hasegawaさん、炎の短編集。   作:hasegawa

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 ドラゴンクエストⅣ、第二章「おてんば姫の冒険」二次小説。








35 サントハイムへ帰れ

 

 

「いっかぁーーん! 冒険の旅に出たいなど、許さぁぁーーん!」

 

 

 玉座の間に、アリーナ姫の実父たる王様の声が木霊する。

 

「お前はこのサントハイム国の姫なのだぞ!?

 だというのに、武者修行の旅に出るなどと、許さぁぁ~~ん!」

 

 ムキーとばかりに癇癪を起し、王様は杖をブンブン振り回す。いま目の前に立つ自らの娘に「断固反対!」の固い意志を告げた。

 

「そんなこと言わないでお父さま!

 わたし世界中を旅して、自分の力を試したいの!」

 

 しかしサントハイム国の姫アリーナも、負けじと王様に喰らい付く。

 手を大きく広げ、必死に自分の気持ちを伝えようと奮闘する。

 

「きっと素晴らしい旅になるわ!

 強大な敵、まだ見ぬライバル、そして心が躍るような大冒険!

 考えただけでもワクワクしてきちゃう!」

 

 胸元でギュッと手を握り、アリーナはまだ見ぬ冒険の旅に「は~ん♡」と想いを馳せる。

 彼女の足元には、沢山の荷物が入った大きな鞄がある。もう今すぐにでも出発する気まんまんだ。

 

「ならぬ! ならぬと言うておろう!

 そもそもお主、旅などに出ていったいどうするつもりじゃ!」

 

「えっ? そりゃあ冒険をするのよ。

 洞窟を探検したり、困ってる人達を助けたり、モンスターと戦ったりするのよ!」

 

「なにを言うておる! お主にそんな事が出来るワケなかろう!」

 

 さっきまでプンプン癇癪を起こしていた王様が、今は何故かオロオロと狼狽えているように見える。

 

「ひどい! なんでそんなこと言うのお父さま! わたし精一杯がんばるわ!」

 

「だから出来んと言うておろうがっ!!

 お主、自分がどれだけ身体が弱いか(・・・・・・・・・・)、知らぬワケではあるまいに!」

 

 そう大きな声で説得しながら、王は眼前にいるアリーナ姫の姿を見る。

 グルグル包帯を巻いた頭、ギブスの付いた腕、顔色の悪い表情。オマケに今アリーナは、カラカラと点滴のヤツを引きながら必死に声を上げているのだ。「旅に出たい」と。

 

「なんでじゃ! なんで旅になど出ようと言うのじゃ!? その虚弱体質でっ!!

 お主、昨日も中庭でブッ倒れておったではないか!

 たった3分間外を歩いただけで! 貧血で!」

 

 そう、我らがサントハイム王国のお姫様は、もうビックリするくらいの虚弱体質であった。

 階段を昇るだけでゼーハー息切れし、3日に一度は貧血で倒れる。フォークとナイフより重たい物を持った事も無い。

 かけっこをすれば、鬼を捕まえるまでに倒れてしまうし、かくれんぼをすれば、鬼に見つかる前に貧血で倒れている。

 そんなとても"身体の弱い"お姫様なのであった。

 

「違うのよお父さま! あれはちょっと帽子を被るのを忘れてただけなの!

 ちゃんと帽子を被ってゆっくりと歩けば、いつも5分くらいは大丈夫なの!」

 

「5分では無理じゃ! 5分でいったい何が出来ると言うんじゃ!

 世界はとんでもなく広いんじゃぞ?!」

 

「世界を見てみたいの! もうこんなお城の中で過ごすのはイヤ!

 まだ見ぬ強敵達と、拳で語り合いたいの!」

 

「無理じゃと言うておろうが! そこらの子犬とでも遊んでおけ! 産まれたての!

 この間もお主、トレーニングだと言うてクッションを殴り、

 それ一発で骨折したではないか!」

 

 アリーナの右腕のギブスは、先日そういう経緯があって装着された。診察したクリフトによれば、もう絵にかいたような複雑骨折であったという。

 

「大丈夫! 確かにわたしの骨はすぐ折れちゃうけど、

 一度折れた個所は前より強くなるって言うでしょう?

 だからこうしてバンバン骨折していけば、

 いつかは全身の骨がダイヤモンドみたいになるハズよ!」

 

「どんな計画じゃソレ! ワシそんなダイヤモンドプリンセス見た事ないわ!

 大人しく城の中におれ!」

 

「イヤよ! アリーナは旅に出ます!

 前にお父様も『強い意志さえあればどんな事でも成せる』って言ってたじゃない!

