hasegawaさん、炎の短編集。   作:hasegawa

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38 ブラック鎮守府の新提督。 最終話

 

 

 ――――くそったれが。

 

 私は呟く。眼前の絶望的な光景を前に。

 

 吹雪も、加賀も、愛宕も居ない。もう皆とっくの昔に大破し、後方に下げられている。

 いまこの場にいるのは私ひとり。満身創痍でようやっと海面に立つ私ひとりなのだ。

 

「思えば……苦労ばかりの人生だったな」

 

 艦娘としての二度目の生を“人生”などと呼んでも良い物かは分からない。しかし私にとって掛け替えのない、ただ愛すべき人たちを守りたいと願って生まれ落ちた此度の生は、あまりにも辛く。情け容赦が無かった。

 

 私はただ、大好きな人たちを守りたかった。

 私が過去に“戦艦長門”として共に戦った戦友たちの子孫を、そして共に戦場に立つ仲間たちを守りたい。私の願いなど、ただそれだけであったハズなのに――――

 

「ままならない物だな。これは何かの“罰”なのか?

 我々艦娘は、何かこれほどの仕打ちを受けなければならない程の事を、

 してしまったのだろうか?」

 

 守れなかった――――勝つことが出来なかった。それは確かにそうだろう。

 しかし我々は過去の大戦で、力の限り命を賭して戦い抜いたではないか。精一杯やってきたではないか。

 

 私が、吹雪が、加賀が、愛宕が。いったい何をしたというのだ。

 こんなにも世界に、そして“人間たち”に疎まれるような事を、したと言うのか。こんなにも恨まれなくてはならないと言うのか。

 

 その答えは、どれだけ考えようとも出ない。誰も私に教えてくれはしない。

 

「最後、か……。

 あぁ、これが私の“死”なのだな」

 

 いま私の眼前には、深海棲艦の大本とされる通称“母”と呼ばれる個体の姿がある。

 その視界一杯に広がる山のように巨大な身体を前に、私の身体はただ無力に立ちすくむばかり。

 もう何の抵抗の術も無い。生き残る目すら……無い。

 

 ちなみに形ばかりの存在であったが、私たちの“提督であった者”は、我が身惜しさにとっくに鎮守府から逃亡したらしい。この戦いが始まる前に、無線でそう伝えられた。

 

 支援も無く、仲間も無く、孤立無援――――

 これが私の二度目の生の、最後。……つまらない終わりだ。

 

「なぜ、このような事に……なぜ……?」

 

 

 そう問うてみるも、答える者は無し。私の呟きは、静寂の中に吸い込まれていく。

 

 ふと、私の脳裏に今までの記憶が浮かぶ。

 これまでの鎮守府での記憶、

 そして私たちが受けてきた仕打ちの記憶が、止めどなく浮かんできた――――

 

 

 

………………………………

………………………………………………………………

 

 

 

 あれは何と言ったか……そう“サブカルくそ女提督”か。

 実写版デビルマン提督、そしてマ〇ク赤坂提督の後に着任してきた女性だったように思う。

 

 彼女は鎮守府に着任して以来、もうロクに提督としての執務もせず、ひたすら部屋で映画を見たり音楽を聴いたり。

 たまの休みともなれば嬉々として外へ出かけ、ロッククライミングをしにいったりお気に入りのバンドのライブに行ったりと、もう趣味に生きる人だった。

 

 我々艦娘とコミュニケーションをとるかと思えば、その会話の内容はもう、自分の趣味の話ばかり。

 会話をしたいのではなく、ただどれだけ自分が“分かっている人間”か、趣味の良い人間なのかというのを見せつけたい。そう自慢したいだけなのではないかと思えてしまうような、……いわゆる浅い人間性の人物だったように思う。

 

 とても何か大事を成しえたり、我々と共に重責を背負って戦えるような人物では無かった。

 彼女は不自由な鎮守府の生活に嫌気が差したか、もう2週間としない内に、自ら鎮守府を去っていった。

 いとも簡単に、私たちを置いて。

 

 

 

 次に来たのは、鉄道マニアという人種の、なにやら太ったオッサンだった。

 鉄道に加え、結構なロン毛だったからだろうか? 駆逐艦の子らが彼を“汚いメーテル”と呼んでいたのを憶えている。

 そう、汚いメーテル提督だ。

 

