あの戦いは死闘だったと、ドモン・カッシュは語る。
実はネオチャイナへと向かう途中、彼は突発的なガンダムファイトを戦う事となっていたのだ。
突然ドモンとレインの前に姿を現した、国籍不明の謎のガンダムファイター。
唐突な展開に驚きつつも、二人はやむなしとばかりに即座に戦闘へ入った。
ファイターたるもの、敵に背中は見せられない。そう言わんばかりに受けて立ったのだ。
ドモン操る、ネオジャパンのとうふガンダム。
対するは、ネオ発展途上国の擁する“色々足りてないガンダム“
正式名称など知らん。ドモンもレインも特に訊ねたりはしなかった。
その機体は発展途上国ゆえの予算不足の為か、文字通りもう色々と足りてないのが見て取れるガンダムだ。
「えっ、本来いるハズの部品も、いくつか無いんじゃない?」と、そんな心配をしてしまいそうになる感じである。
きっと村の大人たち子供たちを総動員し、がんばって木だの布だので機関部を覆い隠したんだろう。
その手作り感あふれる貧弱なボディは、見る者全てに哀愁を誘う。
国とか村とかの機体を一身に背負っているんだろうなぁというのも、何と無しに見て取れる。
壊してしまうのが、非常に忍びない――――
戦闘前、そう感じたドモン。
もし故障などさせよう物なら、ちゃんと復活させる事は果たして出来るのか。ちゃんと修理するお金は残っているのだろうか。
そう心配せざるを得ない程、悲しいガンダムであった。
「くらえネオ発展途上国ッ! ――――そうだ、京都へ行こう。
O・MO・TE・NA・SHIぃ~……、フィンガァァァアアアーーーーッッ!!!!」
粉々に粉砕される、ネオ発展途上国の色々足りてないガンダム。
戦いは非情。だって向かって来た以上やるしかないのだ。これは正当な暴力である。
だがせっかくなので、もう二度と修復出来ない位にぶっ壊してやった。
二度とこんな戦いに参戦しようなどと思わない程に。
お前達はガンダムファイトよりまず国をどうにかせぇ。そういう事である。
これがネオジャパン代表、ドモン・カッシュの心意気。O・MO・TE・NA・SHIなのだ。
「豆腐と思い、侮ったな!
キョウジと会うその時まで、俺は負けるワケにはいかないんだッ!!」
そうドモンはカッコよく決めるも、実際の所、ホントにそうだったのかもしれない。
ネオジャパンのガンダムが豆腐だと聞きつけたネオ発展途上国は、「コイツにだったら勝てる!」とばかりに、喜び勇んでやってきたのかも。
実際の所、本当ギリギリの勝負だったし。
ドモンの操るとうふガンダムも、もう立っているのがやっとの状態だ。身体中モロモロだし。
「お疲れ様ドモン!
やっぱりファイティングスーツを“豆乳“で作って正解だったわ!」
「臭いと思ったぞ! どうりでっ!!」
ハグして来ようとするレインを上手投げでうっちゃり、お説教タイムに突入するドモン。
今日の風呂もまた、長くなりそうだ。
最近しずかちゃんくらい風呂に入る頻度が増えている、ネオジャパンのドモンくんであった。
……………………
………………………………………………
やって来ました万里の長城。
現在ドモンは、今回の対戦相手であるネオチャイナのサイサイシーと向かい合っている。
ネオチャイナに来た途端、何故かどこぞの盗賊たちに襲われ、一時期コアランダーを盗難されたり、変なじいさん二人にレインが人質に取られたりもしたのだが(何故かレインは「キャー♪ 助けてドモーン♪」とばかりにテンションMAXだった)、現在は無事にコアランダーも奪還。レインも無事。
そして敵の首領も無事にとっちめ終わり、現在ドモンはサイサイシーと対峙している最中だ。
サイサイシーの背後にある大きな滝の中には、恐らくネオチャイナの物であろうガンダムの影も見える。
「お前がサイサイシーだったのか!
よくもまぁ好き勝手やってくれたものだ!」
「ゴメンよ兄貴! 勘弁だぜっ。
この借りはしっかりガンダムファイトで返すからさっ」
「応ッ! 望むところっ!!」
二人でこの敵のアジトである万里の長城へと潜入したは良いものの、これまで散々サイサイシーの裏切りに合ってきた。
ドモンを囮として使い、その騒ぎに乗じて自らの奪われたガンダムを取り戻す算段だったのだろうが、そのせいでいっぱい蹴られたり殴られたりしたドモンとしては、もうたまった物では無い。
まぁどこか憎めない愛嬌のある子ではあるし、盗賊に奪われてしまっていたガンダムを取り戻そうとするサイサイシーの事情もわからんでもない。
裏切りつつもさりげない彼の配慮もあり、自身もバッチリ無事だ。
このガンダムファイトによって白黒を着ければ問題ないだろう。ドモンはそう覚悟を決める。
「じゃあ乗り込むぜっ、これがオイラのガンダムファイト初戦だッ!