 お父様のうそつき!」

 

「限度がある! 限度があるんじゃよ!

 いくら鋼のような意志があろうと、その割り箸みたいな身体では無理なんじゃ!

 お願いじゃからサントハイムで暮らそう! この父と共に!!」

 

 もう泣きそうになりながら懇願し、なんとかアリーナを諫めようとする王様。それでもアリーナ姫の意志は固く、決して首を縦には振ってくれない。何その意志の固さ。

 

「これブライ! ブライ! ちょっとこっちに来んか!」

 

「ははっ……! こちらにっ!」

 

「お主、いったいアリーナにどういう教育をしとるんじゃ!

 なんでワシの娘、こんな風になってしもうとるんじゃ!」

 

「も、申し訳ございませぬぅ~! 王よ~っ!」

 

 魔法使い兼、姫の教育係であるブライは、王様の前で「はは~っ!」と頭を垂れる。

 

「無理じゃろう! 無理に決まっとろうが!!

 なんでワシの娘、武者修行なんぞに想いを馳せとるんじゃ!」

 

「申し訳ございませぬ王よ! わたくしも言っては聴かせておるのですが……、

 姫はどうしてもと言って、聞く耳を持ってくれず……」

 

「そこをなんとかするのがお主の役目じゃろうが!

 サントハイムの賢者と名高き、お主ともあろう者が! 一体どうなっとるんじゃ!」

 

「しかし……! しかしながらわたくしっ!

 もうアリーナ姫が可愛いて可愛いて! 仕方ないので御座いますっ!

 お身体が弱いにも関わらず、こんなにも素直で真っ直ぐな子にお育ちになって……!

 わたくしはもう、嬉しゅうてかなわんのですっ……!」

 

「ありがとう! ありがとうブライ! 娘を愛してくれてっ!!

 こんなにも愛の深い従者に恵まれ、余は幸せ者じゃ!!

 ……でももうちょっと何とかならんかったのか?! もうちょっとだけでも!」

 

「いつも目をキラキラさせながら語るアリーナ様の夢を……、

 このブライ、なぜに奪えましょうや?!

 もういっその事、このまま褒めて伸ばす方針に御座いますれば!

 なにとぞ! なにとぞ!」

 

「アカン! 伸ばしたらアカンのじゃブライ!

 そのせいでもう、ワシの娘がえらい事になってしもうとるんじゃ!

 旅立とうとしとるじゃろうが! こんなポッキーみたいな身体で!」

 

「愛ゆえに! 愛すればこそに御座いまする!

 あぁアリーナ姫よ、健やかにあれ!!

 願わくばこの生い先短い命……すべてアリーナ姫に捧げたく思うものを!」

 

「そういうの止めんか! 重い! 重いんじゃ!

 お主はお主で長生きせんか! みんな頼りにしとるんじゃいつも!」

 

「――――お父さま! ブライを叱らないで!

 ブライはわたしにとても良くしてくれているわ!」

 

「二対一は卑怯じゃろうが! お父さん立つ瀬がないじゃろうが!

 ……わかった! もうブライは叱らん! 怒ったりはせん!

 じゃからサントハイムで暮らそうマイガール! お願いじゃからっ!!」

 

 もう「オーマイガッ!」とばかりに頭を抱えるサントハイム王。その悲痛な顔が彼の心労を物語っている。血管も切れそうだ。

 

「おいクリフト! お主もどうなっとるんじゃ!

 お主からも何とか言うてやらんか!」

 

「――――はっ。御意」

 

 王様の呼びかけに、ヌボォ~っとこの場に現れるクリフト。彼はこの国の神官であり、アリーナ姫とは兄弟のようにして過ごして来た幼馴染でもある。

 

「関係ないけど、お主も一体どうなっとるんじゃ!

 前はそんな姿と違うかったであろうが!」

 

「――――はっ。申し訳御座らん、王よ」

 

「なんでそんな筋骨隆々(・・・・)なんじゃ! ラオウみたいになっとるんじゃ!

 なにがお主をそうさせたんじゃ!」

 

 上半身裸に、例の長い帽子を被った姿。そしてその丸太のようにぶっとい右腕には、余所の国から取り寄せたモーニングスターという凶悪な武器が握られている。

 堀の深い顔。鋭い眼光。2メートルはあろうかという巨体。鋼のように隆起した筋肉。

 それが現在のクリフトの姿である。

 

「なんじゃその筋肉! なんじゃその眼光! 堀の深さ!

 お主のその『北斗神拳を継承しました』みたいな肉体、いったい何なんじゃ!」

 

「――――お褒めに預かり、恐悦至極」

 

「褒めとらん! 褒めとらんのじゃクリフトッ!

