※ふたりはプリキュア・スプラッシュスター × ストレッチマン二次小説
「わぁ、カワイイなぁ~。カッコいいなぁ~♪」
地球より遥か彼方にあるストレッチ第7星雲、ストレッチ星――――
今、その星の住人である“まいどん”君が、地球で放送されている大人気テレビアニメ【ふたりはプリキュア・スプラッシュスター】を観ながら、嬉しそうな笑みを浮かべています。
「ふたりとも、まだ中学生の女の子なのに、世界の平和のために戦ってるんだねぇ。
とっても勇気のある、すごい子達だよぉ~。キュアキュアな服も素敵だなぁ~♪」
このまいどん君は、宇宙カタツムリという種族の子。年は地球で換算すると5歳くらい。
性格は人懐っこく、ホワホワした雰囲気と、間延びした声が特徴的です。
見た目としては、地球でいう所の“ゆるキャラ”に近いかも。
ピンク色の体毛と、星型のマークが入ったオシャレなスカーフがトレードマーク。
どことなくガチャピンを彷彿とさせる愛らしい容姿に加え、とても心優しい良い子なので、地球のお友達にも大人気なのです。
そんなまいどん君が、いま夢中になってTVを観ています。
プリキュアがんばれ、プリキュアまけるなと、TVの中で悪者と戦っている彼女達を、いっしょうけんめい応援していました。
「――――ヌハッ! ヌハッ! ヌハッ!
ぬ゛わーっはっはっはーーッ☆☆☆(暑苦しい声)」
その時! 画面に釘付けだったまいどん君の耳に、突然おっさんの野太い高笑いが。
とても低い、でも1キロ先まで聞こえそうなくらい広がりがある、馬鹿みたいにおっきな声量です。
「 や゛ぁみんな! ストレッチマンだッ☆(ニカッ) 」
宇宙的な技術なのか、はたまた特殊能力なのかは分かりませんが、いきなりこの場にワープしてきた人物が、「よぉ!」とばかりにおでこの前で、二本指をシュッとやります。
彼の名は【ストレッチマン】
ここストレッチ第7星雲、ストレッチ星に住む、イカれた中年男宇宙人の男性。
ちびっこ達にストレッチを広める伝道師として活躍する、正義のヒーローなのです。
「あーっ、ストレッチマ~ン! まいどー♪(挨拶)」
「う゛む! あいかわらずプリチーなヤツだッ!
久しぶりだな、まいどん! 元気してるかッ?」
有り体に言って彼は、「黄色ピクミンをオッサンで擬人化したような人」
黄色い全身タイツのような姿に、靴と腰のベルトだけを身に付けた、とっても怪しい見た目をしています。
しかも、ただでさえコイツが道を歩いていようモノならば、有無を言わさず即通報されるであろう見た目なのに、この黄色は全身タイツなどではなく、彼の“素肌”だというのだから驚きです。(宇宙人なので)
なので実質的に、今ストレッチマンは5才くらいの幼い男の子の前で、
しかもそんな恰好なのに、偉そうに腰に手を当てて、「ぬぅわっはっは!」と高笑いをしているのです。とってもクレイジー。
海苔みたいにぶっとい眉毛と、戦国武将みたいなイカつい顔付き、そして無駄にデカい声。変質者を絵に描いたような見た目……。
けれど、まいどん君はそんなの気にしません。だってストレッチマンのことが大好きだから。
この子にとって、彼はまごう事なきヒーロー。「いつかストレッチマンみたいになりたい」と願っている、憧れの人なのですから。(思いとどまれって話ですが)
ストレッチマンは、よくこうして飯をたかりに遊びに来てくれるので、ふたりは大の仲良し。相棒とも言うべき存在。
まいどん君は彼を見た途端、大喜びで駆け寄って行きました。
「ねぇねぇストレッチマ~ン?
ボクねぇ、プリキュアとお友達になりたいんだけどぉ~。どーすればいいかなぁ~?」
「ふ゛むッ! なるほど、吾輩に任せろッ」
おててを祈りの形にし、コテンと首を傾げる仕草。
まいどん君は、信頼する大好きな彼に、そう愛らしく相談します。
「ま゛ず元気に『こんにちは!』と挨拶し、それからプリキュアと一緒に
――――て゛は今日も、いってみようッ!!(唐突)」
そう「ニカッ☆」と笑うストレッチマンが、まいどん君と少しだけ間隔を空けて、隣に並びました。
「そ゛れじゃあ、足を肩幅に広げて立ち、両手をまーっすぐ頭の上に伸ばそうッ!
