hasegawaさん、炎の短編集。   作:hasegawa

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 プレイステーション用ゲーム“ヴァルキリープロファイル“二次小説。







36 しょーもないエインフェリアばっかり神界に送ってくるレナス。

 

 

「レナス、ちょっとそこに座りなさい――――」

 

 女神フレイは、自らの大切な友であり、そして現在は部下的なポジションにいるレナスという女の子を、地べたに正座させる。

 ここはフレイがレナスと話をする為に降り立った、何も無い地上の原っぱだ。

 

「あのね? 貴方も分かってるわよね?

 いま神界は最終戦争(ラグナロク)を間近に控えている、大変な時期なの」

 

 このレナスという美しい銀色の髪の娘は、戦乙女ヴァルキリーを生業とする女神である。

 死者の魂と共感する能力を持ち、地上で命を落とした勇敢なエインフェリア(英霊)の魂を、バルハラと呼ばれる神の国へといざなう役目を持っている。

 いま間近に迫っているラグナロクに備え、沢山の戦士たちを集めてバルハラへと送る事。それが彼女の仕事なのである。

 

「沢山の戦力がいるの。そうでなくてはラグナロクに勝てないし、

 オーディン様をお守りする事も出来ないわ。

 なのに――――なぜ貴方は変なエインフェリア(・・・・・・・・・)ばかり転送してくるの」

 

 まるで女教師のように、不真面目な生徒を叱るようにフレイは問いかける。

 いま地べたに正座し、〈プクゥ~!〉っとほっぺを膨らませるレナスに向け、くどくどと言って聞かせる。

 

「強くて勇敢なエインフェリアを送ってきて……私はそうお願いをした。

 なのに何故貴方は、腐ったナッパを食べて死んじゃったオジサン(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)とかを送ってくるの」

 

 今回レナスが神界へと転送してきたのは、「これまだ食えるんじゃね?」とか言って、冷蔵庫の隅っこにあった“明らかに変な色をしている腐ったナッパ“をブレイブにも食べ、それが原因でお腹をこわして死んじゃったオジサンだ。

「いたーい。ぽんぽんいたーい。タスケテー」……それが彼の生前、最後の言葉であった。

 

「……戦力にならないでしょう? オジサン送ってきても。

 たしかに“勇敢な“とは言ったけどね? でもそういう勇敢さはいらないの。

 腐った食べ物にチャレンジしちゃう事を、ブレイブとは言わないのよ」

 

 レナスは今「つーん」とばかりにほっぺを膨らませ、不貞腐れたように目を逸らしている。

 どうやら自分が見込んだエインフェリアを馬鹿にされた事が、お気に召さないようだ。

 

「そもそもあのオジサン、農家の人だったわよ?

 戦士の魂、英霊とは言わないのよアレは。

 いやまぁ、農業だって大切な仕事よ? 立派だとは思うけどね?

 やけに働き者だったし……あのオジサン」

 

 いま神界に求められているのは、純粋な戦力である。

 まぁ農業の技術とかもいらない事は無いが、今はそんな場合では無いのだと言いたい。

 どれだけ働き者だったとしても、それでラグナロクには勝てないのだ。お野菜を作っても。

 

「ちゃんとした人を送って欲しいの。戦える人がいるのよ。

 この前私が“戦士を送って頂戴“とお願いした時……、

 貴方自分が送ってきたエインフェリアのこと憶えてる?

 ……どうしてあんなのを送ってきたのよ」

 

 レナスは目線を合わせようともせず、ただただ正座の姿勢でそっぽを向く。

 

「何? 人間ポンプっていうの? 金魚をゴクッと呑み込み、

 その後で『いよっ!』とか言ってお腹を叩き、見事吐き出してみせる。

 ちゃんと金魚が生きたまま戻ってくれば成功。そういう大道芸よね?

 ……なぜそれが特技の人を送ってきたのよ……」

 

 女神フレイは、ため息を吐く。もう心から「貴方が分からない」といった表情で。

 

「すごいわよ? 確かに立派な芸だと思うわよ?

 私も見せてもらったけど、思わず拍手をしてしまったもの。

 …………でも違うでしょレナス?

 人間ポンプの人は戦力にはならないの。敵は倒せないのよ」

 

 もう懇切丁寧に説明するけれど、レナスがそれに納得する様子は無い。

 

(ぷっくぅ~!)

 

「なんで不機嫌なの。なんでへそを曲げてるのよレナス。

 別に貶してるワケじゃないのよ? 馬鹿にはしてないの。

 人間として、芸人さんとしては、私もあのエインフェリアは素晴らしい人だって、

 そう思うのよ? ……でも違うでしょって話をね?」

 

 レナスは綺麗だし、その膨れている顔は大変愛らしくはあるのだが……もうフレイはため息しか出てこない。

 

「戦士じゃないのよ。貴方がこのまえ送ってきた、

 “おしりにたいまつを近づけて、おならで火炎放射するのがメイン攻撃のおじさん“とかも、戦士とは言わないのよ」

 

(ぷっくぅ~!)

 

「だから何で拗ねるの。貶してるんじゃないって言ってるでしょう?

 おならで火炎放射するのも立派な芸……とは個人的には思えないけど。

 でもそうやって生計を立ててるのなら、それも素晴らしい事だと思うわ?

