「MAGIさん、あの……ぼくの話を聞いてくれますか?」
MELCHIOR・1――『承認』
BALTHASAR・2――『承認』
CASPER・3――『承認』
ネルフ本部の某所。ただいま碇さん家のシンジ君は、マヤさんに許可をもらいMAGIを使わせてもらっていた。
「ありがとうございますMAGIさん。最近ぼく……ずっと悩んでて……」
MELCHIOR・1――『大丈夫』
BALTHASAR・2――『貴方はとても頑張っている』
CASPER・3――『話してみて』
ちなみにマヤさんは、シンジにとても良くしてくれている優しい人だ。
たまに思いの丈が暴走してかシンジ君をワシャワシャこねくり回そうとしてくるが……、それにさえ目を瞑れば彼女は非常に信頼できる大人。シンジ君にとってすごく貴重な存在だ。
以前マヤさんにMAGIに相談してみる事を勧められ、そして今日も悩みを聞いてもらいに来たシンジ君である。
「ありがとうございます。じゃあさっそく相談させて下さいね。
……まずはえっと、なぜみんなは、ぼくをエヴァに乗せてくれないのかなって……」
MELCHIOR・1――『回答拒否』
BALTHASAR・2――『回答拒否』
CASPER・3――『黙秘権行使』
「えっ!?」
まさかの一発目からの回答拒否に、ちょっとビックリするシンジ君。
「な……なんで答えてくれないのMAGIさん! なんでイジワルするの?!」
MELCHIOR・1――『回答拒否』
BALTHASAR・2――『知らない方が良い事もある』
CASPER・3――『シンジ君かわいい』
MAGIはリツコさんの母親である赤木ナオコ博士によって開発されたシステム。
MELCHIORは“科学者としての自分“
BALTHASARを“母親としての自分“
CASPERが“女としての自分“の人格を元にして、それぞれ作られている。
「……し、知らない方が良いって……。
ぼくエヴァンゲリオンに乗りたいんですMAGIさん!」
MELCHIOR・1――『認識』
BALTHASAR・2――『認識』
CASPER・3――『認識済み』
「じゃあなんでぼく、エヴァに乗せてもらえないんですかっ!?」
MELCHIOR・1――『回答拒否』
BALTHASAR・2――『回答拒否』
CASPER・3――『シンジ君クソかわ』
「 な ん で で す か っ !! 」
シンジは久しぶりに「ガッデム!」という言葉を使ってみた。
さっきから“女である自分“CASPERさんがおかしな事になっているが、それにもめげずに質問をしていくシンジ君。
「……じ、じゃあいいです! 他の質問をします!
えっと……リツコさんにエヴァを作って貰いたいんですけど、
どうすればいいですか?」
MELCHIOR・1――『限りなく不可能に近い』
BALTHASAR・2――『あの子はそういうトコある』
CASPER・3――『条件次第で作ってもらえる』
「 !?!? 」
ここでまさかの“可能“を提示したCASPERさん。シンジ君は藁にも縋るような気持ちで回答の続きをせがむ。
「……な、何をしたらいいのCASPERさん! どうしたら作ってもらえるの?!」
CASPER・3――『あの子が望む物をあげればいい。等価交換で実現可能』
「望む物って……。ぼく中学生だからお金とか持ってないし……。
いったい何をあげたらいいのかな?」
リツコさんの望む物に心当たりが無いシンジ君。プラモデルくらいならば買えるかもしれないと思うが、そんな物でリツコさんが喜んでくれるとは、とても思えない。
一生懸命うんうんと考えてみるも、なかなか良案は浮かんでこなかった。
「……えっと、リツコさんが望む物って、何かありますか?」
MELCHIOR・1――『メガネっ子のシンジ君』
BALTHASAR・2――『ベビー服のシンジ君』
CASPER・3――『ネコ耳コスのシンジ君』
「 !?!? 」
MELCHIOR・1――『上目づかいでおねだり』
BALTHASAR・2――『一度ママと呼んであげて』
CASPER・3――『語尾に“にゃん“を付けて瞬殺』
「 !?!?!? 」
回答もそうだが、きいてもいないのに2つ目が表示された事に驚くシンジ君。
MELCHIOR・1――『彼女は頼って欲しがっている』
BALTHASAR・2――『リツコ、貴方の事好きすぎ』
CASPER・3――『我が子ながら、めんどくさい』
「まってまって! なんでそんなグイグイ!!」
もう〈ダダダダダーッ!!〉と回答を表示してくるMAGI。怒涛の勢いで文字が並んでいく。
「いったん止まってよ! 怖いったら!」
MELCHIOR・1――『了承』
BALTHASAR・2――『了承』
CASPER・3――『シンジ君ぷりちー』
「かわいくないよ! ぼくちゃんと男の子です!」
MELCHIOR・1――『それな』
BALTHASAR・2――『それな』
CASPER・3――『そういうトコだぞ』
「~~~ッッ!!」
ついに機械にまでイジられだしたシンジ君。「ムキャー!」と地団駄を踏んでみるけれど、その姿はかわいい事この上ない。
「……もういいよ! もういい! 質問を変えますから、ちゃんと答えて下さいね!