そ゛してッ! 片方の手で、もう片方の手首をグッと掴み! そ゛のままゆっくり、グイ~ッと横に倒していくぞッ!」
有無を言わさずに始まる、ストレッチの解説。何を言ってるのか分からないと思いますが、いまストレッチ講座のお時間なのです。
ストレッチマンが、西城秀樹のYMCAにおける“A”の形に身体を伸ばし、そのまま竹のようにグイッと身体をしならせます。
腰から腕にかけてのラインが、緩やかなアーチを描き、斜めの姿勢になりました。
「こ゛の時ッ! 身体が前後に傾いてしまわないように、注意しようねッ☆
し゛っかり前を向いたまま、身体を真横に反らすんだッ! て゛はいくぞォー?
そ゛ぉ~れ、伸びぃぃぃいいい~~~~ッッ!!!!」
ぐぐぐぐっ……! っと音が聞こえてきそうな様子で、ストレッチマンが身体を横に傾け、大円筋や脇腹の筋肉を伸ばしてきます。
まるでボディビルダーのような、余裕のある笑顔。見ていて腹立たしい表情です。
「ん゛んんッ! 伸びぃ~る! 伸びぃぃぃ~~るッ!
そ゛してッ! 限界まで身体を倒した所でぇ……はいストーップッ!!
こ゛のまま大きな声で、数を数えていこーうッ☆」
ストレッチマンが、あからさまなカメラ目線で、“君に”語り掛けています。
これは椅子に座りながらでも出来る運動なので、モニターの前のみんなも、一緒にやってみよう! レッツストレッチです!
「は゛ぁいッ!
い゛~~~ちッ! に゛ぃ~~~いッ!! さ゛ぁ~~~んッ!!!(暑苦しい顔)」
隣に並ぶまいどん君も、同じく“A”の形で身体を横へ倒します。
唐突で、なんの脈絡もなく始まったストレッチ体操ですが……彼の奇行にも慣れたもの。
まいどん君は何の戸惑いも無く、言われるまま付き合ってあげます。とっても良い子です。
さて、モニターの前の君はどうですか? ちゃんと今ストレッチをしていますか?
「こ゛~~~おッ! ろ゛ぉ~~~くッ!! な゛ぁ~~~なッ!!!」
カウントを重ねる毎に、ここストレッチ第7星雲、ストレッチ星の大地が〈ゴゴゴッ……!〉と振動。大気が激しく震えます。
そして彼の肩から脇腹にかけての筋肉が、次第にランタンの灯りのように発光していきました。
そう、こうして身体を伸ばし、血流を良くする事によって、彼の身体にどんどん“ストレッチパワー”が溜まり、激しい光と熱を帯びているのです!
「は゛ぁ~~~ちッ! き゛ゅ~~~うッ! し゛ゅうううぅぅぅーーッッ!!!!」
ドゴォォォーーーンッッ!! と最後に凄まじい爆音が鳴り、何故か背後で巨大な隕石が落下。ついでに火山が噴火し、大爆発しました。「ストレッチ終了!」という象徴的な物でしょうか?
でもそんなことも気にせず、柔軟体操を終えたストレッチマンは「ぬぅわーっはっは!」と機嫌良さそう。爆炎を背に高笑いです。
「と゛うだ、ハーメルンのみんなッ!
ここにストレッチパワーが、 溜 ま っ て き た だ ろ う ?(ドヤ顔)」
ストレッチパワーが満タンとなり、焼けた鉄のように発光する大円筋と脇腹を見せつけながら、彼がとてもウザい感じでカメラ目線。グイグイ同意を求めてきます。
これを読んでいるみんなが、自分と一緒にストレッチを行なっていたであろう事を、微塵も疑っていない表情。そのぶっとい眉毛に相応しい、自信に満ち溢れたむさ苦しい笑み。
余談ですが、ストレッチマンは活舌が良い方だけれど、たまに気合を入れて喋る時などに、少し早口になります。
そのせいで、彼の「ストレッチマンッ!」という渾身の名乗りが、「ひとりえ○ちマンッ!」に聞こえちゃうのは内緒です。
確かに彼の恰好は変質者その物ですけれど、だからってそんなの言うワケありません。
加えてストレッチマンは、
「む゛むッ!? このサイレンは……地球からのSOSかッ!」
彼が腰に手を当てて、戦国武将みたいに豪快に笑っていると、突然この場に〈ヴゥ~ッ!〉という大きな音が鳴り響きます。
これは、遥か彼方より受信したメッセージ。ストレッチマンに助けを求めるための物でした。
即座に彼はまいどんと共に、宇宙的な科学力によってスゥイ~っとこちらに飛んで来たモニターを確認。地球から送られて来たであろうメッセージ映像を観てみます。
そこに映っていたのは……。
◆ ◆ ◆
『――――我が名は“キントレスキー”。
アクダイカ―ン様に仕える、ダークフォール最強の戦士だっ!!』
\ババーン/と画面の向こう側にむけて、律義に自己紹介をする男性。
モヒカン頭とおヒゲが特徴の、とても紳士的な人物でした(悪役なのに)
『今日もダンベルカールをし、ベンチプレスをし、己を限界まで追い込んでいくぞっ!
