hasegawaさん、炎の短編集。   作:hasegawa

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59 座談会その4 ~書きやすい、書きにくい物~

 

 

「みんな、少し提案があるのだが、良いだろうか?」

 

 瞳を閉じ、何かを考え込んでいる感じの微妙な顔をしているソフィー。

 

「計算してみたのだが、もし今のペースのままやり続けると、恐らくだが私の感覚で言えば……この作品の総文字数が“10万文字”を超えてしまうと思うんだ。

 ちょっとしたラノベ一冊分だぞ」

 

 そう告げた途端、そこら中から「ごくり……!」という生唾を飲む音が聞こえてきた。

 会場に謎の緊張感が走る。

 

「私はね……? さっきも言った通り、別に構わないんだよ。

 そもそもこれは、いま何も連載をしていない時期である私の、『とりあえず何か書いて、腕がなまらないようにしよう!』という意図の下でやっている、思い付きのような企画であるのだから。

 いくら続こうが、これが何万文字になろうが、構いはしないんだ」

 

「「「……」」」

 

「しかしね……?

 はっきり言って『これ誰が読むねん』みたいな思いも、私の中にあってね?

 あんまり長々とやるのも、正直どうかと思うのだよ……。 

 そして、今は私も楽しく書いているから良い。テンションが高いから気にならない。

 けれどね? これってずっと残り続ける(・・・・・・・・)物なんだよ。

 多分だが、これを後で自分で読んだ時……きっと私もう、死にたくなるんじゃないかと……」

 

「「「…………」」」

 

「そもそもね……? もしプロの作家さんだったり、人気投稿者の人がこういう企画をやるのならば、それは物凄く価値のある物だと思うんだがね?

 ……でもね? 違うだろう? 私がこういうのやっても……わかるだろう?」

 

「「「…………」」」

 

 正直、いま若干後悔している。

 昨日の私は、寝不足だった。それでテンションがおかしかったのだ。

 だからついブレーキが壊れ、こういう事をしてしまったのだと、ソフィーは語る。

 

「だから……なのだけど。今後はなるだけコンパクトに。

 具体的に言うと、これからは基本、それぞれのテーマの“ベスト3”を決めるのに留めようと思う。

 ……さっきも言ったが、私は一度始めた事は、絶対に最後までやりきる!!

 真っすぐ自分の言葉は曲げない! それが私の二次小説道だ!

 ――――だから一気に書いて、もう速攻で完結させるぞ!

 分かったなみんな?! 私について来いッ!!」

 

\ライトオーン!/ \ライトオーン!/ \ライトオーン!/ \ライトオーン!/ \ライトオーン!/

 

「ありがとうッ! ありがとうみんなッ!

 ではみんなの心がひとつになったところで、次のテーマ!

 次のお題は…………これだぁぁーーーっ!!」

 

 謎のテンションをもってソフィーが箱をゴソゴソし、勢いよく手を引っこ抜く。

 

「ジャン! 書きやすかった作品&書きにくかった作品!

 これのベスト3を話し合って決めていくぞ!!」

 

 \ワーワー!/と拍手が巻き起こる。

 みんなもう謎のテンションで「とりあえず拍手しとけ! 声出しとけ!」みたいな意図が見え隠れしている。

 

「いちおうこの議題は、短編じゃなく“連載作品”に絞って考えようと思う。

 ……言ってはなんだが、いつも私、ほぼ全ての短編をアドリブで書いているからな(・・・・・・・・・・・・・)

 プロットも構想もあったものではない、ただその場の思い付きでぐぅあ~っと書いた物に、苦労も何もあった物では無いんだよ。」

 

「短編はもう、その場の勢いで書いちゃうもんね。

 だからある程度構成を考えて、じっくり作った連載作品の中で考えるという事だね?」

 

「ザッツライトだアンパンマン。

 この中には短編作品のみの参加者もいるが、申し訳ないが勘弁して欲しい。

 だが自分が出演した物でなくとも、ドンドン意見を出してくれたらうれしいぞ」

 

「了解だ。まぁ俺は茶々を入れつつ、高見の見物といくぜ」

 

 ホッケの身をほぐしながら、ふじおがウンウンと頷く。

 

「じゃあとりあえず、この場の者達が参加した作品の中ではどうだろう?