 ……怖いんじゃ! 城の者達もみんな怖がっとるんじゃ!

 なんでそんな風になってしもうたんじゃ! あのヒョロかったお主がっ!!」

 

「……恐れながら、王よ。

 クリフトめは先日まで、『姫をお守りする為の肉体を手に入れる』と言うて、

 有休をとり武者修行の旅に出ておったので御座いますじゃ」

 

「それで!? それでこの筋肉を!? ……この短期間で?!

 お主もどんだけアリーナを愛してくれとるんじゃ! ありがとうクリフト!

 ……でもそんな風にならんでもええじゃろうに!! もう別人ではないか!!」

 

「――――殺したい。生物を捻り殺したい」

 

「どうしたんじゃクリフトッ!? どうしたんじゃいきなり!?

 お主……修行のし過ぎで、もう精神おかしくなっとるじゃないか!!」

 

「――――トロルの腕を引き千切りたい。ドラゴンの首をへし折りたい」

 

「そんな事したらいかんッ! 神官がそんな事したらいかんッ!!

 やめんか!!」

 

「――――お言葉ですが、王。

 神の愛は我ら人間にのみ向けられており申す。獣畜生はその限りに御座らぬ」

 

「 戻ってこい!! 戻ってこいクリフトッ!! あの優しかったお前にッッ!!!! 」

 

「わぁ~すごい筋肉ねクリフト! 丸太のような腕だわ!

 ちょっとぶら下がってみても良いかしら? そーれブラ~ン♪

 …………あっ、肩が脱臼しちゃった……」

 

「 お主も何をしとるんじゃアリーナッッ!!

  衛生兵ッ! 衛生兵をここへッ!! アリーナがまた負傷しおったぞぉぉーー!! 」

 

 

 

 

 

………………………………………………

………………………………………………………………………………………………

 

 

 

 その後、サントハイムの姫アリーナは、無事城からの脱出に成功する。

 

 

「よ~しクリフト! この壁を蹴り破ってちょうだい!」

 

「御意――――墳ッッ!!!!」ドッゴォォォォン

 

 城を抜け出し、5回くらいスライムやいたずらネズミに殺されたりしながらも、なんとかアリーナは隣町までたどり着き、姫様一行の冒険の旅は幕を開ける。

 

 

「ザオリク、ザオリク、ベホマ。スクルト、ザラキ」

 

「マヒャド、マヒャド、マヒャド、マヒャド……」

 

「すごいわクリフト! ブライ! もうそんな大魔法を!」

 

 

 従者二人の献身的な活躍もあり、一行は順調に旅を進めていく。

 

 

「見て見て! 出来たわ! 腕立て伏せが出来たの!」

 

「なんと! ついに姫様も、腕立て伏せを一回出来るようになられましたかっ!

 このブライ……感服致しましたじゃ!」

 

 

 旅の中、アリーナは次第にレベルを上げていき、どんどんその身体を健康へと近づけていく。

 

 

『武道会一回戦の相手は、ハン選手です!

 さぁアリーナ選手、見事勝利する事が出来るのかぁ~?!』

 

「――――ふっ!」(吹き矢)

 

『おお~~っと! どうした事かハン選手! 突然倒れ伏してしまったぁ~~!

 アリーナ選手、一回戦突破ですッ!!』

 

 

 エンドールにおいての武道会でも、アリーナは破竹の勢いで勝ち進んでいく。

 

 

「さて……次は俺の出番か。アリーナとか言う小娘が勝ち進んだらしいが」

 

「――――失礼、貴公がピサロ殿に相違無いな?」

 

「ぬっ!? ……なんだ貴様ッ! その山のように隆起した筋肉はッ!!」

 

「――――御免ッ」(首の後ろをトスッ)

 

「う゛っ……! …………がっくり……」

 

 

 何故か決勝の相手であるピサロ選手が、控室から突然姿を消すというハプニングもあったが、見事アリーナ姫は武道会を最後まで勝ち抜き、優勝の栄冠を手にしたのだった。

 

 

 

「さ! 伝説の勇者様ってどこにいるのかしら? 早く会いたいわ!」

 

「そうですなぁ姫。どんな御仁か楽しみですじゃ」

 

「――――同意」

 

「ん~。出来れば強い人が良いわね! わたしより強い人だったら素敵だわ!

 会うのが楽しみね!」

 

 

 

 ギブスに包んだ腕を元気に振り、点滴のヤツをカラカラ引きながら歩くアリーナ。

 

 おてんば姫の冒険は、まだ始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 サントハイムへ、帰れ。

 

 

 

 

 

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