筋トレこそ至高! 生きる喜び!
この鍛え上げた鋼の肉体で、プリキュアと最高に熱い戦いをするのだっ!』
うんしょ、うんしょと、キントレスキー氏がダンベルを上げ下げします。
奇しくも彼はストレッチマンと同じく、黄色い肌をした人物。なにやら意外な共通点というか、そこはかとなく親近感が湧きますが……。
でも中肉中背である黄色ピクミンのおっさんストレッチマンとは違い、とても大きな筋骨隆々の身体。比べるのも烏滸がましいくらいの美ボディです。
山のような僧帽筋ッ! ド迫力の大胸筋ッ! これ見よがしの逆三角形ボディ!!
その名の通り、彼は日常的に、暇さえあれば筋トレに勤しむ変態とってもえらい人であり、その「生まれてから死ぬまで」を信条とする絶え間ないハードな修練によって、とんでもない筋肉量を誇ります。
きっと見る者が見たら「キレてる! キレてるよ!」「デカい!」「板チョコ腹筋バレンタイン!」と熱い声援を贈らずにはいられない事でしょう。それほどの肉体美でした。
まぁ少し専門的な話をすると……彼はいわゆる“チキンレッグ”と呼ばれる体型。
そんな大きな上半身をしているのに、下半身はまるでニワトリさんのように細く、ぜんぜん筋肉が付いていないのです。
この非常にアンバランスな肉体は、「足トレってキツイからやりたくねェ! 別に鍛えなくてもいーや!」と考える、ヘタレなトレーニーに多く、実は本職のボディビルダーの方々からすれば
せっかく頑張って身体を鍛えてはいても、自分で自分を「怠け者です」と示しているかのような、バランスの悪い身体つきなのでした。
しかしながら、このキントレスキー氏は“実戦派”。戦うことを旨とする戦士です。
見た目のためだけに、ロクに使えもしない筋肉を育てているワケではなく、ただただ「強くあろう」というその想いから、筋トレをおこなっている人物。
ゆえに、主に“肉体の美しさ”を主眼とするボディビルダーのような、均整の取れた筋肉ではなく……。
キントレスキー氏の肉体は、はち切れんばかりに膨らんだ
なんだったら、キントレスキー様はスクワットとかメッチャやってますし。ランニングもガンガンやってますし。ぜんぜん怠け者なんかじゃありません。
足を太くする事よりも、機動性を重視したスリムな筋肉を目指していると言うべきでしょう。
それに加えて、スプラッシュスター本編の第40話で見せた、キントレスキー氏の“最終形態”では、もう上半身のみならず、下半身の筋肉までもがムッキムキ。
世界中のボディビルダーが、裸足で逃げ出しちゃうくらいの、まさに圧巻のバルク。
ダークフォール最強は、伊達では無いのです!
キントレスキーさま素敵っ☆ ちょー愛してるッ♡♡♡
『しかしながら、こうしてトレーニングをするのも良いのだが……。私ばかり強くなってしまうというのは、如何なものか?
歴史に残るような、熱いバトルをするには、プリキュア達にも強くなってもらわねば』
バーベルを持ち上げ、デッドリフトと呼ばれる背中のトレーニングをこなしながら、キントレスキー氏が難しそうな顔で「むむむ……」と唸ります。
『そうだっ! 今日はアイツらが通う中学校におしかけ、プリキュアを鍛えようっ!
ついでにクラスメイトの子達にも、
善は急げだ! 待っていろプリキュアーッ!
そうキントレスキー氏が、イソイソとダンベルを片付け、ベンチについた汗をキュッとタオルで拭きます。(ジムでの大切なマナー)
目指すは学校、プリキュア達がいる所。
彼はガラにも無く「ルンルン♪」とスキップしながら、ニコニコと機嫌良く向かいます。
正々堂々、真っ向からの勝負を至上とする彼にとって、これは善意100%なのでした。
◆ ◆ ◆
「子供達がッ……! 筋トレでピィィィ~~ンチッ!!??」
映像を観終わったストレッチマンが、わざわざカメラ目線でシャウト。「ガビーン!?」みたいな表情。
松平健や高橋英樹にも負けないくらい、とってもダンディなお顔です。(眉毛太すぎですが)
「ま゛いどんッ! 吾輩ちょっと行ってくるッ!
