hasegawaさん、炎の短編集。   作:hasegawa

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 せっかくだから俺は、初代プリキュアの短編を書くぜッ!

 次の連載の為のウォーミングアップです。






79 あたしが心を込めて作った料理に、マヨをブリブリかけて食べる藤P先輩。

 

 

 

 

 やっほー! あたし美墨(みすみ)なぎさ! 中学三年生!

 今日はず~っと憧れてた“藤P先輩”に、手料理をご馳走することになったのっ!

 

「よーし、いっぱい食べるぞー!」ブリブリブリ

 

「うわーっ!?」

 

 でもね? 目の前に料理をコトッと置いてあげた途端、先輩はおもむろに鞄からMYマヨネーズを取り出し、それをアホみたいにかけ始めたの!

 小鉢の中身が見えなくなっちゃう位、マヨがこんもりしてるよ!

 

「ふ……ふふ藤P先輩!? いったい何を……」

 

「ん? どうしたんだい美墨さん。そんなに驚いて」

 

 次郎ラーメンのもやしにだって負けないくらいのマヨをブリブリした先輩が、キョトンとした表情であたしの方を見る。

 それはとっても爽やかな笑顔で、キラキラして見えるくらい眩しい。フワッとなびく前髪も素敵だし、もー超イケメン! このあったかい声を聞いてるだけで、胸がドキドキする。

 

 でもあたしが頑張って作った“ホウレン草のおひたし”が、マヨでとんでもない事になっちゃった。他ならぬ藤P先輩の手によって。

 

「おぉ、とっても美味しそうだね。マヨネーズの光沢がキレイだよ」

 

「それ藤P先輩がやったヤツ! あたしじゃありませんっ!」

 

 先輩は関心したように料理を眺め、掛け値なしに褒めてくれる。

 でもそれ、あたしゼンゼン関係ないような気がする。

 

「あー、ごめんよ美墨さん。ついいつもの癖で、マヨかけちゃったんだ」ブリブリブリ

 

「 まだいくんですか?! マヨこぼれちゃうっ!! 」

 

 首だけこっちを向きながらも、マヨを搾り続ける。

 色は全然違うけど、特大のパフェみたく山盛りになってる。これホウレン草のおひたしなのに。

 

 というか藤P先輩、これが何なのかも確認しないままで、マヨかけたと思う……。

 それくらいこの人にとって、マヨをかけるというのは、“ごく当たり前”の行為なのかもしれない。

 鞄から取り出して、キャップを開けてぶっかけるまでの動作が、ホント流れるような淀みのない動きだったもん。それが自然すぎて、思わず咎めちゃったあたしの方がおかしいのかな~って、一瞬思ったくらい。

 

「うん、美味しいよ美墨さん! 特にマヨネーズが」

 

「身に覚えがなーい!!」

 

 それ本来マヨ要素ないよ! ホウレン草は?!

 まるでドラゴンボールの悟空みたいな勢いで、藤P先輩がホウレン草のおひたし(マヨネーズまみれ)をかっ込んでいく。

 サッカー部だし、たくさん食べる人なんだろう。見ててすごく気持ちいい食べっぷり。

 まぁそれが美味しいのかどうかは、あたしには分かんないんだけど……。

 

「驚いたよ、君は料理上手なんだね!

 おひたしとマヨがこんなにも合うなんて、僕知らなかったよ」ブリブリ

 

「 あたしも知りませんでしたよっ! てかどんだけ追いマヨ?!?! 」

 

 先輩のMYマヨの中身が、もう殆ど無くなっている。

 どんだけかけるのよとか、絶対カロリーえぐいよねとか、よくそれをお箸で食べられるな~とかは、色々思うんだけど……。

 でもマジで輝くような笑顔で褒めてくれるもんだから、もう何も言えなくなっちゃった。

 

 この前、高校に進学した藤P先輩が、一年生にしてサッカー部のレギュラーを獲ったことを聞いた。

 それをお祝いする為に、あたしはここ2週間くらいの間、ずーっとお母さんに付き合って貰って、料理の練習をしてたし。なにより先輩自身が喜んでくれてるんだから、これはとても良い事なのかもしれない。

 でもあたしの心には、腑に落ちない何かがある。どんよりした気持ちが。

 そりゃーマズいとか、食べたくないとか言われちゃうよりは、よっぽど良いんだけどさ?

