「――――いらっしゃい矢吹くん、丹下会長。ようこそ白木ジムへ」
「おぉ~! 本日はお招き下さりぃ~!
ありがとうございますぅ~白木のお嬢さん~!」
「よっ! 来たぜ葉子、小遣い稼ぎによ。
んでどこに居んだい? そのベネズエラの大将ってのはよ」
「――――カーロスなら、今リングを使っているわ。
貴方が来るまでに、身体を温めておくと言ってね」
「おーそうかぃそうかぃ! よぉーカーロスの大将!
今日はスパーよろしくなぁ!」
「Ohヤブキィー! ヨロシクおねがいしまース!
レッツファイトねー!!」
「ほぉ~! あっれがベネズエラのカーロスリベラかぁ~!
なぁるほどぉ~! 良い動きしてやがんなぁジョ~!」
「……まぁ、よくもこんなアロエだらけのジムで
練習出来るもんだとは思うけどよ。文句も言わずによ……」
「――――矢吹くん、さっそくスパーリングの準備を。更衣室はあちらよ」
「……スルーかよ葉子。まぁいいけどよ。
んじゃあチャッチャと着替えてくらぁ!」
………………………………………………
「…………んで、葉子よ? とりあえず、着替えてはみたけどよ?
ちょっと……色々と言いたい事があってよ?」
「? ――――なにかしら矢吹くん?」
「…………えっと、まずよ? 何だいこのグローブは?
これ更衣室に置いてあったんだけどよ?」
「――――今日のスパーリングで使うグローブよ。
お互い危険の無いよう、“160オンス“のグローブで戦って貰います」
「 デケェんだよコレ! 俺こんなグローブ見た事ねぇよ!!
何だコレ! お前が作ったんか!? 売っちゃいねぇだろうがよコレ!! 」
「おぉ~! こりゃ立派なグローブじゃねぇかぁ~ジョ~!!
なんかジョ~の手がぁ~、でっかくみえてくらぁな~!」
「実際デケェんだよ!! 南米のスイカでもこんなデカくねぇよッ!!」
「――――矢吹くん、試合用の8オンスは危険だわ。それをお使いなさい」
「危険どころか、ボクシングが出来ねぇーよ!!
重てぇんだよコレ! 腕上がんねぇんだよ今!!
つか引きずってここまで来たからな俺!? ボクシングになんねぇよ!!」
「OKジョー! レッツファイトねー!」ズルズル……
「 おめぇーーもハメてんじゃねーよ!! なに装着してんだよ!! 」
「さっすがぁベネズエラのカーロスだぁ~!
立ち姿もなんかぁ~、風格あんじゃねぇかぁ~!!」
「デケェからだよ! グローブでけぇからそう見えてんだよ!!
どうすんだよ二人してこれハメて!
何すんだ!? リングん中をウロチョロ歩くんか!?」
「ヤッパリ日本、豊かな国デース!
グローブも、ベネズエラと全然ちがいマース!!」ズルズル……
「違うんだよ! このグローブの方が違うんだよ!!
おかしいと思ったらちゃんと言った方がいいぞお前!!
コイツら無茶苦茶するからな!? 殺されちまうぞ!!」
………………………………………………
「すんません~お嬢さん~! ジョ~のヤツがぁ~!
どぉ~しても出来ねぇってぇ~、言うもんだからぁ~!」
「――――困ったものね矢吹くん。これでは練習が出来ないわ」
「だから普通ので良いんだよ普通ので!! あんじゃねぇかそこに沢山!
8オンスのが置いてあんだろうがよ! それ使わせてくれよ!」
「――――冗談言わないで矢吹くん。あんな危険な物、見たくもないわ」
「なんでボクシングジムやってんだよお前! なめてんのか!」
「すんません~お嬢さん~! 勘弁してくだせぇ~!
わしゃー、ジョ~の嫌がる事ってぇのはぁ~、
出来るだけさせたくはねぇんですぅ~!!」
「止めろッ! 恥ずかしいだろうがよおっつぁん!