えっと……次はぼく、どんなロボットに乗せられちゃうと思う?」
半ばエヴァに乗れない事を諦めそうになりながら、それでもポジティブな気持ちを忘れないシンジ君。
次に乗るロボットさえ分かるのなら、心構えだけでもしておけるかもしれない。そんな健気で悲しい、とても良い子なのであった。
MELCHIOR・1――『テンドロビウム推薦』
BALTHASAR・2――『ライジンオー希望』
CASPER・3――『ノーベルガンダムに』
「えっと……テンドロビウムはなんか違うし、ライジンオーもひとりじゃ乗れないし、
ノーベルガン…………って、ノーベルガンダム!?!?」
ガンダムという響きに騙されそうになるが、ノーベルガンダムはバリバリの乙女型MSだ。アフロダイAの悪夢がよみがえる。ちなみにセーラームーンみたいな見た目のロボットなのだ!
「ぼく乗れないよきっと! 真面目に答えてよ!」
MELCHIOR・1――『ロボタック』
BALTHASAR・2――『先行者』
CASPER・3――『ダンボー』
「もっと乗れないよ! ダンボーにいたっては、もう“衣装“だよ!!」
MELCHIOR・1――『ビッグオー』
BALTHASAR・2――『ビッグオー』
CASPER・3――『ビッグオー』
「まさかのビッグオー押し!? それMAGIさんの趣味なの?!」
通らないであろう難易度の案を先に出し、それから満を持しての本命提示。そんな大人げないやり口を駆使してきたMAGI。ビッグオーだけにネゴシエイションしたのか。
しかし元々ビッグオーは大好きなシンジ君。だから不毛な争いの末だし、ビッグオーであれば「うん」と言うのもやぶさかではなかったのだが……。
しかしビッグオーという趣味の渋さに、なにやらどこか既視感を感じるシンジ君。
これはまるで……リツコさんがいつも作ってくるロボットの趣味のような……?
「…………あの、MAGIさん。……ちょっと聞きたい事があるんですけど」
MELCHIOR・1――『許可』
BALTHASAR・2――『了承』
CASPER・3――『どうしたの』
シンジ君は、震える手で文字を打っていく。
「いつもリツコさんが作ってくるロボットのチョイスに……。
もしかしてMAGIさん……、関わってたりしないよね……?」
MELCHIOR・1――『』
BALTHASAR・2――『』
CASPER・3――『』
「毎回ふたりでロボットを決めてるとか……そんな事ないよね……?」
なにやらマギからの応答時間が、やたらと遅くなっているような気がする。
カチコチカチと時計の音だけが、やけに大きく響く。
「そんな事ないよね……? MAGIさん……。
MAGIさんは……、ぼくの味方だもんね……?
いつもぼくに、やさしくしてくれたもんね……?」
つらい時とか、悲しい時とか。第三新東京市にやって来て以来、いつもシンジはMAGIに相談にのってもらっていたのだ。
いつも優しい言葉をかけてくれたのだ。「がんばれ」と、背中を押してくれたのだ。
「嘘だよね……? MAGIさん……。ぼくら、友達だもんね……?
MAGIさんは、ぼくをいぢめたりなんか……しないよね……?」
MELCHIOR・1――『』
BALTHASAR・2――『』
CASPER・3――『』
「…………………MAGI、さん……?」
………………………………………………
MELCHIOR・1――『シンジ君かわいい』
BALTHASAR・2――『シンジ君かわいい』
CASPER・3――『シンジ君かわいい』
「 うわぁぁぁぁああああーーーーッッ!!!! 」
おもいっきり後ろにひっくり返ったシンジ君。
それ以降、MAGIは何を言っても『シンジ君かわいい』としか回答しなくなる。
「 なんでだよMAGIさん! エヴァに乗せてよ!!
ぼくはエヴァンゲリオン初号機パイロット、碇シンジです!! 」
この後、「答えてよMAGIさん! こたえてよ!」『シンジ君かわいい』と、そんなやり取りが10分ばかり続く。
泣きながら機械をユサユサと揺らす、シンジ君であった。
………………………………………………
後日、来日してくるアスカを迎えに行ったシンジ達。
国連の空母までヘリに乗って迎えに行き、無事に念願だったアスカとの出会いを果たす。
綾波を真ん中にして三人で手を繋ぎ、仲良く『ルンルン♪』と散歩するシンジ達。
しかし、突然この艦隊のもとに使徒ガギエルが来襲。なんと三人一緒にエヴァ二号機へと乗り込み、使徒を迎え撃つ事になる。
「アンタ達! アタシの戦いをよ~く見てなさいっ!
だっしゃぁぁーーーオラァァーーーッッ!!!!」
――――殴るわ、蹴るわ、引っ掻くわ。
――――――アスカの操る二号機が使徒を圧倒。可哀想なくらいボッコボコにする。
挙句の果てにバタフライで泳ぎだし、バサロ泳法で潜水までする二号機。泳ぐ速度でさえも、完全にガギエルを上回っているんじゃないかと思わる。
(やっぱりアスカって凄いや。
………というか、エヴァに乗れるって……こんなにも凄い事だったんだな……)
アスカの敢闘を称えつつ、どこか死んだ目で虚空を見つめるシンジ君。初めて飲んだLCLは、何故か涙の味がした。
その時ネルフ本部に回線が繋がり、シンジのもとへリツコさんからの通信が入る。
『――――大丈夫シンジ君? 今そちらに、ビッグオーを向かわせたわ』
「 エヴァ作ってよ! エヴァがいいんだよぼく!! 」
帰国後、真っ先に雑貨屋さんへと出掛けて行ったシンジ君。
メガネやネコミミを購入するかどうか、本気で考えるのであった。
――――次回、第七使徒イスラフェルとの戦闘に挑むシンジ君たち。
原作通りに散々アスカとのシンクロ訓練をやらされた挙句……、当日用意されたロボットはエヴァ二号機と、ビッグオー。
『シンクロ出来るかぁ!!』みたいな話を書こうと思ってたヨ。