「では記念すべき、本日最初のテーマは……」
ソフィーがなにやらカラフルな模様をした箱に手をつっこみ、ガサゴソする。
「じゃん! これだぁぁーーー!
“作品のテーマと、書いたきっかけ”ついて!!」
そして勢いよく手を引っこ抜き、即座に内容を確認! 大きな声で発表!
普段の人見知りをかなぐり捨てたはっちゃけた姿に、一同は大きな賞賛を贈る。
「ごほんっ……! では先に解説をしておくと……。
作者のこれまでに書き上げた作品タイトルの数は、大小あわせて40作以上。
話数の合計で言えば、250以上となる。
短い物で約2千文字、長い物ならば【涼宮ハルヒの慟哭】の約10万文字が最大となるな」
「自分が出てる物とはいえ、よく考えたらもう狂ってるわよね……。
少しづつ乗せるんじゃなく、全一話で10万文字でしょう? ラノベ一冊分じゃない。
ホントに読ませる気あるのかしら?」
ハルヒが眉間に皺を寄せる。自身が主演を務めはしたがぶっちゃけた話、自分ならこれは絶対に読まないという類の作品だった。
だって読むのしんどいじゃない。ちゃんと小分けにしてよと。
「連載物も多く書いているが、その中で一番話数が多いのが【ガンランスの話を~】の23話だ。
数多くのタイトルを書いている印象だが、長期連載と言える程の物は書いていないな」
「いっぱい設定やネタを思いついて、それを次々と作品化してる感じだね。
逆に“ひとつの作品を長く続ける”という事は苦手なんだと思う。
同じ設定で書き続けてると、だんだんアイディアが枯渇してくタイプなんだろうね」
「うむ、基本的に作者は“原作の流れを無視して書く”事が多いからな。
元々下敷きとしてある原作のストーリーを使わず、その場その場で思いついたバカ話を書き連ねていくスタイルだから、話が長く続かないんだよ……」
シンジくんの補足に、ソフィーが困り顔で答える。
「まぁこれは“黒歴史”の類なのだが……実は処女作である【身体はパンで~】には、元々30話を超える話数が投稿されていたのだ。
しかし後々に“ホロウアタラクシア編”にあたる部分が、丸々削除されてな……」
「えっ、マジかよ!? なんで削除なんてもったいない事すんだ?!」
「うん……端的に言って“ギブアップ”だよ……。
さっき話した通り、あの作品は純然たるアドリブで書かれた物だったんだ。
だから序盤の方はともかく、最終的にもうにっちもさっちもいかなくなり、物語が空中分解してしまうという事態に陥ったんだよ。
これは当時の作者本人が読んでみても小説の体を成していないと、もうメチャクチャなあり様でな……。
だから断腸の想いではあるが、比較的マシな“第一部”だけを残し、後半を全て削除という事態になったのだ……」
「……」
おどろいた声を上げるふじお、そして苦い声で語るソフィー。
当事者であるアンパンマンはもう、言葉も無い。
「ちなみにこの“書いた物を削除する”という経験は、現在までの二次創作ライフの歴史で、過去に2度ほどあるんだ。
ひとつめはこの処女作の後半部分、もうひとつはタイトルは伏せるが、同じFateの二次小説だったよ。
こちらの方は部分的にではなく、なんと“作品その物を削除”となっている。
今も思い出す度にズキリと胸が痛む、そんな苦い思い出だよ」
見切り発車をし、どうしても続きが思いつかなくなる。そしてウンウンと悩む内に、ついにはその作品への情熱を失ってしまう。
これは原作の設定をお借りして、原作の名の下に二次小説を書かせて頂いている者にとって、一番やってはいけない事であり、一番の屈辱でもある。
手塩にかけて育てた“我が子”ともいえる自作品の未来を、自らの手で閉ざした。この経験と記憶は今も作者の胸に残っており、時折痛みとなって胸を焦がしている。
この経験を機に作者は「一度書くと決めたらば、その作品は絶対に完結まで書き切る」という鉄の誓いを立てた。
