hasegawaさん、炎の短編集。   作:hasegawa

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44 アンパンマンと、ヘンゼルくんグレーテルちゃん。

 

 

「やっ! 止めて下さいっ! 離してっ!」

 

「うるせぇこのアマ! 大人しくしやがれッ!!」

 

 ロアナプラ、貧民街の裏路地。

 ガラの悪そうなイカつい男が、女の子の手を掴んで銃を突き付けている。

 

「いいから言う事を聞きやがれッ! 鉛玉ぶち込まれてぇかッ! このクソッタレ!」

 

「 いやっ! やめて! 助けて下さいっ!

  誰かっ……! 誰かぁぁーーっ!! 」

 

 この街(ロアナプラ)では、あまりにもありふれた光景。

 そんな光景を目にしても、この街では誰も気に留めない。ただダルそうにあくびをしながら、その場を歩き去るばかり。

 

 少女の悲痛な声が、ロアナプラの濁った空に響く。

 今日もまた哀れな弱者が、悪漢の食い物にされようとしていた……その時。

 

『――――まてー! その子をはなしなさぁーい!』

 

「ッ!?!? な……何だ?! 誰だコラてめぇ!!」

 

 突然この場に響いた声に、悪漢がキョロキョロと辺りを見回す。だがその目は誰の姿も映す事は無い。

 当然だ、彼らは空にいるのだから(・・・・・・・・)

 助けを呼ぶ声を聴きつけ、空の彼方からやってきたのだから。

 

『――――この眩い光が照らす清らかな朝、幼子に(まが)き刃を向ける輩よ。

 俺の愛銃、そして我が友の拳は(・・・・・・)、狙った獲物を区別なく破砕する!』

 

『悪さはゆるしませーん! おやめなさーい!』

 

「 ?!?! 」

 

 なにやら“とても愛らしい声”、そして“ハンサムな声”が交互に聞こえてくる。

 

「神は御座(おわ)し、ただ見守るのみ――――

 ならば天に代わりて誅を下すは、俺達をおいて他に無い」

 

「さぁぼくらが相手でーす! かかってきなさーい!」

 

 見上げれば、そこにはしょくぱんまんの背に乗ったロットン(・・・・・・・・・・・・・・・・・)の姿。

 勇ましく正義の声を上げるしょくぱんまんと、その背中に立ってカッコいいポーズを決めているロットン・ザ・ウィザードが現れたのだ。

 

 ――――無理だ! とても敵わねぇ!!

 二人の“非常にアレな”登場シーンを見た途端、悪漢の男は即座に白旗を上げた。

 

 正義に燃える瞳と、一片の曇りも無い声――――

 あれは決して逆らってはいけないタイプ(・・・・・・・・・・・・・・・)の人種だ。もう“正義”とやらの名の下に、何されるか分からん。

 そう本能で悟った悪漢の男は、自ら銃を〈ぽーい!〉と遠くに放り投げ、急いで彼らにひれ伏す。

 

「すまねぇッ! 勘弁してくれぇーッ!

 俺ぁこの嬢ちゃんの持ってた“パン”が欲しかっただけなんだッ!

 ミスター・ジャム(ジャムおじさん)の焼いたパンが、どうしても欲しかったんだよッ!」

 

 二人に慈悲を乞い、女の子にも心から頭を下げる悪漢の男。

 

「うちの妹は身体が弱ぇから、ロクに外にも出られやしねぇ!

 いつもあの子汚ねぇ家ん中、ひとりっきりで遊んでいやがるッ!

 だから、せめて美味いモン食わせてやりてぇって……、

 俺ぁいつも足繁くミスターの店に通ってんだ!

