hasegawaさん、炎の短編集。   作:hasegawa

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28、最終兵器アナゴ 最終話

 

 

「 いるんだろう! そこに居るんだろう!? 」

 

 ビジネスホテルから駆け出し、そこからぼくは丸一日もの間、アナゴくんを探して思いつく限りの場所を駆け回った。

 しかしどれだけ探そうとも、彼の姿を見つける事は出来なかった。

 

 正直ぼくなんかには、とてもじゃないが内容は理解出来なかった。しかしあの手紙からは、普段の彼からは想像も付かないような悲痛な覚悟を感じたんだ。

 彼を見つけなけらばならない。是が非でも見つけ出さなければ、そして傍に居てやらなければ。

 今ぼくが心に思うのは、ただその想いだけ。

 

 やがて万策尽き果て、ようやくその場に足を止めたぼくは……、おもむろに辺りに響く程の大声を持って、呼びかける。

 

「いるんだろう! どうせそこで見ているんだろう!? 出てこい!!!!」

 

 確信があった。彼らがあのままぼくを放っておくハズがないと(・・・・・・・・・・・・・・)

 故にぼくはハッキリと、そして縋りつくような気持ちで、そこに居るであろう人物に呼びかける。

 

「…………」

 

 やがて観念したように、建物の影から姿を現したのは、あの江根という男。 

 ぼくと目を合わせるのが辛いかのように、そして何をどう話して良いのか分からないとでも言うように、その場に立ち尽くしている。

 おもいっきりアナゴくんに掃除機で吸いこまれてたハズだけど……なんとか無事だったようだ。

 

「江根さん! 彼は無事なのかい?! 今どこにいるんだ!!

 いったい君たちは、アナゴくんに何をさせようとっ!!

 ……いや、そんな事はもう、どうだって良い……っ」

 

 江根の肩を掴んでガクガクと揺らすが、彼は抵抗する事もせず、ただ俯いたまま。

 

「アナゴくんは……一体どうなるんだい?

 いつか元の身体に戻る事が……いや、生きる事は出来るのか(・・・・・・・・・・)?」

 

 いつも飄々としている彼らしからぬ、真剣さを持って綴られていた手紙。

 それを読んだ時、ぼくはとてもイヤな予感がしたんだ。

 決して当たっていて欲しく無いと……、そう願いながら江根を問い詰める。

 

「――――仕方なかった。誰も悪くないんです」

 

 ぼくから眼を背けたまま、呟くようにして江根が口を開く。

 

「決して我々は、最初からアナゴさんをあのようにしようとしたワケでは……。

 しかし、今となってはもう……」

 

「あの日、奥さんから離婚届を受け取った時……彼は壊れてしまったのです。

 “人“の部分を致命的に破損し、もう元に戻る事は出来なくなってしまった。

 たとえ頑丈な身体を得ようとも……彼は我々も予想外な程、心が豆腐だった……」

 

 真面目な雰囲気の中で申し訳ないが、「え、なんかアナゴくんディスられてない?」と思った。

 

「――――知りたいですか? この星の事。

 この企業戦争の事……、そして本当の彼の事を……」

 

「人間には、“知らなければ良かった事“、というのがあります。

 人には、人生には……知らなければ幸せでいられた事というのがあります。

 そうすれば、一度きりのかけがえのない人生を精一杯なんやかんや……」

 

 江根さんは今も真剣に語ってくれているのだが……ぼくはさっきの豆腐発言が気になりすぎて、もうロクに話が入って来ない。

 

「アナゴくんは生きられますかっ?! この先も無事にっ!!」

 

「…………はい、おそらく。

 しかし、それがどういった形(・・・・・・)でかは、私にはわかりかねます」

 

 とりあえずもう要点だけ訊こう! それだけでいいやっ!