ほかの作者様の事情は知らないが、少なくとも自分は絶対にそうあろうと決めた。
それが自分にとっての、原作に対する愛であり、二次小説を書かせて頂く者としての“最低限の礼儀”である。
「まぁ中には“最初から短編として書く”と決めている一発ネタも多いが、基本的にはあれから書いた全ての作品を、必死で完結まで書き上げて来たよ。
別に人気作じゃないし、決して誇れるような作品じゃないけれど……それでもしっかり完結させる事で原作愛を、そして原作に“礼を示す”事だけはやってきたつもりだ。
それが私にとっての通すべき筋であり、また誇りでもあるのだ」
そう作者の分身たる“オリ主”ソフィーは語る。
余談にはなるが、今後は作者の自分語りをする場合、こういう形でソフィーに話して貰うようにするので、脳内変換よろしくお願いします。
ソフィーの言葉は、私の言葉です(キッパリ)
「では基本的な説明はこれくらいにして、話を元に戻そう。
今回の議題は“作品テーマと、書く動機”についてだ。
とりあえず処女作の主演であるアンパンマン、君から頼めるだろうか?」
「はい、わかりましたソフィーさん♪」
オレンジジュースを机に置き、アンパンマンがみんなに向き直った。
「えっと、まず【身体はパンで~】についてだけど……、これは何度か言った通り、初めて書いた小説になるんだ。
だから作品のテーマとしては、“とにかく書きやすい物”。
初めて小説を書くにあたって、自分にとって一番書きやすいと思った物を、単純にクロスオーバーさせた感じだったよ♪
それが自分にとって、昔ハマっていたFateというゲームと、昔から大好きだったそれいけアンパンマンだったんだ。
これに関しては、たとえ設定を調べ直さなくても、全部頭の中に入っている自信があった。
だから今すぐにでも書けると思ったんだよ♪」
「うん、確か当時は“二日間も寝ていなくてテンションが変だった”って言ってたもんね。
そんな状況で小説が書けるのか? という実験が、ここハーメルンで投稿を始めたきっかけになったんだよね?
まぁそのきっかけの良し悪しはともかく……、自分にとって一番親しみのある作品で書くのは、間違ってないと思うよ」
「うん。だから実の所、
それで結果的に、アンパンマンが聖杯戦争に参加するっていう、ワケの分からない設定になってるんだよ……。
本人はごく自然に決めたみたいなんだれど、よく考えたらこれ、ちょっと変なアイディアだよね。
あえて言うなら『アンパンマンがマウントパンチで人をドゴドゴ殴ったら面白そうだと思った』って理由はあるみたいなんだけど……」
「「「…………」」」
みほの意見を受けて、アンパンマンがそう補足する。
まぁなんかツッコミ所は沢山あるものの、これはろくに寝てないテンションの人間が考えた発想なのである。バカ正直に意見を言うのもめんどくさい。
「あと【アンパンマンと〇〇ちゃんシリーズ】に関しては、純粋に“アンパンマンとロアナプラの住人を絡ませたら面白そう”というアイディアが、書くキッカケだよ♪
悪の巣窟であるロアナプラを、正義のヒーローであるぼくが、なんやかんやする事。
そしてブラックラグーンの人達との交流や、ちょっとしたレヴィちゃんのラブコメなんかが作品のテーマかな?
ほとんど一発ネタだったし、原作自体が未完結の作品だから、4話のみの短編なんだ」
「あれ意外と反響が大きかったわよね……。
別に読んでる人は多く無いんだけど、でもなんかやたらと好いてくれてる人達がいて……。
今でこそ短編集に移してるけど、単体として連載してた当時は、沢山コメントを貰えた印象があるわ」
「うん、ブラックラグーンってそこまで二次創作されてないし、きっと嬉しかったんだと思う。
コアなブラクラのファンの人達の『よくぞ書いてくれた!』っていう気持ちをヒシヒシと感じたよ? ぼくもブラクラの二次小説があったら絶対に読むもの。
あとは……きっと設定が変わってて面白かったんじゃないかな?