いつも感謝してんだよ俺ぁよ! わーったからよ!」
「とりあえずどーしますカー? ワタシ、ヤブキと戦いたいデース!」
「なぁカーロスもこう言ってんじゃねぇかよ。
なんとかしてくれよおっつぁん……。ベネズエラから来てくれてんだよ」
「お嬢さん~! もうこ~なったらボクシングとかじゃなくぅ~!
“お互いの良い所をひとつづつ言い合う“みたいな勝負で、
ジョ~とカーロスを~」
「 何なんだよソレ!! 何しに来たんだよ俺ぁ!! 」
「――――良いですね丹下会長。ぜひそうしましょう」
「おめぇーーも乗っかってんじゃねぇよおめぇ!
なんだよその平和なヤツ!! それで良いんかお前!! つか初対面だよ俺達!!」
「ヤブキは~、そんな髪型なのにちゃんとボクシングが出来て、すごいデース!」
「おめぇーもさっそく始めてんじゃねーよッ!!
あとそれ悪口だからなお前!? 褒めてねぇからな!?」
「そーだぞぉ~カーロスぅ! ジョ~はすげぇヤツなんだぁ~!
髪型さえまともなら、今頃ベルトの2,3本……」
「そんな風に思ってたのかおっつぁん!!
毎日リンスとかしてんだよ俺ぁ! ほっといてくれよ!!」
「――――矢吹くんは、帰ってきたらちゃんとウガイをするから偉いわ」
「お前も何参戦してんだよ! 嬉しくねぇよそんなの褒められてもぉ!
つか何で知ってんだよそれ!!!!」
「ジョーは買い物ん時、ちゃんとエコバック持って行きよるで!!」
「おめぇはいつ来たんだよ西!!
いいんだよ付いて来なくてもよ! 帰れよ!!」
………………………………………………
「……ったく、最初からこうしてりゃ良いんだよまったく。
16オンス使わされてる上に、なんか西洋甲冑みたいな防具
まで着せられてるけどよ……」
「頑張れぇ~ジョ~! くれぐれもぉ~、無理だけはするんじゃねぇぞぉ~!」
「あいよっ、心配すんなっておっつぁん!
いっちょぶちかましてくらぁな。そこでしっかり見てなよ」
「――――では両者、リングの中央へ」
「 おめぇがレフリーすんのかよオイ!
なに白黒の服着てんだよ! 準備してたんかお前!! 」
「…………って、そもそもスパーにレフリーはいらねぇーよ!
何はりきってリング上がってんだよ! ライセンス持ってんのかテメェ!!」
「――――大丈夫よ矢吹くん。ちゃんとはじめの一歩も全巻持っているもの」
「それだけでレフリーは出来ねぇよ!
しちゃ駄目だよ! ボクサーの命を預かってんだよ!!」
「――――肘打ち、ローブロー、バッティングに気を付けて。
もし矢吹くんを怪我させたら、カーロスは国外追放します」
「重てぇんだよ罰が!!
何だそのルール! レフリーにそんな権限はねぇよ!!」
「――――二度と日本の土を、踏めないようにします」
「怖ぇんだよお前! なまじ金あるから出来そうなんだよお前!!」
「大丈夫ヨー! 葉子サーン!
たとえ選手生命を断たれても、ヤブキを殴ったりしまセーン!!」
「何しに日本に来たんだよおめぇは! やれねぇよ! 殴れねぇよ俺ぁ!!」
「――――止めるの矢吹くん? それが良いわ。ボクシングなんて」
「お前ほんといい加減にしとけよ!?
ノリちゃんみてぇな事言うんじゃねぇよ!!」
「やぁ矢吹くん! やっとボクサーを引退し、葉子に婿入りする決心を……」
「アンタいつ来たんだよ白木の叔父さん!
しねぇよ婿入りは! ボクサー続けんだよ俺ぁよ!!」
「――――矢吹くん、ボクサーは西洋甲冑を着たりなんかしないわ」(笑)
「おめぇーーが着せたんだろうがよコレぁよ!!
