コロナワクチンによって高熱が出ている状態で、小説を書いてみる試み。
革命前夜のフランス、ベルサイユ宮殿――――
「ハーイ、オスカルサーン!」
「ナンデスカ、アンドレサーン!」
その日、二人は宮殿の庭園で、朗らかに「やぁ」と右手を挙げ合った。
「聞いてくれオスカル! 人間は首の後ろを殴ったら、気絶するらしいデース!
お前チョット、俺の首の後ろ、殴ってみて下サーイ!」
「オーウ! ニンジャー!」
オスカルは辺りをキョロキョロ見回し、おもむろに大きな石を拾い上げた。
「ワーオ! オスカルサーン!
ソレとっても大きな石ですネー!」
「ハーイ! 私がんばって選びましター!
これで貴方を、ぶん殴ろうと思いマース!」
「でもオスカルサン! きっとその石なら、首の後ろじゃなくてもいけマース!
「オーウ!」
なんという事でしょう! ビックリ!
そう言わんばかりの顔で、オスカルは驚く。
「アンドレ死んだら、私悲しいデース! 泣いてしまいマース!」
「オスカル泣いたら、俺も悲しいデース! やり切れないオモイ!」
「でも私、
この石で、おいっきりやりタイ! 振り下ろしてやりタイ!」
「ワーオ!」
なんという勇猛さだろう! 流石はオスカル!
今度はアンドレが、感嘆の声をあげた。
「お前のファイティングスピリッツ、正に烈火の如シ!
眠れる獅子を、起こしてシマッタ!」
「振り下ろしタイ! 叩きつけタイ!
人を殺したいデス!」
「こうなったオスカルは、誰にも止められナイ!
俺には分かル! 長い付き合いだモノ!」
「我ら竹馬の友! オサナナジミ!
でも殺しタイ! この大きな石デ!」
「とても巨大な石! こんな立派なヤツ、見た事ありまセン! 重ソウ!」
「こんなのを、持ち上げる事が出来る私、めっちゃカッコイイ!
女の細腕と思い、侮るナカレ!」
「オスカルのフィジカルは、日々の弛まぬ修練により生まれタ!!
俺はお前を、誇らしく思ウ! ベルサイユの薔薇!」
「アンドレに褒められる時、私の心は、バラ色に染マル!
まるで天上にいるかのような、幸せな気持ちに満たされル! チュキ!」
「しかしオスカル!
お前はそんなチュキな人を、自ら殺そうと言うのカ!」
「オーウ!」
再びオスカルは、驚きの声。
どうしましょう、どうしましょうとオロオロ。とても困っている様子。
「アンドレが死ぬのは嫌デース! でも石を振り下ろしたいデース!」
「ワガママは女の罪! それを許さないのは、男の罪!」
「あ、ならアンドレ? お前が死ななければ良いと思いマース!
石を振り下ろされ、頭蓋が粉砕しても、
それでオールOK☆」
「――――何かを試されていル!
いま俺の愛的なヤツが、試されているノダ! この命を懸けよト!」
「死んではならヌ! お前だったらイケル!
アンドレであれば、たとえ巨大な石を振り下ろされても、タンコブで済みマース!」
「まさか、お前の信頼が重いと、感じる日が来ようトハ!
愛の牢獄!」
オスカルは『せーの!』と声をあげ、石を振り下ろす態勢に入る。
そのジャスドゥイットと言わんばかりのキラキラした笑みに、アンドレは冷や汗をかく。
「お前の為なら死ねル! 愛の為ナラ!」
「愛は素晴らしいデース! このオスカル、一番チュキな言葉!」
「だが時に愛は、人を傷つけル!
自分の身さえも、炎で焦がス!」
「コイツめっちゃカッコいい事を言ウ!
別にイケメンじゃなくとも、アンドレは素敵な人と思ウ!」
「たとえこの身が焼き尽くされようとも、お前を愛する事を、決して止めはしナイ!
命尽き果てようとも、お前への愛は不変ダ!
愛は思うままに! 愛は心のままに! 愛h
「なんかアンドレが、
適当なことを喋り、私の腕が疲れるのを待っテル!」
なんかイイ感じのことを言いながらも、アンドレの膝は高速でガクガク震えていたので、それがバレてしまったのだ。
「ええい、そこにナオレ!
脳漿をぶちまけ、ヴァルハラへ旅立テ!」
「もう気絶とかじゃなく、殺すつもりでイル!?
お前の野生を呼び覚ましてしまった、俺のアヤマチ!」
「腕めっちゃ疲れてキタ! もう辛抱たまラヌ!
満を持して、振り下ろそうと思ウ!」
「その巨大な石により、俺の頭が砕け散る未来が見エル!
地面に叩きつけた果実のようになりマス!」
「さらばだアンドレ! 私の愛しい人! 死ぬがヨイ!」
「ああオスカル! せめてあの世でお前の幸せを祈ろウ!