 ……でも妹のでぇ好きなメロン・デニッシュはどういうワケだか、

 いつもハトが飛び立ってくみてぇにすぐ売り切れやがるッ!! ファーック!!!!」

 

 もうボロッボロ涙を流す悪漢の男。その姿を前に二人は銃をしまい、そっと拳を下ろす。

 毎日朝早くから露店に並び、あのレヴィのイカレた罵詈雑言(接客)を受けながらも、妹の為にと必死に頑張っていた。

 そんな彼の想いがひしひしと伝わってくる。

 

「 俺ぁ……俺ぁただ、妹の喜ぶ顔が見たくてッ……!

  いつも寂しそうに笑うアイツの、“本当の笑顔”ってヤツが見たくてッ……!

  ――――すまねぇ嬢ちゃん! 俺が悪かったぁッ! 勘弁してくれぇ~~ッ!! 」

 

 

 その後……「たとえ盗んだパンを食べさせても、妹さんは笑ってはくれませんよ」というお説教、そしてこれからは妹さんの為に、毎朝しょくぱんまんが焼きたてのパンを届けてくれるという約束を受け、男はまたポロポロと涙を流した。

 

 幸いにも女の子に怪我は無かったし、男もしっかりと改心してくれた。

 笑顔で手を振る二人に見送られながら、ロットンとしょくぱんまんが再びふわっと舞い上がり、ロアナプラの空を飛んでいく。

 

「またひとつ、幼子の笑顔を守る事が出来た。

 友よ――――君のおかげだ」

 

「こちらこそですロットン! あなたがいてくれたからです!

 これからもぼくらで、この街の“正義”をまもっていきましょう!」

 

 

 ぽかぽかの陽気。眩いお日様の光。

 ふふふと微笑み合う二人が、スイ―っと大空を駆けていく。

 

 ロットン・ザ・ウィザードと、しょくぱんまん――――

 彼らがいる限り、このロアナプラ(悪の都)から正義の灯が消える事は無いのだ。

 

 

……………………………………………

………………………………………………………………………………………………

 

 

「久しぶりだね。元気にしてるかい?」

 

 ラグーン商会のお昼時。受話器に向かって朗らかに話すロックの声が聞こえてくる。

 

「そっか、何よりだ。声が聴けて嬉しいよ。

 こっちは……そうだなぁ、まぁ“相変わらず”ってトコさ。

 毎日騒がしくやってるよ」

 

 ロックの楽しそうな声、それにレヴィが「ぐむむ……」っと聞き耳を立てる。

 何気なしにソファーに座っている風を装ってはいるが、その身体は電話の方向に随分と傾いている。

 

「あれ? レヴィちゃん、どうかしたの?」

 

「――――シッ! 静かにしてろ兄弟。声を出すな」

 

 眉間に皺を寄せ、「一言一句、聞き逃してなるものか」とばかりの鬼気迫る様子。

 一緒にジェンガをしていたアンパンマンの頭上に「?」とハテナマークが浮かぶ。

 

また声が聴けて嬉しい(・・・・・・・・・・)だと? ……いったい誰と話してやがんだよロック!

 どこのクソだ? ……女? まさか故郷(くに)にいる“昔の女”とかじゃねぇよな?)

 

 何故かダーダー冷や汗を流し、ひたすらあっちからの声に集中するレヴィ。

 そんな風にぼけ~っとしていたので、よそ見をしながら触れたジェンガが今、途轍もない音を立てて〈ガッシャァァァァン!!〉といった。

 

「――――おわぁぁぁぁぁーーーーーっっ!!!!

 なっ……何だ!? どこの鉄砲玉(ゴミ)が攻めて来やがった!?

 畜生(デム)ッ! ここをあたしらの事務所と知っての事かよ!!

 上等だぁケツ穴野郎コラァ! 目ん玉ひっくり返してや……

 

「 レヴィ! 静かにしてくれ! いま電話中なんだ! 」

 

 ロックに一喝され、「しゅん……」と座りなおすレヴィ。その姿には哀愁が漂う。

 ガチャガチャと散らばったジェンガを集めつつ、アンパンマンは心配そうな顔で彼女を見つめる。

 

「あぁ、それは良いね! ぜひ行こう!