プリキュアを救ってくるぞッ!」
「うんっ! 分ったよストレッチマ~ン。気をつけてねぇ~♪」
まいどん君は争いが苦手な、心優しい子なので、少しここで待っていて貰います。
でも戦いが終わったら、後で必ずプリキュアと会わせてあげることを、ストレッチマンと約束しました。指切りげんまんです。
「ス゛トレッ!!!!(掛け声)」
本家ウル○ラマンのように右腕を突き出し、ストレッチマンが
ジェットのような勢いで、光より早く。
可愛く手をフリフリするまいどん君に見送られながら、愛する子供達(とプリキュア)のもとへ向かうのでした。
正義のヒーローとして(?)
◆ ◆ ◆
ところ変わって、海原市立 夕凪中学校。
「んい~っ! ふんぎぎぎっ……!!」
キュアブライトこと
「なっ……なんでわたし達が、こんな事しなくちゃいけないのぉ~!?
意味わかんなーーい!」
咲ちゃんが、この場に設置された鉄棒にぶら下がり、いっしょうけんめいチンニング(懸垂)をします。
体操服を着ているので見えはしませんが、彼女の大円筋と肩甲骨筋、そして上腕二頭筋が痛々しいまでにパンプアップ。悲鳴をあげています。
ちなみにこれは、学校などによくある鉄棒ではなく、“チンニングバー”と呼ばれる鍛錬器具。その名のとおり懸垂はもちろん、ディップスやハンギングレッグレイズなども行える、非常に優秀な筋トレ器具です。
安い物であれば、Amazonなどで1万円以下で買えるのですが、これひとつあれば貴方のお部屋がホームジムに早変わり!
しかも“ぶら下がり健康器”としても使用できますので、一日一回20秒ほどブラ~ンとやるだけで、背中の筋肉を一気にストレッチする事も出来ます。
これをやっておくだけで、あれだけ辛かった腰痛ともオサラバ!
全身の血行が良くなりますので、身体のダルさが劇的に改善。一日中げんきに過ごせます。
ついでに言えば、ぶら下がり運動をする事によって握力(持久筋)が鍛えられますので、前腕の筋肉を鍛えるのにとても効果的っ! たくましい前腕がゲット出来ます。
さぁ君もチンニングバーで――――PERFECT BODY(ケインコスギ風に)
一年ほどやれば、30回くらい懸垂できるようになるぞ♪ 今すぐご注文くださいっ!
洗濯物を干すのにも使えるヨ☆
「さ、さぁ~~んっ! よぉ~~んっ! ごっ、ごごごご……!?!?」
それはともかくとして、咲ちゃんがひたすら懸垂にうち込んでいます。
もうこれで3セット目だというのに、まだ4~5回も身体を持ち上げる事が出来ています。流石はソフトボール部のエース。
「でもムリィ~ッ! こんなのあと2セットも出来ないよぉー!
背中の筋肉が、絶不調ナリィー☆ にゅにゅ……乳酸がぁぁ~~っ!?」
「わ、私もだわ咲……!
もう足がプルプルして、持ち上げられそうにないのぉーっ!!」
咲の魂の叫び(口癖)を聞いて、隣にいるキュアウインディこと
いま彼女がやっているのは、バーベルを担いで行うスクワット。その過酷な負荷によって、大腿四頭筋がピクピクと痙攣しています。
彼女は美術部に所属する秀才で、本来はあまり運動をする方ではありませんが、頑張って筋トレに打ち込みます。
普通にスクワットするだけでもキツイのに、高重量のバーベルを肩に乗せたまま、もう10回×3セットをこなしています。
いつもはおとなしめの雰囲気で、美しい髪が特徴の、綺麗な女の子なのですが、この時ばかりは玉のような大量の汗をかき、「ふんぎぎぎ……!」と額に血管を浮かべています。
それでも決して諦めたりせず、最後までトレーニングをやり遂げようとする所は、流石プリキュアといった所。とても頑張り屋さんなのです。
関係ないですが、今ふたりの可憐な乙女が、顔面を真っ赤に染めつつ、ダラッダラ汗をかきながら筋トレしているワケです。
これはすごく
高みを目指し、筋肉の成長を願う~という意味では、確かに“夢”があるかもしれません。でもそういうのは今の時代、求められていないのです。
これは、まだ眠い
努力と根性とかプロテインとかは、非常にノーセンキューでした。
「もっ……もうダメぇ~っ! 死ぬうぅ~っ!