ドラゴンガンダァーーム!!」
滝の方に向かって「ヒャッホーイ!」と駆けていくサイサイシー。
やがてゴゴゴゴ……という轟音と共に、流れる水の中から巨大なガンダムが姿を現す。
「ほう、それがネオチャイナのドラゴンガンダ…………、
って、ドラゴンガンダムッ?!」
滝から出てきたのは、“青い機体“。
青を基調とし、白い手足、そしてワンポイントに黄色や赤などで塗装されたガンダムだ。
ぶっちゃけ、大分ドラゴンのイメージと違う。
いや、それどころかもう、ドモンはそのガンダムにすんごい既視感を感じざるを得ない。
「おいッ、お前それ“ファーストガンダム“じゃないのか!!
デザインがまんまだろう!!」
「ちっ、違うよ! これはドラゴンガンダムだよ!!
たとえ似ていたとしても、それは偶然の産物だよ!!」
アムr……ではなくサイサイシーの叫びが木霊する。
今ドモンの眼前にドーンと現れたのは、まごう事無く昔テレビで観た“ザ・ガンダム“その物。
どことなく四角くて、時代を感じさせるデザイン。あの偉大なるファーストガンダムその物なのだ。
しかし彼は、これはネオチャイナ製のガンダムだと主張して譲らない。
「お前それ大丈夫なのかっ!?
訴えられたらどうするんだ!! 著作権的な物は!!」
「そんなの知らないよっ!
何を言われても“これは我が国のオリジナルです“って言い張れって、
そう言われてるんだ!!」
よく目を凝らして見れば、若干ではあるがオリジナルとの差異がある事が分かる。
本家よりもほんのり丸くなった肩パット、さりげなくカラーが違うバックパック、口元にあるラインの本数などなど。
もう「流石はネオチャイナだ!」と言わんばかりの、ギリッギリ訴えられても戦えるくらいの絶妙なパクリリスペクト加減なのだ!
これに関してはもう、“年期が違う“。
パクリオマージュする事にかけては、宇宙広しといえどもネオチャイナの右に出る者は居ない。沢山の人がこれで飯を食ってるのだ!
「さぁ戦おう兄貴!
オイラの国の“オリジナル“ガンダムが相手だぜ!!」
「お前はそれで良いのか! ちゃんと言った方がいいぞ!!」
まだ子供だというのに、辛い戦いを強いられているらしきサイサイシー。
少林寺再興の為、彼も必死なのだ。背負ってる物が違う。
もうその姿を見ているのが、だんだん辛くなってきたドモン。
彼の涙に濡れた縋りつくような瞳を見て、ここで合わせてあげないのは、なにやらこの子の決意を踏みにじる行為のように思えてくる。
――――なんなんだこの空気。俺が悪いというのか。
間違った事は言っていないのに、子供パワーで自分が極悪人のような気がして来たドモン。
とりあえず、このガンダムだけは絶対に破壊しなくてはならない。
サイサイシーが今後、健全に成長してく為にも。大人達許すまじ。
「……わ、分かった、ネオチャイナのガンダムよ。
では俺達もガンダムを出すぞ! レインッ!!」
「オッケードモン! いくわよっ! “ガンダムライスボール“発進!!」
「ガンダムライスボールッ?!?!」
レインの合図と共に、空の彼方からゴゴゴ……っと飛んでくる巨大なおにぎり。
壊れてしまったとうふガンダムの代わりに、急遽レインが取り寄せたのがこの機体だ。
関係はないが、普通にお米を握った物が“おにぎり“、妻や恋人が握ってくれた物を“おむすび“(お結び)というらしい。うろ覚えの豆知識である。
そしておにぎりは英語で、ライスボール。
古来より老若男女問わず愛されて来た、まさに日本の誇るフェイバリットフードなのだ!
「さぁ乗ってドモン!
今回もファイティングスーツは、海苔にしてみたわ!」
「海苔やめろお前!