 俺は料理は出来ないから、そっちに任せっきりになっちゃうけど……。

 でも旅費や道具なんかの事は全部任せてくれて構わない。これでも大人だからね」

 

 楽しそうに話すロックの背中を、レヴィは「じとぉ~」っと眺め続ける。

 やがて彼が電話を終え、上機嫌でこちらに戻って来た途端、もうアリアリとそわそわしている様子のレヴィが、気のない素振りを装って問いかけた。

 

「よ、よぉロック、ご機嫌じゃねぇか。

 まるで溜まりに溜まってたクソと、便所でサヨナラしてきた時みてぇな顔だ」

 

「ん、そうか? まぁそうなってるかもね。

 とても良い事があったから、にやけてしまうのも仕方ない」

 

「ほ……ほぉ~、良い事(・・・)ねぇ……。

 で、何だよロック? 今あたしは気分が良い。

 そのクソ話に付き合ってやらねぇ事もないぜ?」

 

「別に大した事じゃない、ただちょっと“次の休日の予定が出来た”ってだけさ。

 さって誰の番? あ、さっき崩れちゃったんだっけ。なら最初からだな」

 

 アンパンマンと協力してジェンガを積みなおすロック。この「話は終わり」という雰囲気を前にテンパるレヴィ。

 

「……ヘイ! ヘイロック! 水臭ぇじゃねーか!

 このあたしが聴いてやるって言ってるんだぞ?! 遠慮すんなよベイビー!!」

 

「えっ」

 

「ほら、あたしも暇じゃねぇし? 天下のレヴィ姉さんだし?

 こんな機会は滅多にねぇってモンだ。

 つべこべ言ってねぇで、とっとと話しなよ相棒!

 おらロック! ハリーハリーハリー!! Just do it (さぁやろうぜ)!!」

 

 もうキスするような距離まで詰め寄りながら促すレヴィ。対してロックはキョトンとした顔だ。

 

「何だよレヴィ。別にいいって。

 というか、ここじゃ“詮索屋は嫌われる”んじゃなかったか?

 俺だってプライベートくらいは……」

 

「――――おいこの小便野郎ッ!!

 ついにあたしの買ってやったアロハを一度も着る事なく、

 クローゼットでエメンタール(穴あきチーズ)にしやがったクソッタレよぉ!!

 てめぇの国にゃ防虫剤と、“人の善意を受け取る”って文化は存在しねぇのか!

 どういう事だよロックッッ!!」

 

「ちょ……!? おいレヴィ! ネクタイを掴むな!

 締まってるって! 俺はニワトリじゃないっ!」

 

「るっせぇッ!! 良いから吐けってんだよ! このフニャチンがッ!!

 水筒とランチ・バスケット持って、いったいどこにファックしに行くつもりだッ!!

 どこのトランプちゃん(尻軽女)に、その汚ぇホットドック(・・・・・・・・)食わせんだよ!

 ――――言え! 言えよロックッ!! ロォォォッック!!!!」

 

 ついに怒髪天をつくレヴィ。

 彼女はまるでポップコーンみたいに、十分に火が通った瞬間に破裂した。

 

「おいレヴィ! 子供の前だぞ!? お前またっ……!」

 

「子供ッ……?! 子供だとぉ!?

 おー上等だ! おめぇ他所で何人こさえてくる(・・・・・・)つもりだ!! 言ってみろオイ!!

 双子か! 三つ子か! あれか、一姫二太郎ってヤツか!?

 ベイビーベイビー! アレが一番良いらしいなぁロック!

 ――――てめぇ逆子みてぇに吊されてぇのかクソがぁぁぁっっ!!!!」

 

「ちょ! 落ち着けよレヴィ! 落ち着けって!」

 

「落ち着くッ……?! 原っぱでヤルだけじゃ飽き足らず、

 ピクニックの後はシーサイド・ホテルでしっぽりか! 種馬みてぇに仕込むんか!

