デスマーチからはじまる異世界マン遊   作:もっち~!

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賢者VS魔王

季節は春になったようだ。冬眠をしていたザブトンという蜘蛛が、目覚めの挨拶をしに来た。ザブトンを見て失神するハイエルフ達。インフェルノウルフよりも恐怖の対象で、イリーガルデーモンスパイダーという種族らしい。その情報を得ると、蜘蛛と表示されていた種族名がイリーガルデーモンスパイダーに置き換わった。耳で聞いた情報でもアップデートするようだ。

 

雪が自然に解けていく。そして、ユキは元気な子犬、いや子狼を4匹産んだ。名前を考えて居なかった大樹は、速攻でクロイチ、クロニ、クロサン、クロヨンと名付けた。因みにクロサンだけメスで、後はオスである。

 

俺とハイエルフ達で畑仕事をし、クロと大樹は狩りへと出かけた。ユキに新鮮な肉を食わせたいからだ。畑ではキャベツが順調に育っていた。ルーが言うには、キャベツは薬草扱いらしい。整腸作用に優れているそうだ。俺と大樹にとっては、生でよし、煮ても焼いても炒めも良しの万能野菜であるけど。

 

後は、トマトも良さそうだ。あれ?梅の木がある。こっちは桜か?大樹が植樹をしたのか?もしかして、エロ賢者様かな?水は近くの川から水路を作り、豊富に使える。トイレの水はリサイクルらしい。たまに足り無い時に、川の水を補給しているようだ。

 

「水路なんかのインフラは、祖父ちゃんが作ってくれたんだよ。創造能力を持っているからね」

 

大樹には無い能力らしい。うん?あのエロ賢者様は、創造神なのか?

 

「先代の創造神と維持神は、侵略者達に殺されたらしいよ」

 

俺の心を読んで、大樹が教えてくれた。ザイクーオン達は、この世界の神達を殺して、乗っ取ったのか。

 

『ごめんなさい』

 

パリオンの声が聞こえた気がした。この神器は話せるのか?

 

『うん。アールとだけなら会話出来る』

 

パリオンの懐かしい声が、脳裏に響く。そういや魔神はどうしたんだ?

 

『落ち神として、地上にいるはず。いつか逢えると思う』

 

そうなんだ。あっ!大樹がイノシシを持ち帰った。今夜はボタン鍋かな?

 

 

クロが高らかに吠えている。木の上ではザブトンが臨戦態勢を取っている。何かがやってきたようだ。

 

「上よ!」

 

ルーが声を上げた。空にはドラゴンが1匹、浮かんでいた。いや、ドラゴンほどの威厳さを感じ無い。あれって、ワイバーンかな?警戒を強める俺達を余所に、大樹が翼を展開して、ワイバーンへと向かっていく。アイツ、翼を持っていたのか。純白の翼…まるで天使のような。見ようによってはティアの翼より美しい。ティアは大樹の翼にうっといとしているし。

 

ワイバーンと大樹が交差した瞬間、何かが落ちて来た。それに伴い、ワイバーンも落下していく。地面にぶつかり、跳ねた何か。それは、ワイバーンの頭部であった。大樹は交差した瞬間に斬首したようだ。剣筋がまるで見えない早業であった。

 

「リア、ワイバーンって食えるのか?」

 

いつの間に着地していた大樹が、リアに訊いた。

 

「ワイバーンの肉は、美味と言われてます」

 

大樹は頭部をユキの元へ転移させた。

 

「アール、精肉を頼むよ。久しぶりに飛んだから背中が痛い。少し寝るよ」

 

大樹は家の中に戻っていった。

 

 

 

---ティア---

 

大樹の後を追う。あれは天使族の翼である。どうして、大樹が持っているんだろう。

 

「何か用か?」

 

大樹に訊かれた。

 

「その翼…」

 

「あぁ、これね。天使の血も入っているから。タダ飛ぶだけならドラゴンの羽を展開するけど、戦闘だと天使の翼の方が、戦い易いんだよ」

 

ドラゴンと天使のハーフなのか?

 

「う~ん、そんなに単純な話では無いんだよ」

 

大樹は、天使である私の心の中を読めるスキルを持っていた。

 

「祖父ちゃんは元々、鬼と天使のハーフなんだよ」

 

鬼?吸血鬼かな?鬼人かな?

