ロリ勇者が文句を述べている。要約すると「勇者の獲物を掠めるな」ってことらしい。誰が、魔王は勇者の獲物って決めたのだろうが。俺にとって、このロリ勇者は、借金塗れの男に過ぎないのだが。
「おい、武具と、メリー達のレンタル料を払え。払う気が無いなら、魔王は総て俺達が狩るからな」
「はぁ?お前らに、魔王を狩る権利は無いだろ?」
借金塗れだと、言う事も強欲に塗れているな。魔王なんか、誰が倒しても良いと思う。それこそ、早い者勝ちだと思う。
「メリー、並行線だよ」
なんか交渉するのも疲れて来た。メリーに丸投げかな?
「そうですね。どうしましょうね。借金の担保に何かを貰いますか?」
借金の担保か?って、コイツ、何か財産があるのか?武具、防具共に差し押さえていたはずだ。
「先輩、アロンダイトを預かるのは?」
ミトは勇者から武器を奪い取った。では、俺は防具一式を『強奪』し、返却してもらった。。
「おい!お前らは追いはぎか?」
そもそも追っていないし。
「借金の取り立てだよ。勇者なんだから、約束は護ろうぜ!」
「それが無いと、魔王が倒せないでは無いか…」
俺達を睨むロリ勇者。
「だから、こちらで魔王は処分しておきますよ。あぁ、魔王の処分代も、借金に上乗せしておきますね」
って、ミト。払えないのに、上乗せって…それも、どうかと思うが。
「何?払う義務は無いぞ…」
借金の払う義務が、勇者には無いのか?それは、人としてどうなんだ?既に人では無い俺が言うのもなんだけど…
「なら、塩になりますか?ロリ勇者一行様は」
身構えるロリ勇者。従属の者はロリ勇者から離れている。いや、メリーやリーンの傍にいるし。塩の像にして、閲覧料とか拝観料でも取るか?
『先輩!借金踏み倒し程度で、天罰は使わないでね』
って、ミトからメッセージが届いた。他に手立てがあるのか?ロリ勇者を置いて、宿へ転移した。身ぐるみ剥がれ、眷属に見放された勇者は、迷宮が無事に脱出出来るのだろうか?死亡保険があるなら、それで返却でもいいけど…
◇
先輩達は、イタチ帝国の王弟のお目通り中である。現在、経過報告連絡待ちである。ここは孤島宮殿である。久しぶりに、のんびりとしている。
『デジマ島が、イタチ帝国から独立するそうだ。後盾になれるか?』
って、先輩からのメッセージが届いた。たぶん、ミト達、転生者にも届いたはずだ。
『メリットは?』
返信をした。赤字体質の領土ばかりである。メリットが無いとなぁ…
『イタチ帝国への密入出国の手引きだな。直近のメリットは…』
『迷宮運営の許可も欲しい』
『交渉してみるよ』
と、一旦メッセージが途切れた。デジマ島なぁ。貿易立国化するのも手だよなぁ。
◇
1ヶ月後、先輩とミトを見届け人として、デジマ島の独立が承認され、パリオン神国との間に友好条約をが結ばれた。迷宮の運営権は手付けとして、俺に譲渡された。
「まさか、パリオン神国の王が、サトゥー殿の仲間にいるとは…」
イタチ帝国の王弟の顔から血の気が失せている。そんなにエラいのか?パリオン神国の王って…
『当たり前でしょ!』
って、ミトからメッセージが飛んで来た。そういえば、ロリ勇者がサガ帝国の王に泣き付き、メリーを通じて、借金を返してきた。で、メリーと今後のレンタル料について、交渉中らしい。迷宮から無事に戻れたようだ。
デジマ島との交渉が終わり、先輩、カリナ、システィはサガ帝国へ向かった。勇者の召喚陣の見学だと言う。俺は領内の見回りに戻った。問題点を聞き、改善をしていく。当面の予算は、サガ帝国からの取り立てが軍資金になる。
◇
仕事の合間に、うたた寝をしていると、ミトと共にどこかに転移した。どこへ連れ出すのだ?疲れ切って、性欲すら無いぞ。
転移した先には、高飛車系の少女と困った顔の先輩、それを囲み神官達がいた。これは一体、どういう状況だ?