たーすーけーてぇぇ~~っ!!」
「
いつものように『ぜったいに諦めないッ!』って、言いたい所だけど……。
でもこれ、ただの筋トレだものっ! ともだちの為とかじゃないわ!(半泣き)」
片方は死ぬ気で懸垂バーにしがみ付き、もう片方は必死にバーベルを担ぎます。
これがいつも花のプリティで、宝石のようにキュアキュアしてる二人だとは、とてもじゃないけれど見えません。道に落ちてる軍手のような、くっそ可哀想な姿です。
そして、なにより彼女達は、自ら望んで筋トレに勤しんでいるワケでは無いのです。
これは本日付けで赴任してきたという、新しい体育の先生、その指示によるものでした。
「どうした二人ともっ! なにをヘバッているのだ!」
やがて3セット目を終えて、疲労困憊している咲&舞のもとへ、ヤカンみたいに頭からポーッ! と蒸気を上げるキントレスキー先生が、姿を現しました。
熱血体育教師っぽく、手に竹刀なんか持っちゃって、やる気満々の様子です。
「さぁ立て! セット間のインターバルは40秒!
筋肉が回復し切らない内に、次のセットを行うことで、効果的に筋肉にストレスを与える事が出来るのだ!
多少息が上がっていても問題ないっ! それでも身体は動くっ! 根性だ!!」
セット間の休憩は、あくまで最低限。
たとえどれほど苦しくても、決められた秒数を厳守して行うのが基本です。
たしかに、もう少し長く時間を取れば、身体は休まるし、気力も回復することでしょう。
でもそれでは非効率的。トレーニングはダラダラやっても仕方ないのです。
むしろ、ツライ時ほど「チャンス!」と叫ばなければいけません。喜ぶべき事なのです。
サボったり休んだりするのは、今の自分へのプレゼント。
歯を食いしばって頑張るのは、未来の自分へのプレゼント――――
そうキントレスキー先生が咲たちに語り掛けます。
彼女らの成長を心から願う、愛ある指導でした(悪役なのに)
「どうしたっ! まだやれるハズだ!
いつものお前達ならば、こんなもので挫けたりはせんぞっ!!
素手で岩を砕き、10メートルくらいジャンプするくせに! 手を抜くんじゃない!」
「 それ変身してる時の話じゃん! わたし達は普通の女の子なのぉー!! 」
咲がぐぅあー! っと抗議しますが、キントレスキー先生にはそんなの知ったことではありません。
さぁさぁ、Just do itと、ヘロヘロになっている二人を急かします。
「なんて様だ、お前達ともあろう者がっ!
見てみろ、健太くんや優子ちゃんは、頑張っているではないか!
学くんなど、あんなに細い身体なのに、一生懸命やっているのだ! とても見所があるぞ!
あの子らに負けても良いのかっ!」
「あぁ……みんなごめんなさい。キントレスキーのせいで……」
今もクラスメイトのみんなは、舞たちと同じように筋トレをやらされています。
懸命にダンベルと格闘する健太、その隣で腹筋ローラーをやる優子ちゃん。そして気弱な性格かと思いきや、意外なガッツを見せている頑張り屋な学くんetc.
誰もがキントレスキー先生の指示の下、中学生には似つかわしくないハードな筋トレをしています。
まぁクラスの何人かは、既にグッタリ倒れちゃってますが。
「なんて事なのっ……! 変身さえ出来れば、コイツを止められるのにぃ~!」
「でもこんな場所で、プリキュアになるワケにはいかないわ……。
みんな見ているし、なにより今のキントレスキーは“先生”だもの……」
そう、手を出すワケにはいきません。
以前、彼と同じダークフォールの戦士である【ミズ・シタターレ】女史が、人間になりすまして様々な恰好をし、色々な場所へ現れたりしていましたが……。
今回のキントレスキー氏も体育の先生として、なんと
ならば、たとえハードな筋トレとはいえども、彼の授業を受けるのは“生徒の義務”。
けしてグーパンでぶっとばしたり、イヤだからと言って授業放棄をしては、いけないのでした。
少なくとも、学校が終わる時間までは。
そしてみんなの見ていない場所で、なんの遠慮もなく変身できる状況になるまでは。
咲も、舞も、クラスメイトのみんなも……今は耐える他ないのです。
まぁ身体を鍛えるのって、むしろ
そして健康のためにやる筋トレで怪我をするなんて、愚の骨頂そのもの。間違ってもそんな事にはならないよう、今もキントレスキー先生がしっかり皆の指導&サポートしてくれているので、
重ねてになりますが、彼はこれを“100%の善意”でやってるのです。
めちゃめちゃ迷惑な話ですけれど……。
「へへっ! 俺の大胸筋が喜んでるぜ……!
これで俺も、筋肉系お笑い芸人に……がくっ!」
「健太くん!? しっかりしてよ健太くんッ!! 健太くぅぅぅ~~んっ!!」
「ここで死んだって、笑いの神は微笑んでくれないよ……。
ツッコミを入れて欲しかったら、もっと面白い倒れ方をしなよ。吉本新喜劇みたいにさ」
力尽きた健太くんをはじめとし、次々に倒れていくクラスメイト達。
まぁ筋トレって、短時間で行う無酸素運動ですので、サッカーやマラソンよりはよっほど楽なのですが、キツイものはキツイのです。
みんなゼーゼーハーハー言いながら、タオルで汗を拭ったり、キントレスキー先生が用意してくれたEAA*1を飲んだりしています。
慣れない筋トレに四苦八苦。大げさな言い方ですが、いわゆる“死屍累々”の光景。みんなグッタリです。
「さぁ上げろっ! 上げてっ! ほらラストいっかーい!!