 

「もうっ、相変わらずね藤村くんったら♪

 何にでもマヨかけちゃうんだから」ブリブリ

 

「 ほのか!? アンタもマヨをっ?! 」

 

 うふふ♪ と上品に笑いながら、あたしの大親友である“ほのか”も追従。ホウレン草の小鉢をマヨで山盛りににする。

 彼の幼馴染でもあるほのかは、「昔からそうだったの♪」なんて教えてくれるけど、ぶっちゃけそれどころじゃない。

 

 ここは普通、「ダメよ藤村くん! せっかくなぎさが作ってくれたのに!」とか言って、怒る所でしょうが。何してんのよアンタ。

 

 まぁ今日のお食事会は、藤P先輩に恋するあたしの為に、ほのかが計画してくれたヤツだし、そこはすんごい感謝してるけど。ギュ~って抱きしめたいくらいの気持ち。

 でも突然の()()()()()()()()に、あたしの頭は真っ白。キュアホワイトだよ。

 あたしは黒で、ほのかが白のハズなのに。

 

「そうですよ藤村さん。味もみない内にかけるなんて、お行儀が悪いです」ブリブリ

 

「 ひかり?! アンタまでっ!? 」

 

 そして、この場に同席しているシャイニールミナスこと“ひかり”も、おもむろにマヨをぶっかける。さも当然のように何食わぬ顔。

 

 この子はとってもお淑やかで、可憐で、守ってあげたくなるような儚げな女の子なんだけど、もうドン引きするくらいマヨかけちゃってる。とんでもない量だ。

 なんか「そぉい!」って声が聞こえそうなくらい、勢いよくマヨ搾ってるもん。雑巾か何かみたく。

 

「えっ……あたし以外マヨラー? 二人とも?!

 いままでZENZENそんな素振り無かったのにぃ!」

 

「あら、言ってなかったかしら?

 そうなのよ、なぎさ。マヨには目が無くて♪」

 

「私の身体は、光の力とマヨで出来ています。

 プリキュアだってそうですよ?」

 

 マジで!? シャイニールミナス(マヨ)なの!?

 あの10メートルくらいピョーンとジャンプしたり、岩をドゴーンと砕いたりするプリキュアのエネルギーは、その半分くらいが()()()()()()()なの?!

 不思議な力とかじゃなくて、脂質が源だったの?!?!

 

 そりゃーあたしだって、タコ焼きにマヨネーズぶっかける時あるけど……、でも一本全部いったりはしないよ!?

 つかそれ400gくらいあるよね?! 缶ジュース1本分より多いよ?!

 

「ふぅ、ご馳走さま美墨さん。

 次の料理は何だろ? どんどん持って来て欲しいな」スチャッ

 

「――――もうマヨ構えてる!? かける気満々だっ!」

 

 鞄から新しいのを取り出し、手慣れた感じでスタンバイ完了する藤P先輩。

 さっき一本ぜんぶ使ったかと思えば、ちゃんと他にも準備してたみたい。

 もしかすると、あのおっきなボストンバッグの中身は、ぜんぶマヨなのかも。

 

 そして藤P先輩は、次にどんな料理が出て来るのかなんて、知らないハズ。

 なのにマヨをギュッと握りしめてるって事は、もう既にかける気でいるんだ……。

 その決意のこもった姿と、よく分かんない迫力にみたいなのに、あたしの脳は激しくシェイクされ、大混乱に陥った。

 

「ちょ……タイム!

 いったん待ってもらえますか藤P先輩っ! すぐ準備しますんでーっ!」

 

「ん?」

 

 あたしは手で“T”の字を作って、タイムを要求。

 そしてほのか&ひかりの手をガシッと掴み、そのままグイグイ引っ張って、部屋の端っこまで連れて行った。「ちょっとこっち来て!」って。

 

「ねぇ! なんか()()()()()()()()! どーなってるのコレ!?」

 

「えっ」

 

「えっ」

 

 あたしの「アリエナーーイ!」という心の叫びに、二人は困惑顔。

 コテンと小首を傾げちゃってる。くっそ……カワイイな。

 

「なんでマヨかけるの!? あれゴリゴリの和食じゃん!

 お醤油だったら分かるけど、そーゆうヤツじゃないでしょーっ!?」

 

「えっ」

 

「えっ」

 

 ほのかも、ひかりも、「なんで怒ってるのか分からない」といった感じ。もう絵に描いたような、まん丸の目をしてる。

 よくそんな純粋な目が出来るなって、ちょっと怖くなった。

 

「ほのかのおばあちゃんに、作り方を教えて貰って、いっぱい練習したのにぃ~!

 あーんな大量にマヨかけるなんて、ソーテーしてなかったよ~っ!」

 

「でも藤村くん、喜んでたよね?

 なぎさが作った料理を、パクパク食べてたわ」

 

「そうです、美味しいって言ってたじゃないですか。

 たくさん褒めてくれました」

 

「それ“マヨを”でしょ!? あたしじゃなくてぇー!!」

 

 むしろキューピーの手柄じゃん!

 しいて言えば、「マヨに合う料理を作った」という点を評価してくれたのかな?

