プレイステーション用ゲーム“ヴァルキリープロファイル“二次小説。
「レナス、ちょっとそこに座りなさい――――」
女神フレイは、自らの大切な友であり、そして現在は部下的なポジションにいるレナスという女の子を、地べたに正座させる。
ここはフレイがレナスと話をする為に降り立った、何も無い地上の原っぱだ。
「あのね? 貴方も分かってるわよね?
いま神界は
このレナスという美しい銀色の髪の娘は、戦乙女ヴァルキリーを生業とする女神である。
死者の魂と共感する能力を持ち、地上で命を落とした勇敢な
いま間近に迫っているラグナロクに備え、沢山の戦士たちを集めてバルハラへと送る事。それが彼女の仕事なのである。
「沢山の戦力がいるの。そうでなくてはラグナロクに勝てないし、
オーディン様をお守りする事も出来ないわ。
なのに――――なぜ貴方は
まるで女教師のように、不真面目な生徒を叱るようにフレイは問いかける。
いま地べたに正座し、〈プクゥ~!〉っとほっぺを膨らませるレナスに向け、くどくどと言って聞かせる。
「強くて勇敢なエインフェリアを送ってきて……私はそうお願いをした。
なのに何故貴方は、
今回レナスが神界へと転送してきたのは、「これまだ食えるんじゃね?」とか言って、冷蔵庫の隅っこにあった“明らかに変な色をしている腐ったナッパ“をブレイブにも食べ、それが原因でお腹をこわして死んじゃったオジサンだ。
「いたーい。ぽんぽんいたーい。タスケテー」……それが彼の生前、最後の言葉であった。
「……戦力にならないでしょう? オジサン送ってきても。
たしかに“勇敢な“とは言ったけどね? でもそういう勇敢さはいらないの。
腐った食べ物にチャレンジしちゃう事を、ブレイブとは言わないのよ」
レナスは今「つーん」とばかりにほっぺを膨らませ、不貞腐れたように目を逸らしている。
どうやら自分が見込んだエインフェリアを馬鹿にされた事が、お気に召さないようだ。
「そもそもあのオジサン、農家の人だったわよ?
戦士の魂、英霊とは言わないのよアレは。
いやまぁ、農業だって大切な仕事よ? 立派だとは思うけどね?
やけに働き者だったし……あのオジサン」
いま神界に求められているのは、純粋な戦力である。
まぁ農業の技術とかもいらない事は無いが、今はそんな場合では無いのだと言いたい。
どれだけ働き者だったとしても、それでラグナロクには勝てないのだ。お野菜を作っても。
「ちゃんとした人を送って欲しいの。戦える人がいるのよ。
この前私が“戦士を送って頂戴“とお願いした時……、
貴方自分が送ってきたエインフェリアのこと憶えてる?
……どうしてあんなのを送ってきたのよ」
レナスは目線を合わせようともせず、ただただ正座の姿勢でそっぽを向く。
「何? 人間ポンプっていうの? 金魚をゴクッと呑み込み、
その後で『いよっ!』とか言ってお腹を叩き、見事吐き出してみせる。
ちゃんと金魚が生きたまま戻ってくれば成功。そういう大道芸よね?
……なぜそれが特技の人を送ってきたのよ……」
女神フレイは、ため息を吐く。もう心から「貴方が分からない」といった表情で。
「すごいわよ? 確かに立派な芸だと思うわよ?
私も見せてもらったけど、思わず拍手をしてしまったもの。
…………でも違うでしょレナス?
人間ポンプの人は戦力にはならないの。敵は倒せないのよ」
もう懇切丁寧に説明するけれど、レナスがそれに納得する様子は無い。
(ぷっくぅ~!)
「なんで不機嫌なの。なんでへそを曲げてるのよレナス。
別に貶してるワケじゃないのよ? 馬鹿にはしてないの。
人間として、芸人さんとしては、私もあのエインフェリアは素晴らしい人だって、
そう思うのよ? ……でも違うでしょって話をね?」
レナスは綺麗だし、その膨れている顔は大変愛らしくはあるのだが……もうフレイはため息しか出てこない。
「戦士じゃないのよ。貴方がこのまえ送ってきた、
“おしりにたいまつを近づけて、おならで火炎放射するのがメイン攻撃のおじさん“とかも、戦士とは言わないのよ」
(ぷっくぅ~!)
「だから何で拗ねるの。貶してるんじゃないって言ってるでしょう?
おならで火炎放射するのも立派な芸……とは個人的には思えないけど。
でもそうやって生計を立ててるのなら、それも素晴らしい事だと思うわ?
