hasegawaさん、炎の短編集。   作:hasegawa

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 TVアニメ“新機動戦記ガンダムW”、二次創作。







40 思春期を殺した少年の翼

 

 

「「「わっしょい! わっしょい!」」」

 

 コロニー・キシワダの住宅街を、勢いよく神輿が駆けていく。

 

「「「わっしょい! わっしょい!!」」」

 

 現在、元ガンダムのパイロットであるヒイロ、デュオ、カトル、トロワ、五飛の5名は、ふんどし一丁の姿で元気に神輿を担いでいた。

 

「ダメだトロワ! 落ちちゃう! ぼく落ちちゃうよ!

 お神輿の上に乗る役なんて、ぼくには無理だったんだ!」

 

 走ってる神輿の上に乗る役という、花形と言えるポジション。ある意味神輿を担ぐよりも運動神経やバランス感覚の要求される難しいポジション。

 カトルはおっかなビックリ中腰で立ち、頑張ってうちわをワッショイワッショイと振り回しているものの、自信なさげだ。

 

「カトル、お前なら出来る。とても様になっているじゃないか。

 それにもしお前がリタイヤしたとしても、他のメンバーがしっかり後を引き継ぐ。

 俺たちを信じ、ベストをつくせ」

 

「トロワ……うん! ぼく頑張ってみるよ!」

 

 暖かい言葉をかけられ、再び元気よくうちわを振り回すカトル。不安定な足場の上、さっきよりも堂々と立派に立って見せている。さすがサンドロックのパイロットだ。

 

「さぁいくぜぇ! ガンダム神輿のお通りだぁ!

 死神が神輿かついで舞い戻って来たぜぇーー!!」

 

「邪魔する物は壊す! 立ちふさがる者は容赦せん!

 正義は俺たちが決めるっ!」

 

「誰よりも戦い抜いてみせる……。サンクキングダムのリリーナよりも――――」

 

 

 わっしょい! わっしょい!

 じゃす! わー! びー! こみゅにーけーいしょーん♪

 

 ふんどし一丁の少年たちが、キシワダの街を駆け抜けて行った。

 

 

 

……………………………………………

………………………………………………………………………………………………

 

 

 戦争は終わった――――人類は全ての兵器を破棄し、戦いの時代は終わった。

 

 それは非常にめでたい事ではあるのだが……今まで戦いや訓練ばかりしてきた少年たちは、正直これから何をしたらいいのか、ちょっと困っちゃう事となった。

 

 物心ついてから、今に至るまで……自分たちはひたすらコロニーの平和を勝ち取るべく戦いに明け暮れていたのだ。ほかの事なんてする余裕は無かったし、それ以外の事はロクに知らない。

 でも平和な時代に順応しようと、いま元ガンダムのパイロットたちは精一杯頑張っている最中。

 せっかく勝ち取った平和なのだ。楽しまなきゃ嘘なのである。

 

 それに正直……彼らの少年期は言っちゃなんだが、ものすごく暗かったのだ。

 友達と遊ぶ事もせず、寝る間を惜しんで訓練の日々。ただそれだけで生きてきた人生。これはあまりにも酷くないだろうか?

 

 なので今までロクに遊べなかった分、失った青春を取り戻すべく、ヒイロたちは現在奮闘中。今まで出来なかった色々な遊びにチャレンジしているのだ。

 先ほどの神輿もその一環なのである。意外と楽しめたと思う。

 

 

「誰っ?! 僕のプチプチ盗ったの!

 後でやろうと思って楽しみにとっておいたのにっ! ひどいじゃないかっ!」

 

「あ、俺だゴメン。……なんか見かけたから、ついプチプチとさ?

 悪かったなぁカトル。俺のベイブレードやるから機嫌直してくれよ♪」

 

「えっ!? 良いのデュオ?! ほんとに? ありがとう!」

 

 毎日イソイソと誰かの家に集まり、こうして仲良く遊んでいる5人。

 先ほどはカトルもちょっとおこだったが、仲間内で最強と名高いデュオのベイブレードを貰い、嬉しそうにはしゃぐ。まさに少年のような笑顔だ。

 

「う……美味い!

 カップ麺などという身体に悪い物が、こんなにも美味いとはッ!

 日清のシーフードヌードルこそ正義だ!!」

 

「ポケモンの厳選……。幾多のトレードを繰り返し、出来るだけ能力の高い個体を選ぶというプレイヤー達の判断は正しい。

 ……だが一期一会という言葉があるように、自分の手で捕まえ、愛情を注いだポケモン達のみでゲームを楽しむという俺のプレイスタイルも、間違いでは無かった」

 

「おいヒイロ! ちゃんと横断歩道は白いトコ踏んで歩けよ!

 さっき黒いトコ踏んだらサメに食われる事なって、みんなで決めたろ!」

 

「見て! あそこタンポポいっぱい咲いてる!!

 すごいよっ! こんないっぱいのタンポポ……ぼく始めてだっ!」

 

「教えてくれ五飛。

 うまい棒3本、どんぐりガム一個、ポテトスナック1つ。

 残り20円で、俺はあと何を買うべきなんだ?