 彼は大量の鉄道模型やら電車の写真集やらを持ち込み、部屋にいる時も機嫌よさそうにカメラの整備をしているか、または電車運転シミュレーションのTVゲームに夢中。

 この人も趣味に生きる人だったようで、電車という物が存在しないこの鎮守府での生活は非常に苦痛であったようだ。

 

 人見知りなのか女性不信だったのかは分からないが、どうやら我々艦娘と話すのが苦手だったらしく、提督を解任されて鎮守府を去っていくその日まで、私とはロクに話をする機会も無かった。

 

 一度駆逐艦の子らが、汚いメーテル提督に鉄道模型を触らせてもらえるようお願いした事があるらしい。きっと我々とあまりコミュニケーションを取ろうとしない彼との距離を縮めようとしたのだろう。

 だが汚いメーテル提督に「これは子供のオモチャじゃない! 触るんじゃない!」とマジギレをされ、スゴスゴと引き下がってしまったのだそうだ。

 

 彼は真の意味で、自分の世界の中で生きる人であった。

 我々と分かり合い、心を通わせる事は、出来なかったのだ。

 

 

 

 その後に来たのも、なにやら趣味に生きる感じの人物だった。

 見た目はいいオッサンといった風体なのだが……なにやら彼には大好きなアニメがあるらしく、その話ばかりをしていたように思う。

 

 着任初日、そのアニメを観た事があった駆逐艦の子が、気を利かせてその提督との会話を試みた事があったのだが……。

 しかし提督は『トリッピーの声優は山崎た〇み氏です! そんな事も知らないで偉そうに語らないで下さい!』と言って強烈にその子を突っぱねた。

 もう絵にかいたような激怒だったのだそうだ。大人げない程の。

 

 後にその提督は“しまじろうガチ勢提督”と呼ばれ、気難しい人として提督を辞任するその日まで皆に恐れられた。

 ろくにコミュニケーションも取れない人物なので、もう海を開放するどころか、提督の業務すらままならなかったそうだ。

 

 彼は今も、しまじろうに夢中なのだろうか? もう会う事も無いのだろうが……。

 

 

 

 良くて2週間、短くて5日。そんな短いスパンで提督着任と辞任を繰り返していた我らの鎮守府。

 次に着任してきたのは、それはもうとんでもない人物であった。

 

 ……聞くところによると、ギャンブルで散財して食うに困り、窃盗をおこなって逮捕をされたその先で提督としての適性を見出され、賠償と借金をかたに軍属にされた人物だったのだ。

 

 これにはもう、我々は着任直後から彼へ不信感を抱かざるを得なかった。

 いくら提督適性を持つ者が少ないとはいえ、このような人物とは共に戦えない。とても仲間たちの命を預ける事は出来ない。

 親や友人の命がかかっていたのならいざ知らず、大した理由もなく盗みを働く者など、信用できようハズもないのだから。

 

 その人物、通称“賽銭泥棒(さいせんどろぼう)提督”は、電撃的な速度を持って提督を解任された。

 

 諸君、考えてもみて欲しい――――

 もし仮に【賽銭泥棒が鎮守府に着任しました】なんてタイトルの二次小説があったとして、そんな物をいったい誰が読むというのか。

 

 そんなタイトルでは、私たちの物語は始められない。そうだろう?

 こんな私たちにだって、選ぶ権利という物があるのだ。……本当に必要最低限だけれど。

 

 

 

 そして現在の私たちの提督……もうすでに逃げ出してしまった男の話だが、ありていに言って彼は無職であった。

 自称として個人事業主と言い張ってはいたが、収入と言える物はほぼ無いに等しいらしい。

 その割にプライドが高く、高圧的な言動が目立つ若い男だった――――

 

「提督、今日の執務がまだ大量に残っている。

 私も協力するので、どうか仕事をしてくれないか」

 

 彼の秘書艦を務めた際、私は一度そう懇願した事がある。しかし……。

 

「うるせぇ! 仕事なんざ知るか!