おはようからオヤスミまで、暮らしを見つめル! アンドレデス!」
アンドレはぎゅっと瞳を閉じ、心の中で『くそったれ!』と唱える。
一瞬、何故かは分からないのだが、フランスなど滅んでしまえと思った。みんな死んでしまえみたいな気持ちだった。
しかし、アンドレが死を覚悟した、その瞬間――――おおなんという事か! オスカルが石をポイッと手放し、地面に蹲ったではないか!
「出来ナイッ! 愛する者を殺すなど、私には出来ナイ!!」
こんな土壇場になって、自分の本当の気持ちに気付く。
失ってしまう瞬間に、オスカルは真実の愛に目覚めたのだ。
「お前を失ったら、生きていけナイ!
アンドレは、私の木漏れ日!
太陽を失くし、明日さえ見えぬ闇の中で、どうして生きていけヨウ!?」
「ああオスカル! なんと気高き女!
お前は自分自身に打ち勝ったノダ! 打ち破ってみせたノダ!」
「――――なので首の後ろを殴るだけにスル! どりゃあぁーーッッ!!」
「グワーーーッ!!」
ドスゥ!! という重い音と共に、ゴギィ! という鈍いが響き、アンドレが力なく倒れ伏す。
あしたのジョーみたいに安らかな顔をして、真っ白になった。
「 アンドレが死ンダ!! 首折れて死ンダ!!!! 」
小〇建太並の逆水平チョップを放っておきながら、オスカルは「シンジラレナイ!」みたいな表情。
なんで死ぬの!? そんなつもり無かったのに! みたいな態度を取る。
一度野性を開放した事により、とてもスッキリしたオスカルは、ここに来てようやく正気に戻ったのだ。
「死ぬなアンドレ!! 君死にたもう事ナカレ!
私を残して逝かないでクレ! アンドレェェーーッッ!!!!」
おお神よ! 彼を救い給え! いったい彼が何をしたと言うのですか!
そうオスカルは彼の身体を抱きしめ、空に叫ぶ。
私から愛を奪わないで! おーいおい! と泣く。
重ねてになるが、そんなつもりは無かったのだ。
「泣くんじゃないオスカル! 俺はここにイル!」
「アンドレ!?」
まるで純粋な子供のように泣くオスカル。
その軽く滝のような勢いの涙を、薄く目を開けたアンドレが、優しく人差し指で拭ってやる。
「なんと! 生きていたのかアンドレ! 生きとったんかワレ! とてもジョウブ!」
「ああ、なんとかアライブ!
こんなチョップを喰らっても、生きてる俺は、きっと特別な存在なのだと感じましタ!」
死んだと思われた恋人の復活。
失ってしまったと思った愛を、再び取り戻したのだ。
ああなんと素晴らしい事だろう! 神様ありがとう! 愛は不滅也や! スゴイ!
「アンドレ生きてル! 意外とダイジョウブ!
ならば!
「お前のサディスティック・デザイア、マジとんでもナイ!
喉元すぎれば、熱さ忘れル!」
まるで刃牙に出てくるヤクザの少年のように、オスカルがグググッと攻撃の構えを取る。
なんか『次こそは決めるッ!』みたいな確固たる意思が漲ってた。
「オスカル! 人間は首の後ろを殴ると気絶する、という説は立証されタ!
ならバ! もう我らが戦う理由は無イ! なきナリ!」
「そうカ!
しかし騎士たる者、一度拳を抜いたからには、獲物を仕留めるまで収まりはつかヌ!
ドウシヨウ?」
「騎士の誇りが、我らを
「アンドレサン! なんとかもう一度、がんばってクダサイ!
お前ならいけマス!」
「いや、今度こそ死にマス!
俺はそう確信しているシダイ! 思い
「ああアンドレ! 私を愛したばかりに、お前は死ぬのカ!?
愛とは、かように残酷な物なのカ! 神ヨ!」
「なんかカッコいい事を言い始めタ!
こいつマジでやる気ダ!」
大粒の涙を流しながら、それでも雄々しく手刀を構えるオスカル。
この女を愛した事、それこそが俺の誇りだと、アンドレは胸で十字を切る。
この命、お前に捧げると。
「でも俺もヒトノコ! 死にたくはナイ!
そんなにチョップしたいのなら、マリー・アントワネット様にシロ!」
「マリー・アントワネット王妃ニ!?
そんな事が許されるのかアンドレ!? キョウガク!」
「ああ、アイツの散財グセのせいで、今フランスは財政難デス!
アホみたいに高いネックレス買ったりするから、国が傾いてるノダ!」
「あら、ごきげんようオスカル♪ それにアンドレ♪
こんな所で何をしているのでs
「――――お覚悟をアントワネット様!! 天誅ゥゥウウーーッッ!!!!」
「ぎゃああああああああああああ!!!!」