hasegawaさん、炎の短編集。   作:hasegawa

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 PS2用ゲーム“ファイナルファンタジーⅩ”二次創作。






37 ザナルカンドにて。

 

 

「最後かもしれないだろ? だから全部、話しておきたいんだ――――」

 

 優しくユウナの肩に手を置いてから、ティーダは皆の方に向き直った。

 

 

 

 ここはスピラの最北端、ザナルカンド遺跡。

 今その片隅で焚火の火にあたり、仲間たちは暫しの休息をとっている。

 この場の誰もがこの後の事……自分たちに課せられた避けられぬ運命を思い、言葉なく項垂れている

 

 ……そんな中、ティーダが静かな声で皆に語り掛ける。

 自分の境遇、これまでの事。そして皆と旅をしてきて感じた全ての事を……ぽつぽつと語り始めた。

 

「いろんな事あったよなって。

 ……みんなと会ってから、まだそんな経ってないのに……、

 でももう何年も一緒にいたような気がする」

 

 焚火にあたり、時折ゆっくりと頷きを返しながら、皆はティーダの声に耳を傾ける。

 優しい時間。仲間との最後の時――――それをこの場の全員が共感している。

 

「あ、そういやさ? こんな事もあったよ」

 

 今までのしみじみとした声色から、突然なにやらキョトンとした感じの声に代わる。

 

「なんかこの前の夜中、ユウナがひとりでパラパラ踊っててさ(・・・・・・・・・)。俺ビックリしちゃって」

 

「いやぁぁぁあああーーーーッッ!!」

 

 ユウナが慌てて彼にしがみつき、もうグアングアン肩を揺らす。

 

「なんで見てるの!? なんで言っちゃうの!? バカバカ! もうバカ!」

 

「えっ、言っちゃダメだったのかコレ?

 いつもユウナってみんなが寝静まった後、コソコソどっかに行くだろ?

 だから俺なにしてんのかな~って思って、付いてってさ。

 そしたらユウナがなんか、キレッキレの踊りを……」

 

「わあぁぁぁーー!! わあぁぁぁーーーーッ!!」

 

 口を押えて黙らせようとするも、ティーダはキョトンとしつつ喋るのを止めない。のほほんと言葉を続けていく。

 

「それが終わったらユウナ、いきなり“トカゲのおっさんの踊り”を始めてさ?

 これもまたキレッキレで。ユウナもこういうトコあんだな~って思って」

 

「シャラップ! シャラップだよ君!

 私そんな事してない! してないよみんな!」

 

 そう必死に訴えるも、皆は生暖かい目でユウナを見ている。

 あ~この子もストレス溜まってたんだな~。そりゃそうだよな~みたいな目で。

 

「あとなんか『栄養はええよう! 栄養はええよう! ふふふ♪』とか言って、ひとりで楽しそうに笑ってたんだよ。

 あれってどういう事だったんだユウナ? そんなに面白いのか?」

 

「わあぁぁぁーーーーーーーッ!!!!」

 

 もう頭を抱え、思いっきりのけぞるユウナ。

 

「……えっ、なに? 栄養は……ええよう?

 どういう意味なのユウナ?」

 

「それ面白ぇのか? ちょっと俺にはわかんねぇけども……。

 アーロンさんどう思います?」

 

「いや……俺にも分からんな。

 ユウナ、説明してくれるか」

 

「 真面目に考えないで! 議論しないで! ただのダジャレだよ?! 」

 

 首を「う~ん」と捻りながら言葉の意味を考える一同。

 ユウナの言う事だし、きっと意味のある言葉に違いない。でもどういう事なんだろう?

 そんな風に真剣に悩んでいる。

 

「ユウナぁってそういうトコあるよ? よくワケわかんない事してるもん。

 この前もユウナぁ、なんか自分で自分の足に“アキレス腱固め”かけてさ?

 それで『ああ痛い! これすごく痛いよキマリ! ふふふ♪』って、

 嬉しそうに報告するの。すんごく楽しそうにしてるの」

 

「リュック?!?!」

 

 ここで話を聞いていたリュックも会話に参加。以前見たユウナの奇行を不思議そうな顔で報告する。

 

「ねぇユウナぁ、あれって何が面白いのぉ?

 自分に関節技極めて、痛いだけじゃないの?」

 

「そんな真面目に訊かれても困るよっ!

 遊び! ただ遊んでたの! それだけだもんっ!」

 

「あ、そういや俺も見たんだけどよ?

