「よぉジャパニーズ! 調子はどんだもんだ?」
「ち、チボデー?!」
ウルべ少佐の指示に従い、現在ネオフランスに移動中のドモン&レイン。そこに突然ネオ・アメリカのガンダムファイター、チボデーが現れた。
「どうしたんだお前! 久しぶりじゃないかっ!
お前もネオ・フランスに向かう所なのか?」
「いやいや、そうじゃねぇのさドモン♪
実はこの前ぶっ壊れちまったパンケーキガンダムに代わって、
新しい機体が出来たもんでな?
試運転がてら、いっちょお前とスパーでもと思ってよ?」
「おぉ、良いじゃないかチボデー! 新しいガンダム作ってもらえたのか!
心からおめでとうと言わせてもらうぞ!」
「あらっ、よかったじゃないチボデーさん♪ おめでとう♪」
やんややんやと囃し立てられ、テレテレと嬉しそうなチボデー。
思えばあのパンケーキガンダムは、コロニーボクシングのチャンプであるチボデー程の男が乗ってもビックリする位に弱かった。試合開始10秒で破壊されたのだ。
これには普段とうふガンダムや寿司ガンダムといったネタ機体で戦わされているドモンですらも、涙がちょちょ切れんばかりの不遇さ。
実は内心、ものっすごく同情してたりしたのだ! すごくチボデーが心配だったのだ!
友として、同じガンダムファイターとして、彼に新しい機体が用意された事は喜ばしい。これでチボデーも立派に活躍できる事だろう。
「望む所だチボデー! そういう事ならば、喜んで協力させてもらおう!」
「ありがてぇ、恩に着るぜジャパニーズ!
それじゃあ見やがれ! これが俺様の新しい相棒だぜぇ~!
――――出てこぉい! ガンダムコーンフレーク!!」
「 コーンフレーク?!?! 」
チボデーの雄たけびと共に地面がゴゴゴっと盛り上がり、この場に巨大な機体の姿が現れる。
胴体である白い大きなお皿、そこには牛乳に浸された美味しそうなコーンフレークの絵がデザインされている。
そこから4本のスプーン型の両手両足が飛び出しており、見事にネオ・アメリカの朝をガンダムで表現。
1894年に健康食品としてコーンフレークを発明した、アメリカ合衆国のジョン・ハーヴェイ・ケロッグ博士もニッコリの出来栄えなのだ!
「さぁ~かかってこぉいドモンッ!
俺ぁこのガンダムコーンフレークで、アメリカンドリームを掴むんだぁぁーー!!」
「無理だチボデー!! いくらお前でも無理だ!!」
考え直せとばかりに叫ぶドモンの声も届く事無く、ガンダムコーンフレークに乗って「うぉぉぉ!」と雄たけびを上げるチボデー。
彼の目にはもう、夢とか希望しか映っていない。どんだけポジティブなんだお前。
「何故だ! なぜいつもネオ・アメリカは朝食的な物で攻めてくる!
アメフトとかアイスホッケーとか色々あるだろう!
ちゃんと言った方が良いぞお前!!」
「ドモン! こちらもガンダムを出すわっ!
――――そうめんガンダム、はっしーん!」
「お前もだレイン! お前もなんだよ!!」
レインが手元のスイッチを「えーい!」と押し込み、ガンダムをこちらに向かわせる。
するとこの場に、なにやら非常にほっそい身体をした機体がゴゴゴっと降り立って来た。
「さぁ乗ってドモン!
ネオ・ジャパン食べ物シリーズ第5弾は、そうめんガンダムよ!
頭部のバルカンからは、おネギが発射されるわっ!」
「お前それ豆腐ガンダムと一緒じゃないか!
なぜ俺のガンダムは、頭からネギを出すヤツばかり!!」
ネオ奈良県で作られている三輪そうめんは独自の伝統技術で作られており、冷やしてツルッと食べたり、にゅうめんにしたりと様々な楽しみ方が出来る。
三輪そうめんはコシが強く、茹で伸びがしにくいのが特徴だ。ぜひお楽しみ下さい。
「おいレイン! このガンダム、異常に体が細くないか?!