 俺はこれから、激辛ペヤングを食う所を撮影しなきゃなんだよっ!」

 

 彼こそは我が鎮守府の長“大学生ノリYOUTUBER提督”

 一言目には「うぇ~い♪」、二言目には「チャンネル登録、高評価おねがいします」が口癖の男だ。

 

「て……提督。鎮守府内を撮影するのは如何な物か。

 ここには沢山の軍事機密が……」

 

「うるせぇ! 再生数稼ぐんだよぉ!!

 俺のチャンネルの視聴者が、鎮守府が見たいってそう言ってんだよぉ!!

 黙って演習でもしてろ!!」

 

 辛いカップ焼きそばを食べたり、チーズダッなんとかと言う物を食べたり。聞けば彼のやる事は、その全てが他の人気投稿者の真似であったらしい。

 自分で何かを考えたり、自分の好きな物を伝えたいという意思も無く、ただ何と無しに“人気者になりたい”という漠然とした想いだけを持ち、彼はYOUTUBEをやっているように思えた。

 

 これはYOUTUBEだけでなく何にでも言える事だが……特にこれと言った特技も無く、また何のアイディアも持たない人間がノリだけでやっていけるような、そんな甘い世界では無い。

 彼は「俺はユーチューバーだ!」と自慢するばかりで、頑なに皆に秘密にしていたが……その彼が運営しているチャンネルと動画は、もう目を覆わんばかりの再生数の少なさ、そして見るに堪えない程の少ない登録者数であるらしい。

 その動画の内容がどれだけ不快で考え無しに作られた物であっても、それに批判コメントをする者すら居ないという、散々な有様。

 試しに彼のチャンネルを覗いてみたという軽巡の子が教えてくれた。

 

 そして彼はたまたま適性がある事がわかって提督となり、「やっと俺にも運が向いてきた!」と大変喜んだそうだ。

 今までは運が無くて人気に恵まれなかったが、この鎮守府や艦娘たちをバンバン動画に映せば、きっと再生数が稼げる。

 チャンネルも盛り上がり、きっと自分も有名投稿者の仲間入りが出来る。

 これでみんなに認められる。人気者になれる。

 

 そんな、とてもつまらない夢ばかり描いている、男だった。

 

 

 私たちのため息と、すべてを諦めた悲しい瞳に、気づく事なく――――

 

 

 

 

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 例えば、仮に提督が着任していない状態での私たちの力を、【1】としよう。

 提督の存在という、艦娘にとって絶対的な恩恵の無い状態での私たちの力が1だ。

 

 そして普通、自らの鎮守府に提督が着任し、そしてその指揮下に入ったならば、艦娘という物はその能力を数倍にも倍加させる。

 その人物からの信頼、そして我々の「この人のために戦いたい。守りたい」という想いが強ければ強いほど、その力は天井知らずに大きくなる事だろう。

 

 しかしながら……例えばサブカルくそ女提督や、汚いメーテル提督が着任していた時期の私たちの力は、数字で言うと【1,3】だ。

 これは“機関車トーマス提督”が居てくれた時の数字【45】を大きく下回る。もう比べるのもおこがましい程の差だ。

 ……彼は人間ではなく機関車であったというのに。どういう事なのだコレは。

 

 ちなみに、しまじろうガチ勢提督が着任していた時は【1,2】

 そして私たちを虐待しトラウマを植え付けた初代の提督、また当代である大学生ノリYOUTUBER提督が居た時は【1,1】であった。

 

 あの純粋な野生動物であるゴリラ提督ですら【5】あった事を考えると、この我々の置かれた状況の悲惨さをお分かり頂ける事と思う。

 ……まぁこれに関しては“ゴリラ“だけに5だったのかもしれないが。

 

 

 

 

 

「疲れた……。もう疲れたよ、提督……」

 

 私はこの場ではない、心の中にいる人へと語りかける。

 これは決してYOUTUBERでも汚いメーテルにでも無い。私が唯一、心から認めた提督。

 たった一人の、私が愛した人に向けて。

 

「頑張った、私は頑張ったんだ……。

 貴方の艦娘の名に恥じないよう、精一杯やってきたんだ。

 ……褒めてくれるか、提督……?」

 

 嫌いにはなれない――――

 どれだけ人間にひどい仕打ちを受けても、心が打ちのめされても、貴方を嫌いになる事だけは出来ない。

 

 “人間”を。

 貴方という素晴らしい人を知っているから、心から愛してくれた人がいるから……私は人間を憎む事が出来ないんだ。

 

「沈んでも……いいか?