ぼくはキッズアニメのキャラクターだし、すごくファタジーな見た目だもの。
本当はありえないクロスオーバーだからね」
ハルヒがうんうんと頷く中、次にセイバーが語り始める。
「処女作に関してはアンパンマンと同様ですので、私は次の作品である【あなたトトロって~】と【一か月一万円】について語りましょう。
トトロの作品テーマは“ほのぼの”、そして“Fateのキャラクター達によるジブリ談義”となります」
余ったピザとお茶漬けを一緒に食べるという暴挙。食文化への挑戦。それを同時にこなしながらセイバーが語る。
「当時の作者にとって“Fateで二次小説を書く”というのは、とても自然な動機でした。
そして処女作を完結させ、次に何を書こうかと悩んだ時に、ふと浮かんだのがジブリというテーマだったようです」
「今でこそハーメルンには沢山のジブリ二次小説があるけれど、これを書こうと決めた当時は、ほとんど無かったんだよ。
それをどこか不思議に思いつつも、ならば自分で書こうと思ったのがキッカケだな。
それに“友人達とのジブリ談義”のは、私の学生時代の大切な思い出であり、ある種のアイデンティティでもある。
それを作品に出来て、当時はとても嬉しかった思い出があるよ」
ソフィーもうんうんと頷く。
しつこいようであるが、ソフィーにはオリ主という事で、まるで自分の事のように当時を語って貰っている。どうか理解して頂きたい。
「そしてそれから一年ほどの時を経て、久方ぶりに書いたFateの二次小説の連載が、この一か月一万円になります。
書くキッカケも、作品のテーマも、言わずと知れた某企画“一か月一万円生活”です。
ただただこれを書きたかったが為に、作者的に書きやすいキャラである私が引っ張り出されたと言っても過言ではありません」
「Fateというよりも、ただ純粋に一か月一万円がやりたかったんだね。
という事は……別にセイバーさんじゃなくても良かった、って事なのかい?」
「然り、その通りですまる子。
実は一番最初、構想の段階では“もののけ姫のアシタカ”に一か月一万円をやらせるという予定だったそうです」
「?!?!」
「うむ、みんなが驚くのも無理は無い……。
昔の人物であり、現代日本の生活など微塵も分からないアシタカ彦が、四苦八苦しながら一か月一万円生活に挑戦する。
……確かに言葉にしてみると、奇抜なアイディアながら結構いけそうな気がするのだが。
しかしそもそも、このアイディアで書く技量が
もうどんな設定をこじつけて、アシタカ彦を現代日本にひっぱってくるのか?
そして一体どんな理由があって、アシタカ彦が一か月一万円の企画をやるハメになるのか?
そんなモン、私の頭では思いつかん。無理だ無理だ!
だから最終的にセイバーに任せたというのが事のあらましなんだが……これは結果的に成功だったと今は確信しているよ。
オリキャラになるが、相棒のランスロット(雌鶏)も書けたしな。
あの子は可愛いし、すごく気に入っている子なんだ」
もしオリキャラ部門で好きなキャラをあげろと言われたら、もう間違いなくランスロット(雌鶏)を挙げる。自身もオリキャラであるにも関わらず、もうふんすふんすと鼻息を荒くするソフィーだ。
「加えてもうひとつの作品テーマとして“成長と親愛”があります。
この生活の中で、時に苦労しながら、時に涙しながらも成長していく私。
そして私とランスロット(雌鶏)の絆や信頼を描けていたならば、この作品は成功と言えると思います。
……実のところ、作品内で私はマヌケな失敗ばかりしていて、内容としては純然たるお馬鹿コメディだったりもするのですが……それでも!
それでもどうか親愛を感じ取って頂けたらば! 読んでいて暖かい気持ちになって頂けたらと! そう願わずにはいられないのですっ!」
「登場作品が全てコメディなせいもあるが……なにやらセイバー殿は、不遇な立ち位置にある事が多いような気がするな。
私は大好きなキャラだし、だからこそ沢山登場して貰っているワケなのだが……いつも本当にすまないと思っているよ……。
どうか気を悪くしないでおくれ……」
ソフィーに慰められながらも話を終え、セイバーがフライドポテトの処理に取り掛かる。
もし料理を食べ残しちゃう事があっても、彼女さえいれば何の心配もいらないと思える頼もしさであった。
そして少しだけ間を置いて、次はハルヒへとバトンがまわった。
「よーし! あたしの出番ね!
あたしがやったのはまず【ドキュメンタル】、そしてその後で【スゥイートホーム】のヤツね!
きっかけは単純で、純粋にこの両作品が好きだったからよ! これを題材に書いてみたくて、なんかやりやすそうだったあたし達SOS団でやりましたーっていうのがホントの所みたいよ?」
「最近でこそ涼宮ハルヒシリーズには、もう十数年ぶりとなる最新刊が出ましたが……これを書いていた当時はそんな面影すらありませんでしたよね?