 まずは、自作品が“書きやすい物だった”と思う者! 手をあげろ! 挙手!」

 

 ソフィーの左から順番に、アンパンマン。アルトリア、ハルヒ、西住さん、ハイジが手をあげる。

 

「ぼくは……微妙な所ですね。

 【新世紀だけど】は普通に書けましたけれど、【ヘレン】の方はそうじゃなかったから」

 

「どちらもある、という事か。

 同じ原作でも、両作品は全然テーマが違うからな」

 

「なら新世紀の方は、どんな感じで書いてたの? スッと書けちゃった感じ?」

 

「そうですねハルヒさん。

 あれはもう、アイディアだけ思いついたら勢いで書けたというか……。

 ただ連載を“続ける事”には、続きを書く事は難しかったから……そういう意味では書きやすかったとは言えないかな?」

 

「いわゆる典型的な“一発ネタ”という事だな……。

 一話二話を書く事が出来ても、その先を続けるのが難しいという……」

 

「そういうのはよくあるぞ?

 つか短編集に突っ込んであるのは、基本そんなヤツばっかりだ。

 でも俺ぁそういうのも好きだぜ? 短編ってのはやっぱ爆発力があるよ。

 一切無駄なシーンが無くて、面白い所だけを書くワケだからな。コメディ向きだぜ」

 

 原作のストーリーを踏襲するのではなく、面白そうな“いち場面”を書くというやり方。

 これは2時間の映画を作るのか、5分のコントを作るのかの違いだ。

 良し悪しの問題ではなく、そのどちらにも良さがあると思う。

 

「やはり長ければ長い程、書きづらかったりするのですか?

 ソフィはどうでしたか?」

 

「いや……私の【ガンランスの話を】に限っては、そうでも無いかな?

 これは基本的に“のんびり書こう”と思いながらやっている所があったし……ネタを思いついたら書く、思いついたら書くというのを繰り返していた感じだから。

 そもそも私には、『こういうのを書きたい!』というイメージが、最初から全部あったからね。それをちょっとずつ表現してくって感じの作業だから、悩んだのは構成の部分だけだ。

 スラスラ書けていたワケでは無いが、やりにくさも無かった。

 良くも悪くも、のんびりやっていたという事なのだろうね」

 

 セイバーの質問に笑顔で答えるソフィー。

 しかしその時、突然「ハッ!」とした顔で、西住さんが声を上げる。

 

「あ、私気が付きました!

 一番書きやすかったのは、最初期に書いた物です!」

 

「「「!?!?!?」」」

 

 皆が驚いた顔で西住さんを見る。彼女はまるで演説をするかのように、自信満々で発言を続ける。

 

「“無知の蛮勇”です!

 何も分からないからこそ、知らないからこそ、前に進めるんです!

 だから一番最初に書いた(・・・・・・・・)アンパンマンやトトロこそが、一番書きやすかった物なんです!」

 

「「「!!!???」」」

 

「最初は右も左も分かりません! ルーキーなんです!

 これをやったらダメとか、こうした方が良いとか、そんなの全然何も知らないんです!

 だからこそ【身体はパンで】の時は、とにかく前に進んだ(・・・・・・・・・)んです!!」

 

 あの時は不眠でテンションがおかしかった。……それを差し引いても、キーボードを叩く手は決して止まる事が無かった記憶がある。

 ゴールデンウイークの一週間、寝る間も惜しむように、ただひたすら書き続ける事が出来たのだ。

 それはきっと“何も分からないから”。

 

「みほ、それは正しい。私にはハッキリと覚えがある――――」

 

 巨大なパエリアの鉄鍋を速攻で空にして、セイバーが静かな声で告げる。

 

「書けば書く程、手は遅くなります。

 長く続ければ続ける程、投稿速度という物は遅くなる物なのです」

 

「……」

 

