短編にはなりますし、自分なりの形にはなりましたが、お愉しみ頂けたら幸いです♪
「はぁ……はぁ……! やっと見つけた……」
ここは茶色い草木が一面に生い茂る、広大なサバンナ。
360度見渡しても、ポツポツと辺りに生えている大きな木や、ちょっとした山以外は何もない大地が地平線までずっと続いている。
帽子が無ければきっと耐えられないくらい、照りつける強い日差し。
そんなサバンナの荒野を今、ひとりの少女が懸命に歩いていた。
なぜ自分はここにいるのか。ここはいったい何なのか――――そんな事も分からないままに。
「やった……水だ! これで水が飲めるよ……!」
そしてついに、長い時間をかけてここまでたどり着いた。
いま少女の目の前には、ちょっとしたプールほどもある大きさの池がある。
きっと飲んだらとんでもなく美味しいんだろうと思える、とても済んだ綺麗な水が、もう飲み切れない位にあったのだ。
「~っ! ~っ!! ……ぷっはぁー」
目を輝かせて池に駆け寄り、何度も何度も手で水を掬って、ゴクゴクと飲んでいく。
ここまで沢山歩いて来たし、お日様はカンカン照りだし、もう喉がカラカラだったのだ。
別に誰も盗りはしないし、急ぐ必要なんて無いのだけれど……少女はどこかコミカルな仕草で一生懸命に水を飲んでいく。
そして暫くすると「生き返った……」とばかりの顔で、ようやくその手を止めたのだった。
「大地の神様、ありがとうございます……。水の神様、ありがとうございます……。
かたじけない、かたじけない……!」
先ほどまでリアルに生命の危機にあったせいか、どことなく少女のキャラが崩壊している。
本来彼女はとても聡明で、冗談などいうタイプでは無いのだけれど……今はただただ神様のおぼしめしと、この幸運に感謝するばかりだ。
あぁ命って素晴らしい。生きてるってなんて素晴らしいんだろう。なむなむ。
「水筒があればよかったんだけど、なにか代わりになる物はないかな……?
このかばんに水を入れても、きっと漏れ出しちゃうよね……」
もう二度と、この渇きを味わいたくない。水を飲めない辛さも、干からびて死んじゃうのもゴメンだ。ぼくはボクサーでも生き仏でもないんだ。
少女は先ほどまでの脱水症状の後遺症か、未だにちょっとワケの分からない事を考えてしまいつつも、かばんの中をゴソゴソ。
竹でも筒でも空き瓶でも良いから、なにか水筒の代わりになるような物は落ちてないかなと、辺りをキョロキョロ見回してみる事とする。
「――――やぁこんにちは。はじめまして」
すると突然、少女の目に見知らぬ人物の姿が飛び込んでくる。
「とても喉が渇いていたんだね。
嬉しそうに水を飲む君を見ていると、何故か僕まで嬉しい気持ちになってくるよ」
少女は絶句し、硬直する。
いま池の中からヒョコッと顔だけを出し、そしてニコニコと柔らかい表情でこちらを見つめている、とてもキレイな人を前に。
「ザブザブ。ちょっと横を失礼するよっと……。
それじゃあ改めまして、こんにちは女の子さん♪ いい天気だね♪」
そして「あーよっこいしょ」とばかりに池から上がり、ニコニコと少女の横に腰かける。
目をひん剥き、ビックリしすぎてアワアワしている彼女の様子など微塵も気に掛ける事無く、気さくに話しかける。
「この水場は僕のお気に入りでね? よくここで水浴びをしているんだ。
こんな熱い日なんかは特にね。
あ、君も池に入ってみたらどうだい? とっても気持ちが良いよ♪」
「えっ……あっ、あの……」
なにやらものっすごいマイペースで、機嫌良さそうに語り掛けてくる謎の人。
突然「やあ」とばかりに水の中から現れた事や、そのほわほわした柔らかい雰囲気、それに加えて見た事も無いくらいの美しい容姿。
「えっと……“水の神様”ですか?」
「ん?」
少女は呆けた顔で、思わずそう訊ねる。
先ほどまで「なむなむ」と祈っていた事もあり、このお方はぼくの前に姿を現した、この池に住む水の神様なのではないかと。
なんと無しにではあるが、もう少女にも感じ取れるくらいの超常的な雰囲気も醸し出していらっしゃる事だし。
「あっ! 先ほどは水をお恵みくださり、ありがとうございましたっ!