言っては何なのですが、なぜSOS団のメンバーでやろうと思われたのでしょうか?」
「さぁ? きっと書きたかったからじゃない?
元々あたしたちって、すごく二次創作が盛んな作品だったし、以前からそれを沢山読んでいたんでしょう。
だから時代とかじゃなく、ごく自然に『自分に馴染みの深い作品で』という想いがあったんじゃないかしら?」
セイバーの疑問に答えながら、「じゅごごっ!」っとパフェの残りを飲み干す。あれだけあった巨大なパフェは、すでにその姿を消してしまっていた。
「テーマとしては、ドキュメンタルの方が“笑いについて書く事”。ちょっとした哲学よね!
これはコメディを書いてる者として、そして関西人として避けて通れないテーマだわ!
対してスゥイートホームの方だけど、これはもう“実験”の意味合いが強い作品よね……。
なんか章分けもせずにドーンと10万文字を投稿してるし、しかも本人が読んだこともないホラー小説だし……。
まぁ純粋にスゥイートホームという映画が、本人にとって思い出の作品だったって事じゃない?
あとは……内緒だけど“あるキッカケ”があって書く事を決めたみたいよ?
とにかく長い小説を書く! そしてある人に読んで貰いたい! ……そんな物凄く押しつけがましい想いから生まれた作品なのよ……」
「?」
深くは語らず、ハルヒは「あー終わった終わった!」とばかりに座り込んでしまった。
とりあえず仕方ないので、ソフィーは次の順番であるシンジくんに出番を告げる。
「はい。えっと……ぼくが出ているのは【新世紀だけど】と【子ぎつねヘレン】なんですけど、新世紀の方に限ってはもう“純然たる思い付き”です……。
エヴァじゃなく変なロボットに乗せて、ぼくが困っている所を書きたい……えーんと泣いているぼくが見たい……そんな悪趣味な動機で書かれたのが、あの作品なんです」
「……」
「案の定いっぱつネタですし、オマケを合わせても4話しかありません……。
ただただぼくが困ってる所をいっぱい書き、まるでそれに『ほっこり♪』と満足したかのように、すっぱりと完結しています。
えっと……あれっていったい何だったんですかソフィーさん?
ぼくエヴァに乗せて貰えなくて、すごく悲しかったんですケド……。
しかも大人たちは、ぜんぜん頼りにならないし……」
「……すまない、これに関してはノーコメントとさせて頂く。(シンジくん可愛い)
引き続き、子ぎつねヘレンについての話を、よろしく頼む」
「あ、はい。
えっと……子ぎつねヘレンについては、純粋に原作小説や映画が好きだった事が動機ですね。
それに主人公として綾波を合わせてみたら面白いんじゃないかって、そんな発想だったんです。
綾波って物静かだけど、実は凄く優しいし。彼女だからこそヘレンにしてあげられる事っていうのが、きっとあるんじゃないかって、そう思ったんです。
テーマとしては“動物倫理について書く事”、そしてこれは副次的な物ですけれど、どうにもならない死という“ハッピーエンドにならない物語”への挑戦でもあったみたいです」
「……うん、ぼく原作の映画を観た事があるんだけど……もうボロボロ泣いちゃったもん。
ヘレンという動物と、主人公の男の子の触れ合いを通して、沢山の事を考えさせられる内容の、すごく良い映画だったと思うよ」
「うん、ぼくが言うのはおかしいですけれど、ありがとうガチャピンさん。
他にも“映画”を題材に書いた物には、ハルヒさんのヤツとか、メディアさんのロッキーのヤツとかもありますけど、この子ぎつねヘレンは特に思入れがあるそうです。
書くのに苦労してた分、きっと思入れも深いんじゃないかな?」
そう締めくくり、シンジくんがみほにバトンを渡す。
軽く飲み物を口に含み、一度大きく深呼吸をしてから、みほが自作品について語り始めた。
「はい、じゃあはじめますね。
私が出ているのは【とても嫌なチーム名で、ガールズ&パンツァー。】なんですけど、これについてはもう動機とかはありません!