 なんかユウナ『ペットボトルで頭を叩くと、良い音がするよね』

 とか言って、自分の頭をポコポコやり始めたんだよ。オーイエーとか言って。

 それひたすらやり続けてる内に、日付が変わってよ(・・・・・・・・)

 そんで『あ、もうオバケ出る時間だ! 寝よ寝よ♪』って言って、

 イソイソと寝床に帰ってった」

 

「 ワッカァァァーーーーーッ!!!! 」

 

 リュックに飛びつき、ワッカに飛びつき、ユウナは忙しい事この上ない。

 

「ユウナ……ごめんね。寂しかったのよね……。

 そんな変な事して、一人で遊ぶしか無かったのよね……。

 召喚士の修行ばかりで、ろくに友達もいないんでしょうね……」

 

「いるよ?! 私いっぱい友達いるよ?!

 ルール―も知ってるでしょう?! なんでそんな目で私を見るの?!」

 

「そういえば貴方『“フォルクスワーゲン”って言うと、口の中が幸せになるよね』とか言って、もう一日中フォルクスワーゲン、フォルクスワーゲン言ってた事あるわね。

 ……寂しかったのねユウナ。ごめんね……」

 

「憐れまないでよルール―! 私みんなと一緒にいられて幸せだったよ?!

 だから胸を張って大召喚士になるよ?! スピラを救うよ?!」

 

 なんかもう可哀想な子を見る目でユウナを見る仲間たち。真面目なこの子はいつも頑張っているけど、だからこそこんな風になっちゃったんだろうなぁ~としみじみ。

 心からの憐れみを向ける。

 

「えっ、でもキマリが居たんだろ?

 ユウナ小さい頃から、ずっとキマリと一緒だったって言ってたじゃんか」

 

「そう。キマリ、ユウナと一緒だっタ。

 いつも一緒に遊んダ」

 

「ほらっ! 私にだって友達いるもん!

 キマリと私なかよしだもん! ひとりじゃないもん!」

 

 両手を大きく広げ「どうだ!」とばかりに皆を見るユウナ。まるで鬼の首を取ったかのように、自分の正しさを訴える。私はボッチではないと。

 

「この前もユウナ、川辺に行った時、キマリを使って“鵜飼い”の練習してタ。

 キマリに魚とらせタ」

 

「――――なにしてんだよユウナ!! 可哀想だろ!!」

 

 キマリの首に縄をかけ、そしておもいっきり川に突き落として「魚とってきて♪」とお願いしたのだそうだ。

 水は冷たいし、濁ってドロドロだったが、キマリは「きゃっきゃ♪」とはしゃぐユウナの手前、文句が言えなかったのだそうだ。

 

「ちなみにこの前みんなで食ったサカナ、全部キマリが獲ったヤツ」

 

「そうだったのキマリ?! あれ結構な量があったわよ?!

 全部ユウナに獲らされたの?!」

 

 さっきまでとは違い、なにやら居心地が悪そうに顔を背けているユウナ。彼女の様子をみる限り、これは本当の事のようだ。

 

「だ……だってね? おさかな美味しいよね……?

 いっぱい食べられたら、みんな嬉しいよね……?」

 

「だからと言って、キマリに獲らせようとは思わん。

 仲間を川に突き落としてまで食いたいとは思わん」

 

「風邪ひいたらどうすんだよ。

 大事にしてやれよユウナ。家族だろ」

 

 年長者の威厳を持ってアーロンに怒られ、しゅんとした顔のユウナ。是非とも彼女には猛省して頂きたく思う。鵜飼いごっこが楽しかったのだろうけども。

 

「う……うん。これからしないようにするね?

 キマリもごめんね?」

 

「いい。キマリ気にしてなイ」

 

 ユウナはキマリに頭を下げ、ごめんなさいをする。

 気の良い彼は怒る事をしないし、それこそユウナの為とあらばもう何でもしてしまう位のすごく良いヤツなのだ。大事にしてあげて欲しいと思う。

 

「でもキマリ、ちょっとユウナに言いたい事あル」

 

「えっ。キマリ……?」

 

 だがここで突然、キマリが真剣な目でユウナの方を向く。

 彼の性格からして、守るべき大切な存在であるユウナに意見するなど、非常に珍しい事だ。これはただ事ではない。

 皆は少しビックリした顔でキマリの方を見る。

 

「この前ユウナ、『ルール―のおっぱいの中って、何が入ってるんだろうね……』

 とキマリに言っタ。

 そして『私ね? あれ多分、食塩水だと思うんだ……』と言った。

 あれ良くないと思ウ」

 

「 キマリィィィーーーー!!!! 」

 

 急いでキマリの口をふさぐも、もう後の祭りだ。

 いまルール―の身体から、えも知れぬ紫色のオーラのような物が噴出している。

 

「ユウナ、おっぱいのこと言うの良くナイ。ルールー怒ル」

 

「ゆったらダメ! ゆったらダメだよキマリ!