ぼくもう喉がカラカラで、ホント死んじゃうかと思ってたんですっ! ありがとう神さまっ!」
「あはは。君が元気でいてくれて僕も嬉しい。本当に良かったよ♪
……でもごめんね。残念だけど、僕は神様ではないんだ」
まぁちょっと近い所はあったりするけれど……と小さな声で呟いた後、ニコニコと少女に向かい直る。
「僕はエルキドゥ。
………………。
………………………………。
暫しの間、この場を沈黙が包んだ。
「泥人形と言っても、なんか兵器だったりもするから、そこら辺は説明が難しいんだ。
だから普通に泥人形とか、真名のエルキドゥで呼んでくれたら嬉しいよ♪」
「…………」
先ほども呆けてはいたけれど、更に茫然としてグゥの音も出ない女の子。
短い言葉だったのに、その中は知らない単語やよく分からない言葉のオンパレード。理解が追い付かずに口をパクパクするばかりだ。
いま少女の目の前にいるのは、美しい緑色の長い髪に、清楚な印象のキレイな服を着た、中世的な雰囲気を持つ人物だ。
ニコニコと笑みを絶やさず、とても柔らかな雰囲気。そしてその気さくな物腰は、心から自分に興味を持って優しく語り掛けてくれている事が見て取れる物。
そして、これはなんとなくだけど……彼女の髪形やちょっとした服の装飾が、動物で言う所の“カバ”にどことなく似ている気がする。
「あ……あの、フレンズって……?」
「ん? 君は
僕達のように、ここ“サヴァリパーク”に住む動物の事を、こう言うのだけど」
少女は頬を引きつらせながらも、なんとか渾身の気合をもって声を絞り出す。
サファリでも、ましてやジャパリでも無く、
まるで無理やりサーヴァントという単語を掛け合わせたような聞き覚えの無い言葉に、少女の頭はぐわんぐわんシェイクされている。
「僕は泥人形であり、そしてカバという動物の
僕が水場を好み、とても力が強かったり、身体を自在に変化出来たりするように、ここサヴァリパークに住むフレンズ達は、それぞれが色々な
まるでカバが大きく口を開くように、エルキドゥが「ふぁ~」っとあくびをして見せる。
まぁ彼(彼女)のそれはすごく上品な仕草だったから、とてもカバとは似つかないけれど。
「けれど、どういう事だろう?
フレンズを知らないという事は……君は最近生まれた子なのかな?
もしからしたら、この前のサンドスターの噴火で生まれたのかもしれない」
「サンドスター……ですか?」
だいぶ落ち着いてきたのか、ようやく「?」という感じのキョトンとした表情の女の子。
さっきはビックリしたけれどエルキドゥは敵では無いし、なにより自分にとても優しく接してくれているのが分かるので、すでに少女の警戒心は解けていた。
今も口元に手を当てて「う~ん」と悩んでいる様子のエルキドゥを見て、とても綺麗だけど愛らしい人だなと、そんな印象を持つ。
ぶっちゃけた話、もう好感度MAXだ。
エルキドゥの持つ独特の柔らかい雰囲気が、少女の胸に謎の信頼感を生み出していた。
この人に着いて行けば間違いない(確信)
「心配いらないよ。
知らない事はこれから知っていけば良いし、分からない事は僕が教えてあげる。
僕も昔、何も分からなかった頃に……あの人から沢山の事を教えてもらったから。
だから任せて。君は僕が守る――――」
「エルキドゥさん……」
暖かな笑みと共に頭をヨシヨシと撫でられ、少女は感激したように小さく声を出す。
もしこれがコメディではなく恋愛小説だったら、間違いなく「ポッ…」とか「トゥンク…」みたいな音が鳴っている場面であろう。
まるで少女漫画の中から飛び出してきたかのような、中性的な雰囲気の麗人。そして強烈なほどに庇護欲をそそる、幼く儚げな少女――――
なにやら二人の背後に、沢山の薔薇の絵が見える。
だが……
「さて、なにはともあれ、まず君の名前の事だけど。これからどう呼べばい……
『 ――――ぬぅあーーにをしておるのだぁ!! 貴様ぁぁぁあああっっっっ!!!! 』
その時、大地を割る程のとんでもない大声が、この場に響いた。
「え゛っ……ええええエルキドゥーッ!!