アンタのお孫さんどっかおかしいぞ! どういう教育してきたんだよアンタ!!」
………………………………………………
(……ちっきしょう、動きづれぇよコレ。
もう歩く度に〈ゲッション! ゲッション!〉いいやがるよコレ……。
ボクシングになんねぇよ……)
(何故かカーロスの方は、何にも着てやがんねぇし……
アイツ「ヒャッハー!」とか言って走りまわってんじゃねぇか今。
打ってこいよお前……。つか俺も一発も殴れてねぇよ)
「――――矢吹くんは、何でも好き嫌いせずに食べるから偉いわ」
「ジョ~はぁ~! いっつもワシの肩とか揉んでくれとるんですぅ~!」
(……あっちはあっちで、なんか盛り上がってやがるしよ……。
こっち見ろよお前ら……。何やってんだよ俺いま。何だコレおい)
《 よぅ矢吹ぃ、どぉしたぁい? 》
(……おぅなんだ力石かよ。
脱水起こしてんのかな俺……? 頭がボ~っとしてきやがってよ……)
《 俺の西洋甲冑ぅ、いい感じだろうがぁ? 》
(……あぁ、お前これ着て練習してたんかオイ。
どうりで痩せるワケだよお前。
言いたかねぇけど、止めといた方がよかったんじゃねぇのか……?)
「今度ぉ、ジョ~が寝てる時ぃ~、ワシがハサミでバッサリと
切っときますんでぇ~!」
「――――それが良いですわ丹下会長。
あんな前髪じゃ、目を悪くしてしまうもの」
(あっちはあっちで、なんか不穏な事言ってやがるしよ……。
……おい力石、殴ってきていいか?
今なら殴れそうな気ぃすんだよ俺ぁよ。女でもよ……)
……………………
………………………………………………
「あー疲れた疲れたっとぉ!
汗をかいた後のシャワーってのは良いねぇーっ!」
「……つか結局何しに来たんだよ俺ぁよ。
何にもせずにスパー終わっちまったよオイ」
「――――矢吹くん、タオルを持ってきたわ。着替えもね」ガチャリ
「おーすまねぇなぁ葉子ぉ! ……って勝手に入ってくんじゃねーよお前!
何してんだよお前!!」
「――――水に濡れても崩れないのね。凄いわ、矢吹くんの前髪」
「冷静に観察してんじゃねーよ! 出てけよお前ッ! 嫁入り前だろうが!!」
「? ――――とりあえずは今後、
金竜飛とのタイトルマッチを用意しているわ。
辛気臭い男よ矢吹くん。殺しておしまいなさい」
「言い過ぎだろうがよお前ッ!!
アイツも辛い人生おくってきてんだよ! わかってやれよ!!」
「おぉジョ~! ワシもお邪魔してきたぞぉ~!
一緒にシャワーしようやぁ~!」
「Heyジョー! ワタシ背中流してあげマース!」
「おめぇらシャワーなんか必要ねぇだろ!
いいんだよ入って来なくてもよ! 娘さんも居んだよ!!」
「――――そうですか。では私も水着を」イソイソ
「行くなよ! 水着とりに行くなよ!
……いやシャワー室からは出てけよ! 居座ろうとすんなよ!!」
「お嬢さん~! 今日はほんとありがとうごぜぇましたぁ~!
ジョ~のやつもぉ~! 良い経験になったんじゃねぇかってぇ~!」
「今度ワタシも応援に行きマース!
ベネズエラからいつでも飛んできマース!」
「――――好きなのよ矢吹くん、貴方が」
「 だから何で言うんだよそれ!!!!
俺の裸見ながら言うんじゃねーよ! 別の意味が出てくるぞ!! 」
「矢吹くん、これは一体どういう事かね?
こうなったらもう、葉子を貰ってもらうしか……」
「 アンタも何なんだよ一体!!
腰にタオル巻いて言う事かよ! 出てけよ!!!! 」