 どうするのこれから最終決戦なのに! こんな雰囲気で行けないよっ!」

 

 ユウナはもがもがと喋るキマリをなんとか押さえつけようと奮闘している。それを非常に冷めた目で見つめる一同。視線が痛い。

 

「あ! そういえばユウナぁこの前、

『ワッカの服って、乳首が見えそうで見えない所が良いよね……』ってワケの分かんない事言っててさ? あたし困っちゃったよ」

 

「ちょ……! リュック!!

 今ちょっとしゃべらないで! キマリで忙しいの!」

 

「その後ユウナ、

 なんかやたらと『君はあの服着ないの?』って俺に勧めてきてさ?

 断ったらすんごい残念そうな顔するんだよ」

 

「ちょ! 君ッ! 私になんの恨みがあるのっ!!

 亀裂ッ! 亀裂が走っちゃうよパーティに! これから大一番なんだよ‽!」

 

 ユウナはこの後、ユウナレスカ様のところに行って究極召喚の術を授けてもらわなければならない。そして命を賭して世界を救わなければならないのだ。

 こんな状況で、それが叶うのだろうか。

 

「この前アーロンさんがタバコ吸ってるのをじ~っと見ながら、

『タバコ鼻に突っ込んだら、鼻毛ぜんぶ剃れるよね……』とかとんでもねぇ事言ってたしな。

 つかユウナ疲れてんのか? お前大丈夫か?」

 

「疲れてないよワッカ! 私だいじょうぶだよっ! だから黙って!!

 ちゃんと究極召喚おぼえて世界を救うよっ! そんな目で見ないで!」

 

「――――あっ。これ言ったら拙いかな~って思って、

 俺ずっと黙ってたんだけどさ?」

 

「ッ!?!?」

 

 その時、なにやらすごく言いにくそうにしながら、ティーダがその口を開く。

 

 

「この前ユウナ、『もしもの話だよ?』って何度も前置きしてからさ?

『もし飲み水が無くなって、どうしようもない状況になったらね? 私リュックのおしっこだったら、飲めると思うんだ(・・・・・・・・)……』って言ってて」

 

「 うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーッッ!!!! 」

 

 

 ザナルカンド遺跡に、大召喚士の娘の叫びが響き渡った。

 

「で俺、そんなワケないじゃんって言ったんだけどさ?

 でもユウナ、『だってリュックのだよ?! リュックのなんだよ?!』

 って妙に喰らいついてきて……」

 

「えっ、ユウナぁ……?」(ドン引き)

 

「 うわああああああぁぁぁーーーーーーッ!!

  うわああああああああああぁぁぁぁーーーーーーッ!!!! 」

 

 大召喚士の娘、地に落ちたり――――

 ユウナは発狂したように天を仰ぎ、ただただ叫び続ける。

 

 

「おっ、そろそろ日も落ちてきたな。んじゃあ出発すっか」

 

「そうねワッカ、じゃあユウナレスカ様の所へ向かいましょう」

 

「了解っス! そんじゃあ行こうぜキマリ! リュック!」

 

「あ、待ってよぉみんなぁ~! あたし荷物多いんだってばぁ~!

 いっぱい機械とかがさぁ~!」

 

「キマリ半分持ツ。一緒に行ク」

 

「――――では行くか。さてさて、どんな事になるのやら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ひと時の休息を終え、皆が焚火を後にしてスタスタ歩いて行く。

 目指すはザナルカンドの最北部。ユウナレスカの待つ遺跡を目指して。

 

「…………」

 

 そんな中、一人その場で立ちすくんでいる影が一つ。

 ユウナは愛用の杖をギュっと胸元で握り、だんだん遠ざかっていく仲間たちの姿を見つめる。

 

 

「私、シンを倒します――――必ず倒します。

 ……倒せる、よね……?」

 

 

 

 そしてユウナは元気を振り絞るべく、「フォルクスワーゲン! フォルクスワーゲン!」言いながら、後を追いかけて行った。

 

 

 

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