「実際、私は処女作の時、全20話を一週間で書き上げました。

 しかし1年後の【一か月一万円】では、14話を書くのに一か月かかりました。

 それは決してやる気や情熱の差では無い。“難易度”が上がっているからなのだ。

 以前とは違い、正しさと間違いを知ったからこそ、手が遅くなる。

 ここはこうすべきだ、これをやってはいけない。そういった物を常に考え、そして作品を修正したり加筆する時間が長くなるからこそ、書き上がるまでの時間が加速度的に長くなっていくのだ」

 

 今までは、好き勝手に書いていた――――だから早かった。

 だが今は腕が上がって、正しいやり方だったり、良し悪しの知識がついている。だからこそ完成に時間がかかるのだ。

 

「自分に求められるクォリティが高くなるからこそ、完成までの距離が遠くなる。

 これは悪い事ではなく、むしろ成長の証だと私は思います。

 良い物を作る為に必要な“手間をかける力”が付いている、という事に他ならない」

 

 たとえばこの座談会のように“何も気にせず手を動かす”ならば、一日に2万文字を書く事が出来る。これは実際に昨日やった事だ。

 ここハーメルンには一話平均で約5千文字ほどの作品がもっとも多いが、単純計算で一日4話を更新出来るという計算になる。

 

 実際に小説投稿をしている者ならば、このくらいは誰にでも出来る事なのだ。

 しかしここハーメルンにある数多くの作品が、一話投稿するまでに2週間から1か月ほどは、どうしてもかかっているのをご存知かと思う。

 

 大抵の作品は、連載序盤の数話ほどは間を空けずに、ほとんど連日のように投稿している事が多い。

 だがそれが10話20話と続いていく内に、どんどん投稿間隔は遅くなっていく。

 

 ――――それは決して情熱の枯渇ではない。作者の成長なのだ!

 

 だから我々も、お気に入り作品の更新を、楽しみに待とうではないか!

 決して急かす事無く、良い物を作ろうと頑張っている作者さんを応援しようではないか!

 のんびりと、急ぐことなく、愛を持って作者さまを見守ろうではないか!

 これが我々“二次小説ファン”の心意気という物なのだッ!

 

「うむ、では話を元に戻すが……。

 そういう意味ではやはり、書きやすかったのは【身体はパンで】や【あなたトトロ】になるか?」

 

「異議なーし! 最初期に書いたツートップだからね。

 特にだけど【あなたトトロ】の時って、ホントみなさんからあったかい言葉を沢山もらったでしょう?

 だから初心者の苦労はあっても、モチベーションって凄く高かったと思うのさ?

 そういう意味ではやっぱ、一番書きやすかったのは【あなたトトロ】なんじゃないかねぇ?」

 

「うん、私もそう思うよまる子。

 当時は全国のジブリファン達の熱い思いが、毎日コメント欄に届いてたからね。もう一日に何十通あった事か!

 それを見て私も『よぉ~し書くぞー!』とテンションが上がっていたものだよ」

 

「一位トトロ、二位に身体パンね。

 ……あとソフィーさん? これあたしの個人的な要望になるんだけど、三位に【脳髄。】も入れといてくれないかしら?

 あたし“書きやすい”って意味では、あれが適任だと思うのよ」

 

「脳髄ッ……?!

 ハルヒよ……それはあの手遊びで書いている、小説もどきの事かッ?!」

 

「うん。別に人気やクォリティは関係ないんでしょ? ならアレも入れるべきよ。

 あれって真の意味でのアドリブで、全部キーボードを叩きながら考えてるじゃない。

 いえ、むしろ“何も考えずに”書いているわ。

 そうする事によって自分の内なる物とか、深層心理とか、人間性とか、そういうのを表現するのがテーマの作品でしょう?

 実質あれの制作難易度なんて、ゼロみたいなモンじゃないの(・・・・・・・・・・・・・)

 なんなら今すぐにでも書けるわ。でしょ?」

 

「「「…………」」」

 

 

 

 

 

 

☆書きやすかった作品ランキング☆

 

・第一位 あなたトトロって言うのね / stay night

 

・第二位 身体はパンで出来ている。

 

・第三位 脳髄。

 

・番外 短編集にある物全般。

 

 

 

………………………………

………………………………………………………………

 

 

「では引き続き、“書くのに苦労した作品”を挙げていこう。

 自作品がそうであると思う者! 挙手!」

 

 ソフィーの号令の下、シンジくん、まる子、ガチャピン、そしてアンパンマンが手を上げる。

 

「あれ? アンパンマンもかよ?