 

 でもでも、それあたしが思ってたヤツとは全然ちがくて、なんにも嬉しくないし!

 確かに、お祝いをするとか、藤P先輩とお食事をするとか、そーいうのは達成できてるっぽいけど、すんごいモヤモヤするっ!

 

 ほのかは「なにが気に食わないのかしら?」って感じでホワホワしてるし、ひかりなんて天使みたいな優しい顔で、あったかくこちらもを見つめている始末。もう聖女かってくらい清らか。

 やめてよ、「よかったねなぎさ♪」「私も嬉しいです♪」じゃないよ。あたし困ってるんだってば。

 

「そんな事よりも、彼お腹空かせてるみたいだし、次のお料理を持っていってあげた方が良いんじゃない?

 男子高校生なんて、腹ペコの化身だし、たとえ土でも喜んで食べるわよ」

 

「お米の代わりに、ヘドロとか出しても、気付かないと思います。

 なぎささんの料理って()()()()()()()、とても食えたモノでは無いですが、きっと大丈夫ですよ」

 

「 なんてこと言うのっ?! 花のような笑みで! 」

 

 そりゃーあたしには、おにぎりの中にチョコやジャムを入れたっていう、前科があるけど……。でもちゃんとお料理を習って、しっかり練習したもん!

 前はダメだったかもしれないけど、今はイカれてないもん! ひどくない!?

 

「なんだったら、うちの科学部で発明した【相手を思うがままに操れる薬】を使う?

 料理に入れれば、キスでもデートでもし放題よ♪」

 

「手っ取り早く、魔法を使いますか?

 なぎささんだけを永遠に愛し続ける“傀儡”に出来ますが。

 藤村さんの精神を、木っ端みじんに破壊してみせます」

 

「 やめてよそーいうの!! こわいコワイ怖い!! 」

 

 友達だもの♪ ええ友達ですから♪

 そう二人は「なぎさの為なら!」と快く言ってくれるけど、そのあっけらかんとした表情にサイコを感じる。なまじ可愛い顔してるもんだから、余計コワイ。

 

 ダメだ、コイツらはやる。

 本気で、少しの躊躇なく、友情(?)の名のもとに実行する――――そう直感した。

 

 これまであたし達は、ずっと一緒にやってきたし、めちゃめちゃ友情とか絆を育んで来たもんだから、それが痛いくらい分かる。

 行き過ぎた愛情は、時として“狂気”に変わるのよ。

 ほのかは光の使者(プリキュア)だし、ひかりなんてシャイニールミナスなのに、()()()()()()()()宿()()()()()()()

 

 関係ないけど、最近よく二人から、やたらと「いっしょにお風呂に入ろう」とか「お泊り会をしよう」とか誘われる。

 夜とかも、知らない内にお布団にもぐり込んでくるの、ホントやめてほしい。

 あたしはいったん寝ると、朝まではテコでも起きない人なんだけど、あたしがグースカ爆睡してる間に、いったいこの子達が何をしてるのかが気になる。

 

 ま、あんまり気にしないようにはしてるけどね……。

 知らない方が良い事ってゆーのも、世の中にはあると思うし。

 それにしても、なんであたしは、女の子にばかりモテるんだろう? ヒジョーにフホンイでイカンだ(意味はよく知らないけど)

 

「ねぇひかり?

 もし彼が、なぎさの料理を『不味い』って、口走りそうになったら……」

 

「分かっています、ほのかさん。

 手刀で喉仏を潰します。『ルミナリアー!』って言いながら」

 

「あのぉ~、そろそろハイライトさん戻してくれるかなぁ?

 料理もってかなきゃだし」

 

 なぎさ、貴方の笑顔は私達が守るわ。

 女の子を泣かす悪い人は、ルミナリアします(意味深)

 そうワケの分かんないこと言われたけど、無視してグイグイ二人の肩を押し、また席に着かせる。

 作戦タイム……には程遠かったけど、とりあえず小休止を終えた私達は、藤P先輩のもとへ戻った。

 

「お待たせしましたぁ藤P先輩……。すぐ次を持ってk

 

「わぁー、これ美味しいメポー!」ブリブリ

 

「本当ミポー♪」ブリブリ

 

「――――お前らもかバカ! 駄目でしょ出て来たらぁー!!」

 

 いつの間にか席に着き、マヨをブリブリやっていたマスコット二匹を引っ掴み、ポーイと窓の外へ投げる。「メポー!」「ミポー!」言いながらお空に飛んでった。

 

 どうやら藤P先輩は席を外してたみたいで、見つかってしまう事はなかったから、それは安心したけど。でもミップル&メップルもマヨラーだったらしい。

 興味本位で食べてみたら、意外とハマッちゃったってこと?