 そんな想いから話をぶった切り、質問を投げる。

 

「我が社(パナソニ〇ク)の研究者のひとりが、ある仮説を立てています」

 

「たとえて言うなら……、いまのアナゴさんの細胞は“人類そのもの“

 人がこの世に生まれ出てから今までの歴史を、

 その体の内でもう一度繰り返しているようなものです。

 平和と戦いを繰り返し、それを糧として、際限なくどんどん成長し続けている」

 

「その先にあるのは破滅か、それとも永遠か……。

 それを決定するのはもう彼ではなく……我々“人類“なのかもしれない」

 

 もうスケールがデカすぎて、ぼくには理解が出来ない。いつの間にか“人類“とか言い出し始めたしこの人……。

 ただこの事態がぼくの想像していたよりもずっと大きく、そして取り返しがつかない程の事だというのは、なんとか伝わって来た。

 

 

「――――しかたなかった。誰も悪くないんです」

 

「俺達もAIBOみたいなヤツ作ろうぜっ!

 とりあえずはなんか、なんでもいいから面白い事したいっ!

 ……そんな何気ない気持ちから、テンションから、

 アナゴさんを最終兵器にしてみたというのに……。

 まさかこんなにも、エライ事になるなんて……。もう誰にも止められない」

 

「これも企業の……いや人類の選択なのか。

 しかたなかったんです。誰も悪くないんです――――」

 

 

 

 言っている事は、よく分からない。

 けれどぼくは、とりあえずこの男をおもいっきり殴っておく事にした。

 

 生まれて初めて、ぼくは助走をつけて人を殴った。

 

 

 

………………………………………………

………………………………………………………………………………………………

 

 

 アナゴくんが言っていた“ものすごく赤い朝焼け“、そして(ちょっとビックリしちゃう程度の)大きな地震があった後……、それはすぐ訪れた。

 

「どうもーっ! ク〇ネコ宅急便でーす!」

 

 突然磯野家に送られて来た、身に覚えの無い配達物。

 誰も頼んだ憶えなどない、パナソニ〇ク製の家電(・・・・・・・・・・)

 

「どうもーっ! 佐〇急便でーす! 受け取りのサインをー!」

 

「どうもヤマ〇電気でーす! 荷物のお届けにー!」

 

「どうもコジ〇電気でーす!」

 

「エディ〇ンでーす!」

 

「ジョーシ〇でーす!」

 

 そしてその数は、もう家の周りを取り囲み、近所の道を埋め尽くす程。

 もう磯野家への配達員のせいで、近隣に渋滞が発生する程の数だった。

 

「ちょ……なんなの貴方たち! ウチは洗濯機なんて頼んでません!」

 

「テレビも冷蔵庫もTOSH〇BAのがあるんです!

 パナソニ〇ク製なんて買っていません! 帰ってください!」

 

 ぼくが地震と朝焼けを見て、急いで磯野家へと駆けつけた時には、すでにこの状況だった。

 今もサザエとお義母さんが、ふたり必死になって押しかける配達員たちを追っ払っている。

 

「大丈夫ース! ちゃんと古いのは下取り致しますんでー!

 おいこのTOS〇BAのエアコン、外してトラックに積んじまえ!」

 

「やめてくださいっ! 勝手にウチに上がらないでっ! やめてちょうだい!!」

 

 いや……あの“終わり(パナソニ〇ク)がくる“とは聞いていたものの、これってそういう事態なのかい?

 ウチにあるTOSH〇BA製の家電を全部パナソニ〇ク製に入れ替えれば、それで君たちは満足するのかい? それが君たちの“攻撃“で、勝利の形なのかい?

 

 ぼくはただただ家の前に立ち尽くし、この騒がしい状況を見つめる。

 アナゴくん探しを切り上げて急いで駆けつけてきたのに……。こんなのぼくにとって、ただ家中の家電が新しい物になるっていうだけで……。

 

『 ばっかもぉぉーーーーん!!!! ウチの家電はTOSH〇BA製と決めておーる!!!!