 さっきので言えば、アンパンマンのは書きやすいんじゃなかったか?」

 

「うん、確かに身体パンはスイスイ書けたんだけどね?

 でも最近やってた【アンパンマンと、〇〇ちゃん】は苦労したんだよ」

 

 ふじおが疑問の声に、アンパンマンが「うむむ」っと困り顔で答える。

 

「あのブラックラグーンとのクロスオーバー作品だな。

 どのような苦労があったのだ?」

 

「そうだね……やっぱり“セリフ回し”かな?

 ロアナプラの人達って、独特の喋り方をするでしょう?」

 

「確かに洋画なんかで出てくるような、いわゆる“口汚い”言葉遣いだな。

 まぁ登場人物達がまごう事無きギャングだったり、ゴロツキだったりするし……。

 そういったキャラクターを書くのが難しかった、という事なのか?」

 

「うん……これはホントに難しかった……。

 ぼくって普段、ギャングとかゴロツキが出てくるような映画って、あんまり観ないんだよ。こういうキャラクター達に馴染みが無いんだ。

 ブラックラグーンは大好きなんだけど、もうほとんど“それが全て”みたいになってて。

 だからこういった“口汚い言葉”を書くのには、本当に苦労したし、いつもうんうん悩みながらやってたよ」

 

「原作にあるセリフをそのままコピペし過ぎると、運営さんに怒られてしまうからな。

 あまりにやりすぎると“盗作”として規約違反になってしまうんだ。

 なにより、読者の立場から見ても、原作そのままのセリフというのは読んでいてつまらない。

 知っている言葉ばかり出てくるなら、もう原作を読んでいればそれで良いのだから」

 

「それにね? 一番むずかしかったのは“バランス”なんだよ。

 ブラックラグーンの世界観と、ぼくら夢の国サイドの世界観、そのバランスを取るのが本当に難しかった。

 口汚い言葉ばかり書き過ぎると、物語がバイオレンスになっちゃう。

 逆にぼくらが前に出過ぎると、ブラックラグーンなのにほのぼのとし過ぎちゃう。

 でも中途半端に加減をして書くと、笑えなくて面白く無くなるし、原作のカッコ良さが消えちゃうんだ。

 だからほのぼのとバイオレンスの天秤には、ものすごく苦労した覚えがあるよ?」

 

「思うけど、やっぱブラックラグーンって、難易度が高い原作なんだと思う。

 こういうのが元々好きな人なら分からないけれど……、でも普通の日本人には馴染みのない言葉遣いや文化が、すごく多い作品だもんね」

 

「うん、ぼくもやってみて、はじめてそれが分かったよ。

 原作の“それっぽい雰囲気”を出すだけでも、本当に大変だったよ?

 ここハーメルンでも、ネット上でも、いくつかブラクラのすごいSSがあるんだけど……それを書いてる人を本当に尊敬する。

 その原作愛はもちろん、こういった物を上手に書ける“センス”がすごいと思う」

 

 アンパンマンとガチャピンが「うふふ♪」と微笑み合う。

 先の作品では死闘を繰り広げた二人だが、今はこうしてズッ友だ。とっても仲良しなのだった。

 

「後は……まる子はどうだ?

 戦争を取り扱った作品というのは、苦労があるのではないか?」

 

「そりゃしんどいし、書いててキツイのは確かだよ?

 それに“これを書く”って決めるだけでも、ものっすごい覚悟がいるし。

 ――――もう何を言われても構わない、どんなご意見ご批判も全て受け入れる。

 その覚悟が無きゃ、ああいった物を書いちゃいけないよ。

 あれってもう、読む人を殴ってる(・・・・・・・・)からね。

 キツイ内容を書いて、読者の心を攻撃してるワケなんだから。やり返されても文句は言えないもん」

 

 今度はサクランボの乗ったカルピスを飲みながら、まる子がのほほんと答える。

 

「でもね? こと“書きづらさ”で言えば、そこまででも無かったかもだよ?

