旧・東方神零録   作:異山 糸師

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やっぱ温泉でしょ

食後は山に俺が温泉を見つけ出し、掘り出してやった。能力を使い一瞬で設備を整え、男湯と女湯に分けた。

露天風呂だから満点の星空を見ながら浸かっていられる。大きさはかなり広いしな。

 

「ふぃ~…いい湯だな~」

 

「ホントだぜ。疲れが吹き飛ぶな」

 

既に色んな天狗どもが入ってきている。周りはガヤガヤ騒がしいが、これもまた一興だろう。

 

「人間だってのに妖怪を物ともしないとはな」

「ああ、しかもこんな温泉なんか作ってくれたしよ」

「ありがてぇ……この兄ちゃんに感謝だ!!乾杯ッ!!」

 

「「「「「「乾杯ッ!!!!」」」」」」

 

酒を持ち込んでいる。皆が杯を掲げて叫ぶ。賑やかだなぁ……。

 

こいつ等を誘ったことで俺はすっかり歓迎されて仲間状態。襲われないだけいいか。

 

宴会みたいなことは大好きだしな。

 

「ほら!兄ちゃんも飲めよ!!」

 

「ん…おっとと、ありがとよ」

 

酒を杯に注がれ、零れそうになったとこを一気に煽る。

 

ふぅ、美味い。しかし、天狗の羽は案外抜けないもんなんだな…風呂場に羽が全然落ちていない。

 

酒を飲みながら周りの声に耳を傾ける。

 

「しかし疲れたな~」

「だな~。近頃は人間が………」

 

なんかや、

 

「おい、誰がいい?」

「やっぱり天魔様だな!」

「いやいや、射命丸なんかも良い女だぞ」

「「「「「なるほど」」」」」

 

こんな話が多いな。恋せよ若者…爺は見守っているぞよ。

 

しかし、やっぱり天魔…いや、暮羽も文も男の天狗からは人気なんだな。確かに美人だしな~。それと、文はまだ若いんだな。偉くなるのは何時ごろかな?

 

「文~!そっちはどうだ~?」

 

隣は女湯だからな。よくある竹で作られた壁越しに話しかける。

 

一応、天狗どもには飛ばないように言ってあるが。

 

飛んで覗こうとしたら二度と入れないようにする、と規則を決めた。

 

『快適です!ただ、少し血だらけですが……』

 

ああ、アマテラスのせいか……。他の女天狗達のせいだな。

 

「おい!兄ちゃん、射命丸の奴と仲いいのか!?」

 

こいつ…文狙いの奴か。

 

「まあ、それなりにな。結構話すほうだな…ま、今日会ったばっかりだがな」

 

「「「「「なぁにぃ~!!」」」」」

 

うるせぇ…

 

「そういえば天魔様とも仲良さそうに話していたな!」

「天魔様が嬉しそうに話していた……」

 

「「「「「お、男の敵め~~!!!」」」」」

 

鬼気迫る勢いで来た。むさ苦しいから来るな。

 

「うるさいぞ。それよりも…いいのか?」

 

「なにがだ…?」

 

俺が質問するように言うと、天狗共は不思議そうな顔をしだした。

 

「だから、覗かなくていいのか?」

 

「だ、だが飛ぶなと……」

 

「だから飛ばなければいいだろう?」

 

「「「「「「ッ!!?」」」」」」

 

そんな、その手があったか!! みたいな顔せんでも……

 

「覗き穴を見つけるなり、物を重ねて上って覗くなり……いろいろあるだろう?」

 

この一言で男達は動き出した。桶を積み重ねたり、穴探しをしたり……せいぜい楽しめ。

 

杯に酒を注ぎ、一息に飲んで夜空を見上げる。空には宝石の如く輝く星達に大きな満月が昇っている。

 

月を見上げ、馬鹿三人と…永琳を思う。三人には無理させたし、永琳は無理やり行かせたし…怒ってるんじゃないだろうか。

 

「皆元気かねぇ…」

 

そろそろだろうか?三…二…一………

 

「「「「「「きゃあぁぁぁああぁぁッッ!!!!!」」」」」」

 

「「「「「「ぐふぁあああぁぁぁぁああッッ!!!!!」」」」」」

 

ほらな?男共が後ろから飛んできてドボンドボンと温泉に落ちていく。

 

俺がわざと穴を作ったからだ。こちらから見やすく、しかし女湯からは即発見出来るように。

 

「あ~あ……壁が…」

 

男共は一人残らず気絶し、壁は大きく壊れて向こう側が見える。合法的な覗きですな。

 

「よう、暮羽に文にルーミアにアマテラス…それと女天狗の皆さん」

 

「「「「「「きゃっ!!」」」」」」

 

暮羽や文とかは急いでタオルで隠したり、温泉に浸かったりして体を隠す。ちなみに俺も温泉に浸かっているので見えない。

 

だが……

 

「アマテラスは分かるが…なぜルーミアも恥ずかし気も無く晒している?」

 

そう、ルーミアは隠していないのだ。アマテラスはそういう関係なのでいいが。

 

長い金髪はお湯に濡れて肌に張り付き、白い肌はほんのり朱に染まって妖艶さがさらに増している。

 

胸は大きく腰は折れそうなほど細いしスラッと長く形の整った足は、温泉に浸けて岩に座っていた。

 

「いいじゃない。別に見せて恥ずかしい身体はしてないわ。どう?御主人様?」

 

そう言ってルーミアは俺に見せ付けるようにしてくる。

 

「確かにな。いい身体はしてるぜ?誇っていいさ」

 

「そ、そう?ありがとう…///」

 

……お前から聞いといてなぜ恥ずかしがるし。

 

「それより、そろそろ浸かれ。冷えるから」

 

「…そうね。そうするわ」

 

ルーミアはお湯に浸かり、気の抜けた顔になる。

 

「相変わらずお母さんしてますね」

 

「うるさいぞ、アマテラス。お前も浸かれ」

 

「はい。わかりました」

 

アマテラスはくすくす笑いながら入った。というか、俺ってそんなにお母さんしてるか?そんなことは無いんだが。

 

改めて酒を注ぎ、飲みなおす。そろそろ湯あたりしそうなので気絶している天狗だけは脱衣所に転移させておいた。

 

俺は元々長湯派なのでまだまだ問題ない。

 

「ん~、いい湯だねぇ~」

 

もたれていた岩に身体を預け、顎を置く。目の前は女性陣が見えるが気にしない。

 

「くぁ~~……」

 

平和だ…大きなあくびが漏れる。だけど何故だろうか…警戒していたような天狗たちやアマテラスたちがこちらを見てふにゃっとしたような、可愛いものを見て和むような顔を一斉にした。

 

頭をこてんと傾けどうかしたのか?と聞くと、さらに顔を蕩けさせた。

 

「……そろそろ上がるか」

 

なんか身の危険を感じたし。顎を岩から離して上半身を起こす。

 

「壁は直しておく。ごゆっくり」

 

一瞬だけ能力を解放して壁を元通りにする。転移させたりしたのもこうしたからだ。

 

『あ~~~~~!!!!』

 

なんか残念そうな叫びが聞こえるが、無視して上がる。

 

脱衣所にはまだ男達が寝ていた。そいつらを踏みつけながら着替えて、俺に宛がわれた大きな和室に入って、湯冷めしないうちに布団に入って寝た。

 

 

風呂での一件で女天狗の皆からの零に対する好感度が上がったのは言うまでも無い。

 

 




作者のプチ自慢!
作者は毎日天然温泉に入っている!
嘘じゃない!

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