おまおまお前ぇぇッ!! なぜ
「……ん、ギル?」
この場にある大きな木の上に立ち、もうワチャワチャしながらこちらを指さしている、金色の服を着た人。
たった今エルキドゥから“ギル”と呼ばれたそのお兄さんは、よく聞き取れない言葉を喚き散らしながら、スチャっと地面に降り立って見せた。
「おい雑種ッ!! いったい誰の許しを得て、我が無二の親友と話をしておるッ!!
何を顎をクイッとやられ、潤んだ瞳でエルキドゥを見つめておるのだッ!!
……よかろうッ! 貴様がエルキドゥのフレンズに相応しいかどうか、この我が直々に試してくれるわぁぁぁああああッッッッ!!!!」
「うわぁぁーー!!」
「わわっ! ギルっ?!」
彼の背後に無数の宝具が展開され、この場は幼子の鳴き声が木霊する、阿鼻叫喚の地獄と化す。
たまたま近くを歩いていたり、何気なく水を飲みに来ていたフレンズたちが、「やばいやばい」とこの場から逃げ去っていった。
………………………………
………………………………………………………………
「ごめんね女の子さん? 怪我は無い?」
やがて暫しの時が経ち、今この場には半泣きで木の陰に隠れる少女の姿、そして〈プスプス~〉っと身体から煙を上げて倒れているギルお兄さんと、その背中を「ふんぬっ!」と踏みつけるエルキドゥの姿がある。
「ふぅ、久しぶりに本気を出してしまったよ。
もうギルったら、無茶するんだから」
そんな事を言う割には、エルキドゥさんもメチャメチャしてたと思う。
天をも貫くほど巨大な槍にその身を変化させ、そして大地を粉砕せんばかりの一撃をギルお兄さんに見舞っていた。
ちなみに今この場は、少女の居るごく限られた一画を除いては、月でも落ちてきたかのような巨大なクレーターと化している。草木の一本も生えてない。
「ほら、もう心配ないよ♪ 大丈夫だから、こっちに出ておいで?」
「…………」
なにやら少女の脚が、ビーンと弾いたギターの弦くらい震えている気がする。
さっきまであんな潤んだ瞳でエルキドゥを見つめていたというのに、今はもう熊でも見るような目で彼(彼女)を見ている。
「ほらっ、ギルもあやまって! ちゃんとごめんなさいするっ!
でないと、もうギルとは遊んであげないよ!?」
「な゛っ?! ……すっ、すまぬ雑種! すまぬ! よきに許せ……!」
「……」
エルキドゥにゲシゲシと踏まれながら、お兄さんが地面に額を擦り付けて謝る。その姿はもう威厳もへったくれも無かった。
「ふむ、では改めて名乗ろう雑種よ。
我が真名はギルガメッシュ。かの名高き
「……」
さっきまでヘコヘコしていたのに、突然立ち上がってそんな「キリッ!」とされても、少女の彼に対する印象は覆らない。
だがギルガメッシュさんはそんな事も気にせず、今も「わっはっは!」と王様笑いをしている。きっとメンタルが超強いんだと思う。
「さて雑種よ、貴様は何の
見た所、さして特徴の無い容姿をしておるようだが……」
「ギル、この子は前の噴火の時に生まれたんだよ。
だからまだ、自分の事もよく分からないみたい」
「なぬっ?! そうなのか雑種ッ?!」
「は、はいっ! ぼく気が付いたらここに居て……なんにも分からなくて……」
女の子は申し訳なさそうに俯き、上目遣いでギルガメッシュを見つめる。
先ほどまではメチャメチャな事をしてたし、どこか俺様的な口調がちょっと怖かったりしたのだけど、今ギルガメッシュさんが心配そうな目でこちらを見つめ、そしてとても親身になってくれている事が分かる。
いつの間にか女の子には、このギルさんに対する警戒心も無くなっていた。
ちなみにギルさんの姿は、どことなく女の子に“サーバルキャット”という動物を思い起こさせた。
頭の上にあるピンと立ったネコ科の耳が、ギルさんの感情を表すかのようにしてヒョコヒョコと愛らしく動いている。
「どれどれ……ふむ、鳥類を示す翼も無し。ネコ科の特徴である大きな耳も無し。
貴様はいったい何の
顎に手を当てて「うむむ……」と唸るギルガメッシュ。
この我にも分からぬフレンズとは……奇怪な……。そう悩みながらもどことなく楽しんでいる様子が見て取れる。
「ごめんなさい、ギルガメッシュさん。
ぼく本当に、何も分からなくて……」
「良い、頭を上げよ。
先ほどのはちょっと……その、我もやりすぎた所あるし……?