 だってメチャメチャ資料とか本とか事前に調べたし、もう書くべき内容って、全部頭の中に出来てた上で書いたからねぇ。

 それにあたしゃ、実はあれ書いた当時リアルに風邪ひいてたんだよ(・・・・・・・・・・・・・)

 だからもう、自分の中の“タガ”が外れた状態でぐぅあ~っと書いてたから、よく考えれば苦労とかはぜんぜん無かったかもしんない。

 だって書きづらいどころか、自分の中のブレーキが壊れた状態で書いてたもん。

 むしろ止まれない感じだったよ」

 

 書く事よりも、風邪の方がしんどかった――――そうまる子は語る。

 

「ハルヒはさっき手をあげていなかったが、スゥイートホームはどうだったんだ?

 あれは確か、一話完結なのに10万文字あったのだろう?」

 

「あれは楽よ? だって映画のストーリーをそのまま踏襲してたし、そこにコメディパートを沢山入れるだけの作業だったもの。

 あたし達っていうキャラクターも元からあって、それについて考える必要も無いしね。

 だからあまり悩む部分って、アレに関しては無かったのよ。

 毎日ちょっとづつ書く! というのを続けていって、だいたい3週間くらいで全部書き上がったしね」

 

 ハルヒの方も、のほほんとしたものだ。

 引き続き「次は何を頼もうかしら?」とメニューとにらめっこに入る。たくさん食べないと損だわ。

 

「ガチャピンはどうだい? 【アンパンVSガチャピン】は話数こそ少ないが、総文字数は12万文字以上あっただろう?

 これは本当に本一冊分だ」

 

「構成が難しかった感じがあるね!

 書きたい物は最初から決まっているんだけど……“そこにどう持っていくか”っていうのがホントに難しかった!

 アレって最終話のラストバトルがやりたくて書いた小説なんだけど、ならそこにどうやって持っていこうって、当時はずっとうんうん悩んでた記憶があるよ!」

 

 愛らしくグラスを両手で持ち、ストローでちゅーちゅーメロンソーダを飲むガチャピン。

 

「どうやったらラストバトルの為の、“戦う理由”が出来るだろう?!

 どうしたらラストバトルに“重み”を持たせられるだろう?!

 それを考えすぎて、もう途中よく分からなくなっちゃって、すごく迷走してたよ!

 もう自分がいま何を書いているのかすら、よく分からなくなっちゃってたモン!

 こんな経験ははじめてだったよ!」

 

「えらく元気よく言うんだな……。君らしいと言えばらしいが……。

 でもしっかり完結している所を見ると、結局はなんとかなったんだろう?」

 

「うん! 実はあの作品って、いろんな方々からアドバイスを貰いながら書いてた物だったの!

 もうぼく迷子になってたから! 小説迷子になっちゃってたから!

 だから信頼してる何人かの人達に、事前に試し読みしてもらって、メッセージで感想やアドバイスを貰いながら、なんとか書き進んでた経緯があるよ!

 無事に完結まで書き切れたのも、ぜんぶ助けてくれた人達のおかげなんだよ!」

 

 まるで深い霧の中を、手探りで進んでるみたいな感じだった。

 でも沢山の人達が「こっちだよ。がんばろうね」と言って手を引いてくれたからこそ最後まで書き切れたのだと、ガチャピンは語る。

 

「素晴らしいな。……まぁひとりで書けなかったというのは情けない限りだが、こうやって協力してくれた人達には、もう感謝の言葉しか出ない。

 色々苦労はあっただろうが、いまは素晴らしい思い出となっているのではないか?」

 

「うん! ほんとうにやってよかった!

 ぼくもう、協力してくれたみんなには足を向けて眠れないもん!

 書いてる時はもう、死んじゃうかと思ったけど……でも今となっては素敵な思い出だよ♪

 人間って素晴らしいよね! ヌクモリティだよね! まぁぼく恐竜の子供なんだけど!」

 

 苦労はしたけど、とても素敵な思い出になった。

 それがガチャピンの総括であるようだった。

 

「ではシンジくんはどうだった?