 すごいなマヨって。あの子たち光の(その)の住人なのに……。

 

「あ~っ! 次に出そうと思ってた“お豆腐”が、全部マヨネーズまみれにぃ~!?」ガーン

 

 きっとあの子たちの仕業なんだろう。

 ふと気付けば、アタシが作った自家製のお豆腐の上に、マヨがかけられてた。

 まるでワッフルの上に乗った生クリームみたくなってて、見た目こそは悪くないんだけど、マヨネーズだから意味ない。

 コレせっかく亮太と一緒に頑張って作ったのに、もー台無しじゃん!

 

「ただいま。着信があったから、ちょっと外に出てたんだ。

 あれ、豆腐にマヨがかかってるや。()()()()()()()()()

 

「そ、そーなんですよ藤Pせんぱぁ~い! 代わりにかけときましたぁーっ!(大嘘)」

 

 でも大丈夫だった。藤P先輩めっちゃ喜んでる。

 きっと普段から、豆腐にマヨをかけているんだろう。もうなんの躊躇いもなく、ツルンと食べちゃったし。

 だからあたしは、「あははー☆」と笑って誤魔化すことが出来た。

 

 一瞬、今日のお食事会が台無しになっちゃったかと思ったけど、なんか結果オーライっぽい? お礼まで言われちゃったし。

 まぁメップル達は、あたしの分にまでマヨをかけていきやがったから、これ後で食べなきゃいけないのか~と思うと、テンション下がるけど……。

 

「ふふっ、藤村くんたらぁ♪ いくらなんでもかけすぎよぉ~」ブリブリ

 

「豆腐1に対して、マヨ3くらいありましたね。キ○ガイの所業です」ブリブリ

 

「――――量の問題じゃないし! アンタらもだし!」

 

 なんでも聞く所によると、小麦粉の代わりにお豆腐を練り込む、ヘルシーなお好み焼きがあるっていうし。きっとそれにもマヨかけるんだろうから、別に相性は悪くないんだろうけど……。

 でもマヨがブリブリかかったお豆腐をパクパク食べる女の子ふたり(ものっすごい美人)を見て、あたしは「こやつらは気が狂うておる」と思わざるをエナイ。

 

 さっきも言ったけど、以前あたしがチョコやジャム入りのおにぎりを作った時、確かほのかはドン引きしてたハズなんだけど……。

 いま思えば、こんなヤツに批難されるイワレは無いって思う。あたしの方がマシだよ。

 

 もうキュアマヨネーズとマヨルミナスに改名したらいーのに。

 でも仲間がそんな名前してるのは、やっぱイヤだ……。

 

「ぶっちゃけ、次に持ってくの“お味噌汁”の予定なんだけど。

 なんか出すのが怖いよぉ……」

 

「ファイトよなぎさっ! がんばってっ!」

 

「きっと喜んでくれますよ。自分を信じて!」

 

 そして、「キャッキャ☆」言ってる二人&のほほんと微笑んでる藤P先輩に背中を向け、あたしはキッチンに。

 もう既に出来上がっている何品かを、順番にテーブルまで運んでいく。

 

「お、お待ちどう様です藤P先輩。お味噌汁です。

 これお母さんに、出汁の取り方とかを習って……」

 

「わっ、すごく良い香りだね!」ブリブリ

 

「いやぁーーっ!?」

 

 あたしの説明を聞き終わる前に、しかもこれ汁物だってゆーのに、マヨをぶち込まれる。案の定だ。

 

「あのっ、コレきんぴらなんですけど……。

 ごぼうの食物繊維が、すごく身体に良いって竹ノ内先生g

 

「やった! 僕の好物なんだ!」ブリブリ

 

「わぁーーっ!?」

 

 茶色だったハズのきんぴらが、黄一色に染まる。

 

「こっ……これが本日のメインですっ!

 ほら、すき焼きですよ藤P先輩っ! どーですかっ?

 お父さんがA5ランクのお肉を、会社の人から貰っt

 

「頂きまーす!」ブリブリブリブリ!

 

「ぎゃあああああ!?!?」

 

 せっかくの霜降りのお肉が、マヨに蹂躙される。

 容赦なく、一片の慈悲すらなく、見る影も無くなる。

 

「うまい! 嬉しいよ美墨さん!

