ミト達は船でデジマ島を目指している。俺は孤島宮殿で、オーナ、セーラと待機中である。お空よりも船の中の方が酔いが酷いのだった。
デジマ島へ向かう目的は2つだ。1つは先輩がイタチの商人と待ち合わせをしている為で、もう1つはロリ勇者への表敬訪問である。アイツから預かっていた装備を、メリー経由で返せと言って来たのだ。なんでも、そこにある迷宮で魔王が発生したので、成敗してくるそうだ。
メリーの頼みでもあるので返却したのだが、感謝の言葉が無いので、表敬訪問をして、レンタル代という名の寄付を募ろうと思うのであった。
『着いたから、戻って来て』
って、ミトから念話が届いた。三人でお船に戻った。
「うっ…うげぇ~」
吐きそうだ。
「はぁ?航行してないのに?」
って、ミト。船酔いである。航行酔いでは無いんだよ。この波に翻弄されて、脳の揺れる感覚はダメだ。
そして、上陸…揺れていない地面。なんか安心するなぁ。
「じゃ、俺達は別行動で、商人の方を当たるよ」
って、先輩。カリナとシスティを連れて立ち去った。俺達はまず宿屋にチェックインだな。勇者一行が泊まっている宿屋を目指した。
◇
宿にチェックインして、街を散策しに外へと出た。メンバーは俺とミトだ。他のメンバーは孤島宮殿で待機してもらう。必要に応じて呼び出すことにした。人数が多いと目立つからである。あと、美味しそうな香りに釣られて、迷子が出そうだし。
宿を出て直ぐに、美味しそうな香りがしているし。ポチタマコンビならば、ダッシュしたかもしれない。焼きイカ、焼き貝…おぉ~。大人買いして、俺とミトの分以外は、孤島宮殿へ転移させていく。
焼き串エリアを抜けると、迷宮での出土品を売る屋台が並んでいた。
「あっ!マジ…」
ミトがナニかを見つけて固まっていた。なんだろう?って、俺も欲しい物を見つけて固まった。なんで、これがここにあるんだ…
ミトが見つけたのは『テニ×勇』のヤマトのフィギュアである。王祖ヤマトの名前の由来になった、ミトの好きなアニメの主人公のフィギュアだ。そして、俺の方は国際救助隊の緻密基地の模型である。
「なぁ、これって、どこにあったんだ?」
露天商に訊いた。
「そりゃあ『夢幻迷宮』だろ。常連の冒険者から買ったヤツだ。たしか、迷宮内で灰色の岩が立ち並ぶ幻の街を歩いていて見つけたって言っていたぞ」
何?迷宮に行けば、まだあるのか…って、向こうの世界と繋がっているのか?
俺は迷わず、フィギュアと模型を買い取り、孤島宮殿に持ち込んで、ナナとアーシア、パリオンを引き連れ、『夢幻迷宮』の迷宮核の部屋を目指した。迷宮核があれば、捜索が楽になるからだ。
この迷宮だけは、どうしても手に入れたい。俺とミト、もしかするとアリサにとってのお宝が眠っているはずだからだ。
「マスター、名義を変更しました。リンクを確認しました」
これで、ここも俺の迷宮だな。
「じゃ、アーシア。灰色の岩の立ち並ぶ幻の街の位置を調べてくれ」
「了解しました」
---ミト---
まさか、ヤマト君と出逢えるとは…あの迷宮には何かあるようだ。って、先輩は迷宮核を奪いに行ったようだ。ジェットモグラとコンテナ搭載タイプの飛行機の模型が欲しいらしい。
「え!これでどうしたんだ…」
兄ぃが模型を見て固まっている。
「先輩が買ったんだから、開けちゃダメよ」
「未使用じゃないか…なんで、この世界に…」
って、既に箱を開けている兄ぃ。おい!
「アイツは?」
「この迷宮だけは、誰にも渡せないって…迷宮核を奪いに行ったわよ」
確かに、こんな物がある迷宮を誰にも渡せない。
「そうなのか…あぁ、このギミックってこうなっているんだ」
って、先輩の模型で遊んでいる兄ぃ…
---メリーエスト---
宿で留守番である。ルススとフィフィもいるので、話相手にはなるが…外が騒々しくなってきた。何かな?
「――イタチ帝国の飛空艇? それも快速の駆逐艦タイプのが三隻います」
フィフィが空を見上げ、声を上げた。イタチの飛行艇?ペンドラゴン卿に会いに来たのか?って、お忍びで会うはず。では、追っ手か?
ドタバタと階段を駆け上がる音が聞こえて、ノックも無しにサガ帝国の文官服を着た女性が部屋に飛び込んできた。勇者付き文官のノノだ。
「大変です。メリーエスト様」
「何事ですか?」
「は、はい!実は――」
彼女が答えるよりも速く、闖入者が姿を現した。
「お、お待ち下さい」
「邪魔よ、どきなさい」
闖入者を制止しようとしたノノがはね除けられた。フィフィとルススが臨戦態勢を取った。
「あなたがサガ帝国の勇者?初めまして、私は皇帝陛下直属の宮殿騎士団の一翼を担うリートディルトよ」
エラそうな女性騎士のようだ。
「初めまして、リートディルト様。私はサガ帝国のメリーエスト・サガと申します」
「何…皇女だと…」
私をあのロリ勇者と間違えるとは…彼女は間違いに気づき、表情が凍り付いている。
「宮殿騎士殿、勇者ハヤト様は魔王討伐の為に『夢幻迷宮』に出かけておられます。先触れの使者をいただけたら、宮殿騎士殿に無駄なお手間を取らせずに済んだはず…」
「そう、なら仕方ないわね」
って、部屋を出て行った。皇女である私への無礼は詫びないのか?まぁ、関わりたく無いから、別にいいけど。
「皇女様、リートディルト様の無礼にご立腹の事と思われますが、なにとぞご寛恕ください」
随伴騎士の筆頭らしき者が主人に代わって謝罪し、正式なお詫びは後日に必ずすると告げて去って行った。
彼がいなくて良かった。彼がいたら、私に対する無礼な行為で、彼女の首を刎ねていたかもしれない。もう、彼には血塗られて欲しくない。安らかに生きて欲しいもの。