\ カーン♪ /
『おーっと! ここで第一ラウンド終了のゴング! 矢吹優勢!
チャンピオン“ウルフ金串“を相手に、堂々たる戦いぶりを見せました!』
\ ワーワー! /
「…………へへっ、どーだいおっつぁん。いい感じだろ? 俺もよ?」
「あぁ~! まったくてぇしたモンだぁ~! おめぇ~は~!」
「ホンマやでジョー! チャンピオン相手に圧倒的やないか!」
「へへ、よせやぃ西。……まぁ次のラウンドあたり、やっこさんも出てくるだろうぜ。
こっからがようやく本番ってトコよ」
「そぉ~だぁ~! 気ぃ抜くんじゃねぇぞぉ~ジョ~!
……おい西ぃ! ほれ、あれ飲ましてやれぇ」
「おぉそうやそうや! ほれジョー。これワイが作ってきた“レモネード“や」
「……何でレモネード作って来てんだよおめぇ!!
欧米か!! 飲めねぇよバカ!! 腹殴られて吐いちまうだろうがよ!!」
「えっ!? ボクシングの試合に、レモネード持ってきたらアカンかったんか!?
はちみつレモンやでジョー!?」
「そんな事言わずにぃ~、飲んでやれぇ~ジョ~!
これは西が、朝の5時に起きて作って来たんだぁ~!」
「1分くらいで作れんだろうがよレモネードは!!
何はちみつレモン作んのに早起きしてんだよ! 不器用ちゃんかおめぇは!!」
\ セコンドアウト! セコンドアウト! /
「……ちっ、もう時間かよオイ」
「勘弁してやってくれぇ~ジョ~! 西もお前の事を思ってぇ~、
がんばってレモネード作ってきたんじゃぁ~!」
「もういいってんだよそれは!
行ってくるぜぇ西! おっつぁん! ぶちのめして来らぁ!!」
\ ワーワー! /
………………………………………………
\ カーン♪ /
『ここで第二ラウンド終了のゴング! 挑戦者矢吹、このラウンドも優勢です!
まさに圧巻のボディ攻め!! 悠々とコーナーに下がって行きます!』
\ ワーワー! /
「……けっ! やっこさん随分と粘りやがる……。
まぁこの調子でいきゃー、次のラウンドあたりでででデデデデ……!!??」ゴゴゴゴ!
「どうだぁジョ~! 試しに椅子を、電動の“マッサージチェア“ってヤツに
変えてみたんだぁ~!! 気持ちよかろぉ~?」
「なんでボクシングの試合にマッサージチェアもってくるんだよ!!
揺れてんだろうがよコレ! うまく喋れねぇってんだよ!!」
「ジョー! これおっちゃんがジョーの為にぃ~言うて、買うて来たんやで!!
凄いやろジョー! これホンマ王様のイスやで! こんなん使うてるヤツおらんで!!」
「いねぇーーんだよボクシングで持って来るヤツぁーーーッ!!
マッサージじゃねぇんだよ今は!! おっつぁんが家で使ってりゃあ良いんだよ!!」
「勘弁してくれぇ~ジョ~!! ワシャーなぁ~! ワシャー……!
おめぇの疲れがぁ~、ちぃとでも取れるようにと思ってぇ~!!」
「ありがてぇよッ!! いつも感謝してんだよおっつぁん!!
でも試合では止めてくれよコレ! 今は作戦とかも相談しなきゃなんねぇd………
\ セコンドアウト! セコンドアウト! /
「……ちっ! もうそんな時間かよよよヨヨヨヨ……」ゴゴゴゴ!
「すまねぇ~ジョ~! 踏ん張ってくれぇ~!!
ワシャー、こっから祈る事しか出来ねぇ~!!」
「そんな心配すんなっておっつぁん! ちゃんとやっこさん、ぶちのめしてくっからよ!