 あの【子ぎつねヘレン】については苦労したと聞いているが……」

 

「はい……正直もう、当時の事は思い出したくもありません……」

 

「「「!!!???」」」

 

 シンジくんの額のあたりに、まる子のような「ずーん」とした影が落ちている。

 

「最初はいけるかと思ったんです。

 ぼく原作小説も映画も大好きだから、きっとやれるって気がしてたんです。

 でも正直、ほんと甘い考えでした……」

 

「なにがあったんだシンジくん……。

 ゆっくりで構わない、話してみてくれ」

 

「駄目だったんです……“動物の死”っていうのがもう、駄目だったんです。

 書くのが辛すぎて、ぼくは途中でリアルに身体を壊して、1か月半ほど休載したんです」

 

「?!?!?!」

 

「駄目なんです、ああいうのは……。

 ヘレンが安楽死されそうになったり、どんどん病に蝕まれていく過程だったり、もがき苦しんで暴れる様子だったり……。

 そして最後、ヘレン死んじゃうんですよ……?

 そういうのぼく、ほんとダメで……」

 

 普段戦争の本とか読んでるのに。自分で残酷な描写のある小説も書いているのに。

 でも“動物がかわいそうな目に合う”というのは、別の次元のキツさだった。

 そんな物には耐えられないと、シンジくんは語る。

 

「小説ってね? “自分が良いと思う物”を書くじゃないですか?

 コメディならギャグを、ラブコメなら胸キュンシーンを、ホラーなら恐怖を。

 そんな自分にとって一番心に来る物(・・・・・・・・・・・・・)を、作者は自分の小説で書くんです」

 

「そして今回は、テーマが子ぎつねヘレンという動物映画で、動物の死という悲しいお話だったんですケド……。

 これが一番ぼくの“見たくない物”だったワケなんです。

 ぼくにとって一番つらくてて、一番心に刺さる物だから、書いたんですケド……。

 でもその重みに『書いているぼく自身が耐えられなかった』……という事なんです」

 

「…………」

 

 口を「アンガー」と開けながら、みんながシンジくんをぼけっと見る。

 シンジくん「がっくり!」と頭を垂れている。

 

「少し前に、ベルセルクの作者さんが心身を病んでしまって、休載してた時期があるって話を聞いた事あるんですけど……ぼくそれ、すごくよく分かるんです。

 たしか今後の展開で、主人公のガッツさんがとても酷い目に合う予定だって、そんな時期の事だったらしいんですけど」

 

「さっきも言った通り、作者って“一番自分の心にくる物”を作品に書くんです。

 ベルセルクの作者さんはそれをする為に、もう漫画を書いている何か月もの間、ずっと自分にとって一番つらい物に向き合っていたハズなんです。

 ……そんな事して、身体を壊さないなんて無理ですよ。精神が病んじゃいますよ……」

 

「そしてこれを凄く実感したんですが、“読むのと書くの”って、大違いなんですよ。

 ぼく元々は原作小説を読んでいたワケじゃないですか? だからヘレンがどうなるとか、こんなツラい事があるって、全部知ってるワケじゃないですか?

 でもそれを自分で書いてみた時、もう4話目くらいでお腹がキリキリ痛くなったんです」

 

「たとえ同じような内容であっても、それを自分の言葉で書く事や、自分のイメージで形にするのって、ぜんぜんダメージの受け方が違うんですよ……。

 読む方より、書いてる作者の方が圧倒的にキツいんですよ……物語って。

 よく考えたら、作品内で表現し切れていない物があったとしても、その分のイメージまで全部作者の頭の中にはあるワケですから……」

 

 なんかもうエグエグし始めちゃったシンジくんを、アンパンマンが優しく慰めている。

 一同はもう言葉も無いが、やがてなんとか立ち直って来たシンジくんが、自作品の総括を始めた。

 

「キツかったです。しんどかったです。書きづらかったです――――

 コメディじゃなくて真面目な内容が多いから、文法や表現にすごく気を使って、書くのも凄く遅かったし。

 それによって、どんどんぼくの心身が病んでいくんだ。

 ……なんなら主人公の綾波って、あんまり喋らない子なんですよ。そんな彼女の感情を表現するのって、もうホントたいへんなんです!

 喋らせようにもあんまり喋る方じゃないし、どうしてもセリフも短くなっちゃうし!