 

「そうだな。鬼人に近いかもしれない。で、俺の母親は、女神と魔王のハーフに祖父ちゃんの遺伝子が入ったんだよ」

 

神と魔王のハーフ…おいおい…そこに鬼人と天使なのか。

 

「で、俺は、そこに魔人とドラゴンの遺伝子が入った感じだよ」

 

魔神とドラゴン…ほぼ、最強クラスの種族の集合体のようだ。

 

「だから、種族は不明なんだよ。訳分からないだろ?そこまで色々な遺伝子が混ざるとさぁ」

 

「で、ニトロブラッド持ちは、どの種族なの?」

 

大樹が子供を持てない理由の1つを訊いた。

 

「魔人だよ。魔法攻撃をドレインする特性だから、血液に魔力が漲っているのかもな」

 

吸血鬼殺しで有り、魔法使い殺しでもあるようだ。この世界では、最強クラスでは無いかな?

 

「祖父ちゃんの足下にも及ばない強さだよ。最強なんて言わないでな」

 

エロ賢者様の強さって、想像を絶するくらいなのかな?

 

「う~ん、知らない方が幸せな場合って、有るよねぇ~」

 

言葉を濁す大樹。想像を絶するんだな。

 

 

 

---アール---

 

ワイバーンを倒して以来、ルーだけで無く、ティアも大樹の傍に居ることが多くなった。あの純白の翼に惚れたのか?俺はアーゼで手一杯である。また、娘が欲しいって…ハイエルフ勢も俺に群がっているし。不死王って、子供作れるのかな?

 

桜の蕾がちらほらと見かける頃、ティアが遠出をすると言って出掛け、翌日に戻って来た。見るからにバルキリーのような女性を3名とリザードマン数名を連れてだ。

 

「私の部下のグランマリア、クーデル、コローネと、従者のリザードマンよ。よろしくね」

 

本格的に引っ越して来たようだ。リザードマン達の背中には、体格よりも大きなリュックがあったから。

 

「じゃ、グランマリア達は2階、従者達は3階の空き部屋を使ってくれ」

 

大樹が指示を出した。この家は見た目よりも広いのだった。次元の狭間と呼ばれる亜空間へ、家が拡張されていて、ほぼ無限な広がりを持っているそうだ。

 

「種族ごとの家が必要なら、リア達に伝えてくれ。建築も出来るそうだから」

 

家の建築を考え始めた大樹は、俺に『製材』というスキルをくれた。あの異常に固い木ですら製材出来るスキルだそうだ。俺は、そのスキルを使い、リア達の指示で建築材を作り出していく。リザードマン達が、種族だけの家を希望したのだ。従者が主と同じ家に住むのはなんとかで…

 

製材するのは良いことである。無駄に木を切り倒さないでも、開墾が出来るし。

 

翌日から、グランマリア達が空からの見回りを始めた。ザブトンとクロの危険察知能力では、方向がわからないからだそうだ。

 

 

桜の花が咲き始めた頃、お客さんが来た。夜、コウモリを従わせて…ルーの関係者の予感だ。グランマリア達は夜間飛行をしないので、玄関まで問題なく辿り着けたようだ。

 

「ふふふ。なかなか面白そうな所ね」

 

見た目20代後半、チューブトップドレスを身に纏っているので、ボディラインがくっきりと分かる。胸とお尻は小さ目であるが美形の部類に入りそうな感じではある。

 

って、言うか、誰も危険視していないのか、スルーしているような。

 

「ねぇ、注目してよ~!」

 

誰も相手にしていない。関係者だと思うルーが近づいて行った。

 

「フローラ、何をしに来たの?」

 

「お姉様の様子を見にですわ」

 

ルーの妹?

 

「フローラ・サクトゥです。お姉様の従姉妹に当たります」

 

自己紹介をするフローラ。だけど、相変わらずスルーをしている大樹達。俺はアーゼと乳繰り合っているので、話し掛けられない。

 

「戻って来ないから、あの腹黒天使にやられたのかと思って回収に来ました」

 

腹黒天使って、誰?ティアが率いる天使の皆さんが、フローラを囲み、ボコり始めた。

 

「誰が腹黒ですって!」

 

「えっ!なんで、いるの…殺される…」

 

「大丈夫よ。ここには蘇生持ちがいるからね」

 

5分後、俺の蘇生コンポにより、フローラが息を吹き返した。マジに殺しやがったよ、この天使達は…

 

ティア達に怯えるフローラ。ルーは大樹と共に発酵について勉強をしている。なので、フローラをスルーしているし。

 