どんだけ海苔好きなガンダムファイターだ俺は!」
「コアの部分は梅干し! ビームサーベルは、おーいお茶のペットボトル型よっ!」
「それを貴様に叩きこんでやろうかッ!!
……もういい! 来いっ、おにぎりガンダーム!!」
「ガンダムライスボールだってば!」
「チッキショー!」と叫びつつガンダムに乗り込んでいくドモン。
もうサイサイシーもスタンバっているし、口論しているヒマなんてないのだ。待たせたら悪いし。
コックピットに入り、上から迫ってきた装置に身体を海苔まみれにされ、戦闘準備を完了させていく。
磯の香りにだってだんだん慣れてきた。経験という物は偉大だ。
だがレイン、貴様はぜったいに許さん。
「いくぞサイサイシー! ガンダムファトォォオオーーーッッ!!」
「「レディィィ~~! ゴォォオオオーーーーーッッ!!!!」」
そして始まる二人のガンダムファイト。ドモンは三角な機体を操り、巧みに敵へと迫っていく。
対してパクリオリジナルガンダムは、パキュンパキュンとビームライフルを連射。ニュータイプよろしくの戦い方で攻めていく。少林拳はどうした。
「ドモン! こちらもバルカンで対抗よ!
ツナマヨが発射されるわ!!」
「もう黙っていろレイン! 本当に死んでしまう!!」
ただでさえ偉大なガンダム(パクリ)を相手にしているというのに、いま自分が乗っているのはおにぎりだ。
しかもムダに身体はデカくて、三角。動きにくい事この上ない。
胴体にある海苔の部分が、意外とビームを弾いてくれるのだけは救いか。
「どうしたどうした兄貴っ! アチョーーッッ!!」
ライフルを投げ捨て、ガンダムハンマーをブン回すサイサイシーが迫りくる。もうネオチャイナはやりたい放題だ。
ドモンも必死に三角形に足が生えたような機体でちょこちょこと動き回り、なんとか攻撃をしのいでいく。
「隙ありぃッ!! トドメだぁぁーーーーッッ!!!!」
岩に三角の身体をひっかけ、とうとうその場にスッ転んでしまうドモン。そこに空へ大きくジャンプしたサイサイシーが襲い掛かる。
「サイサイシー、行きまーす!」という声が聞こえた気がしたが、ドモンはそれを大人の対応で聞き流す。決して反応してはいけないのだ。
「甘いぞッ、サイサイシーッ!!!!」
「 !? 」
天高く飛び上がったサイサイシー、そこを突然〈ズボォ!〉っと腕を生やしたガンダムライスボールが迎え撃つ。
「俺のこの手が真っ赤に燃えるぅぅ~~~!
お前を倒せと輝き叫ぶぅぅ~~~!!」
ガンダムライスボールの前腕(シャケの切り身)が緑の光を放ち、その力を極限まで解放していく。
そのあまりの眩しさに、思わず視界を奪われてしまうパク……オリジナルガンダム。
『 くらえサイサイシーッ! ――――くいだおれの街、大阪。
O・MO・TE・NA・SHIぃ~……、フィンガァァァアアアーーーーッッ!!!! 』
唸りをあげて突進し、敵の頭部を地面に叩きつけるガンダムライスボール。
やがで光が止み、辺りに静寂が戻った時、そこには頭部を粉砕せんと握りしめるドモンと、その首にビームサーベルを突き付けているサイサイシーの姿があった。
「「――――そこまでっ! その勝負っ、引き分けとなさいませッ!!」」
戦場に響き渡る二人の僧侶の声。
彼らはサイサイシーのお目付け役としてここにやってきた、少林寺の年老いた坊さん達だった。名前は忘れた。
「……致し方あるまい。
この決着は次会った時に着けるぞ、サイサイシー」
「へへっ! 分かったよ兄貴!!」
頭部から手を放し、サイサイシーを立たせてやるドモン。
なんだかんだとありはしたが、この少年はまごう事なき強敵だった、ホントおにぎりで何とかなって良かった。
「ドモンどの! この度のご活躍、お見事でしたッ!
これより我ら二人がしっかりとサイサイシーに付き、
コヤツが立派な少林寺の跡取りとなれるよう精進させ……」
そう言い終わる前に、この坊さん二人をとりあえず殴っておく事にしたドモン。
たとえ著作権が許すとも、このドモン・カッシュが貴様らを許さん。何を子供に乗せとんねんとばかりにブッ飛ばしてやった。
――――次はお互い、まともなガンダムでやりあおう!