我が友にもえらい勢いで怒られてしまったでな……。そうかしこまらずとも良いぞ?
幼子は幼子らしく、ただ王たる我のカッコいい姿を見て、無邪気に目を輝かせておれ」
「ふふっ♪」
うむうむと頷きながら女の子を慰めるギルの姿を、エルキドゥは嬉しそうに見つめる。
「そうだ、図書館に行くのはどうだろう?
この子が何のフレンズなのか、調べる事が出来ると思うんだ」
「えっ、ホントですかエルキドゥさんっ!」
「ほうっ! 名案だなエルキドゥよ!」
エルキドゥの提案に、女の子は嬉しそうな声を上げる。ギルガメッシュも「流石は我が友!」と満足気な顔だ。
「ならば我が、このエリアの出口まで案内してやろうぞ?
なぁに遠慮はいらん。良き暇つぶしだ。
たまには我が庭たる“さばんなちほー”を散歩して回るのも一興という物よ」
「僕も行くよ。さばんなちほーを出るまで……いや図書館まで一緒に行ってあげる。
道中は危険も多いだろうしね。
君を守る“兵器”として、僕を存分に使ってくれたら良いよ♪」
「ギルさん……エルキドゥさん……! ありがとうございますっ!」
そうして三人はエルキドゥの縄張りである水場を後にし、ここ“さばんなちほー”の出口であるエントランスを目指して歩き出す。
時にエルキドゥと「♪」と手を繋ぎながら、時に「がっはっは!」と笑うギルガメッシュに肩車をしてもらいながら、少女は頑張ってサバンナを歩いて行くのだった。
………………………………
………………………………………………………………
「ふむ、貴様はさして特徴の無い容姿をしておるが……。
しいて言うならば、その帽子や鞄が特徴的だな。ここいらで目にする事はまず無かろうて」
お日様はカンカン照りで、汗は滝のように流れはするものの、少女は頼りがいのある二人に見守られ、そして楽しい会話に元気をもらいながら進んでいく。
ギルやエルキドゥに聞く所によると、もうじきこのエリアの出口に辿り着くのだそうだ。
「なら君の事を“かばんちゃん”と呼んでも良いかな?
君が鞄を背負ってる姿はとても愛らしいし、とても似合ってると思うから」
「は、はいっ! ありがとうございますエルキドゥさんっ!
ぼくとっても嬉しいですっ!」
「うむ、貴様を表すに適した美しい言葉よ。さす友。
この雑種が何の動物なのか分かるまで、我もそう呼ぶ事としよう。
エルキドゥに名付けられ、我に名を呼ばれる名誉、ありがたく思うが良い」
「はいギルガメッシュさんっ。ありがとうっ!」
少女改めかばんちゃんを真ん中にして、三人仲良く手を繋ぐ。
たまに「それぇ~!」と高く持ち上げてやり、かばんちゃんが嬉しそうにキャッキャとはしゃぐのを、二人は自愛を称えた瞳で見守った。
「時にエルキドゥよ?
このかばんにクラスを割り当てるとしたなら、お前どのクラスだと思う?」
「ん、クラス? それって何だろう?」
「あぁ、僕ら
僕なら槍兵を表す“ランサー”、ギルなら弓兵を指す“アーチャー”といった具合にね♪」
「しかり。まぁエルキドゥは本物の槍を用いて戦うワケでも無ければ、我も弓を主に使うフレンズとは言えん。我らの戦い方は少々特殊であるゆえな……。
まぁ『一応そうなってます』『割り当てるとしたらそれです』くらいに思っておくが良いぞ?」
「はえぇ~。そうなんですかぁ」
かばんちゃんは興味深そうに話を聞く。
まだまだこの世界の事は何も知らないし、分からない事だらけだろう。けれど懸命に理解しようとするその姿勢に、ギルガメッシュはニッコリだ。
うむ、こやつには見どころがある。
「例えばだけど……そこの木の所にガゼルの
見えるかい、あの向こうの木の傍にいる子」
「はい、遠くに見えるあの木ですね。茶色い人がいるのが見えますっ」
「
かけっこが速かったり、かくれんぼが非常に得意なクラスなのだ」
「他にも向こうに見えるあのサイの子は、ヘラクレスという真名のバーサーカーの子だよ。
難しい事を考えるのは苦手で、怒ると手がつけられなくなるんだけど……、でもとても狩りごっこが強いクラスなんだよ♪」
「そうなんですか! いろんなクラスの人がいるんですねっ」
うんうんと頷き、楽しそうに目を輝かせているかばんちゃん。
「ふむ……かばんよ?