そんじゃあ行ってくらぁ!!」
「ファイトやぁージョー!! いったれぇーー!!」
\ ワーワー! /
………………………………………………
\ カーン♪ /
『ここで第三ラウンド終了のゴングです! 挑戦者の矢吹、ここで少し勢いが
止まってきたかっ!? 動きに精彩を欠いているようであります!』
\ ワーワー! /
「……ったくウルフの野郎。……オイおっつぁん、マウスピース洗ってくれよ」
「おぉ~! そうじゃなぁ~ジョ~!
ほれ、この新しいマウスピースを使うとえぇ~!!」
「サンキューおっつぁん! ……モゴモゴ……って、何だぁこのマウスピースはぁ!?」
「ジョー! これおっちゃんが新しく開発した、
“イチゴ味のマウスピース“やで! 甘いやろ?」
「何でマウスピース甘くしてんだよ!! いーんだよ甘くしなくてよぉ!!」
「だっておめぇ~? いつもマウスピース口に入れるとき、
なんか『オエッ!』ってなってるじゃねぇかぁ~?
ワシャー、おめぇがコレ苦手なんじゃねぇかってぇ~!
だからなんか、『甘くした方が良いのかな?』と思ってぇよぉ~!!」
「せやでジョー! お前さん、イチゴ大好きやないか!
いっつもうまそうに食うとるやないか!」
「そーゆうアレでもねーんだよマウスピースは!!
歯を衝撃から守れりゃ良いんだよ! 歯磨き粉じゃねーんだよ!!」
「でもおめぇよぉ~? こーやってマウスピース甘くしときゃー、
試合中にペロペロできてぇ~、なんか元気出んじゃねーかぁ~!
オヤツ感覚でいけんじゃね~かと思ってよぉ~!!」
「アメじゃねーんだよマウスピースは!! いらねーんだよそういうのはお前ッ!!」
\ セコンドアウト! セコンドアウト! /
「うるっせぇよお前もよぉ!! わかってんだよぉー! もぉぉぉーー!!」
「ジョー! 怒ったらアカンで! クレバーやで!!」
「そうじゃあジョー! 落ち着けぇ~!
マウスピースをペロペロして落ち着けぇ~!」
「わかってるよぉチキショウ! あぁもう甘ぇなコレ!?
なんか和んじまって闘志わかねーよコレ!!」
\ ワーワー! /
………………………………………………
『矢吹ダウーン!! チャンピオン、ウルフ金串の右が炸裂ぅー!!
挑戦者矢吹、マットに崩れ落ちたぁーー!!』
\ ワーワー! /
(…………ちっ、解説者の野郎……大げさに騒ぎ立てやがって。
あいよっと。いま立ちますよっと。
…………って、いけねぇなコリャ。なにやら目が霞んで来やがった)
《――――よう矢吹ぃ。どぉしたぁい?》
(おぉ、なんだ力石じゃねーか……。お前、死んでからチョイチョイこーやって
出てくっけど、ちゃんと成仏はしてんのかぃ……)
《――――――――よう矢吹ぃ。どぉしたぁい?》
(……スルーかよ力石。……まぁいいけどよ。
そんでお前……、なんか出てくる度に、ちょっとふっくらしてきてねぇか?
あっちではちゃんと飯食えてんだなオイ……。ホントよかったよオイ……)
『おーっと矢吹立ち上がった! カウント8で立ち上がりました! 試合続行です!!』
\ ワーワー! /
(拳キチの野郎……。もうリングサイドで泣いてやがるよオイ……。
そんな心配すんなっておっつぁん……。それとお経唱えんのは、
なんか縁起わりーから止めてくれよおっつぁん……)
………………………………………………
\ カーン♪ /
『ここで第四ラウンド終了です! 挑戦者の矢吹、ダウンこそ取られましたが
まだまだ元気! 凄まじいパンチの連打を見舞っていきました!!』
\ ワーワー! /
「…………ったくよぉ。あー疲れた疲れたっと」
「大丈夫かぁ~ジョ~!! ワシャー……! ワシャーもう駄目かと思ってぇ~!!」
「んな心配しなさんなって。次で倒してくらぁな。
おっつぁんは安心して、こっから見てりゃ…………
「――――丹下会長? もう試合を止めるべきです。
これ以上は、矢吹くんの選手生命を縮めるだけですわ」
「……!? テメェ葉子!! 何しにきやがった!!」
「お~! こりゃあ白木のお嬢さんじゃねぇですかぁ~。
そんな事言うモンじゃねぇぞぉジョ~? 白木のお嬢さんはな?