 挙句の果てに『子供が出来たんで帰国します~』ってか!

 ――――そ う は い か ね ぇ ぞ ロ ッ ク !!!!

 お前はこのラグーン商会の水夫なんだよッ!

 どこに行こうがおめぇ、地の果てまで追いかけてって殺すからなッ!!

 逃げられるとでも思ってんのかコラァァァァッッッ!!!!」

 

「うわぁぁーー!」

 

「わー!」

 

 

 

 この日…………またしても火を噴いたソード・カトラスにより事務所はエメンタール(穴あきチーズ)となり、レヴィの今月のペイは差っ引かれた修繕費用によって、えらい事となった。

 なんとか家賃は払えるけれど、今後はピザも我慢しなくちゃいけないかもしれない。

 

 そしてこの日、アンパンマンは夜遅くまでレヴィの愚痴に付き合う。

 

「あたしシーサイド・ホテルなんて泊まった事ねぇよ……。

 やっぱガラじゃねぇのかなぁ……兄弟……」

 

 

 そう膝を抱えてグジグジ泣くレヴィの頭を、沢山いい子いい子してやるアンパンマンであった。

 

 

…………………………………………

………………………………………………………………………………………………

 

 

 

「こんにちはお兄さん! 久しぶり!」

 

「お兄さん! 会いたかった!」

 

 ロアナプラから少し離れた、とても大きな公園。

 暖かな陽気に恵まれた、緑が沢山ある素晴らしい風景の中で、ロックは“あの双子”ヘンゼルとグレーテルを迎えた。

 

「やぁ二人とも、こんにちは。

 今日は来てくれてありがとう――――」

 

「こちらこそよ、お兄さん! 約束を守ってくれてありがとう!」

 

「ありがとうお兄さん! ぼくとっても嬉しいっ!」

 

 ロックのお腹にぎゅ~っと抱き着き、嬉しそうに甘える二人。

 まさに天使のような笑顔で。

 

 この子たちは“殺し屋”としてヴェロッキオに雇われ、そしてロアナプラに狂騒を巻き起こしたという過去を持っている。

 国、時世、大人たち……そんな様々な物によって人生を壊され、心と身体を酷く傷つけられた。

 そんなとても辛い生い立ちを生きてきた、悲しい子たちなのだ。

 

 ……しかしながら、彼らはロックの事が大好き。

 今まで出会った中で一番の“あったかい大人”であるロックを、自分たちの為に涙を流してくれた彼の事を……二人は心から慕っている。

 様々な事情から叶わなかったものの、もう一時期は本気で「お兄さんの子供になっちゃう?」なんて話も出たくらいに。

 

 二人はロアナプラから離れた後も、ロックに連絡をとって近況を報告し合ったり、絵葉書を送ったりして交流を続けている。

 そして今日、こうして久しぶりに再会。

 あの別れ際の約束の通り、一緒にピクニックへとやって来たのだった。

 

「さぁ行きましょうお兄さん! ビニールシートを広げるのはどこが良いかしら?」

 

「お弁当を食べるなら、一番景色が良い場所が良いよね?

 小川の近くとか、大きな木の下とかっ! お兄さんはどこが良いと思う?」

 

「そうだなぁ。じゃあ散歩がてら、みんなで歩いてみようか。

 きっといい場所が見つかるよ」

 

「うん! それじゃあ行きましょう、兄さま♪」

 

「うん! 行こう姉さま♪」

 

 ロックを真ん中にし、親子のように三人で手をつなぐ。

 ヘンゼルとグレーテルの、尽きる事のない笑み。嬉しそうな声――――それにロックは優しく相槌を返していく。

 

「あ、でも結構人が多いや。

 もしぼくらの座りたい場所が埋まっていたら、どうしようか?」

 