先ほど貴様は、落ちていた竹を使って、水筒のような物を作り出していたな?」
「あ、はい。また喉が渇いた時のために、水を持ち運び出来るようにと思って」
「道具を使う、そして道具を作り出す事……これはな? なかなか出来る事では無いのだ。
それに加え、貴様には旺盛な知識欲と、優れた理解力がある。
恐らくは、その高い知能が特徴となる動物なのやもしれん」
「すごいよかばんちゃん! 君はとても頭の良い
「えっ」
二人は嬉しそうにかばんちゃんを見つめ、ふむふむと納得したように頷いている。
かばんちゃんは褒められて喜ぶというより、どこかその言葉に対して自信なさげな様子だった。
「で、でもぼく……歩くのも走るのも遅いし、力も弱いです。
お二人みたいに戦う事も、ビームみたいなので天地を引き裂く事もできません……」
「……いや、それは我らだから~みたいなトコあるし、別に出来んでもしょうがない事ぞ?
かばんよ、我が言ってやる。貴様は貴様なりに、数多くの長所がある」
「そうだよ、君はこんなにも広いサバンナを歩ける体力があるし、なによりすごく頑張り屋さんだと思うんだ。
僕らは会って間もないけれど、こんなにも沢山かばんちゃんの良い所を見つける事が出来た。
これって凄い事だよ♪」
「……!」
暖かな微笑みと、そんな心からの賛辞に、思わずかばんは息を止めてしまう。真剣な顔で二人に向き合う。
「僕は君が好きだ。
その人柄も、愛らしさも、とても好ましいって思うんだよ。
だから君の事を、もっと知りたい――――僕と
「うむ。貴様ならば、我が民としてやる事もやぶさかでなし。
今日から我らのフレンズを名乗る事を許す。光栄に思うが良いぞ、かばんよ」
「エルキドゥさん……ギルガメッシュさん……」
胸に熱い物がこみ上げる。心に暖かな火が灯っていく。
この世界への恐怖、孤独、心細さ。そんな全てを跳ね飛ばすような勇気が、かばんちゃんの胸に湧いてくる。
だがそんな時――――突然この場に、誰かの悲鳴が響いた。
まるで、絹を引き裂くような。
「?! こ……これって!? エルキドゥさん……!」
「エントランスの方角からだね……。
もしかしたら、誰かが襲われているのかもしれない」
「ともあれ、行ってみるとしようぞ。
どうせ通らねばならん道よ」
エルキドゥがかばんちゃんを抱え上げ、勢いよく駆け出す。彼女は「わっ!」と驚いた声を出すが、エルキドゥを信頼するようにギュッとしがみつき、しっかり身を任せる。
「……ほう、セルリアンか」
三人は矢のような速度で現場に辿り着き、この場に居る“セルリアン”という巨大な生物と対面する。
先ほどの悲鳴の主は、もうすでに見当たらない。一見して争った様子や食べられた様子も無い事から、無事にこの場から逃げ去ってくれたのだろう。
「大きいね……こんなサイズのヤツは、滅多にいる物じゃないよ」
「あぁ。見つければその都度掃除をさせているゆえ、近頃はとんと見かける事が無かったが……まさかまだこのような大物が隠れ潜んでおったとはな」
青い身体に、大きなひとつ目。
まるでTVゲームでよく見るスライムをゾウのように大きくしたような生物が、いま三人の前に立ちはだかっている。
さばんなちほー唯一の出口である一本橋を、その巨体で塞ぐようにして。
まるで、決してかばんをこのエリアから逃がぬとでも言うかのように。
「え……エルキドゥさん……! ギルガメッシュさん……!」
「大丈夫、心配いらないよかばんちゃん。僕らが着いてる」
「あぁ、エルキドゥの言う通りだ。
我の庭たるさばんなちほーに、あのような醜悪な生物は必要ない。
焼き払ってくれようぞ」
今も我関せずというように、ふてぶてしくフワフワと宙に浮いている、得体のしれない化け物。それに怯えるかばんを安心させるように優しく撫でてやり、エルキドゥは彼女をそっと地面に下ろす。
「そう――――彼らは
僕の愛する人達に、害を成す存在だ――――」
「ゆえに彼奴等は、我らが最も忌み嫌う存在。
獣はいても、のけ者はいない――――だが彼奴はフレンズに非ずッ!!