純粋に“アホな小説を書こう”という、そんな想いしか無いんです!」
「「「!!!???」」」
「ただいつものように、アホな小説を! そんなある意味で真っ当な気持ちから書き上げた物なんです! 大層な理由なんか何もありませんっ!
でもあえて言うなら……“リクエストを元に書く”というテーマはあったかもしれません。
この変なチーム名っていうのは、その半分くらいがハーメルンにいらっしゃる読者の方々から頂いたアイディアの物なんです。
そういった試みはあったかな?」
口元に指をあてて「うーん」と唸る西住さん。他の面子はただただ彼女の話に耳を傾けている。
まぁあまりにもはっちゃけた告白に、若干度肝を抜かれているのだろう。
「あの“チーム名募集”は新しい試みだったし、沢山の方々がアイディアを下さって、凄く嬉しかったという想いでがありますよ♪
本当の意味で『私はみなさんに支えられて書いているんだなぁ』と思えましたし、とっても大切な思い出なんです♪
でもこの作品自体は、純粋なバカ小説なんです! それ以外の何物でもありません!
第一話は全部で約5千文字しかないのに、その中の約3千文字もかけて、“ベトナム帰還兵”についての説明を延々としたんです!
これを投稿した当時、まるで当然のように、一番最初にもらったのが0点評価だったんです!
しかもこの作品は、書いている内容が酷すぎて変な人にいっぱい粘着されたんです!
バカバカ作戦なんです!」
「うん、分かったよみほ……。
きっと君にも沢山思う所があるんだと思う……もう良いから……。
では引き続きハイジ、お願い出来るだろうか?」
「うん、わかったわ!」
ここハーメルンにおいてかなりの人気である、ガルパンの主人公。そんな彼女には自作品について色々と言いたい事もあるのだと思う。
そしてソフィーの指示のもと、ハイジが食事の手を止めて話し始めた。
関係ないけれど、口元がミートソースでベッタベタだ。さっきまでスパゲティを食べていたのだろう。
「あたしは【あまりに立とうとしないクララ】に出てるんだけど、この作品を書いたきっかけは、たまたま久しぶりに“赤毛のアン”のアニメを観たからだったと思うわ!
そこからもう、ぐぅあ~っとアイディアが出てきたんですって!」
「ん、アルプスの少女ハイジじゃないのか? アンを見てたのかよ?」
「うるさいふじお! 捻り潰すわよ! この資本主義者め!!
ちゃんと後でアルプスの少女ハイジも観直したんだから、それでいいでしょ!?
とにかくきっかけはそれよ。
世界名作劇場で馬鹿コメディをやったら面白いだろうな~っていうのと、なんか調べてみたら、ここハーメルンでは誰も世界名作劇場で二次を書いていないっていうのが、すごく悔しかったらしいわ!」
「時代を感じるな……。
今の世代で、リアルに世界名作劇場に触れた事のある子は、極少数派だろう。
仕方ない事とはいえ、あれだけの名作を誰も書いていないというのは、義憤に燃えてしまうのも仕方ないよ」
「そうよソフィーさん! そんな素晴らしい動機なの!
誰もやらないなら、自分でやらなきゃ! 私が書かなきゃ!
そんな“ファンとしての気持ち”から、この作品は生まれたのよっ!
まさに原作愛! 二次小説投稿者の鏡と言えるわ!」
「やめろ、自分で言うな。恥ずかしい恥ずかしい」
「まぁとにかく、純粋に“やらなきゃ!”と思ったのが理由。
短編集だし、テーマとかは特に無いんだけど……あえて言うなら“世界名作劇場で書く”という挑戦かしら?
この題材で二次小説を書く、それ自体がテーマであり、目的だったと言えるわ!
……なんか自分のTOPページの作品一覧に“世界名作劇場”があるのって、すごく素敵な感じしない?
ただそれがやりたかっただけなのよ! ぶっちゃけ!」
「なにやら小説を書く目的が迷走している気がするんだが……まぁ君がそう言うのならそうなのだろう。良いと思う私は……」
なんか突っ込むのも野暮な感じがしたし、あまりにキラキラした目で馬鹿を言われる物だから、もう諦める事とする。
ソフィーはハイジを窘めつつ、次の順番であるまる子に声を掛けた。
「ん、あたしかい?
あたしが出てるのは【まる子、戦争に行く】で、書いた動機はなんだったかねぇ~?