なんか今にもポッキリいってしまいそうに見えるんだが……」
「えっ、そうめんってそういう物でしょう?
だって太かったら、そうめんにならないし」
「そうじゃない! 今は耐久性の話をしているんだ!
お前よくもこんなっ……グーパン一発で折れそうなガンダムを……!」
「えっ、だってドモンこの前、うどん嫌だ~って駄々こねてたじゃない?
だから私、そうめんにした方が良いのかな~って思って。
ドモンそうめん派の人なんだな~と思って」
「そう事じゃないんだレイン!!
俺もそうめんは好きだ! もうすぐ夏本番だし、今度一緒に食おう!
……でもガンダムが麺類じゃイカンだろうがッ!!」
「ちょっと何言ってるかよく分かんないけど……とりあえず早く乗ってドモン!
そうめんガンダムって細いから、早くしないとポッキリいっちゃうわよ?
戦う前に負けちゃうわ!」
「なんでそんなモン作ったお前!
ネオ・ジャパンはいったい何を思って、お前にガンダムをっ!!」
もうここから見ても針金みたいな細さのそうめんガンダム。何もしていないのに風でグラグラきている。
これはきっとコックピットのサイズでさえ、だいぶ圧迫されているんじゃないだろうか? ギリギリ人が入れる程度の。
今回のドモンは物凄く狭いコックピットの中で、せこせこ戦わなければならない。
「一応あの針金みたいな腕には、ビームライフルを持たせてあるわ!
めんつゆが発射されるの!」
「お前に叩き込んで、めんつゆの海で泳がせてやろうか!
……もういいっ! 来ぉーーい! そうめんガンダァーーム!!」
そうめんガンダムが折れてしまわないよう、今回はそぉ~っと機体に乗り込むドモン。
アメリカの朝食 vs 日本の夏の風物詩――――
なにやら非常にしょっぱい戦いの火蓋が今、切って落とされた。
………………………………………
………………………………………………………………………………………………
「きゃー♪ ジョルジュがんばってぇー♪ わたくしはここよー♪」
「ドモーン♪ ファイトよー♪」
ところ変わってネオ・フランス。
現在ドモンはこの国のガンダムファイター、ジュルジュ・ド・サンドと対峙している。
「ドモン・カッシュ!
マリアルイゼ様を誘拐するなどといった蛮行、万死に値するぞ!」
「へっ、俺が許せないか。だったらどうするんだジョルジュ?」
「言うまでもない、勝負ですドモン!」
いちおうこれまでの経緯を説明しておくと、この戦いの発端はネオ・フランスのお嬢様マリアルイゼという少女が原因だ。
彼女は自らの忠実な騎士であるジョルジュの事が大好きであるが……何というか彼が非常に生真面目というか、国家の誇りの為に戦うという彼の姿勢に少し不満を抱いていたのだ。
マリアルイゼは恋する乙女。もっとジョルジュに自分の方を見て欲しかった。国家の為などでなく自分の為に戦うと、ただそう言って欲しかったのだ。
そんな愛らしい焼きもちから、マリアルイゼは実家のお屋敷を飛び出し、なんと自ら偽装誘拐を装ってドモンの所に行くという暴挙に出た。
――――自身がネオ・ジャパンに誘拐されれば、きっとジョルジュはわたくしを助けに来てくれる。わたくしの為だけに戦ってくれる。
今マリアルイゼは(自らドモンに指示して)木に縛り付けられている状態だ。
ネオ・ジャパンに捕らわれたという体裁で、ドモンがジョルジュに自分と戦わせる為の人質役として、ここでレインと共に二人の戦いをのほほんと見守っている、というのが事のあらましである。
「野蛮だの卑怯だのと、ずいぶん俺と戦う事を渋っていたようだが、
ようやく覚悟を決めたか! さぁジョルジュ、貴様のガンダムを出せぇ!」
「応とも! 見せてあげましょう我がネオ・フランスの誇る、美しきガンダムを!」
そしてジョルジュが腕を振り上げ、カッコよくパチンと指を鳴らす。
「――――いでよ! ガンダムパリジェンヌ!」
「 そんな事だろうと思ったぞ! チキショウ! 」
ドモンの悪態が辺りに響く中、ジョルジュの背後の海が割れ、そこからガンダムパリジェンヌが姿を現す。
なんというか……その、とてもオシャレな感じのガンダムだった。
「どういう事なんだ! この世界にまともなガンダムはいないのか!!