「お姉様…」

 

這いつくばって、ルーの元へ向かうフローラ。ティア達は深追いはせず、警備計画を練り直し始めたようだ。

 

「ここって、何ですか?」

 

「私にとっては学びの杜かな?」

 

翌日、引っ越しの準備をすると言いフローラは帰って行った。本格的に移住するようだ。桜の花が散り始めた頃、鬼人族のメイド20名と、大量の荷物と共に戻って来た。

 

「主様。 末永く、よろしくお願いします」

 

俺に挨拶したメイド長のアン。

 

「アン、この家の主は大樹よ!」

 

ルーの怒りを纏った声が響いた。

 

「これは、失礼しました」

 

再度、大樹に挨拶をするアン。まぁ、俺の方が大樹より、歳上に見えるから、間違えるのも分かるな。

 

 

初夏…クロの子供達は伴侶捜しに森へ飛び出していった。この世界の狼の親離れは早いようだ。空には、ザブトンの子供達が風に流されて方々へと散っていく。ザブトンってメスだったと初めて知った俺と大樹。だけど、ルーから間違いを指摘された。ザブトンは雌雄同体であり、単独での繁殖が可能だという。そう言えば、ザブトンの伴侶って見た事が無いなぁ。

 

鬼人族の為の家も完成し、開拓面積が広がっていく。花畑を作ると、ミツバチ達が住み着き、巣箱を多数作り、設置をしていく。蜂蜜狙いである。甘味不足と言うか。サトウキビの栽培もしているが、砂糖にするまでに重労働が待っているらしい。そこで、蜂蜜に逃げた俺と大樹。だけど、重労働はアン達が背負ってくれるそうだ。この世界の鬼人は家事、料理に特化した種族らしい。

 

 

ある日、順調に毎日を過ごしている俺達の前に、恐れていた者が現れた。見るからに貴族ぽい立ち振る舞い。グランマリア達が警戒しながら、家に連れて来た紳士。人間ではなく魔族のようだ。

 

ティア、ルー、フローラが身構えている。クロ、ユキは指示待ちって感じか?皆、臨戦態勢でいる。それだけ、ヤバい相手のようだ。

 

「何の用ですか?」

 

応対したのはエロ賢者様だ。緊急事態につき、大樹が呼び出したようだ。エロ賢者様からは死を感じさせるオーラが漏れ出している。不死王の俺ですら死を感じるのだ。俺以外の者達には、危険な気配を増長させているだろう。

 

「私は魔王の使いです。この場の代表者にお会いしたい」

 

「僕だけど」

 

エロ賢者様が応対した。相手の紳士の膝が笑っているように見える。至近距離で、あのオーラはきついだろうな。

 

「貴殿がそうなのか?」

 

「って、言うか。まず自己紹介じゃないのか?この世界の魔王は横柄なのか?!」

 

一段上にギアが入ったようだ。この俺の膝が笑っている。不死王になって初めてじゃ無いかな。こんなにも恐怖を感じるのって…

 

「失礼。私の名はビーゼル。魔王の使いです」

 

「僕はシュウ・ヨハネ。この家の主、大樹・ヨハネの祖父だ」

 

ヨハネ?あの預言者の子孫なのか?それとも偶然か?エロ賢者様の名前を聞いて、激しく動揺しているビーゼル。エロ賢者様って有名人なのか?

 

「お、お、お近づきの印に」

 

ビーゼルは魔王の部下であることを証明する品を示し、手土産をエロ賢者様の隣にいる大樹に手渡した。

 

「そうか、すまんな。気を遣わして」

 

何故か、もう1段ギアが上がった気がする。アン以外の鬼人族、リア以外のハイエルフ族、ダガ以外のリザードマン族が意識を飛ばした。アーゼは大丈夫なようだが、震えている。存在自体が凶器なのか。なんか、スゴイ。

 

「で、魔王様は、なんだと言うんだ?」

 

エロ賢者様から向けられているのは、鋭い刃のような視線である。痛いだろうな、あれは…ビーゼルに同情する俺。

 

「この場所との関係について話し合いたいと」

 

震える声のビーゼル。

 

「関係?」

 

「い、いえ、ある程度の権限を頂いております。この場で、取り決めを交わすことも可能です」

 

魔王領において、この場所との関係性ってことか?