 なんだったらアスカやリツコさん書いてる時の方が、もうよっぽど楽だったよ!

 ……しかもヘレンも動物だから、この子も喋れないんだ! メインキャラなのに!

 ヘレンの様子を描写する時も、可愛いとか、無邪気とか、トテトテ歩いてるとかはあるけど、毎回同じ物は使えない! ちょっとは変えて言わなきゃいけない!

 そういうのを色んな言葉でたくさん書かなきゃいけないから、すぐにぼくの語呂が枯渇するんだ!」

 

「――――優勝! シンジくん優勝! 一位は子ぎつねヘレンで決定だ!!

 よくがんばったなシンジくん! エライぞ!!」

 

 もういたたまれなくなったソフィーが、ガバッとシンジくんを抱きしめる。

 アンパン&ソフィーにヨシヨシされ、シンジくんが「えーん! えーん!」と泣いているのを、一同は黙って見守る。(シンジくん可愛い)

 

「では一位は子ぎつねヘレン、二位をロアナプラにするとして……三位はどうする?

 戦争物は基本的にしんどいが、しかし事前にしっかりと勉強して書くという事もあり、書きづらいのとは少し違うからな……」

 

「あ! あれじゃないかしら!

 ほら、今日はオ・ボーロ様いないけど【愛する者よ、死に候らえんな。】ってヤツ!

 あれ血反吐はきながら書いてたんでしょ?」

 

「「「!?」」」

 

 ハイジが元気よく挙手し、なかなかに酷い事を言う。

 

「あれかぁ~……。あの作品は確かになぁ~……」

 

「そういえばアレって、江戸時代が舞台だもんね……。

 お侍さん的な古風な言葉遣いとか、すごく難しそう……」

 

「しかもアレって、元々は“どシリアス”な作品でしょ?

 それをオ・ボーロさま生存させる為に、無理やり力づくでコメディにしたんだから、そりゃあ苦労するわよ」

 

 ふじお、西住さん、ハルヒが順番に呟く。

 ほかのメンバーたちも「あ~」みたいな顔をしている。この場にオ・ボーロさまがいたら、涙がちょちょ切れていたかもしれない。

 

「あれを書いている時は……正直“大喜利”をやっている気分だったな。

 ストーリー自体は、基本的に原作を踏襲しているのだが“その全てのエピソードでボケる”という謎の掟を持って書かれたのが、あの【死に候らえんな】だよ。

 頂いたご感想の中に『これは笑ってはいけないバジリスクだ』というご意見もあったぞ」

 

「もう原作が息をしてないね。

 清々しいまでの原作崩壊だよ」

 

「開き直りというのは恐ろしい。

 なにせ、最初から“真面目に書く”という気が、一切無いのだから」

 

 ガチャピン&セイバーが、サラダをもぐもぐしながら呟き合う。

 

「だがあれは、本当に苦労したぞ?

 原作にある全てのエピソードでバッタバッタとボケ倒し、その上でオ・ボーロ様と弦之介さまを生存させるというルールまであったからな。

 特に豹馬さんメインの回などは、彼がもう真面目なキャラ過ぎて『こいつでどうボケれば良いか分からん!』となり、更新が一週間ほど遅れたからな」

 

「逆に天膳さまって、凄く書きやすかったですよね……。

 天膳さまって公式でもちょっと面白キャラだし、出てくるだけで面白いトコありますもん。すごく助けてもらいました……。

 もう書いてる当時、『天膳に足向けて眠れんわ!』って思いましたもん」

 

 みほの言葉に頷きを返し、ソフィーがホワイトボードにキュッキュと書き込みを入れていく。

 

 

 

 

☆書きづらかった作品ランキング☆

 

 

・第一位 子ぎつねヘレン ~レイとヘレンの物語~

 

・第二位 アンパンマンと、〇〇ちゃんシリーズ

 

・第三位 愛する者よ、死に候らえんな。

 

 

 

 

 

「オ・ボーロさまには、後で私から受賞を伝えておこう。

 『貴方の作品はとっても書きづらかったですよ!』と、心からお祝い申し上げるぞ」

 

「「「やめてあげて」」」

 

 

 

 

 

――つづく!――

 

 

 

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