 もう終わっても、構わないだろうか……? 提督……」

 

 貴方が「好きだ」と言ってくれた、カッコいい艦娘。……私は最後まで、そうあれたか?

 貴方に誇りに思って貰える、貴方の“戦艦長門”で……あれたか?

 

 

「――――貴方を愛している。

 さよならだ、提督」

 

 

 いま眼前の巨大な化け物が、その大きな大きな腕を、私に振り下ろす。私の人生に幕を下ろす。

 私は静かに瞳を閉じ、その瞬間を待った。

 大好きな、愛すべき私の提督の笑顔を、思い浮かべながら。

 

 …………しかし。

 

 

『 まだ沈むのは早いわ! 長門ッ!! 』

 

 

 突然この場に鳴り響いた砲声に、私は閉じていた瞳を開く。

 

「あっ……愛宕‽! 貴様……後方に預けられたハズでは‽!」

 

「そうね。でも見ての通り、今はぱんぱかぱーんよ♪

 それに戻ってきたのは、私だけじゃないわ?」

 

「!?!?」

 

 そして、再びこの場に轟く砲声。

 後ろから放たれた凄まじい放火が、眼前の“母”に着弾していく。

 

「長門さん! 遅れてすいません! もう大丈夫です!」

 

「吹雪‽! お前まで‽!」

 

「さぁいくわよ長門――――大丈夫、鎧袖一触よ」

 

「加賀‽! お前っ!!」

 

 振り返ると、そこには彼女たちだけでなく、今まで大破撤退していった数多くの仲間たちが帰還、そして一斉に砲撃している姿がある。

 

「朗報だよ長門。さっき僕らの鎮守府に“新しい提督”が来てくれたんだ」

 

「ぽいぽい! もう元気いっぱいっぽい!」

 

「時雨! 夕立!」

 

 私は目を見開き、いまその言葉通り生き生きとした表情で海を駆ける彼女たちを見つめる。

 

「私たちはさっき会ってきたけれど、貴方はまだだったわね。

 無線で声を聴かせてもらったら? 新しい提督に」

 

「!?!?」

 

 その時……私の艦装の無線機から、突然なにやら可愛らしくも、とても頼りがいのある声が聞こえてきた。

 

 

『 長門ちゃん! だいじょうぶ?

  ぼく今日ここに着任してきた、“ガチャピン”だよ♪

  ガチャピン提督って呼んでね♪ 』

 

 

 

 ――――こ れ は 勝 て る。

 

 

 私は意味も分からないまま、心ではなく魂のレベルで、そう直観する。

 そしてガチャピン提督のお声を聴いたその途端……気が付けばもうなにやら、凄まじいパワーが私の身体中に漲っているではないか!!

 こ れ は 勝 て る !!

 

 

「 みんな行くぞッ!

  目標1時の方向! 距離300! ってぇぇぇーーーーーーッッ!!!! 」

 

 

 私の号令と共に、凄まじいまでの砲火が叩き込まれる。

 

 深海棲艦の“母”と呼ばれた存在は、ガチャピン提督(超有能)の指揮下に入った艦娘たちの手により、見事討伐されたのだった――――

 

 

 

 

………………………………

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「よぉ! 久しぶりだなネギ姉ちゃん!」

 

「ね……ネギでは無い! これは艦装だっ!」

 

 

 

 いま眼前に、私たちのブタゴリラ提督の笑顔がある。

 会いたくて会いたくて堪らなかった人の姿が、ある――――

 

「ニュース観たぞみんな! 勝ったんだってな!

 おれの送った野菜、ちゃんと食ってたか? ちから出たろ?」

 

「ああ、食べていたとも。

 おかげでこの通り、みんな健康その物だよ。ありがとう提督――――」

 

「提督! 吹雪です!