そうサイサイシーと誓い合い、ドモンはまたしても後のシャッフル同盟結成へ友情を結ぶ事に成功する。
しかしながら、まともなガンダムに乗ってるヤツは居ないのだろうか。
後のデビルガンダムとの戦いに、大きな不安が残る。
「オイラにも帰る場所があるんだ……こんなに嬉しい事はない……!」
そう涙を流すサイサイシーがオリジナルパクリガンダムに乗り、夕日の彼方へと去っていった。
…………………
………………………………………………
「レイン! 俺のジャポニカ学習帳をどこへやった!?
机の上にあったヤツだ!!」
「あぁ、あの子汚い落書き帳の事? 捨てたわっ」
現在ドモンとレインさんは、泊り先の宿にて言い争いをしていた。
ドモンが密かに作成していたガンダムのデザイン案は、今頃焼却炉にてメラメラと燃えている事だろう。
大事な大事なパートナーなのだし、勝手に部屋に入って荷物を漁る事くらいは当たり前なのだ。
「それより見てドモン! 今回はネオジャパン食べ物シリーズを踏襲して、
日本が誇る至高の麺類っ、その名も“ガンダムうどんヌードル“という……」
「カッコいい風に言うな! ようは“うどんガンダム“だろうが!!」
「麺を啜る動作って、外人さんには意外と出来ないらしいわ!
スパゲッティをクルクルして食べる軟弱者共に、うどんの洗礼を!」
「お前いい加減にしておけ!?
普通のガンダムを出せ! 遺憾の意を表明する!!」
「あれ、ドモン何で知ってるの?
私が作ろうとしてる“遺憾の意ガンダム“の事」
「作るな! 役に立たん!!
なんだその“とりあえず言っとけ“みたいなガンダムは!!」
「なっ……なんでそんなワガママばっかりっ!
もういいっ、知らない! ドモンなんて絶交よっ!!」
「あぁそうかぃ、せいせいするな。
ちょうど俺も一人になりたかった所だ」
「もうっ……! もう……っ!!
知らないッ! ドモンのバカ! 豆乳スーツ!!」
「それお前のせいだろうっ!! 匂いを落とすのにどれだけかかったと……!」
「…………あ、パパ? 私だけど。
今すぐドモンのお父さんの機械、コンセント抜いて」
「お前なにしてんだ! どこに電話してる!?」
無感情な声色で、ミカムラ博士に電話するレイン。
「半解凍、半解凍してやって。
ドモンが泣いて謝るまでレンチンしてやって」
「眠らせといてやれ!! やって良い事と悪い事がある!!」
急いで受話器を取り上げ、ドモンは必死にミカムラ博士と話した。
『 ドモンがいじめる! ドモンがイジワルする!!
なんで私のガンダム乗らないの!? なんで喜ばないの!?
いっしょうけんめい作ったのにっ!
ドモンの為にって、がんばって作ったのに!!
ドモン馬鹿だからガンダムなんて作れるハズない!!
私が作るしかないのに! 私の役目なのにっ!!
ドモンは私のガンダムに乗るのっ!! 』
「お……落ち着けレイン……! そんな大声を……!
誰か人でも来たら、どうするつも……!」
『 なによっ!? ハチマキッ!!
あほハチマキ! 似合ってないのよ!
そのほっぺの傷だって自分で付けたんでしょう!?
カッコいいとか思ったんでしょう! この中二病! あほドモン!!
どうせお風呂でちんちん洗う時も「シャァァイニング、フィンガー!!」
とか言って洗ってるんでしょう!?
バカじゃないの! バカじゃないの! バカじゃないの!! 』
「レイン……ッ! レイン……ッ!!
乗るっ! うどんガンダムに乗るッ! 俺が悪かった!!」
次の対戦相手は、ネオフランスのジョルジュ・ド・サンド。
ドモンはガンダムうどんヌードルを繰り、かの敵を撃破しなくてはならない。
「じゃあ今すぐ乗って! 乗ってよ!
でないと私、産むわよ!!」
もう何をどう産まれるか分かったもんじゃないので、イソイソとガンダムの倉庫に向かって行くドモン。
「ムキー!」っとばかりにレインに追い立てられ、コックピットに上がっていった。
――――ジョルジュの傍にも女の子がいるらしいが、俺達のような感じなのだろうか。
そんな事を考えつつ、スーツ代わりのうどん粉を被るドモンであった。
☆スペシャルサンクス
砂原石像さま
・ネオ発展途上国“色々足りてないガンダム“
・ネオチャイナ“パク……オリジナルガンダム“