「その時は、天使を呼んであげましょう(・・・・・・・・・・・・)

 ここはとても綺麗だけれど、天国はもっと良い所でしょうから」

 

「うん、そうしよう姉さま♪」

 

「えぇ、そうしましょう兄さま♪」

 

「あはは……」

 

 たまに懐の手斧や重機関銃(BAR)をチラつかせ、微笑ましいジョーク(・・・・・・・・・)を言う事はあるものの……、二人はまさに子供らしい笑顔で無邪気にはしゃいでいる。

 それをちょっと困り顔で暖かく見守りながら、ロックは二人と歩幅を合わせ、ゆっくりと歩いて行く。

 

「ここはどうかな? この木は“桜”っていう木の親戚なんだけど、

 俺の故郷じゃ、こういう綺麗な花や木を眺めながら、みんなで宴会をしたりするんだ。

 お花見っていう行事でね?

 綺麗な物を見て、美味しい物を食べる――――

 それが心にとても良いんだって、昔ウチのおばあさんが言ってたよ」

 

「まぁ素敵っ! とっても綺麗な木ね、兄さま!」

 

「うん! とっても綺麗だよ姉さま! ぼくここが良いよお兄さんっ!」

 

 二人は目を輝かせて、眼前の一番大きな木の所へ駆けていく。

 大きなランチ・バスケットと、クーラーボックス。そして沢山の荷物の入った鞄をよいしょと抱えなおし、ロックがそれに追従していく。

 二人の心から楽しそうな姿を、のんびりと目に焼き付けながら。

 

 しかし……

 

 

………………………………………………………………………………………………

 

 

「あの幼児性愛者(ペドフィリア)野郎……!

 隠れて双子と会っていやがったのか……!」

 

 

 何やら少し離れた物陰で、〈ゴゴゴ……〉っと黒い瘴気を噴出しながらこちらを見ている人影。

 変装のつもりなのか、ベースボール・キャップに、同じくユニフォームのようなハーフパンツという、いつもと違う格好。

 遠くロアナプラからコソコソ後を追っかけてきたレヴィの姿が、そこにあった。

 

「ファック……! ロックのクソ野郎ッ……! ファック……!

 ペドなのはまだしも、片方はおもいっきり少年(ボーイ)じゃねぇかよオイ……!

 こんな人の多い野外でロリータ&ショタの双子丼かまそうなんざ、

 いったいどんなレベルの変態だよお前! 暴君ネロも椅子からひっくり返るぞ!

 グラウンド・ゼロ(爆心地)って感じだぜッ……!!」

 

「ねぇレヴィちゃん、何してるの? ロックさんの所に行かないの?」

 

「確かあいつの故郷(くに)じゃ昔、“シュードゥ”ってロリホモの文化が……。

 ノブナガ・オダとかいうちょんまげ野郎も、ロリホモファックしてたって話が……。

 っておい兄弟ッ! 頭ひっこめてろッ! あたしのケツを離れるんじゃねぇぞ!」

 

 アンパンマンを抱き寄せ、「シィ―!」っと唇に人差し指を当てる。そしてまたコソコソとロックの方を伺い、じぃ~っと様子を観察する。

 子供であるアンパンマンには、彼女が何をやっているのか微塵も理解出来ない。

 彼は善人ばかりが住む“夢の国”の出身なので、ストーキングなんて言葉は知らないのだ。

 

「……よっし、ようやく腰を落ち着けやがったな、あの変態共。

 よぉ兄弟、もう少し近い場所に陣取るぞ。音を立てずについてきな」

 

「ぼくはいいんだけど……レヴィちゃんお腹すいてないの?

 ロックさんたち、ごはんたべてるよ? いっしょにたべたらいいのに」

 

「ばっきゃろう! あんな連中の中に入ったら、

 こっちまで変態ファックの片棒担がされんだろうがッ!!

 んなファッキン・ワンダフルな経験、ムショの中でもした事ねぇよ!」

 

「へんたい? それってなんだろう?