はい終了お疲れグッジョブ! ……と見せかけて
「いやぁーっ! 腕の筋がちぎれるぅ~っ!!
ゆるしてぇぇぇーーっ!!!!(ガチ泣き)」
ハナミズ・ターレになってしまった咲が、悲痛な声を上げていますが、そんなことも構わずキントレスキー先生は、悪鬼羅刹の如く彼女を追い込みます。
でもむしろ……“天使”なのです。
弱気を許さず、挫けそうになる心を支えてくれるのですから、彼はとても優秀なトレーナーと言えました。
女の子だとか、まだ中二だとか、そんな甘ったれた考えをキントレスキー先生は許しません!
この調子で3年も頑張れば、きっとプリキュア達は、素晴らしいムキムキマッチョウーメンになれる事でしょう。
時というのは、勝手に流れていく物。いわば“必ず未来に辿り着く”ようになっているのです。
なので、いつか咲&舞の身体が、ボディビルダーみたくゴリマッチョになることは、もう
スパスパ、スパーク、スプラッシュスター♪(上腕二頭筋が)
『――――ま゛てェいッッ!!!!!!!!』
しかし! その時! この場に響き渡る、野太いオッサンの声!!
有意義で、楽しく、とってもサイコーで、崇高なる筋トレを邪魔する何者かが現れたのです!
ふぁっく!
『幼子に対し、80㎏もあるバーベルでベンチプレスをさせたり、大型犬2頭分の重さでハンマーカールをさせるとは……許せんッ!!!!』
えっ、わたし達、そんなのでやってたの?(キョトン)
咲たちはバーベルの重量の見方なんて知らないので、言われるままに担いでしまっていました。
キントレスキー先生の「お前ならやれるっ!」という言葉を信じての事でしたが、実は女の子らしからぬとんでもない重量で、筋トレをさせられていたのです。ビックリ。
関係ないけれど、プリキュアのふたりは内心、「セリフとられちゃったー!?」と慌てました。
この“許さない”は、よく自分達が心を鼓舞するために使う言葉なのですが……奇しくも彼と被ってしまったのです。
スプラッシュスターと、あの番組とは、意外と色々な共通点が散見されるのでした。重ねてビックリ。
「だ、誰だっ! どこにいる貴様!? 姿を現せ!」
『ヌハッ! ヌハッ! ヌハッ! ぬ゛わーっはっはっはーーッ☆(暑苦しい)
こ゛ちらだキントレスキーッ!! 吾輩はここだッ!!』
やがて、体育館の一角にキラキラした光が集まり、そこから黄色ピクミンみたいな全身タイツの男……いえ正義のヒーローが現れます。
「――――ひとりえ○ちマン、参上ッッ!!!!」
「「「 変 態 だ ぁ ぁ ぁ あ あ あ ー ー っ っ !!!! 」」」
クラスのみんなの悲鳴。でも彼は少しも気にしません。こんなの慣れた物です。
彼はシュシュと手を動かし、トレードマークである“S”の文字を、宙に描きます。
関係ないけれど、
改めてまして――――彼の名は【ストレッチマン】
ストレッチ第七星雲よりやって来た、みんなを守るヒーロー。
ぶっとい眉毛を自信ありげにクイッと上げ、カッコ良く腰に手を当てて、倒すべき悪党を見つめます。
「子供達よッ、もう心配ないぞッ!! さ゛ぁ下がっているんだッ!!」
「えっ……何あの人。ヒーローって?」
「ひ、ひとりえ……?」
安全な所へ退避するよう言われるも、咲&舞は困惑顔。
当然です。彼女達はプリキュア。本来あのキントレスキーは、自分達が倒さなきゃいけない敵なのですから。
「咲、悔しいけれど……ここは一旦、あの人に任せましょう。
いまの私たちは、戦うことが出来ないんだから」
「うん……そだね。
変身できないわたし達がいても、きっとおじさんの足手まといになっちゃう……」
「でも、黙って見ているつもりは無いわ。
キントレスキーは、とても強いもの。
あの人が大怪我をしてしまうかもしれない」
「分かってるよ舞。隙をみてここを抜け出して、プリキュアに変身するんだよね?
よぉ~し! ぜったいキントレスキーを倒すんだからーっ!