  パナソニ〇ク製なんぞ、いっらぁぁーーーーんッ!!!! 』

 

 ……あ、なんかお義父さんすごく怒ってるや。

 ごめんなさい配達員の皆さん。やっぱりそれ、全部持って帰ってください。

 

「……あなたっ! どうしたのあなた! 帰って来てくれたのっ!?」

 

「サザエっ!! 無事かいサザエ!!」

 

 ついに配達員たちを布団叩きで殴り始めたサザエが、ぼくの姿に気づいて裸足で駆けてくる。

 

「……まぁ、こんなに汗だくになって……。スーツもクタクタじゃないの……。

 いったい何があっ……ってあれ? アナゴさんは?

 アナゴさんは一緒じゃないの?」

 

「!? ……かっ、彼は……」

 

 アナゴくんの名前が出た途端、ぼくの身体がこわばる。

 彼の置かれた状況、そして彼の身体の事、最終兵器の事。その全てを話すワケにはいかず、ぼくは言いよどんでしまう。

 

「……そう、何かあったのねマスオさん。

 なにか大変な事があったけれど、でもまだアタシには話せない――――

 あなたは優しい人だから。家族に心配をかけられないから」

 

「だから今あなたは、こうして必死にがんばっている最中……。

 そうなんでしょう、マスオさん?」

 

「…………サザエ……」

 

 まるで全てを悟ったように、サザエがぼくに頷く。

 この上ない信頼と、強い愛情――――その両方をサザエの瞳から感じる。

 サザエが、ぼくの奥さんが今……いままで見た事も無いような優しい顔をしている――――

 

 

「――――いってらっしゃいマスオさん。大切なお友達のピンチなんでしょう?」

 

「こっちは大丈夫! 磯野家はばっちりアタシが守っとくから!

 ……だから、はやく帰って来てね、あなた。

 美味しいお夕飯作って、待ってるわ――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人は、罪をおかす。

 

 誰かを守ると、そう決めた時――――

 そして、たった一人しか守れない自分に、気がついた時――――

 

 

「これは……クロネ〇や佐〇のトラックが街中を埋め尽くしている!?

 ……磯野家だけじゃない、この街すべての家の家電を、

 ヤツらはパナソニ〇ク製品に置き換えようとしている!!」

 

 

 あの日以来……、ぼくらは沢山の寄り道をし、そしてようやくここまでたどり着いた。

 

 

「ッ!? 違う! パナソニ〇クだけじゃない、S〇NYもだッ!!

 HITA〇Iもゾウジ〇シも……日本中のあらゆる家電会社の電化製品が、

 この街に殺到している!!!!」

 

 

 

 この街が終わっていく。

 

 でも今は、アナゴくんの事を想おう――――

 

 

 ウザくて、気持ちわるい唇をした、ぼくの友達。

 

 アナゴくんの事を。

 

 

 

………………………………………………

………………………………………………………………………………………………

 

 

 

 

(もともと……もう持たない業界だったんだな。

 企業も、……人も)

 

 

 こんな事くらいで(・・・・・・・・)

 そう思ってしまうくらいのほんの些細な事で……伸びきったゴムのように少し切れ目を入れただけで、全てははじけ飛んでしまった。

 

 たった、一社の。

 たったひとつの、この世界から見たら本当にちっぽけな家電会社がやらかした……、小さな小さなあやまち。

 

 この日、世界(家電業界)はあっけなく、崩れた。

 

 

 

『――――おかえるぅ~ぃ、フグ田く~ぅん↓』

 

 

 ここは、アナゴくんの身体の中。

 今ぼくは、巨大な宇宙船めいた姿となった、アナゴくんの身体の中にいるのだ――――

 

《聞こえたんどぅ~ぁ、フグ田くんの心臓の音~ぉ。

 トクン、トク~ゥンて~ぇ↓》

 