どいつもこいつも!!」
「なっ……貴方はガンダムパリジェンヌをバカにするのですか?!
我が祖国の誇り高きガンダムを!」
「バカ野郎! お前は思う所は無いのか!
一回ちゃんと自分のガンダムを見ろ! 何だパリジェンヌって!!」
“パリジェンヌ”とは、パリ出身の女性たちの事を指す。日本で言う所の大和撫子と同じ言葉だ。
そのライフスタイルやファッションは高く評価されており、世界中の女の子たちの憧れの的とされる。パリのイケてる女子、という感じの言葉である。
いまドモンの前にあるガンダムパリジェンヌも、その名に違わぬ出来栄えだ。とってもオシャレさんなのである。
パリジェンヌのようなファッション……と言われて真っ先に思い浮かぶアイテムといえば、トレンチコート。
デニム柄の下半身というラフなアイテムにさらりと組み合わせて、こなれ感たっぷりに着こなしている。
Tシャツ型の上半身との組み合わせに、首元のスカーフ型の装甲でエレガントに味付け。
いまパリで大人気のガイアのトレンチコートをイメージして作られたその武装は、前だけでなく後ろ姿までドラマチック。
こんな風に、360℃美人――――
「いやお前男だろ!!
なぜパリジェンヌなガンダムに乗る!? 恥ずかしくはないのか!」
「恥などと……そんな物は犬にでも食わせてしまいなさいッ!
全ては祖国の為なのです! 私と勝負なさいドモン・カッシュ!!」
「――――断るッ! なんかもうお前と戦うの嫌だ! 切ない!!
おかしいと思ったらちゃんと言った方が良いぞお前!!
従うだけが忠義ではないんだ!!」
「きゃージョルジュ―♪ カッコいいー♪
流石わたくしの作ったガンダムパリジェンヌですわー♪」
「 お前が犯人か!! ジョルジュに謝れバカ!! 」
こんなにも義に厚く、こんなにも良いヤツが……なぜこのような仕打ちを受けねばならないのか。
無邪気な少女の笑顔を守らんが為、甘んじてそのガンダムに乗っているというのか。己を殺して戦い抜く事を決めたというのか。
――――あぁジョルジュ! ジョルジュ・ド・サンドよ!!
きっと彼が握りしめたその拳からば、今ポタポタと血が滴り落ちているに違いない。羞恥と悔しさから歯を食いしばっているに違いない。
その光景がありありと目に浮かぶドモンである。
みんな色んな物を抱えて生きてるんだなぁとしみじみ思いながら、とりあえずこのガンダムを是が非でも破壊する事をドモンは誓う。
今後ジョルジュが健やかに生きていく為にも。おかまガンダム討つべし。
「正直もう涙が出そうなんだが……レイン! 俺たちもガンダムを出すぞ!」
「了解したわドモン! ――――ガンダムきりたんぽ! はっしん!」
「 お前に慈悲は無いのかッ!! そうなのかレインッ!! 」
レインの声と共に、向こうの空からゴゴゴっと現れるきりたんぽなガンダム。
きりたんぽとは、お米が美味しいネオ秋田県ならではの、正におふくろの味。硬く炊いたご飯をつぶし、秋田杉の棒に竹輪のように巻き付けて作った物だ。
そのまま味噌を塗って囲炉裏で焼いて食べたり、棒から外して野菜や鶏肉などと一緒に鍋として食べるのが一般的。
古くから伝わる、ネオ秋田県の郷土料理だ。
「これぞネオ・ジャパン食べ物シリーズ第6弾! ガンダムきりたんぽ!
前回のは耐久性が低かったし、結構がっちり目にしてるの!
