娘達の世話をミーアの両親に任せ、ハイエルフの間で、黙々と神事の勉強をしていると、ソレはやってきた。
「いきなり来るのは、どういうことですか?」
抗議をしたルーアが、私の目の前で、問答無用に屠られた。
「我々の伴侶であるのに…あのような者との間に子供を作っただと!ふざけるなよ!抱き枕風情の分際で!!」
怒りを纏ったソレ…ザイクーオン神は、力任せで抱きつき、私を床に押しつけ、行為に及んだ。いきなりである。前戯も無く、甘い言葉を交わさずに、ただ行為を何度もこなしていく。ハイエルフである私には、神が望む行為を拒否出来無い為、拒否だけで無く、抵抗すら出来ず、ただ受け入れるだけである。
心も体も精神もボロボロになってきた頃、飽きたのか、私から離れ、何かを操作し始めた神。
「お前の伴侶は俺一人にする。今、理を書き換えたよ」
そんな…ダーリンだけなのに…私の愛する人は…
「うん?あぁ、お前の愛する者は俺一人だ。あのバケモノの記憶は消してやる。それから、お前を永久に浮気出来無いようにしてやるよ」
殺意の籠もった視線で私を見る神。ダーリンの、アール様の記憶を消してから、殺すようだ。神は、理を書き換えていく。記憶が薄れていく。嫌だ!忘れたくない!助けて、ダーリン!!
「はぁ?あのバケモノは助けに来られない。転移している最中に理を変えてやったよ。アイツは、遙か未来へ転移したぞ。お前も、お前の子供もいない世界へ、たった1匹でなぁ。はははは」
嬉しそうに笑う神。いや、こんなヤツが神な訳が無い。助けを呼ばないと…だけど、身体が動かない。
「理を書き換えて、お前の身体の機能を停止させた。ゆっくりと愉しめ。あの裏切り者の国へ向かわしてやる」
そう言い残し、神はどこかへ転移した。その途端、何かの爆発音がして、落下する感覚が芽生えた。窓から見える景色が動いている。地上へ向けて降下しているようだ。これが地上に落ちると、地上には災害が起きてしまう。
『逃げて!』
子供達へ念話を送る。今の私には、それしか出来無い。ダーリンは遙か未来へ飛ばされたのか。一緒に生きたいよ~。一緒に旅をする約束だったのに…そんな私の記憶は消えていく。段々とダーリンの顔が思い出せなくなっていく。記憶が消え始めたようだ。ダーリンの名前すら思い出せない。もう一度抱き締めて欲しかった。いや。一度と言わず、何度もだ。
後、どれくらい生きられるのだ?私は転生出来るのかな?ねぇ…誰か…
『汝の生きたい想いは受け取った』
耳元で、知らない誰かの声が聞こえ、目の前が真っ暗になっていく。
◇
あれからどの位経ったのだろうか?身体の感覚は無い。たぶん、精神体になったのだろうか?空には月が2つ並んでいる。ここはどこだ?
近くで懐かしい者の気配を感じる。それが誰だかは思い出せない。そもそも、私は誰なんだろうか?