 レヴィちゃんはたくさん言葉をしっててすごいな♪」

 

「へっ、ありがとよアンパンの兄弟。

 ……つかお前くらいだよ、そんな事言ってくれんのは……。染みるぜ……。

 とりあえずお前は、ぜったいあんな風になんじゃねぇぞ? 大人になってもな?

 あれはよくない見本(・・・・・・)。たとえブッダでも救えねぇ真正のクソ共だ。

 お前はあたしのケツだけ見てりゃ良い。そうすりゃ万々歳さ」

 

 その効果はともかくとして……レヴィの言葉は「真っすぐ育て」という意味だったのだろうが、アンパンマンはよく意味が分からなかったので、言われた通りにレヴィのお尻を眺める。

 これで良いのかな~って感じで、一生懸命お尻を見るアンパンマンだった。

 

「おっ、連中なんか食いだしやがったな。

 変態共が作った変態弁当を、変態がむさぼり食ってやがる。

 Yeah! スリーセブンだ。ここがベガスならジャック・ポットだぜ」

 

「レヴィちゃんもたべる? ぼくのアンパンをあげようか?」

 

「そら魅力的な提案だが、おめぇパンが欠けちまったら、いざって時ヤバいだろ?

 あたしは元々そんな食う方でもねぇんだ。気にすんな。

 それにマスター・ジャムのパンを食っちまったら、もう戻れなくなりそうでよ(・・・・・・・・・・・・)……」

 

 レヴィも売り子をやっているので、このパンを食った連中が“どうなったか”、それを嫌というほど知っている。

 これは別にドラックみたいな中毒性は無いけれど、もしかしたらそれよりヤバい(・・・・・・・)代物じゃないかと薄々思っているレヴィだ。

 他じゃともかく、この悪党共の掃き溜めみたいな街であるロアナプラでは――――

 

「……あっ! あんのエロガキ!! ロックに抱き着きやがったッ!!

 ――――おいアンパン! レミントン(狙撃銃)と弾を持ってこい!

 あのふざけたおててに風穴空けて、スプリンクラーみてぇにしてやる!」

 

「なにももってきてないよレヴィちゃん?

 今日はたくさんあるくから、あんまり荷物はいらないって」

 

「Fuck! そうだったぜクソがッ!!

 ここが海の上なら、魚雷でもぶち込んでやんのによぉッ!!

 ……おい兄弟、もっと近づくぞ! エマージェンシー(緊急事態)だ!!」

 

 

 そして物陰を出て、白々しく「~♪」と口笛を吹きながら歩きだすレヴィ。

 よく分からないながらもニコニコと楽しそうにしつつ、アンパンマンも後を追っていった。

 

 

……………………………………………

………………………………………………………………………………………………

 

 

「ほらお兄さん! フライドチキンよ!

 これ私が作ったのっ、食べさせてあげる♪」

 

「あっ、ずるいよ姉さま!

 これぼくが作ったツナのサンドイッチ! 食べてみてお兄さんっ♪」

 

 もう「きゃっきゃ☆」という声が聞こえてくる程に、楽しそうに騒ぐヘンゼルとグレーテル達。

 ロックにすりすりと頬ずりしながら、一生懸命に甘えている。とても微笑ましい光景だ。

 

「おいおい、いっぺんには入らないよ。

 ちゃんと順番に食べるから、落ち着いてくれ。

 ……でも本当に頑張って作ってくれたんだね。すごく豪華なお弁当だ。

 それにとても美味しいよ」

 

「ほんと!? 嬉しいわお兄さんっ。

 朝早く起きて、お兄さんの為にってがんばったの! ねっ、兄さま♪」

 

「うん! 今日のためにたくさん練習したよっ。

 お兄さんはどんな物が好きなんだろうって想像しながら! ねっ、姉さま♪」

 