あの黄色いおじさんも守ってみせるっ!」
彼女らのマスコットであるチョッピ&フラッピは、いま教室にある鞄の中。
プリキュアに変身する為には、あの子達と合流しなくてはいけません。
咲と舞はテテテと後ろに下がり、いったん他のクラスメイト達がいる所へ。
そこで心配そうにギュッと手を握りしめながら、突然ここに現れたヒーロー(らしきおじさん)を見守ります。
どうか少しの間だけ、がんばって――――と願いながら。
「ストレッチマンだと……?
「如何にもッ! ま゛ぁ吾輩はウル○ラマンと同じく、宇宙人ともいうべき存在だがなッ!
し゛かしッ、子供達の笑顔を奪う者は許さんッ! 覚悟しろキントレスキーッ!!」
ストレッチマンが両手を前に出し、戦いの構えを取ります。
全身タイツ姿なので、これっぽっちもカッコ良くありませんが、キントレスキーはその構えをひとめ見た途端「こやつ、出来る!」と直感。
自分と同じく、この者は歴戦の勇者であることを悟りました。信じがたい事に。
「だが御仁よ、貴様と戦う理由など無い。
私の目的は、あくまでプリキュア……。
おとなしく退くというのなら、見逃してやるぞ?」
「ヌハッ! お゛かしなことを! 上半身裸の変態めッ!!」
――――お前が言うな。お前が。
もしこの場の緊張感さえ無かったら、きっと罵詈雑言の大合唱が起きていたでしょう。
しかし、なんか変態の二人が真面目な雰囲気で話しているようなので、子供達は固唾を飲んでじっとしています。
「確かに、貴様のような強者と出会えた事は、喜ばしい。
だが初志貫徹。私はあのふたりを、鍛えねばならんのでな。
今のプリキュアには、筋トレが必要なのだっ!!!!」
――――んなことねーよ。帰れよ。
もしこの場の緊張感が(以下略)
子供達は引きつづき、黙って見守ります。おりこうです。
「な゛におぅ? プリキュアに必要なのは、筋トレではない!
――――えっ? なに言ってるのこの人?
咲や舞はポカンと口を開け、アホのように呆けます。
「筋トレだっ!」
「い゛やストレッチだ!」
「筋トレ!」
「ストレッチ!」
\ワーワー!/
そう延々と続く、キントレスキーとストレッチマンの言い合い。
知らぬ間に、咲と舞はそれに見入ってしまいました。
思わずといったように。隙を見てここを抜け出すという目的すらも、忘れたまま。
「ぬうっ……! なんと頑固なヤツだ! らちが明かん!
相分かった! では我らで勝負をし、勝った方が
「の゛ぞむ所だキントレスキーッ!!
君が勝てば、プリキュアと筋トレ!
吾輩が勝てば、この子らにストレッチをさせるからな゛ッ!!」
「えっ」
「えっ」
いつの間にやら、プリキュアが“賞品”になっていました。正義のヒロインのハズなのに。
彼らは善意から、プリキュアたちを健康にしてあげたい、一緒に楽しく身体を動かしたいと、心から願っているのでした。ありがた迷惑。
「それではいくぞぉ、ストレッチマン!
筋トレと柔軟体操……どちらの方が健康に良いか、勝負だっ!
――――第一問! デデン!」
なんとキントレスキーは、自分の口で「デデン!」と言いました。ボイパというヤツです。
そして唐突に始まる、ふたりの黄色い変質者による、健康クイズ合戦。
「身体作りや健康の為に必須となる知識で、三大栄養素であるタンパク質・脂質・炭水化物の、理想的な摂取の割合のことを、何というか?」
「ピンポーン!(だみ声) “PFCバランス”」
「正解っ!!」
ストレッチマンが手元のボタンを押(すパントマイムを)し、即座に回答。
キントレスキーは「グムム……!」と唸りながらも、正解を告げました。
「て゛は吾輩の番だァ! 問題ッ!! デデン!
先ほど三大栄養素という言葉があったが、これらの中で一番【摂っても脂肪になりづらい】ものはどれか?」
「ピンポーン!(低音) “タンパク質”」
「せ゛いかいッッ!!」
ちなみに言うまでも無く、摂取すると一番太りやすいのは油物などに代表される“脂肪”です。
もうひとつの炭水化物(糖質)は、一番でこそないものの、大量に摂取すれば急激に血糖値を上げて、「吸収した栄養を体脂肪として取り込み易い状態にしてしまう」という性質があります。
また、この中のどれか1つだけ摂れば良い~というモノでは無く、どれも身体には必要な栄養素であり、絶対に摂らなくてはならない物。
もし「タンパク質しか摂らない」「炭水化物を全カットする」などといった“偏った食生活”をしよう物ならば、簡単に体調を崩してしまう事でしょう。
第一問目にもあった通り、大切なのは“バランス”なのです。
「では私の番だぁ! デデン!