 お久しぶりです提督! 会いたかったっ……!」

 

「ぽいぽい! 提督さん会いたかった! わたしすんごく寂しかったっぽい!」

 

 私をすり抜け、後ろにいた駆逐艦の子らが駆けていく。

 大好きな、まさに夢にまで見た、ブタゴリラ提督の胸へと。

 

「加賀です。お久しぶりです。

 とりあえず提督? お布団のある場所はどこかしら。先にお風呂でもいいけれど。

 ささ、参りましょう提督。いそいそ」

 

「やめんか加賀。後にしろ。……いや後も駄目だが、とりあえず落ち着け。

 愛宕もアップを始めるんじゃない」

 

 オネショタの総本山たる二人が、どこぞへブタゴリラ提督を連れ去ろうとする。私は秘書艦として断固阻止。

 ブタゴリラ提督の貞操が危ない。今後もしっかりと目を光らせていくつもりだ。

 

「とにかく、終わったよ提督――――戦争は終わった。

 貴方の艦娘たちは、皆立派に戦い抜いたよ」

 

「あぁ! さすが長門たちだぜ! すっげぇカッコいい!

 俺の艦娘はカボチャより硬くて、メロンよりすげぇんだ!」

 

 

 ビシッと敬礼し、全ての作戦の終了を告げる。

 私はブタゴリラ提督と敬礼を交わし合い……久しぶりに心から、笑った。

 

 

 

 

………………………………

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………………………………………………………………………………………………

 

 

 

 

「ぼくはこう見えて、芸歴40年以上なんだ!

 だから色んな人と顔見知りだし、もちろん彼とも友達だよ♪」

 

 

 あの時……私たちが“母”との戦闘から鎮守府に帰還した後、とても優しい声でガチャピン提督が告げた。

 

「会いたい? 彼に。

 みんなはこの国を救った英雄なんだ! ぼくが文句なんか言わせない!

 彼の所に行くかい?」

 

 ガチャピン提督は、そう言ってくれた。

 その完全なる有能さで、すべての手配、そしてすべての準備を迅速に進めてくれたのだ。

 

「あ、ちなみに気になっていたんだけれど……、

 ぼくはみんなの役に立てたのかな? ちゃんと力になれた?」

 

「当然だガチャピン提督。

 貴方の指揮下に入った途端、もう身体中から力が湧き上がったんだよ。

 ガチャピンは我々の救世主、素晴らしい提督だよ」

 

「ほんと!? やったぁ! ムックに無理を言ってここに来てよかったよ♪」

 

 思えば彼が人間ではなく、恐竜の子供だというのは人間たち的にはどうなのだろう?

 世界を救ったヒーローは、自分たちではなくガチャピン。恐竜の子供であるのだ。

 

 まぁ義務と責任は果たした。後は勝手にやってくれ人間たちよ。私はもう知らん。

 

 過去の大戦で共に戦った戦友たち……その子孫を守れた事で、天国にいる彼らにも顔向けが出来る。

 いつか私が海に還って、そして天国という場所にいった時……また酒でも酌み交わして笑い合う事が出来るだろう。

 それだけでいい。私はもう、それで充分だ――――

 

 

「ねぇねぇ! 数字で言うと、どのくらい? どのくらい強くなれた?」

 

「そうだな……私の体感的に、おそらく【86】程はあるんじゃなかろうか?

 通常の86倍の出力が出せるぞ」

 

「すごい! うれしいよ長門ちゃん!

 ぼくみんなを手助け出来て、本当によかった!」

 

 芸歴40年以上という事だが……ガチャピン提督は本当に無邪気に喜んでくれる。私としても喜ばしい事だ。非常に微笑ましい。

 

「あ、じゃあさ……彼は?

 ブタゴリラ君がそばにいる時、長門ちゃんはどのくらい強くなれるの?」

 

「ふふ、訊きたいのかガチャピン提督よ?

 でもこれは本当に……言うまでも無い事かもだぞ?」

 

 

 私はニヤリと笑い、旅行鞄を手に提督室の扉を開ける。

 そして振り向きざま……最後にとびっきりの笑顔をもって、ガチャピン提督に応えた。

 

 

 

「“100”だよ。

 彼と共にある時、この長門は無敵だ――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~おしまい~

 

 

 







 私は艦これの世界観は大好きだけれど、残念ながら原作には決して詳しくありません。
 ただ独自設定ばかりの本当に拙い物ではありますが、この作品は今まで私が読ませていただいた何百という数の、全ての艦これ二次創作の作者さま達に捧げます。

 いつも楽しい作品をありがとう。
 貴方の作品が大好きです。

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