なんか立ち姿がヌボォ~って感じよね!」
「なんだこのきりたんぽに手足が生えたような体は!
動きにくいだろうが!」
「あ、今回は鍋物なんだし、ビームサーベルはおネギの形にしたわ!」
「ネギ好きだなお前!
毎回必ずネギが絡んでくる! 凄いなおネギってヤツは!」
「ビームライフルからは、味噌が発射されるの!」
「だろうな! きりたんぽだもんな! 俺もそんな気がしていた!」
「シールドは鉄鍋になっているわ! ちゃんと手が鍋掴みになってるから安心してね♪」
「できるか! 俺のガンダムファイトはいつも悪夢のようだよ!
……もういい! 来ぉい! ガンダムきりたんぽぉぉーー!!」
もう「くそったれー!」みたいな事を叫びながらガンダムきりたんぽに乗り込むドモン。彼の悲痛な叫びはいつ彼女に届くのだろうか。そんな日が来るといいなぁと思う。
「いくぞジョルジュ! ガンダムファイトォォーーーーーッ!!」
「レディィーー! ゴォォーーーーッッ!!」
二人の雄たけびがこの場に響き渡り、ガンダムファイトが開始される。
ガンダムパリジェンヌ vs ガンダムきりたんぽ。文字数も語呂もそんなに違いは無いのに、なぜここまで対照的なのだろう。
何故パリの女の子が、きりたんぽと戦うのだろうか。非常にシュールな光景。
「パリジェンヌだか何だかしらんが、味噌まみれにしてやる!
これでもくらえ!」
「そんな物は当たりません! 私のトートバッグ攻撃を受けなさい!
春の新作です!」
もう涙がちょちょ切れそうになる程の戦いだが、見ているマリアルイゼやレインはご機嫌そうだ。やんややんやと声援を送る。
「くっ……! 装甲が厚い!
やっかいだなトレンチコートってのは!」
「パリジェンヌの象徴たるトレンチコートに、
ネギのビームサーベルなど通じるものか! 大人しく負けを認めたらどうです!」
助けて。誰が二人を助けて。救ってあげて欲しい。
文字にしてみると珍妙だが、二人は一生懸命頑張っているのだ。わかってあげて欲しい。
「ちょ……! お前のバルカン普通のヤツじゃないか!
こちとらおネギが発射されるというのに! ズルいぞジョルジュ!」
「知った事かドモン・カッシュ!
このバルカンは私のお気に入りだ! 今後も末永く使っていく! ふはははは!」
どうやらバルカンとネギの打ち合いは、ジョルジュの方に分があるようだ。仕方ないのでドモンは接近戦を挑む。きりたんぽのボディでえっちらおっちらと走っていく。
「受けよ我が祖国の技術力! エスカルゴ・ビット!」
「ぐぅあーー!」
エスカルゴの形をした美味しそうなビッドに取り囲まれ、ビシュンビシュンとビームを受けるドモン。きりたんぽのボディに次々と穴が開いていく。
「う……動けん! まるで結界のようだ!」
「チェックメイトですドモン・カッシュ! 降参なさい!」
沢山のエスカルゴがビームによって結界を張り、ドモンの動きを阻害する。身動きすら出来ない程に体が重くなっていく。
「――――甘いぞジョルジュ! こんな事で勝ったつもりか!」
「なっ……!!」
その時、ガンダムきりたんぽの前腕が凄まじいまで光を放ち、辺りを振動させる。
「俺のこの手が光って唸るぅ~!