「でも私の作ったフィッシュ・フライの方がおいしいわよね、お兄さん?」

 

「ぼくの作ったマッシュポテトの方がおいしいよね、お兄さん?」

 

「もう兄さま! 私のよっ! 私のだもん!」

 

「ぼくのだよ姉さま! お兄さんはぼくの方がすきだよ!」

 

「なによ兄さま! むぅー!」

 

「ぷぅー!」

 

 二人ともムキになって、ぎゅ~っとロックに抱き着いていく。

 まるでロックは自分のだとばかりに。強く抱き着いた方が勝ちなんだとばかりに。

 

「あはは、どちらも凄く美味しいさ。

 もう甲乙なんて付けられないくらいに。ありがとう、二人とも――――」

 

 ごしごしと胸元に顔を擦り付ける二人。その頭を優しく撫でてやる。心からの感謝の気持ちを込めて。

 

 ヘンゼルもグレーテルも「ん~♪」と頬を緩め、嬉しそうにしている。

 こうしてみると、もう本当の親子のようにしか見えない。それほどに仲睦まじい、幸せな光景。

 

 だが、しかし……。

 

 

「――――ほがッッ!!!!」

 

「あぁ、お兄さん!」

 

「お兄さーん!」

 

 

 突然この場に〈ゴスゥッ!!〉という音が響き、ロックが頭を押えて地面に蹲る。

 その傍らには先ほど飛んできたのであろう、“野球のボール”が転がっていた。

 

「あー、ソーリーソーリー! 大丈夫かぃ、そこのアットホーム・ダディ?

 いやぁ~駄目だぜぇ兄弟~♪ ちゃんと捕れる球で投げてくれねぇとぉ~♪」

 

「い……いえ」

 

 手にグローブをはめ、ベースボール・キャップを目深に被った女性(・・・・・・・・)が、ヘラヘラと笑いながらこちらに駆けてくる。

 そちらにボールを投げ返してやってから、ロックは再び頭を押えて座り込む。もうとんでもなく痛い。

 

「大丈夫お兄さん!? すごい音だったよ!?」

 

「まるでライド・シンバルみたいな音だったわ!?

 人間の身体から、こんなにも大きな音が鳴るなんて! わたし知らなかったわ!」

 

「興味深いね、姉さま!」

 

「えぇ、兄さま!」

 

「だ……大丈夫さ二人とも……。これでも痛みには強い方なんだ。

 だから興味を持たないでくれるかな……?」

 

 なんかワクワクと目を輝かせながら、興味深く観察する子供たち。新しい“お遊び”の方法でも思いついたのだろうか? ロックには知る由も無い。

 

「あ、“痛いの痛いの飛んでいけ”をしてあげる! お兄さんこっちを向いて?」

 

「なら私はキスしてあげる! それで痛みなんて飛んでいくでしょう?」

 

「あはは……ありがとう二人とも。でももう大丈……

 

「 ――――そぉぉぉぉいっっっ!! 」

 

 そうロックが二人を引きはがそうとした瞬間、再びこの場に〈ゴィィィン!!〉という音が鳴り、ロックは地面にひっくり返る。

 

「Oh! とんでもねぇワイルド・ピッチだぜぇ♪ まったくしょうがねぇなぁ~♪

 おっとぉ! 中東の大富豪みてぇにチャイルド・ハーレムを満喫中の旦那ぁ!

 毎度すまねぇなぁー!」

 

 もう「いやぁーゴメンゴメン!」みたいな満面の笑み(・・・・・)でこちらに駆けてくる、先ほどのベースボール・ガール。

 

「あんた野球に愛されてる(・・・・・・・・)なぁオイ!

 このボールがあんた恋しさに、すーぐそっちに飛んでっちまうんだ!!

 よぉボールこましの色男! チャイルド・ポルノの自主製作は諦めて、

 こっちでベース・ボールとしゃれこんでみちゃどうだ?