多分だけど……“怒り”とかだったんじゃないかねぇ?」
「?」
キョトンとした顔の一同。対してまる子は飄々と当時の思い出を語る。
「あぁ、当時のあたしは、第二次世界大戦のフィリピンについて書かれた本を読んでね?
それ読んで、
その感情のままに、もう思い切って書いた感じだよ」
「腹が立った……? えっとまる子、それはどういう……?」
「あぁ、ぶっちゃけその本って、自分は戦争に行きもしなかった兵役不適合者のクソ野郎が、実際にフィリピンで戦って下さった方々を、もうケチョンケチョンにコケ下ろしてる本でね?
まるで戦わなかった自分こそが平和主義者なんだとばかりに『日本人は最悪な事をした! こんなにも酷い事を! だから反省しなくてはならない!』って書いてる、腐った本だったのさ。
そうやって私達のおじいちゃん達をひたすらにおとしめて、むりやり読んだ人たちに“戦争反対”って言わせる。その為に書かれた本だったの。
それ読んであたしゃ……もう頭に血がのぼってね? てっぺん来ちゃったのさ」
もぐもぐと軟骨唐揚げを頬張りながら、胸糞悪そうな顔でまる子が語る。
アレを書いたきっかけば怒りの感情、そして“アンチテーゼ”であると。
「勉強したよぉ~。
あたしゃ何冊も本読んで、何日もかけて映像漁ったよぉ~。
もう当時のあたしゃ、ちょっとした“フィリピン博士”だったよ?
意地でもこのクソ野郎が書いた本に、抵抗してやろうってさ」
「……」
「本にペッってツバ吐くのは簡単だよ? ゴミ箱に捨てたり、燃やすのは簡単だよ?
でも“違うんだ”っていうこの気持ちを、“あんたの言う事は間違ってる”っていうこの気持ちを、あたし自分なりにでも作品で表現しようと思ってさ?
……当時はもう、近年まれに見る位の勢いでがんばったよぉ~。
たった全6話の作品なのに、書いてる時ストレスで胃を壊したよぉ~。
医者にもかかったし、もう痛くて痛くて眠れなかったもん」
どこを見るでもなく、ただもぐもぐと唐揚げを頬張りながら、まる子は言葉を続けていく。
「でもね……? 結局の所はどうだったかな?
あたしがアレを書いた目的って、きっとぜんぜん叶ってないと思うよ?」
「だってね? 小説ってまるで神様みたいに、ぜんぶ作者の好きなように書けるじゃん?
もし自分の思ってる事、自分の考えを物語にして書いちゃったら、それって“作者の意見の押しつけ”になっちゃうでしょう?
それやったら、あたしあの本を書いたクソ野郎と、
小学校で子供に原爆の映画を観せて反戦教育してる大人たちと、おんなじになっちゃうじゃん」
「……だからあたしが書いたのって、“純粋な物語”なんだよ。
ただただ現地で実際にあった事をもとに物語を書いて、それにちょっとしたストーリーや心理描写とかを入れてるだけなの。
戦争が悪いとも良いとも書いて無いし、日本人が悪いとも、フィリピン人が悪いとも書いてない。
少なくとも、どこにも肩入れしないように、あの戦場の“ありのまま”を書いてる。
ただただ純粋な“兵士の物語”でしか無いんだよ、あれって。
何かを訴えるとか、読んだ人の意識を変えるとか……そういった類の物じゃないもん」
ぐいっとアセロラドリンクを飲みほして、ターンと机の上に置く。
「そういう意味では結局、あたしの動機って、意味のない物だったのかもしれない。
あえて言うなら“この感情の排泄”、そして作品のテーマが“意見の押しつけじゃなくて物語をかく事”だったもん。
そういう意味で言えば、これって本当に自己満足でしかなかったと思う。
まぁ二次小説って愛で書くモノだし、自己満足が出来るならそれで上等なんだけどさ」
みんなはただ黙ってまる子の言葉を聞いている。……そんな中でソフィーが、静かにその口を開いた。
「確かにキツかったな……あれを書くのも、そして誰かに読ませる事も。
けど私は、あれを頑張って書いた事に、ひとつも後悔はしてないよ。
……ツライ想いをしたし、たくさん批判も貰った。
でも頑張って書いたし、なにより“最後までアレを書き切れた”って事を、今でも誇りに思っているんだ。
決して立派な作品じゃないし、正しい動機でもなかったかもしれない。けれどアレを投げずに最後まで書いた事は、素人物書きである私にとって、数少ない誇りだよ。
……君もそうだろう、まる子?」
「……」
「さて、次はガチャピンか。
少し暗い雰囲気になってしまったが、頼めるかい?」
「うん、いいよ。
今度はぼくの番だ」
ガチャピンが元気よく立ち上がり、むーんと胸を張る。
まる子は少し俯き加減ではあるけれど、しっかり彼の声に耳を傾けているのが見て取れた。
「ぼくが出てるのは【アンパンマン vs ガチャピン】だよ♪
書いたきっかけは、ある曲を聴いた時に浮かんだイメージなの!