 おやつは100円以内、ゼロは何も応えてくれない。教えてくれ五飛……」

 

 

 日々は流れていく。

 少年たちは今までのうっ憤を晴らすが如く、鬼気迫る程の勢いで遊ぶ。

 

 楽しい! 人生ってチョー楽しい! 平和バンザイ!!

 

 砂場でお城を作ったり、カブトムシを捕まえたり、工作員のスキル駆使してガチンコでかくれんぼをやったりと、少年たちは童心に帰ってエンジョイしていった。

 

 

…………………………………………

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「おい今度コロニー○○地区で、

 世界一長い太巻きを作るギネス挑戦があるらしいぜ? 行ってみるか?」

 

「ほう、太巻きか。それも良いだろう。

 だが皆でプラネタリウムに行くというのはどうだ?

 サーカス団の仲間からチケットを貰った。5人で行ってこいとの事だ」

 

「祭りは無いのか! もう神輿は無いのか!

 ナタクに俺の雄姿を見せてやりたいのだ! 祭りで輝いてこそ漢だ!」

 

「ぼくはドン・キホーテという所に行ってみたいかな?

 色々な雑貨が所せましと並んでいるらしいんだ。

 ボードゲームも買えるかもしれない」

 

 

 あの頃の苦しかった時代が嘘のよう、少年たちはキャッキャと笑いながら楽しそうに遊びの相談をする。

 そんなある日の日常の中……。

 

「ん? おいヒイロ、お前も何かやりたい事いって良いんだぞ?

 お前なにやってんだ?」

 

「映画を観ている。これで今日3本目だ」

 

 皆が相談する傍ら、リビングのTVに噛り付いている様子のヒイロ。よく見れば目元にはとんでもない位のクマがあり、もう彼が夜通し映画鑑賞をしていた事が見て取れる。

 

「えっ……お前またサメ映画観てんのか?!

 どんだけサメ好きなんだよお前。B級映画ばっかじゃねぇか」

 

「そう、B級。むしろZ級映画だ。だがそこが良い。

 お前も一度観てみると良い」

 

「やだよ。俺メガ・シャーク vs ジャイアント・オクトパスとか、

 トリプルヘッドジョーズとかは観たくねぇよ。

 というか……面白いのかヒイロ?

 なんかお前の目が、死んでるように見えるんだが……」

 

「面白い、面白くないの問題じゃない。

 そこにサメ映画がある、俺がサメ映画を観る。それだけだ」

 

「いやだから何でサメなんだよ。

 もっと面白いの沢山あるだろうよ。ハッピーなのがよ」

 

「面白い映画が観たいなどという、甘ったれた考えは捨てろ――――

 俺にとって映画鑑賞とは“修行”だ。

 デュオ、お前にもいずれ分かる」

 

「分からねぇよ。

 サメが竜巻に乗って襲い掛かってくるような映画の事は、俺わからねぇよ。

 お前みたいのが金を落とすから、いつまでたってもサメ映画が無くならねぇんだよ」

 

 ちなみに現在に至るまでB級サメ映画が作り続けられる原因は、主に日本人にあるらしい。

 どの国の人たちも見向きもしないのに、日本人だけが「うっひょ~! サメだぁ~!」と食いついて金を落とし続けるから、どんどんB級サメ映画は量産されていくのだそうだ。

 

 決してスピルバ〇グ監督の名作映画“ジョーズ”のような物でなく、近年作られているのはゾンビになったサメであったり、貞子よろしくTVの中から出てくるサメであったり。

 そんなおバカなサメ映画が目白押しなのだ。

 

 これも全て、ヒイロのようなB級映画ファンがいるせい。

 ゆえに逆説的ではあるが……日本人にはサメ映画を観続ける“義務”があると、これは全部君たちのせいなのだからと、そう語る映画配給会社の人もいる。

 

 サメ映画とは、そんな不思議な需要と供給によって作られる、奇跡の賜物なのである。

 

「デュオ……ひとつ訊くが、映画を作るにはどうしたらいい?」

 

「ん? なんだよお前、映画撮りたいのか!?

 それ面白そうじゃねーかヒイロ! きっとアイツらも飛びつくぜっ!!」

 

「あぁ、サメに食われるリリーナの映画を撮りたい。必要な物を教えてくれ」

 

「やめようぜヒイロ。

 ちょっと乗っちまった後で悪いが、この話は無かった事にしてくれ」

 

 なんか「?」って感じの顔をするヒイロを残し、デュオは玄関に歩いていく。

 今ちょうど玄関のベルがピンポンと鳴り、来客の訪れを知らせたのだ。もうどうやってヒイロを説き伏せたら良い物か分からなかったし、デュオにとっては天の助けとなる来客であった。

 

「へいへ~い、どこのどちら様ぁ~っと」

 

「――――話は聴かせて貰ったわ」

 

「なんで聴いてんだよリリーナ嬢ちゃん。盗聴器かよ。

 ……とりあえず、いらっしゃい」

 