 こんなにもギットギトの料理を食べられて、僕は幸せだ!」パクパク

 

「……」

 

 研究に研究を重ね、この日のために開発した、なぎさ特製スペシャルすき焼きが、ギットギトに。

 それを見た途端、あたしは膝から崩れ落ちた。

 藤P先輩のとても嬉しそうな声が、今は遠くに聞こえる。

 

「マヨネーズって、何にでも合うのね。

 お肉も、おネギも、白滝も美味しいわ♪」ブリブリ

 

「私なんて、白米にもかけちゃいます。

 本当は、なぎささんにもかけてやりたい位の気持ちです。頭から」ブリブリ

 

 打ちひしがれるあたしを余所に、ほのかもひかりも、美味しそうにすき焼きを食べる。

 いや、アレほとんど「マヨをむさぼってる」のと変わんない。

 あたしの作ったすき焼きなんて、ハンバーガーにおけるバンズくらいのモノ。メインはマヨなんだ……。

 

 藤P先輩を始めとする、三人のマヨネーズ・モンスター達の進撃に、あたしのハートはポッキリ。目の前まっくらだよ。

 

 こんな事なら、食パンでも出せばよかった……。

 ただレタスとかトマトとかの野菜を切って、玉子とかローストビーフとかと一緒に出せば、それだけで良かったじゃん……。

 なんの文句もなく、マヨ大活躍だよ。そこでこそ活かされるべきだよ。

 

 これぶっちゃけ……あたしのリサーチ不足かもしんない。

 藤P先輩やほのか達が、マヨ好きだって知ってさえいれば、それに合わせられたのに。

 あたしもこんな項垂れる事も、絶望とか敗北感で“マックスハート”になる事も無かったでしょうに……。

 関係ないけど、今のあたしってプリキュアに変身できるのかな? ()()()()()()()()()()感じするんだけど。ザケンナー側じゃない?

 

「おかわり! もっと貰えるかな美墨さん?

 こんなにも美味しくて楽しい食事は、生まれて初めてだよ僕!」

 

「えっ、あ……、はい先輩っ!」

 

 けれど、もうキラキラと輝くような笑顔。

 藤P先輩の、心からの言葉を聴いた時、沈んでいたあたしの気持ちは青空みたく晴れて、身体が動くようになる。

 

 両手でお茶碗を受け取り、キッチンまでタタタッと走って、炊飯器のごはんをよそう。

 先輩はサッカー部だし、きっとたくさん食べるよねって思い、日本昔話みたく大盛りにしてあげた。あたし観たことは無いケド。

 

「美墨さんはすごいな。

 まだ中学生なのに、こんな美味しい物が作れる。食べるとパワーが湧いてくるよ。

 きっと、たくさん頑張ったんだね。ありがとう美墨さん」

 

 キュン――――と胸が高鳴る。

 藤P先輩がニコッと微笑んでくれた途端、あたしの息が詰まって、身体がピキーンと固まった。

 

 さっきまでの暗い感情じゃなく、“嬉しさ”で。

 今日のために頑張ってきた事を、全部ぜんぶ先輩に認めて貰えたって、そう感じたから。

 

 まぁ、さっきまではこの眩い笑顔が、()()()()()()()()に見えてたし……。パワーが湧いてくるって言ったって、「それマヨのカロリーじゃないですか?」とか思わなくもないケド。

 

 でも、あたしは嬉しい。報われたって思う。

 なにより、先輩が心から喜んでくれてるのが、幸せだ――――

 

「ふふっ、良かったわね♪ やったじゃない♪

 ま、()()()()()()()()()()」ブリブリ

 

「命を拾いましたね藤村さん。

 喉仏を潰さずに済みました」ブリブリ

 

「ちょっと黙っててくれる?

 いま浸ってるトコだからさ」

 

 まだマヨかけんの!? それ何本目のヤツよ?!

 あたしは思わずツッコミそうになったけど、今うれしい気持ちで胸がいっぱいだから、ガマンする。

 思えば、ほのかもひかりも、たくさん協力してくれたし。

 ドジで不器用なあたしの為に、この2週間の間、毎日サポートしてくれたから。

 ありがとね、あたしの大切な友達……。いつも感謝してるよ♪

 

 

 

「ウガ、もう米ナイ。

 新しいの炊け、プリキュア」モグモグ

 

「 ゲキドラーゴ!? 何してんのよアンタ?!?! 」

 

 なんか知らない間に紛れ込み、物欲しそうな顔で炊飯器を抱えてるゲキドラーゴに、あたしはマヨの容器をぶつける。

 額にパコーン! と当たったけれど、ゲキドラーゴは全然気にしてないみたい。

 

「てかアンタ、とっくの昔に退場したでしょ!?

 今あたし達、中三だよ!? もう1年近く経ってるのにぃ!」

 

「知らナイ。俺ココに居ル。それが全テ。

 プリキュア倒ス。米にマヨネーズかけル」ブリブリ

 

「――――やっぱりかチクショウ! どいつもこいつもぉぉーーっ!!」

 

 コレあたしがおかしいの?! まったく味方が居ない世界に迷い込んだんだけど?! ホラー映画じゃんこんなの!