 

「出て行けとでも言うのか?」

 

「そんなことは申しておりません。ですが、ここは魔王領内ですので…」

 

ビーゼルが、おどおどしている。

 

「税金を払えと言うのか?こんなにも細々と暮らして居る者から搾取か?」

 

「…」

 

「おい!黙っていたら、わからんだろ?!」

 

エロ賢者様が一歩踏み出した。ビーゼルが腰砕けで、尻餅をつく格好になった。なんだ、あの威圧感は…俺達に対して感じさせたことが無いエロ賢者様の裏面なのだろうか?

 

「すみません…どうしたら、許してもらえますか?」

 

ビーゼルが命乞いを始めた。なんか、立場が逆転していないか?

 

「選ばしてやる。重税課すか?助成金を出すか?僕の騎士団と共に、魔王様に挨拶に行くか?」

 

「あっ…助成金を出します。それで、カンベンしてください」

 

税を払うどころか、助成金をもらえるのか?それよりも、エロ賢者様の騎士団ってなんだ?

 

「畑1面に付き、銀貨10枚でどうだ?」

 

「仰せのままに…」

 

「毎年、冬の間に来て、確認後に払ってくれ」

 

「しょ、承知しました。そのように取り計らいます」

 

ビーゼルが転移して、この場から逃げた。いや、帰った。

 

 

 

---魔王---

 

死の森からビーゼルが生還した。だが、見るからにボロボロである。何か遭ったのか?

 

「ビーゼル。どうだった?向こうは何を要求してきた?」

 

「助成金を要求されました。畑1面につき銀貨10枚を、毎年冬の間に訪れ、確認した後に払えと…」

 

ビーゼルの股間は濡れているようだ。目に涙を溜めているように見える。よほど怖い想いをしたのであろう。

 

「それで済んだのか…まぁ、結果オーライだな」

 

ワイバーンを倒すことの出来る勢力である。戦争は避けないと危険が一杯である。

 

「で、相手の戦力はどんな感じだった?」

 

今回の訪問で一番大事なことは、相手の戦力分析である。

 

「吸血姫と殲滅天使が居ました。皆殺し天使達が空を警戒して飛び回っていました。それだけじゃありません。インフェルノウルフ、コキュートスウルフ、それに加えて、ハイエルフが多数居ました。リザードマンや鬼人も……」

 

「まさか?信じられん」

 

我が国の正規軍よりも強いではないか。単体で国を殲滅出来る者が多数いると言うのか?

 

「私を案内したのは皆殺し天使の一人ですよ。生きた心地がしませんでした……」

 

ビーゼルの身体は震え、顔から血の気が失せていた。

 

「そうか…それは危険な相手だな」

 

「いや、むしろ、そいつらは先兵に過ぎないんですよ」

 

へ?先兵?何を言っているんだ?コイツらの一人だけでも、我が国は翻弄されるぞ!

 

「あの鬼畜が責任者でした」

 

「あの鬼畜?」

 

「先代の魔王と勇者達の戦いに飛び入り参加して、50名の勇者を瞬殺し、先代の魔王の心を折ったアイツですよ」

 

あぁ…あの鬼畜か…伝説では神すらも殲滅したとも言われる血も涙もない鬼畜。男は瞬殺、女子供は玩具にする為に連れ去ると言われているアイツか…

 

「騎士団を呼ぶ気満々でした」

 

アイツの騎士団の通った後には、ペンペン草すら生えないと言われている。そんなのが来たら、我が国はお終いである。

 

「敵対の意思はあったか?」

 

「こちらから仕掛けない限り大丈夫かと思います」

 

そうか…敵対はしないようにしないと…って、ビーゼルの背後に知らない男が転移してきた。

 

「おい!話している最中に逃げるって、どういう了見だ?」

 

「すみません!」

 

その男に土下座をするビーゼル。まさか、コイツが鬼畜か?

 

「そうだよ。僕が鬼畜と呼ばれている賢者だ。覚えておいてくれるかな?」

 

私の心が読めるようだ。ウソは吐けない。

 

「ウソ?吐いたら、毒針1000本を胃の中に転移させるよ」

 

死んじゃうって…いくら魔王でも…

 

「なら、ウソは吐かないことだ。で、魔王領は敵対するのか?」

 

「しません」

 

「そうか。なら、問題は無い。今後も優遇してくれると助かる。なんせ開拓中だからな」

 

「はい!善処したします」

 

「頼む。また、来るよ」

 

鬼畜は転移して、この場から消えた。あっ!股間が冷たい…

 

 

 

 

 

 

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