ちょっと悲しい雰囲気で、でもとってもカッコいい曲なんだよ♪」
「それを聴いた時に思ったのが『なんでこの二人は泣きながら戦っているんだろう?』という疑問、いったいどんな理由があって、こんな悲しい戦いをしてるのかなっていう想いだったんだ!
それを元にして書かれたのが、ぼくとアンパンマンの戦いの話だね♪」
なにやら自慢げに胸をそらしながら、元気な声でガチャピンは語る。
「ぶっちゃけた話、これはまる子ちゃんのと同じで、戦争をテーマにしたお話なんだ。
だからキツイ描写がてんこ盛りだし、あまり読むのをオススメ出来ない内容ではあるよ。
楽しいコメディを読みに来た人たちが間違えてクリックしちゃわないよう、あえてパスワード限定で投稿してる位だしね」
「それに、正直に言うけれど……これをいつものように匿名設定で投稿しないで、あえてパス限定にした理由は、“あまり読まれたくない”っていう気持ちがあったからなんだ。
……もう作品の内容が残酷すぎて、キツすぎて、救いがまったく無くて……やってるぼく本人ですら『みんなに読んで欲しい』だなんて、とても思えない物だったから」
「たださっきもあったけど、ぼくはこの作品を心から“やって良かった”って思ってるヨ!
自己満足だし、クォリティだって決して褒められた物じゃない。
けれど自分なりに想いの全てを込めて精一杯やり切った! それだけは本当に、もう自信をもって言える作品になったから♪
……まぁ正直な話、今度はこういう悲しいお話じゃなくて、ちゃんとした楽しいお話で!
みんなを笑顔に出来るような作品でぼくを使って欲しいかなって、そうは思ってるけどね!」
そう言ってのけた後、ガチャピンは勢いよく元の位置に座る。
その顔は笑顔。もう観ているだけで釣られてしまうような、彼らしいニコニコした笑顔だ。
それを受けてソフィーは、心から安心したようにふぅと一息。そして最後のひとりであるふじおに声を掛けた。
「え、俺かぁ?! 俺のヤツに説明なんかいるかぁ?! バカ小説だぜぇ?!」
何故かビックリしているふじおの様子に、周囲からクスクスと笑い声が漏れる。
どこかひょうきんなふじおの姿に、空気が軽くなっていくのが分かった。
「わーったよ! 俺が出てるのは【FREEDOM】って短編!
さっきも言ったけどオリジナルで、もうテーマもなにもあったモンじゃないよ!
本当にお遊びで書いた小説もどきなんだ!
きっかけは……どうなんだろ? きっと“友人達を喜ばせたかったから”だと思う」
「ほぅ、友人達の為か。
それはどんな者達だったんだ?」
「学生時代の友達とか、あとは同じ趣味のヤツラで集まるサークルみたいなのがあってさ? そこで仲良くなった友人達なんだよ。
なんか当時から俺、こいつの日記は面白いとか、ブログじゃなくてネタ帳じゃないかとか、色々言われててさ?
リアルの友人たちが、なんか楽しそうに俺のブログを読んでくれてたんだよ。
そんならいっぺん小説みたいなのを書いてやろうじゃないか、笑わせてやろうじゃないかって、その場の勢いで即興かましたのが、この小説もどきだ!
文章の基本なんか知るか! 起承転結なんざ犬に喰わせろ!