 こいつ熊かってくらい筋肉ムキムキだけど、その身体はマヨのカロリーで維持してるのか。すごいなマヨネーズって。

 

 そして、敵も味方も部外者も、あたし以外は全員マヨラーなのよね……。これお母さんや莉奈たちも、マヨラーの可能性出てきた……。

 来年の春からは、【ふたりはマヨラー、マックスファット( 脂肪 )】が始まるよ♪

 お友達のみんなっ! ぜったい観てね☆ ……あたしは出てないカモだけど。

 

「こうしてはいられないわ! なぎさ、こっちへ!」

 

「藤村さんのみぞおちに、グーパンしておきました。

 安心して下さい、なぎささん」

 

「――――できるかぁ!!」

 

 ダメでしょひかり! お腹殴って気絶させたらぁ!

 いくら見られたら拙いからって、藤P先輩は一般の人だよ!? 口から泡吹いてんじゃん!?

 

 きっと、ただの人間にボディブロー叩き込んだプリキュアって、歴代でもあたし達だけじゃないかな? 原点にして異端。

 プリティでキュアキュア☆ パンチもキレッキレ♪ ……ってやかましいよっ!

 

 とりあえずあたしも、ふたりのもとへ駆け寄り、いつでも行ける態勢を取る。

 そして、いま窓の方から、さっきポーイとブン投げたミップル&メップルが、こちらへやって来るのが見える。きっと邪悪な気配を感じ取ってくれたんだろう。

 

「なぎさぁー、変身するメポー!」ペタペタ

 

「プリキュアになってたたかうミポー!」ペタペタ

 

「――――マヨネーズまみれじゃないの?! ごめんね二人ともっ!」

 

 きっと、あたしがブン投げたせいなんだろう。

 マヨの容器を抱えたまま飛んでいったこの子達は、着地の瞬間にブチュっとやってしまったらしい。

 結構カワイイ妖精なのに、全身マヨネーズまみれ。妖怪泥田坊みたくなってた。

 

 とりあえず、メップル達が床をペタペタ汚しながら、あたしとほのかの所へやって来る。

 いつものように、ケータイ電話っぽいアイテムに変化して、それぞれがあたし達の手に収まった。

 さぁ、変身だ。

 

 

『『デュアル・オーロラウェーーブ!!』』

 

 

 二人で手をギュッと握った瞬間、あたし達の身体が眩い光に包まれる。

 手、足、腰、胸と、順番にフリルの付いた服が出現。不思議な力で心身が満たされていく。

 

「光の使者、キュアブラック!」

 

「光の使者、キュアホワイト!」

 

「「 ふたりはプリキュア!! 」」キュピーン

 

 いつもの可愛くてキュアキュアな衣装に身を包んだあたし達が、スチャッと床に降り立つ。

 そしてゲキドラーゴの方に、力強くビシッと指を突き付ける。

 

「マヨの力の(しもべ)たちよっ!」

 

「とっととお家に……ってアンタもでしょ!?」

 

 マヨラーだよ! マヨの虜だよほのかは!

 まぁいつもとはセリフが違ってたけど、とにもかくにもプリキュアに変身完了。

 あたしは両脚にグッと力を入れ、戦いの構えを取った。

 久しぶりで、どこか懐かしい心地がするゲキドラーゴと、まっすぐ向かい合う。

 

「ウガ? お前ら、そんなだったカ?

 なんかドロドロしてるナ」

 

「えっ……あぁーっ!? プリキュアの衣装に()()()()()()()!!!!」

 

 黒だったハズのあたしのドレスが、今は黄色がかった白に染まっていることに気付く。

 これって……メップルがマヨまみれだったから!? あたしもこうなっちゃったってワケ?!

 うわっ、服重たっ! ヌメる! すんごいマヨ臭いっ! 

 靴裏まで汚れてるのか、スケートリンクみたくツルツル滑る!

 

「イヤーッ! 全女子の憧れが、マヨまみれにぃ~~っ!!」

 

「ある意味、夢が叶ったかもしれないわ……。

 一度マヨのプールで泳いでみたいって、ずっと思ってたから」

 

 ほのかは狂ってる。ほんまもんのマヨラーだ。

 マヨまみれになったのに、それを喜べる女の子なんて、あたし他に知らない。

 ちなみにだけど……この子あたしの相棒なんですよ。えへへ(白目)

 

「では俺もやるカ。――――いでよザケンナァー!!」

 

 あたし達がネチャネチャやってる間に、ゲキドラーゴが雄たけびをあげる。

 その空気を揺らす大声と共に、黒くて邪悪な力が()P()()()()()()()()()()()、彼を巨大な化け物に変えた!