 デュオをすり抜けて、リリーナ・ピースクラフトがズカズカと部屋に入ってくる。

 彼女は5人の友人であり、特にヒイロにとっては大切な人。守るべき女の子だ。

 実は地球圏統一連合にとって物凄い重要人物だったりもする。

 

「ヒイロ、ごきげんよう。豚の角煮を作って来たわ。またみんなで食べて頂戴」

 

「いつもすまないリリーナ。ありがたく食わせてもらう」

 

 イソイソと入ってきては、即座にヒイロの所へ行き、持参してきたお惣菜のタッパーを手渡す。もうヒイロの胃袋は完全に掴まれていると言っても過言では無かった。リリーナ無しでは生きていけない。

 

「それで、さっき“デュオ君に”聴いたのだけれど、

 あなた映画が撮りたいんですって?」

 

「言ってねぇ言ってねぇ。そういう事にしときてぇのか嬢ちゃん」

 

「そうだ、映画が撮りたい。お前がサメに食われる映画を作りたいんだ。

 リリーナ、協力してくれるか」

 

「とても良いアイディアねヒイロ。是非やりましょう♪」

 

「過保護なのもいい加減にしとけ?

 アンタが甘やかすからヒイロとんでもねぇ事になってるよ」

 

 よしよしとヒイロの頭を撫で、もう猫可愛がりするリリーナ。

 怒ったり叱ったりする事をしないので、いつまで経ってもヒイロはこんな感じだ。大分リリーナに責任があると思う。

 

「――――」

 

「ん、なになにヒイロ? サザエさん? サザエさんのOPのヤツがやりたいの?」

 

「――――」

 

「あぁ、あの磯野家の全員が横一列になって〈てってってってー♪〉みたいな音楽と共にズイズイ画面に迫ってくるシーンを、ガンダムパイロットの5人でやるのね?

 とても良いアイディアだと思うわヒイロ♪」

 

「しゃべれよヒイロ。ゴニョゴニョ耳打ちしてねぇで。

 お前さっきまで普通に喋ってただろうが。

 それとリリーナ嬢ちゃん、時にはガツンと言ってやるのも愛だと思うぜ?」

 

 いきなりシャイな幼児のようになり、リリーナに耳打ちで会話をし始めるヒイロ。子供か。

 とりあえずタッパーから角煮をモグモグと摘まみながら、デュオは何とも言えない気持ちで二人を見つめる。

 

「とりあえずヒイロ、もうそろそろ夕方よ?

 ご飯の前に、いつものヤツに行っていらっしゃい」

 

「了解、任務を遂行する」

 

「おっ、もうそんな時間かよ! おいお前ら! いつものヤツ行くぞ!」

 

 デュオがパンパンと手を叩いて皆に指示を出し、メンバーたちが談笑を止めてイソイソとその場から立ち上がる。

 

「んじゃあいっちょ出かけようぜ!

 嬢ちゃん、ちょっとのあいだ留守番頼んだぜ!」

 

「カトル、あの“カチカチするヤツ”は持ったか? アレが無いと始まらない」

 

「うん、ちゃんと持ったよトロワ。今日は誰がやるの?」

 

「昨日は俺、おとついはデュオ。順番から言えば今日は貴様だヒイロ」

 

「了解。これより作戦を開始する」

 

 防寒具を着込み、5人がゾロゾロと部屋を出ていく。

 リリーナはこたつに入り、TVでも観ながらのんびりと待つ態勢に入った。

 

 

 

……………………………………………

………………………………………………………………………………………………

 

 

 

「「「 火のよぉーーーーじん!! 」」」

 

 カチッ! カチッ!

 

 

「「「 マッチいっぽん、火事のもと!! 」」」

 

 カチッ! カチッ!

 

 

「「「 火のよぉーーーーじん!! 」」」

 

 カチッ! カチッ!

 

 

 ヒイロが小気味良い音を鳴らし、それに続いてみんなが大きく声を出す。

 そんな風に5人は「火の用心」を叫びながら、スタスタとご近所を回っていく。

 

「おいヒイロ、疲れたら言えよ? 交代ごうたいで良いんだからな?」

 

「問題ない。任務を続行する」

 

「寝タバコはやめましょうっ! やめろぉッ! 寝タバコするヤツは悪だッ!!」

 

「火のよぉーーじん! 火のよぉーーじん!

 あ、帰ったらあったかいお汁粉でも飲もうか? ぼく作ってみるよ♪」

 

「そうだなカトル、俺も一緒にやろう。

 ではそれを励みに、もうひと頑張りするとしよう。

 コロニーの平和の為に」

 

 

 

\火の用心!/ \マッチいっぽん火事のもと!/ \火の用心!/

 

 

 

 夕暮れ時の街に、ガンダムパイロットたちの元気な声が響く。

 

 ガンダムはもう無いけれど、戦いも終わったけれど、今日も5人の少年たちは平和を守るべく奮闘している。

 

 大好きな、コロニーのみんなの為に――――

 

 

 

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