パリジェンヌを倒せと、輝き叫ぶぅ~!!」
その凄まじいエネルギーの余波により、次々と爆散していくエスカルゴ・ビッド。
『くらえネオ・フランス! ――――んだ。んだ。秋田。
O・MO・TE・NA・SHIぃ~……、フィンガァァァアアアーーーーッッ!!!!』
ガンダムきりたんぽの右手から放たれる緑色の光が、辺り一面を染める。
……その後、なんかドモンの攻撃の余波がエッフェル塔を直撃しちゃってマリアルイゼの上に落ちてきそうになったり、それをジョルジュが勝負を捨ててまで助けに行ってファイトが無効になっちゃったりしたのだが、とりあえず二人の戦いは終わった。
ドモンはガンダムきりたんぽを見事に操り、なんとか今回も生き残ってみせた。地味に命からがらであった。
「マリアルイゼさま。私の戦いは全て貴方の為。
貴方の期待に応え、祖国の威信を背負い戦いぬく事……それが私の誇りです」
「ジョルジュ……」
やがて縄を解いてもらったマリアルイゼが、真剣な表情で胸の内を語るジョルジュと向かい合う。
心からの忠義と、真摯な想いを受け、少女はその顔を赤く染めた。
「ごめんなさいジュルジュ……わたくし……」
「よいのですマリアルイゼさま。本当にご無事で良かった」
「もうわたくし、ジョルジュの邪魔はいたしません。
ですが……誓っていただけますか? このガンダムファイトの優勝を。
ネオ・フランスとわたくしに、勝利を持ち帰る事を」
「はっ――――このジュルジュ、マリアルイゼさまに誓って」
なんやかんやあったけれど、こうして二人は無事に仲直り。マリアルイゼにもケガはなく、ジュルジュも無事。めでたしめでたしである。
これを機にジョルジュにまともなガンダムを作ってあげてくれたら嬉しいのだが、なんかこの少女からレインと同じ匂いを感じ取り、ドモンはちょっと口をモゴモゴしてしまう。
なにやらジョルジュと妙なシンパシーを感じてしまうドモンである。
「ではなドモン・カッシュ。また会える事を楽しみにしている」
「あぁ、またなジョルジュ」
マリアルイゼ救出の為に、ジョルジュは勝負を捨ててまで倒れるエッフェル塔を支えに行った。
本当はそこで攻撃をする事も出来た。ルール上は身動きの出来ない彼にトドメの一撃を入れる事も出来たが……ドモンはそれをしなかった。
その正々堂々とした姿にネオ・ジャパンの武士道精神を感じ、ジョルジュはドモンを野蛮な男ではなく、誇り高き友として認めたのだ。
今後のシャッフル同盟結成に、また一歩近づいたドモン。
まぁどいつもこいつもロクなガンダムに乗ってなかったりするのだが。デビルガンダム戦ホントどうしよう? まだ見ぬ未来に大きな不安が残る。
「次はフォアグラガンダムとかどうかしら?
フランス料理をテーマにしたガンダムとか素敵ね♪」
「マリアルイゼさま……」
生きろジョルジュ! 強く生きるんだ!
全てを受け入れたような悲しいジョルジュの背中を、ただただその場で見送るドモンであった。
…………………………………………………
………………………………………………………………………………………………
「レイン、ちょっとそこに座れ」
「なになにドモン? どうしたの改まって?」
ネオ・ジャパンの宿舎。ドモンは部屋にレインを呼びつけ、床に正座させる。
「思えば今まで、こうやって話し合う機会も無かったというか……。
俺もこうして、お前に気持ちを伝える事をしてこなかったと」
「?」
「だからなレイン? 今日は一度とことんお前と話し合ってみようと思う。
俺は口下手だし、こういうのは不得手だが……、
きっとこのままガンダムファイトを戦っていくのは無理だ。
俺の話を聞いてくれるかレイン?」
今まで怒鳴りつけるばかりで話し合いという物をして来なかったが、ドモンはひとつ考えを改め、真面目にレインと語り合ってみようと決めた。
これはどこか孤高な所がある彼にとって、見覚ましい変化であると言えた。
「よく分からないけれど……私と話がしたいってこと?
まぁドモンったら♪ やーっと恥ずかしがるのを止めて、
私とキャッキャウフフする気になったのね♪
いいよいいよ♪ じゃあなんの話する?
あ、今わたしが作ってる“すいとんガンダム”と“かつ丼ガンダム”の話する?」
「 それだそれ!! そういうのを止めろと言ってるんだ俺は!! 」
出来るだけ冷静に話そうと、さっき道場で心を落ち着かせて来たばかりだというのに、ドモンの怒りは一気にマックスハートであった。
「なんだその“すいとんガンダム”ってのは! 戦後かっ!!