 ……でも戦士じゃないでしょう? 今いらないでしょう?」

 

 こっち向けレナス。こっちを向いて頂戴。

 そうフレイが語り掛けるも、レナスは「ぷいっ!」と知らん顔だ。

 

「大道芸の人はいらないの。そういうのが欲しいときは、私ちゃんと言うから。

 ……なんかあのオジサン、おならで火炎放射するワリに『ここが貴様の墓場だ!』とか『我が信念(こころ)、決して折れはせぬ!』とか、やたらとセリフがカッコいいのよ……。

 何でセリフだけイケメンなの? おならの炎よソレ?」

 

「がるる……! がるるるっ……!」

 

「なんで怒るの。なんで犬みたいに牙をむき出しにするの。

 ……ちょっとかわいいけども」

 

 もうレナスは「それ以上言うのなら、容赦しないぞ」とばかりにガルルと唸っている。もう頭痛がしてくる心地のフレイだ。

 

「私はね? ちゃんとした人を送ってきてって、そう言ってるだけなの。

 レナスと喧嘩をしたいんじゃなくて、貶してるんじゃなくて、

 ラグナロクに勝てるように、強い戦士が欲しいっていうだけなの。

 分かってくれる?」

 

「…………」

 

「レナス、こっちを向いて? 顔を見せて?

 そんなプクプクしてたら、せっかくの可愛い顔が台無しでしょ? 機嫌をなおして?

 あと出来れば、何かしゃべって頂戴」

 

「…………」

 

 反抗期、反抗期かこれは。

 戦乙女は今、大人へと反逆する時期なのか。子供か。

 

「とりあえず、ちょっと思うのだけどね?

 いちど私、貴方がエインフェリアを選ぶ所を見てみようと思うのよ。

 別に指導っていうワケじゃないけれど、

 貴方が普段どんな風にエインフェリアを集めているのか、

 それをちょっと見せて貰えるかしら?」

 

「…………」

 

「いや……あの、別に貴方の力を疑ってるワケじゃないのよ?

 貴方はとても凄い女神で、あの有名な戦乙女ヴァルキリーだもの。本職だしね。

 ……でも私もオーディン様に仕える者として、

 今度のラグナロクの為に力を尽くさなければならないの。

 だから一度だけ、貴方の仕事ぶりを隣で見せて貰いたいの!

 お願いレナス! お願いっ! ねっ?」

 

「…………」

 

 なんかもう、いかにも「えー」って感じで嫌そうな顔をするレナス。隠そうともしない。

 そこを一生懸命に宥めながら、フレイが頼み込む。

 

(コクコク)

 

「あらっ! いいの? ありがとうレナス! 我が心の友!

 それじゃあ早速いきましょうか♪ レナス、能力を発動して貰える?」

 

 渋々ながら嫌そうに頷いた後……戦乙女ヴァルキリーはその力を発動させる。

 

「おお……これがレナスの力……。

 久しぶりに見たけれど、まさに神というべき壮言さ! 美しい姿だわ……!」

 

 レナスがふわりと宙に浮かび、静かに瞳を閉じて意識を集中させる。

 この周辺にある、“死の空気“――――

 もうすぐ死を迎える者……その魂の鼓動を感じ取り、想いに共感する――――

 

 戦乙女ヴァルキリーが持つ、戦場で果てた英霊をバルハラへといざなう為の能力だ。

 

(あら、私の頭の中にも、レナスが今見ている映像が流れ込んでくるわ……。

 これが戦乙女である彼女が選び出し、今から迎えようとしている英霊の、想い……)

 

 

 フレイもレナスと共に、静かに瞳を閉じる。

 そしていま頭の中に浮かんでくる映像に、身を任せていった――――

 

 

 

 

 

……………………

………………………………………………

………………………………………………………………………………………………

 

 

 

 

『――――へぇ~。これがスタンガン? なんかちゃっちぃわねぇ~』

 

 

 ……これは、レナスの能力が感じ取った、英霊の“死に様“。

 彼女にはもうすぐ死を迎えようとしている人間、その死に様を映像として見る事が出来る力がある。

 

 今レナスとフレイの頭の中に、なにやら先ほど届いたらしき荷物を開封し、それを訝し気な顔で見ているブスな女(・・・・)の姿が映し出された。

 

『最近チカンが多いっていうし、護身用に買ってはみたけどぉ~。

 でもコレただの電気なんでしょ? 本当に効くのぉ~?』

 

 そうしてそのブスは、自分の身体にスタンガンを押し当てた(・・・・・・・・・・・)

 

 

『――――う゛や゛な゛ま゛に゛や゛た゛ま゛ま゛ま゛ま゛ま゛!!!!!!』ビリビリビリ~

 

 

 

 

 

 ブスは死んだ。自分にスタンガンを使って――――

 

 電撃によってショック死をし、ブスは自らその生を終えた。

 

 

 

……………………

………………………………………………

………………………………………………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『一緒に、生きましょう――――――』

 

「ちょっと待ちなさいレナス」

 

 

 

 どうなってるの。貴方のエインフェリア選定の基準、いったいどうなってるの。

 

 女神フレイによる、嵐のようなお説教が始まった。

 

 

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