……そんなこと思いながら書いたのがこれだぜ! どうだすげぇだろ!?」
謎の勢いをもってしゃべり倒すふじおに、一同は大きな拍手で応える。そしてなにやら機嫌良さそうな顔で、ふじおも元の位置に座った。
「では最後に私だな。
私の出ている【ガンランスの話をしよう。】は、友人とモンハンの話をしている時に思いついたのがきっかけだ。
太刀使いである友人にガンランサーの悲哀を、そして私のガンランス愛を伝えようと思って書いてみたぞ」
「きっかけはリアルの友人なんだね。
ふとした会話の中でアイディアが生まれて、それで“書こう!”っていう意識のスイッチが入るのって、よくあるよね」
「シンジの言う通りだ。
元々モンハンについて書こうだなんて、当時の私はまったく考えていなかった。
そもそもモンハンについては【ハンターナイフ】という二次小説を、すでに書いた事があったからね。もう終わった物として考えていたんだよ」
「確か匿名設定て投稿した、初めて書いてみた“シリアス物”でしたよね?
コメディは本アカ、そして作風の区別の為にシリアスは匿名で。そのきっかけになったのがそのハンターナイフで、順番で言えば3作目にあたる物ですね」
「そう、苦労したものの、ありがたい事に完結まで書き上げる事が出来てね。アレが私にとってのモンハン小説という位置づけだったんだ。
ただそういったきっかけによりカチリと頭の中でスイッチが入り、そこからもう温泉のようにアイディアが湧き出してきたんだよ。
こういった“意識のスイッチ”は、私にはよくある事なんだ。
元々知っていた物や、何気ないひとことの言葉が、ふとした瞬間にまるでGOサインが出たかのように、書くべきテーマへと変わるんだ。
私にとってこのガンランスのお話も、そんな感じの物だったよ」
シンジくんが同調し、ソフィーも嬉しそうに言葉を返す。
きっとシンジくんの出演作も、そんな何気ない日常の中で生まれた物なのだろう。
「作品のテーマはずばり“ガンランス愛”。
実はこのガンランスとは、決して良い部分ばかりでは無くてな……。
悪名高いというか、沢山の欠点がある武器でもあるんだよ。
そしてせっかくガンランスをテーマに書くのだから、ただカッコよく美化するのではなく、良い部分も悪い部分も全部書き切ろう。
それがガンランスで小説を書く事なのだと信じて、一生懸命に書き切ったよ」
「そして裏テーマとして“仲間達との絆”というのがある。
……恥ずかしい話なのだが、私って作品開始当時は、もう生まれ故郷の村は追い出されるわ、ガンランサーだって嫌われているわで、天涯孤独の身だったんだよ……。
そんな私が相棒の少年と出会い、絆を育み、そしてだんだんと周囲も変わっていくというのが裏のテーマだったりするよ」
「……まぁこれってアイスボーンじゃなく、過去作であるMHXXを題材に書いている作品だから、もしかしたらあまり興味を持たれないかもしれない。
しかもテーマは、不人気武器であるガンランスだし……。
でも私としては大好きな作品のひとつなので、もしよかったら読んでもらえると嬉しい。
作者が“心から愛している”と言い切れる物がテーマで、そしてもっとも私の人間性が現れている作品だと思うから。
コメディもシリアスもてんこ盛りで、大変お得な感じだぞ!」
顔を真っ赤にしながら、そしてモジモジしつつも演説を終えて、ソフィーが微笑む。
どうなる事かと思ったが、ちゃんと思っている事を言えた……。そう安心しているのが見て取れた。
「みんなありがとう。とりあえずこれで全員まわったな。
……いま思ったんだけれど、これまだ一つ目のテーマなんだな。
今日はこれだけじゃなく、あといくつかのテーマで話すつもりなんだが……この座談会が終わる頃には、もしかしたら夜が明けているかもしれないぞ?
私は別に構わないのだが……それでも良いだろうか……?」
ひとつ目のテーマが終わったばかりなのに、もう総文字数が2万文字を超えている。
ふと気が乗ったから、そして思い付きで始めたようなこの短編は、早くも第四話目に突入しようとしている。
もっと参加人数を減らせば良かった! なんなら3人ぐらいにしとけば良かった! まったく終わりが見えん!
そんなソフィーの心の叫びと共に、座談会は次のテーマへと突入していく。
――つづく!――