 

「ちょま……!? 藤Pせんぱぁぁーーい!!!!」

 

「前に、教頭先生の身体が乗っ取られた事はあったけど、まさか藤村くんをだなんて……!?」

 

 ゴゴゴッ……! と地響きを立てて、巨大なモンスターに姿を変えた藤P先輩が、あたし達の前に立ちふさがる。

 ザケンナーに心と体を支配され、きっと“敵”だと認識してるんだろう。プリキュアである私達を!

 

「あら? なんか藤村くんの身体、ノッペリしてるわね……」

 

「これ()()()()()じゃん!? おっきなマヨネーズだよっ!!」

 

 今の藤P先輩、もうまんまマヨネーズ

 巨大なマヨ容器に手足が生えてる~って感じで、その真ん中にちっちゃく藤P先輩の顔があるので、なんか着ぐるみを着てる人みたくなってる。怪人マヨネーズだよ。

 ぶっちゃけ、ぜんぜん強そうじゃ無いし、いくらイケメンな先輩とはいえ、すんごいダサい。

 

「ザケンナーに憑りつかれるト、ソイツの心の闇を反映した姿にナル。

 では行けザケンナー! プリキュア倒セ!!」

 

「ちょっとまって!? 藤P先輩は()()()()()()()、ああなっちゃったって事?!」

 

 これゲキドラーゴのせいじゃなかった。怪物になっちゃったのはともかく、それがマヨだった事に関しては、先輩自身が原因だったみたい。

 

 あたしの好きな人、マジでイカれてた。“病的”なまでにマヨ好きだったんだ――――

 もうあの姿のままの方が、幸せなんじゃないかとすら思う。なんかみょーにニッコニコしてるし、マヨラーの本懐じゃんコレ。

 

 そうあたしが、ワケも分からずオロオロしている内に、マヨP先輩が「ウオーッ!」と叫び声を上げながら、こちらに突進してきた。

 あたしとほのかは、シュバッとその場から飛びのき、なんとか躱せたけど……、さっきまで立っていた地面にドゴーンと大穴が空き、その破壊力をあたし達に見せつける。

 

「やめて藤村くんっ! 私が分からないのっ……!?」

 

 ほのかの悲痛な声。

 次々に襲い来るマヨP先輩の攻撃(パンチとかマヨビームとか)を躱しながら、必死に語り掛け続ける。

 

 無理だ、ほのかは戦えないよ。

 だって彼は、あの子の幼馴染。お兄さんみたいな人だもん。

 いくらマヨネーズのダッサイ着ぐるみ怪人だったとしても、そんな大切な藤P先輩を、傷付けたり出来るワケない。

 

「戦って下さいホワイト! このままじゃ貴方がっ!」

 

「でも……でも藤村くんがっ! そんなこと出来ないわっ!」

 

 傍で見守るひかりが、必死に声をかけるけど、ほのかは泣きそうな顔でブンブン首を振るばかり。

 必死にマヨP先輩のマヨビームを躱してはいるけど、動きにいつものキレが無くて、もう今にも当たっちゃいそうな感じ。

 このままじゃ、負ける。

 

「――――どっせぇぇぇーーい!!!!」バゴーン

 

「ぶ、ブラック?!?!」

 

 でもあたしは、()()()()()

 いま目の前にいるのは、あのカッコ良かった藤P先輩じゃない。こいつはマヨPだ。

 そう自分に言い聞かせてみたら、なんかビックリするくらい、普通に殴ることが出来た。

 ほのかを守らなきゃとか、代わりにあたしがとか、()()()()()()()()()()

 

「そいやぁーーッ!! チェストォォォーーッ!!!!」ドゴーン! ズガーン!

 

「ブラック?! なんか心なしか、いつもよりキレッキレ!?」

 

 殴る、殴る殴る殴る!

 嵐のような連打! 息もつかせぬ連撃!

 

「だりゃりゃりゃりゃッ!!

 あたしのすき焼きにぃ、マ ヨ か け て ん じ ゃ な い わ よ ぉ ぉ ー ー !!(迫真)」

 

「えっ、実は怒ってたの!? それでっ?!」

 

 ぶっちゃけ、気持ち良かった。

 これまでたくさんの敵を殴ってきたけど、今までで一番スカッとした。

 拳を振るうのって、こんな気持ち良いんだな~。あたしボクシングジムとか入ろっかな~とさえ思う。

 みんなっ! 暴力ってサイコーだよねっ☆(プリキュアらしからぬ言葉)

 

 だって、いくらイケメンでも、()()()()()()()()()()()()()()()()

 女の子ががんばって作った料理を、なんだと思ってるのよ! そりゃーあたしの怒りも爆発するってモンだ。

 いま先輩は怪物なんだし、倒さなきゃダメっていうタイギメイブン? もある。遠慮なくやれた。

 なまじイケメンな顔してるのが、よけー腹立つくらいだ。

 

「待っててマヨP先輩っ、すぐ助けてあげますから! 物理で!」

 

「物理で?!?!」

 

 まぁ死ぬことはあるまいよ。怪物に変身した教頭だって、戦いが終わったらグースカいびきかいて寝てたし。

 なので、ここは思いっきり拳を叩き込ませてもらう。これがあたしの怒りだぁー!! って感じ。

 今のあたしなら、ブロリーにも勝てる!(確信)

 

 ついでだけど、「これで藤P先輩のマヨ狂いが治ってくれたらいいなぁ」とかも思うので、重点的に顔や頭を殴る。パンチパンチパンチっ!