「え?ヒカル…アールを連れ出したのか?」
「えぇ、埒が明かないみたいだし。ちょっと、そこの女子!私の配下の者に敵対心を持っているのはどういう事かな?」
「お前は、この性欲魔人の主なのか?まさか、ビッチか?!」
ミトのこめかみに青筋がピクピク…ビッチって言っちゃダメだと思う。一応、先輩に一途なんだから…
「ビッチですって!何様のつもり?」
「私はサガ帝国の勇者、メイコよ!頭が高いぞ、平民よ!」
パコッ!
そのメイコの頭をメリーが叩いた。
「新人勇者のくせに、私の主様達を平民ですって…」
メリーのこめかみにも青筋が…あのメイコって、女性を怒らせる天才か?
「何するのよ、ババァ!」
メイコの取り巻きの神官の顔から、血の気が失せている。独身の皇女に向かって、ババァは無いだろうに…それも、お前の国の皇女だろうに。
「この新人勇者の監督責任者は誰よ!」
「何をエラそうなことを、勇者である私が一番エライのよ!」
って、剣を抜きやがった。俺は聖剣でその剣を受けとめた。
「おい!メリーに何をするんだ」
皇女に斬り掛かるって、有り得ないと思う。
「お前…魔王か?ここで会ったのが運の尽きね。殺してやる!」
殺す?既に死んでいるんだが…まぁいいか。
「塩になりたいか?」
「塩?アンタ、バカなの?」
まぁ、バカかも知れない。メイコの剣を塩にしてやった。
「えっ!どうして…」
神官達が俺を取り囲んだ…
「まさか…メリーエスト皇女様の…アール公爵様ですか…」
一番エラそうな神官が、一歩前に出て、俺を牽制いている。その瞳は尊敬では無く、畏怖なる色をしている。化け物認定か?一方、配下の者はメイコを取り押さえ、手足の動きを奪っている。
「だと、したら?」
「召喚されて間もないので…教育が行き届いていませんでした。この場を収めてくださいませんか?」
って、勇者メイコがイカンのだろうに。
「メリーに対して、剣を抜いたんだぞ。それって、皇女の暗殺未遂だよな?後、シガ王国のミト・ミツクニ公爵に対しての差別発言をした上で、平民呼ばわりしたし。俺をバカだと断定した。それで、どう収めろと言うんだ。あぁ、後、同僚のペンドラゴン卿に対して性欲魔人と発言もしたな。なぁ、天罰を喰らっておくか?」
俺の隣にパリオンとアーシアとテンちゃんが転移してきた。
「えっ!パリオン神様…」
あの神官って、パリオン神殿の神官なのか?
「わが主である、パリオン神国の王を怒らせたのは、ドイツだ?!」
「まさか、このお方が国王様ですか…」
神官達がパリオンにひれ伏せると、メイコが自由になった。何をしているんだ?場が混乱していく。
「コイツらは魔王だ。おい!この場で屠ってやる!」
って、違う剣を抜いた。
「パリオン、どうすればいい?」
勇者は流石に殺しちゃダメだよな。
「なんで、こんなバカを召喚したのでしょうね、この国は…」
パリオンにすら、バカと認識されているメイコ。
パーン!
天空からの稲光が、メイコの振り上げた剣に落雷した。カグヤすらキレたようだ。全身から煙を上げるメイコ。戦うまでも無いってことか?
「じゃ、先輩、俺達は帰るよ」
「あぁ、すまん。休み中のところ…」
孤島宮殿に転移した俺達。ロリ勇者といい、なんで、こんな奴らをサガ帝国は召喚しているんだ?