《……あはは、フグ田くんがぼくの“中“にいるなんとぅ~ぇ、

 な~んか恥ずかしいぬぅ~ぁ↓》

 

 これは……音声でも映像でもない。

 まるで身体の中にいるぼくに対し、アナゴくんの意識そのものが、直接語りかけているような。そんな不思議な感覚だった。

 

《ぼくぬ~ぇ? せめて君と、磯野家の皆さんだけは守りたくと~ぅぇ、

 がんばってここまで強く、大きな姿になったんだいょ~ぅ。

 “ぼく“の部分が無くなってしまうギリギリまどぅ~ぇ↓》

 

 今この場には、ぼくの他にサザエ、そして不思議そうに辺りをキョロキョロと見回す磯野家のみんながいる。

 ――――そう、アナゴくんがもし助けてくれなかったら……、ぼくら家族は今頃、あの街と共に消えてしまっていただろう。

 

 

 

 …………佐〇やクロネ〇のトラックが大地を埋め尽くした、その後すぐ。

 突然あの街に、巨大な犬型ロボット(・・・・・・)が来襲した。

 

 ……そのロボットの名は“AIBO“。

 S〇NY社が開発したAI搭載型の愛玩用犬型ロボット、その“全長50メートル“バージョンだった。

 

 恐らくは他会社の製品もろともこの街を破壊し尽くしてしまえという……、そんなシェアとか利益とか業界一位とかを考えすぎて、もう頭が茹ってよく分からなくなってきちゃって全部がもうめんどくさくなってしまったS〇NYにより開発された、巨大な汎用犬型決戦兵器だった。

 

 AIBOの来襲に驚き、逃げまどう人々。そしてビルや家々にじゃれつくようにして街を破壊していくAIBO。

 その巨大な犬型ロボを迎え討ち、進行を食い止めたのが、突然颯爽とその場に現れたアナゴくんであった。

 

 

 アナゴくんの姿は、まるで天にまで届く巨大な大木のようだった。

 ……正確には、天にも届こうというような全長50メートルほどの巨大な“乾電池“(エネループ)であり、もうまんま乾電池の着ぐるみを着た巨大なアナゴくんであった。

 

 そのボディの上の方に空いた穴からアナゴくんが顔を出しており、もう乾電池の胴体はおもしろいわ、飛び出たつまようじみたいな手足はおもしろいわ、純粋にアナゴくんの顔自体がおもしろいわで……、この街の危機的な事態にも関わらず、住人達はみんな反笑いで頭上を見上げていたものだ。

 

 乾電池のアナゴくんが「ぬ~ん!」とファイティングポーズをとるその姿に……、ほんとうに彼には申し訳ないが、ぼくらは大爆笑であった。

 

 ……しかしながら、事態は決して面白くも愉快にも終わってはくれなかった。

 

 アナゴくんの奮闘によって最終的に破壊され、機能を停止したAIBO。住民達が歓声を上げたのも束の間、そのAIBOから突然けたたましいアラーム音が鳴り、「残り30秒」というアナウンスと共に自爆(・・)の態勢に入ってしまったのだ。

 

 もうS〇NYの社員達はどれだけ頭が茹っていたのか、それともこの業界の狂気の表れだったのか……、それはわからない。

 とにもかくにも狂乱の渦の中でその30秒後を迎えたぼくは……気が付けば白い光の中で目を覚まし、そして今現在に至る。

 

 AIBOの自爆を知ったアナゴくんは、急いでその身体を巨大な宇宙船(なぜか“ルンバ“みたいな形)に変形させ、こうしてぼくら家族を宇宙空間まで救い出してくれたのだった――――

 

 

 

 

《ごめんよぅ……“ぼく“はもう、なくなってしまっとぅ~ぁ。

 もう、これがぼくの~ぅ、精一杯どぅ~ぁ……。

 もう君とお酒を飲む事も、一緒にバイクに乗る事もできな~うぃ……↓》

 