そんな物でガンダムファイトが戦えるか!!」
「ん? 意外とモチモチしてて美味しいのよ?
ドモンすいとん食べた事ないの? 腹持ちも良いし」
「戦後かっ! 小麦粉をこねて茹でた料理の事は今いい!
俺はなレイン? ちゃんとまともなガンダムを作れと言っているんだ!」
「えっ、まとも?
いやドモン……たしかにすいとんはシンプルなお料理だけど、
アイディア次第で色んなバリエーションが……腹持ちも良いし」
「すいとんの可能性については今いいんだッ!! 腹持ちも知らん! 戦後か!
俺は普通のガンダムに乗りたいんだッ!!
シャイニングガンダムとか、ライジングガンダムとか、
そんな強そうなガンダムに乗って戦いたいんだ! 誰にはばかる事なく!!」
「あらドモン、かつ丼って凄く強そうじゃない♪ 丼もの最強よ?
これを超えるのがあるとしたら……うな丼ガンダムとか……」
「いったん食い物から離れろ!
まさかお前、いつも腹ペコでガンダム作ってるんじゃないだろうな!?」
「そんな事ないわよ? ちゃんとしっかり3食摂ってるもん。
むしろその日食べたメニューでガンダムをデザインしてるワケだし」
「 お前というヤツはお前ッ! ホントお前ッ!! 」
ドモンは「オーマイガッ!」と天を仰ぐ。
どれだけ君に語ろうと3分の1も伝わらない。マイハァ~みたいな心境だ。
「なぜ食い物の中から考える?! なぜ他の物を考えようとしない?!」
「えっ、でもドモン、私たちって生き物じゃない?
正直食べる事以外は……どうでも良くない?」
「極端だよお前はッ!! もっとこう……愛とか情熱とかあるだろう!!
一度そういった物を表現してみろ! 食べ物ばかりじゃなく!!」
「えー。興味持てないよドモン……。そんなの楽しくないよ……。
この世にファミチキをむさぼり食う以上の幸福があるなんて、とても思えない」
「即物的なのは駄目なんだ! もっと志を持て!
人はパンのみに生きるに非ずなんだ!」
「でも夜中よドモン?
夜中にどん兵衛やファミチキをむさぼり食うのよ? よくない?
私この為に生きてるような気がする。そりゃガンダムもうどんになるってモノよ♪」
「 お前に訊いたのが間違いだった!! もうお前には頼まん!! 」
何故か「えへへ♪」とテレ笑いするレインに背を向けて、ドモンは電話の所に走る。もうレインではなく他の人間にガンダムを作ってもらえるよう、話してみる為に。
「もしもしミカムラ博士ですか!? ちょっと相談したい事が……!」
『何かねドモンくん? 私は今ファミチキをむさぼり食うのに忙しいのだが』
「 ちきしょう駄目だ!! この人はレインの親だ!! 」
ガシャンと受話器を叩きつけ、その場に蹲るドモン。もう四方八方が敵だらけだ。ネオ・ジャパンに味方など居ない。
「どうしたのドモン? 大丈夫? 産む?」
「何を産むんだ何を! お前の腹から何が出るって言うんだ! ファミチキか!!」
次の相手はロシアのアルゴ・ガルスキー。大変な強敵だと聞いているが、こんな事で本当に勝てるのだろうか?
冷凍睡眠の刑にかけられた父を救い、無事にお兄ちゃんを探し出せるのだろうか。大きな不安が残る。
「さぁどうするのドモン! すいとんかカツ丼か! 好きな方を選びなさい!!」
「俺に何か恨みでもあるのか!
この前ホワイトデーをド忘れしたのがいけなかったのか! そうなのかレイン!」
結局の所、有無を言わせぬまますいとんガンダムが作成され、後日ドモンはコックピットで小麦粉をかぶらされる事となる。
海苔や豆乳と違い、匂いが付かなかった事は幸いだと、だんだん慣れてきたのか妙な安心をするドモンであった。
☆スペシャルサンクス☆
砂原石像さま♪