 ロリホモのガキだけじゃなく、白球をバットでファックしてみろよ!!

 これぞ健全な青春ってヤツだッ!!」

 

「……レヴィ」

 

 ここまでされたら、嫌でも理解する。

 こいつはレヴィ。ロアナプラの二丁拳銃(トゥー・ハンド)であり、あらゆる物(・・・・・)を壊す破壊神だ。

 幸福な時間や、その場の空気すらも。

 

「ワァオ! こりゃ今世紀最大の、とんだ言いがかりだぁ♪

 あたしのどこがレヴィって証拠だよ? ここが米国(ステイツ)なら訴えてるぜ?

 そいつはどこのマブ子ちゃんだぁオイ? あ~ん?

 会ってみてぇなぁそのスケとよぉ! こんなトコにいるわきゃねーけどなぁ!!」

 

「レヴィちゃーん。そっちになげちゃダメだよー。

 ぼくはこっちだよー」

 

「――――アンパンマンいるじゃないか! お前だろうレヴィ!!」

 

「あっ、ドブネズミのお姉さんだ! 帰れードブネズミー! こっち来るなー!」

 

「くっさいぞードブネズミー! 下水道に帰れー!

 このヒステリー! 生理不順-!」

 

「 るっせぇんだよ!! このエロガキ共がぁぁぁぁっっっっ!!!!

  いいからとっととかかって来いよ!! 永遠を生きさせてやるよ(・・・・・・・・・・・)ベイビーッ!!

  ファッキュメェェェェンッッ!! 」

 

 キャップを地面に叩きつけ、カトラスをぶんまわすレヴィ。

 

 

「やめろレヴィ!!

 ここはみんなの公園だ! ロアナプラの街じゃない!!」

 

「 関係ねぇんだよッ! この“ちっぱいペロペロ野郎”ッ!!

  てめぇにとっちゃ下の毛が生えたヤツぁ、もう女じゃねぇんだろうがよッ!!

  どうりでなぁ! 納得したよオイ!! そりゃ今まで何もねぇワケだ!!!!

  ――――おいペドロックのズリネタ共!! ピクニックは血風呂(ブラッド・バス)でのスイミングに変更だ!!

  お前らの墓に唾吐いてやっからよッ!! ハッハァー!! 」

 

「俺はちっぱい野郎じゃないし、お前はイカレてるよ(・・・・・・・・・)!!

 いいからカトラスをしまってくれレヴィ!! 頼むからっ!!!!」

 

 

 

 

 

…………………………………………

………………………………………………………………………………………………

 

 

 その後、公園でてっぽうを振り回しちゃったレヴィちゃんは、ロックさんと一緒にお巡りさんから逃げて行きました。

 

 ここぞという時に手を引いて、一緒に行ってくれるロックさんの優しさに、レヴィちゃんが顔を赤くしていたのが見えました。

 最近とても落ち込んでいたけれど、嬉しそうなレヴィちゃんが見られて、ほんとによかったです♪

 

 ぼくはヘンゼルくんとグレーテルちゃんと仲良しになり、たくさんお話をしました。

 

 ヘンゼルくん達は、あの後ふらっと公園にやってきたばいきんまんに、悪の矜持について(?)のお話をたくさん聞かせて貰って、とっても喜んでた。

 

「殺しもいいけれど、楽しさだけじゃなく大切な“芯”を心に持つべきだ。

 それでこそ本当の悪を名乗れる」

 

 ぼくには難しくてよく分からないけれど、ヘンゼルくんとグレーテルちゃんはとても感動したみたい♪

 夕方まで一緒に遊んでから、「またぼくたちとも遊ぼうね」って約束をして、バイバイしたよ。

 

 

 今日は新しい友達も出来たし、レヴィちゃんとのキャッチボールも楽しかった。

 

 またみんなと一緒に、ピクニックに行きたいな♪

 

 

 

 

 アンパンマン

 

 

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