《でも、フグ田くんを守れとぅ~ぁ……。

 こんな身体になってしまったけどぅ~ぉ、おかげでフグ田くんを守れとぅ~ぁ。

 それだけでぼか~ぁ……。ぼか~ぁ……↓》

 

 まるで泣いているかのような、アナゴくんの“意識“を感じる。

 ふと宇宙船(ルンバ)の窓を覗いてみれば……もうこの船は、地球を離れ始めているのが分かった。

 

「………………ッ……!」

 

 無くなってしまった街、居なくなってしまった人々、終焉を迎えた業界、その全て……。

 それを想った時、止まっていたぼくの感情が動き出し……、ふいに瞳から、涙が溢れだした。

 

《ど……どうしたんどぁいフグ田く~ぅん!? ど、どこか痛むくぁい?

 ……ご、ごむぇんぬぇ? こんな事にぬぁっとぇ……↓》

 

「……バカだなぁ。何を言ってるのさ、アナゴくん」

 

 心配そうな雰囲気のアナゴくん。ぼくは何でもないって事を伝える為に、少しだけおどけた声を出す。

 

「もし君がいなかったら、ぼくら家族はこうしてはいられなかったんだよ?

 ――――ありがとうアナゴくん。君がいてくれて、よかった」

 

《ちょ……ふ、フグ田く~ぅんッ!!

 なにを突然そんな……! はずかしいっしょや!!》

 

 何故かテンパっている様子のアナゴくん。なにやら口調もおかしくなっていた。

 

「うわ~あ! 姉さんこれって地球? すっごく綺麗だね!!」

 

「ほら見てごらんなさいタラちゃん! お月様もあんなに近くに!」

 

「おっ、これはテレビ? モニターか?

 どれどれ……何か映らんかな?」

 

 気が付けば、ようやく平静を取り戻した磯野家のみんなの賑やかな声が聞こえている。

 カツオくんやサザエが窓に張り付き、お義父さんやお義母さんが宇宙船(ルンバ)の内部を興味深そうに観察しているのが見て取れる。

 

「……アナゴくん、もう、あの街は……」

 

《……うん。ダメどぅあ↓》

 

「……そっか」

 

 宇宙船の駆動音――――それが、アナゴくんの心臓の音に聞こえた。

 それはぼくらがあの街に贈る、精一杯の歌声。

 感謝の、歌――――

 

「気にしちゃダメだよアナゴくんっ! 君は精一杯頑張ってくれたじゃないか!

 何度も言うようだけど、本当にありがとうアナゴくん。

 たとえどんな姿でも、こうして君とまた話が出来る、それがぼくは嬉しいんだ」

 

《もっ……やめてくれいょ~うフグ田く~ぅん!!

 そんなん言われたら照れるっしょや! はずかしいっしょや!

 と……とりあえず今後の事だけどぅ~ぉ?

 たしか船内の倉庫には、今後30年分以上の食糧が入ってとぅ~ぇ……》

 

「 ――――あれっ!?!? これってぼくらの街じゃないの?

  ぼくらの街が映ってるよ父さん!! 」

 

 その時、突然カツオくんの大きな声が辺りに響く――――

 視線をそちらにやってみれば……、そこにはモニターを覗き込む磯野家の皆の姿。

 

「これってTV放送? ニュース番組よね?」

 

「ヘリから撮っている映像……。

 ちゃんとテロップに東京都○○区って……」

 

「間違いない、これはワシらの街じゃ。

 ……というか、特に壊れたり、吹き飛ばされたりはしておらんようじゃが……」

 

 サザエ、ワカメちゃん、そしてお義父さんがモニターを観て不思議そうな声を出している。

 とりあえずはぼくも皆の仲間に加わり、モニターから流れるニュース番組を観てみる。

 

『 ご覧くださいッ! これがこの街を襲った巨大ロボ“AIBO“の映像ですっ!