……やるか、エルキドゥよ?」
「うん、やろうギルガメッシュ」
雄々しく並び立ち、エルキドゥとギルガメッシュの二人がセルリアンと向かい合う。
かばんちゃんの脳裏に、先ほど水場で見た
まるで神々の争いのような、戦いではなく天変地異のようなアレが、再び巻き起こるというのか。
先ほどは運よく生き残ったが、今度こそぼくは死んでしまうのかもしれない。地割れとか衝撃波とかビームとかに巻き込まれて死んじゃうのかもしれない。
エルキドゥはちゃんと「大丈夫だよ」と言ってくれてたが、もうその心配をせざるをえないかばんちゃんであった。
けれど……彼女の心配は、とても意外な形で裏切られる事となった。
『おぉ? なんだ
『なになに? 戦するの? どこどこ?』
『ホントに! やったぁ! 私もやりますねっ!』
エルキドゥとギルガメッシュが雄々しく化け物と対峙する中……ふと気が付けば、いつの間にかこの場にぞろぞろと集まって来た、大勢の
『おぉ、セルリアンではないか!
久しく見かけんかったが、これはまさに僥倖というものッ!!』
『いよっしゃあ! 久しぶりに俺の槍が唸るぜッ! 一番槍もらったぁ!!』
『ズルいですよランサー! 私も斬りたいです!』
『おっほっほ! これは滅多にない大物ね♪
大魔法ぶちかまして、バラバラにしてやりましょ♪』
今この場には、何やらお侍さんみたいな見た目の“大鷲のフレンズ”、赤い槍を操る“豹のフレンズ”、美しい装飾の大剣を握る“ライオンのフレンズ”、そしていくつもの魔法陣を宙に浮かべている“キツネのフレンズ”などなど……。
そんなさばんなちほーに住む
その数……もういっぱい! とても数えきれないッ!
『おっしゃあいくぜぇぇーー! ――――
『宝具に頼らぬ我が奥義を見よッ!! ――――秘剣・燕返しッ!!』
『さぁ出番です我が子よ! いざ天地を駆けろ! ――――
『刺すわよっ! 今日はいっぱい刺すわよッ!
『アイアーム……ザ ボーン オブ マイソゥ~ド……!』(巻き舌)
『エクスカリバー! エクスカリバー! もういっちょエクスカリバー!!』
『■■■――――!! ■■■■――――ッッ!!!!』
この場に〈ドゴーン! ドゴーン!〉みたいな音が絶え間なく響く。空を真っ赤に染め上げ、セルリアンを蹂躙する。
もう弱点の石とか、そんなの全然関係なく!!
「あーっ! ズルいぞ雑種共ッ! ちょっとぉー!!
エヌマエリシュ! エヌマエリシュ!!」
「僕も! 僕もやりたい! エヌマエリシュ! エヌマエリシュ!」
引き続き〈ドゴーン! ドゴーン!〉みたいな音が木霊する。
もう世界が7度どころか、生まれたり滅んだりが高速で繰り返されているような光景を、かばんちゃんはただボーっと見ていた。
もうセルリアンなんかいない――――とっくの昔に木端微塵になっている。
それでも
――――えっ、
――――――戦い好きすぎない?!
ぼくの知ってる
そんな事を強く思いながら、かばんちゃんはあと30分ほど、この光景を見守るのだった。
………………………………
………………………………………………………………
その頃……彼らから遠く離れた場所から、その戦いの惨状を見ていたフェネックとアライグマ達が、ボソリとつぶやいた。
「……ねぇ、何あれ? あのいっぱいの炎は何……?」
「わかんない……」
数キロは余裕で離れてはいるものの、
「ねぇ……アンタ帽子を取り返したいって言ってたよね……?
さっき追っかけるって、言ってたよね……?」
「……」
「死ぬよ? 私達きっと死ぬよ?
あんなのを追っかけてって、もしケンカにでもなったら、きっと死んじゃうよ?」
「……」
――――残念だけど、帽子は諦めよっかな!
――――まぁ犬のフレンズにでも噛まれたと思って、忘れよっかな!
小高い丘の上でフレンズ達の織り成す
☆スペシャルサンクス☆
項劉さま♪