いっつもおめぇを心配して、ジムにアロエとか届けてくれてんだぞ?」
「ありゃてめぇの仕業かオイッ!!!!
どーすんだよあの大量のアロエ!! 丹下ジムは今、アロエだらけだよ!!
寝るトコねーんだよ植木鉢だらけで!!」
「――――矢吹くん。アロエは身体に良いわ。ぜひお使いなさい」
「あんなにはいらねーよ! 良いかもしれねぇけど!!
一個ありゃー事足りんだろうがよ!?」
「ほらジョー見てみ? 白木のお嬢さん、今日もアロエの植木鉢を抱えてはる。
白い服に、緑のアロエ……。ほんまよぅ映えとるがなアロエが……」
「そーいうのは今いいんだよ!!!!
というかアロエ似合うなアンタ!! そんなキャラ無かったろうがよ!!」
\ セコンドアウト! セコンドアウト! /
「――――わたくし、ちょっとレフリーと話をつけてきますわ」イソイソ
「上がんじゃねーよリングに!! 上がろうとすんなよ!!
行くよ俺! やっから!! 試合すんだよ俺ぁよ!!」
「――――ではせめて、これを塗ってから」ヌリヌリ
「顔にアロエ塗んなよ!! ぬめんだろうがアロエが!!」
「行ってこいジョ~! もう一息だぁ~!!
白木のお嬢さんもぉ、おめぇを応援して下さっとるぞぉ~!!」
「せやでジョー! ファイトや! お前やったらいける!!」
「――――――好きなのよ矢吹くん、貴方が」
「何で今言うんだよソレ!! 今言われてもどうしようもねぇだろうがよ!!
ホセ戦のトコまで積み重ねてけよ!!」
「…………………それとお前ぇ! とにかくアロエどうにかしろよお前ぇ!!
あれホント迷惑だからな!? まずはそれからだぞ話は!!」
\ セコンドアウト! セコンドアウト! /
「うるせぇ!! 行きゃーいいんだろうが行きゃー!! 行ってくらぁおっつぁん!!」
「おぉ~行ってこいジョ~!
帰ってきたら、たらふくアロエ食わせてやるからなぁ~!!」
「いらねぇんだよアロエはッ!! それと拳キチてめぇ!
二度と味噌汁にアロエぶち込むんじゃねぇぞ!! 殺すぞッ!!」
\ ワーワー! /
………………………………………………
『ウルフ金串ダウーーン!! 挑戦者のカウンターの前にマットに沈みましたぁーー!!
試合終了ぉーーー!!』
\ カンカンカーン!! ワーワー! /
(あぁ……なんとか勝ったけどよ……。なんとかライトクロス入ったけどよ……)
(でもこれ……アレか? 顔にアロエ塗られてたから、
上手い事ヤツの拳がズルッと滑ったのか?
……だから俺の拳だけが、バッチリ入ったのか……?)
「よくやったぁ~ジョ~!! おめぇはワシの誇りだぁ~!!」
「――――おめでとう矢吹くん。お疲れ様」ヌリヌリ
「いやっ……! ちょっ……! アロエッ……!!
……つかもういいよ。わーったよお嬢さん……。ありがとよ……アロエをよ」
「? ――――取り合えずこの後、ベネズエラからカーロスリベラが来るわ。
これから忙しくなるわよ矢吹くん」
「……へいへい、わーったよお嬢さん。
次はベネズエラの大将とやるよ。しっかり見ときなよ」
「お嬢さん~。おかげ様で今日もジョ~が勝てましたぁ~!
これも白木のお嬢さんがくれた、マッサージチェアやマウスピースのお陰でさぁ~!!」
「 テメェか葉子!!!! テメェかっ!!!!
いいかッ!? 今度やったら殺すぞ!! 力石には悪いが殺すぞッ!!!! 」
「――――好きなのよ矢吹くん。貴方が」