 

「ストップよブラック! 藤村くんボロ雑巾になってる!

 可哀想なほど哀れで惨めったらしい姿だわ! 鼻血でてる!」

 

「あ、そーだねホワイト。ここまでやる事なかったよね。

 いや~、ついキョーが乗ってさぁー♪」ホッコリ

 

 どうせ後で必殺技かまして倒すんだし、徒手空拳で瀕死に追い込むヒツヨーなんて無い。

 ちょーっと動きを止めるとか、隙を作り出すだけでOKなんだけど、今日のあたしは止まれなかったのだ。人間こーいう日もあるんじゃないかって思う。

 

「ゲキドラーゴ! よくもマヨP先輩を!

 ぜ っ た い に 許 さ な い !!」カッ

 

「え、それ俺のせいカ?」

 

 気持ちを高めるために、とりあえず決めゼリフ(いつものヤツ)を言う。

 こいつはやっちゃっても良いんだ! あたし達は正しいのよ! そう無理やりにでも言い切るのが大事。

 たとえソイツが、どんなしょーもない小者であっても。たいして悪い事してなかったとしても。

 

 実はあたし自身も「絶対に許さないとか、そんな怒る所じゃなくない? ちょっと言い過ぎじゃない?」って思う時も、あったりするんだけど……。

 でもそうしなきゃ悪党を倒せない(コイツをぶちのめして良い事にならない)んだし、これは仕方ないって思う。女の子だって暴れたいのだ。

 

 だから、いわゆる“キレる若者”みたく、あたしは毎回ノルマみたく、「ムキー!」って怒っとかなきゃいけない事になってる。

 タイギメイブンって物がなきゃ、人は戦えないように出来てるの。プリキュアだって同じだよ。

 

 とにもかくにも、誰にでも分かるように……というかTVの前のお友達に対して、しっかりプリキュアの拳の正当性を示す。

 そして、ちゃんとゴナットク頂けたっぽい雰囲気になった所で、あたしはホワイト(ほのか)とギュッと手を繋いだ。「今よっ!」って感じで。

 

「――――ブラック・サンダァァーーッ!!」

 

「――――ホワイト・サンダァァーーッッ!!」

 

 右腕を空にかざし、力を集める。

 虹の園(この世界)に溢れるパワーが、いま一筋の大きな雷となって、ピシャーンとあたし達の身体に。

 

「プリキュアの、美しき魂がっ!(あとマヨのカロリーが)」

 

「邪悪な心をッ! 打ち砕……って今なんか言わなかった?」

 

 そして! クソッタレな怪物(マヨP)に向けて、グッと手のひらを突き出した!!

 

 

「「 プリキュアッ! マーブル・スクリューーッッ!!!!!! 」」

 

 

 ドカァァァァン! という爆音と共に、光で視界が真っ白に染まった。

 ふたりのプリキュアが放つ、すさまじいエネルギーによって爆散するマヨP先輩と、それに巻き込まれてぶっ飛んでいくゲキドラーゴ。

 まだプリキュアになり立てで、ほのかと心が通じ合っていなかったあの頃とは、違う。

 あたし達ふたりの成長を見せつけるような、圧勝だったと思う。

 

 でもいつもとは違い、手からエネルギー波じゃなくて()()()()()()()()()()()

 しかもマヨネーズの搾り口から出た~みたいな形になってたけど。まぁちゃんと倒せたし。

 

 どうでも良いけど……これいったい何リットルくらいあるんだろう?

 今あたしん家の庭が、豪雪地帯における積雪みたく、マヨネーズでこんもりしてるんだけど……。これ魔法的なヤツなんだし、後でちゃんと消えるのかなぁ?

 あたしが掃除しなくちゃいけない~みたくなるのは、とっても勘弁して欲しい事態だ。

 

 

 

 

 

 

「見てなぎさ! ゲキドラーゴを倒した事で、プリズムストーンが手に入ったわ!」

 

「なんかこの石、()()()()()()()()()()()。いらなぁ~い……」

 

 

 

 前に合唱コンクールで歌った、「だってー、やってらんないじゃん♪」の歌が、あたしの頭の中で鳴った。

 

 

 

 

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