた。
「宮殿騎士だそうだ」
帝国のエリート騎士かな?
「『神託』スキルは『災厄の芽』って呼ばれているらしい」
まぁ、神嫌いな皇帝なら、そうなるか。迂闊にセーラとオーナは連れて行けないな。
「あの少女の存在自体が罪だと、言っていたよ」
存在が罪か…皇帝は何様だ?
「占領するの?」
ミトに訊かれた。
「そんなことより、帝国の資金源を知りたいよ。どうやって、資金を得ているんだよ!」
占領なんかに興味は無い。領地の黒字化だな。俺の興味の先は…