  このロボットは突如として出現した謎の乾電池によって撃破され、

  その後自爆モードへと移行しましたが……、

  どうやらその自爆装置が故障していた様子で(・・・・・・・・・)

  今も街は平和を保っております!! まったくの無事その物です!! 』

 

 テレビには今も、レポーターの男が興奮気味に「よかったよかった!」と語る姿が映し出されている。

 

「………………………」

 

《………………………》

 

 それを観て、言葉を失うぼくとアナゴくん。

 

「……あ、あの……ねぇアナゴくん? これは……」

 

《いや……あっる~ぇ? ……え~っ?》

 

 そ……そっく~ぁ。

 ぼくもう、あれが爆発する1秒前には宇宙へ飛び出してたからぬ~ぇ↓

 そう冷や汗を流す(様子の)アナゴくん。

 

「で……でも何事も無かったんなら、これは喜ぶべき事じゃないか!

 なんの問題もないさ!! さぁアナゴくん、地球へ帰ろうよ!!

 ぼくらの街へ帰って、さっそく君と奥さんの仲直り問題を……」

 

《いやっ……それはぬ~ぇフグ田く~ぅん……?

 もう無理なんど~ぅあ(・・・・・・・・・・)♪ 最低あと10年くらいう~ぁ、

 ぼくら地球へは帰れないんだい~ょ↓》

 

「えっ」

 

 アナゴくんは至極申し訳なさそうな声(雰囲気)で、ぼくに語る。

 

《えっと~ぉ、宇宙へ飛び立つっていうのは~ぁ、宇宙飛行っていうのは~ぁ、

 そんな簡単な事じゃなくとぅ~ぇ? 星の重力とか軌道計算とか周期とく~ぁ、

 説明は省くけどなんか色々とあっと~ぇ?》

 

《とりあえずは一度飛び立ってしまったからには~ぁ、

 この船のスペックからすると最低でも帰るのは10年後くらいになっとぅ~ぇ、

 映画みたいに月や火星で生活するなんて事も出来ないかる~ぁ、

 フグ田くん達はこの宇宙船(ルンバ)の中どぅ~ぇ、

 10年ほどのんびり暮らしててもらうって事に~ぃ↓ ……てへへ♪》

 

「 マジで言ってるのかアナゴくん!?!? てへへじゃないよッ!!!! 」

 

 もしアナゴくんの姿があれば、ぼくは人生二度目のバーンナックルを慣行していた事に疑いは無い。

 

《ま~、もう飛び立ってしまった物は仕方ないよ~ぅフグ田く~ぅん。

 先は長いんだ~ぁ、これも宇宙旅行か何かだと思って~ぇ、

 のんびり羽を休めてくれたまえいょ~ぅ。

 ……あ、フグ田くんの“中“にあったぼくをかき集めてみたら、

 なんかぼくの姿を再構成できた~ぁ!

 これでまた一緒にお酒が飲めるぬぇ~ぃフグ田く~ぅん↓》

 

「 今それどころじゃないんだよ!!!!

  ぼくらを地球へ帰してくれよアナゴくんっ!! 頑張れよッ!!!! 」

 

 

 

 

 

 

 アナゴくんは人類(家電業界)の代わりに、その罪の全てを背負い、命が尽きる時まで贖い続ける。

 

 ……まぁ何の罪なんだかは知らないし、何の罰なんだかはよく分からないんだけど……、まがりなりにもぼくらは“親友“同士で。

 

 だからたとえその内の一瞬のような時間でも、ぼくらは(半ば無理やりに)共によりそい、共に居る事となった。

 

 この広大な、宇宙空間の、真っただ中で――――

 

 

 

《――――ぼくたちは、恋してく~ぅ↓》

 

「 やかましいんだよアナゴくんっ!

  ……バック! 根性でバックしてみようよアナゴくん!!

  いっかい試してみようよ!!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最終兵器アナゴ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――生きていく~ぅ↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――Fin――

 

 

 

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