……でも戦士じゃないでしょう? 今いらないでしょう?」
こっち向けレナス。こっちを向いて頂戴。
そうフレイが語り掛けるも、レナスは「ぷいっ!」と知らん顔だ。
「大道芸の人はいらないの。そういうのが欲しいときは、私ちゃんと言うから。
……なんかあのオジサン、おならで火炎放射するワリに『ここが貴様の墓場だ!』とか『我が
何でセリフだけイケメンなの? おならの炎よソレ?」
「がるる……! がるるるっ……!」
「なんで怒るの。なんで犬みたいに牙をむき出しにするの。
……ちょっとかわいいけども」
もうレナスは「それ以上言うのなら、容赦しないぞ」とばかりにガルルと唸っている。もう頭痛がしてくる心地のフレイだ。
「私はね? ちゃんとした人を送ってきてって、そう言ってるだけなの。
レナスと喧嘩をしたいんじゃなくて、貶してるんじゃなくて、
ラグナロクに勝てるように、強い戦士が欲しいっていうだけなの。
分かってくれる?」
「…………」
「レナス、こっちを向いて? 顔を見せて?
そんなプクプクしてたら、せっかくの可愛い顔が台無しでしょ? 機嫌をなおして?
あと出来れば、何かしゃべって頂戴」
「…………」
反抗期、反抗期かこれは。
戦乙女は今、大人へと反逆する時期なのか。子供か。
「とりあえず、ちょっと思うのだけどね?
いちど私、貴方がエインフェリアを選ぶ所を見てみようと思うのよ。
別に指導っていうワケじゃないけれど、
貴方が普段どんな風にエインフェリアを集めているのか、
それをちょっと見せて貰えるかしら?」
「…………」
「いや……あの、別に貴方の力を疑ってるワケじゃないのよ?
貴方はとても凄い女神で、あの有名な戦乙女ヴァルキリーだもの。本職だしね。
……でも私もオーディン様に仕える者として、
今度のラグナロクの為に力を尽くさなければならないの。
だから一度だけ、貴方の仕事ぶりを隣で見せて貰いたいの!
お願いレナス! お願いっ! ねっ?」
「…………」
なんかもう、いかにも「えー」って感じで嫌そうな顔をするレナス。隠そうともしない。
そこを一生懸命に宥めながら、フレイが頼み込む。
(コクコク)
「あらっ! いいの? ありがとうレナス! 我が心の友!
それじゃあ早速いきましょうか♪ レナス、能力を発動して貰える?」
渋々ながら嫌そうに頷いた後……戦乙女ヴァルキリーはその力を発動させる。
「おお……これがレナスの力……。
久しぶりに見たけれど、まさに神というべき壮言さ! 美しい姿だわ……!」
レナスがふわりと宙に浮かび、静かに瞳を閉じて意識を集中させる。
この周辺にある、“死の空気“――――
もうすぐ死を迎える者……その魂の鼓動を感じ取り、想いに共感する――――
戦乙女ヴァルキリーが持つ、戦場で果てた英霊をバルハラへといざなう為の能力だ。
(あら、私の頭の中にも、レナスが今見ている映像が流れ込んでくるわ……。
これが戦乙女である彼女が選び出し、今から迎えようとしている英霊の、想い……)
フレイもレナスと共に、静かに瞳を閉じる。
そしていま頭の中に浮かんでくる映像に、身を任せていった――――
……………………
………………………………………………
………………………………………………………………………………………………
『――――へぇ~。これがスタンガン? なんかちゃっちぃわねぇ~』
……これは、レナスの能力が感じ取った、英霊の“死に様“。
彼女にはもうすぐ死を迎えようとしている人間、その死に様を映像として見る事が出来る力がある。
今レナスとフレイの頭の中に、なにやら先ほど届いたらしき荷物を開封し、それを訝し気な顔で見ている
『最近チカンが多いっていうし、護身用に買ってはみたけどぉ~。
でもコレただの電気なんでしょ? 本当に効くのぉ~?』
そうしてそのブスは、自分の身体に
『――――う゛や゛な゛ま゛に゛や゛た゛ま゛ま゛ま゛ま゛ま゛!!!!!!』ビリビリビリ~
ブスは死んだ。自分にスタンガンを使って――――
電撃によってショック死をし、ブスは自らその生を終えた。
……………………
………………………………………………
………………………………………………………………………………………………
『一緒に、生きましょう――――――』
「ちょっと待ちなさいレナス」
どうなってるの。貴方のエインフェリア選定の基準、いったいどうなってるの。
女神フレイによる、嵐のようなお説教が始まった。