主に筋トレをしたり、良質な睡眠を取ることによって体内に分泌される、通称“やる気ホルモン”と呼ばれる物は何?」
「ビンポーン! “テストステロン”」
「正解っ!!」
「ぬ゛ぅわっはっは! 次は吾輩だッ!! デデン!
体重kg÷(身長m)2で算出される、その人の肥満度を表す体格指数のことを、何と言う?」
「ピンポーン! “BMI値”」*2
「せ゛いかいッッ!!!!」
「ならばいくぞぉ! デデン!
そのBMI値の中で、最も病気になりづらいと言われる、健康的で理想的な数値は?」
「ピンポーン! “22”」
「正解っっ!!!!」
怒涛の勢いで続く、二人の健康マニアによるクイズ合戦。
咲と舞は内心、「身体使えや」と思いました。
「問題っ! デデン!
いちおう頑張ってやりはするものの、私が『腹筋ローラーってあまり気が進まないな~』と思っている理由は?」
「ピンポーン!
腰が痛くなるし、お腹よりも先に“腕”にくるッ!」
「正解っっ!!!!」
「て゛は次だァ! デデン!
吾輩調べ、『この世で一番マズい』と評判のクソッタレな穀物として、ダイエットなどでお馴染みの“オートミール”がありますがァ……。
これを比較的マシに、しかもお手軽に食べられる、ほぼ唯一の方法は?」
「ピンポーン!
水を入れ、レンジで1分間ちょい温めた後、
「 せ゛いかいッッ!! 」
「これはどうだっ! デデン!
ジムなどでおこなう筋力トレーニングと、ランニングなどに代表される有酸素運動。
どちらの方がよりダイエットに効果的?」
「ピンポーン!
――――面倒くさがらず、
「 正 解 っ !!!! 」
どーでも良いですが、ストレッチマンもキントレスキーも、すごく
身体を動かすのが好きな者同士、なにか通じ合う物があるのかもしれません。
もういいから、二人でマックとか行けばいーのに。早く帰って欲しいのです。
そしてクイズの内容が、だんだんおかしくなっている気がしなくもありませんでした。テンション上がってきたからでしょうか?
「く゛ッ! やるなキントレスキーッ……!
こ゛こまで吾輩を追い詰めたのは、君が初めてだッ……!!」
「神に感謝する……!
まさかこれほどの強者を、私のもとへ贈って下さるとはっ……!!」
はぁ……! はぁ……! と荒い息遣いで、苦しそうに肩を上下させる両者。
なにを疲れる事があんねん。なんで息あがっとんねん――――
そう言いたいのは山々ですが、咲も舞も良い子なので、グッと我慢。
ぶっちゃけ「関わりたくない」のもあります。
「全粒粉パスタは身体に良いし、糖質大幅カットのダイエットパスタの方が、カロリーが低い。
でも私がそれを買わない理由は!?」
「――――
「 正解ッ!! 」ピポピポーン
「お゛ぉ~、このレトルトの中華丼、一食あたり80kcal? これダイエットに使えんじゃね?
と゛思ったけど、別にそんなことは無かったぜッ! 理由は?」
「――――純粋に、
「 せ゛いかいッッ!! 」ピポピポーン
「身体作りの強い味方として知られる“鶏むね肉”。
非常に高タンパク、低脂質な食品ですが……。
これを美味しく、油を使わず、飽きずに毎日食べられるようにする調理方法は?」
「――――無いっ!!(迫真)」
「 正解っっ!!!! 」ピポピポーン
鶏むね肉というのは、“根性”で食べる物なのです。
こんなもん唐揚げにでもしないと美味しくないし、脂質を抑えたいからって茹でて食おうものなら、3日で飽きてしまいます。
たんぱくな味をしている反面、実はものすごぉ~く嫌な
もし身体作りを志すのであれば、この「鶏むね肉とどう付き合っていくか?」が、とても重要で、非常に大きな問題となります。
飲み物で流し込むか、鼻を摘まんで根性で食うか、低糖質のルーを使ったカレーにぶち込むかしないと、日常的に食べるだなんてとてもとても。
いちおう“親子丼”にしてみるとか、“低温調理器”と呼ばれる特殊な機械を使って茹でてみるとか、様々な方法がありますが……。
いずれにせよ鶏むね肉との戦いは「研究と努力」が大事となってきます。
この食材を味方に付けられるか否かで、身体作りの成否は大きく変わってくるのでした。
個人的には“ノンオイルのツナ缶”とかが、比較的食べやすくてオススメだぞッ!(ストレッチマン談)
そして閑話休題――――ふたりの戦いは熾烈を極め(?)、まさに死闘と呼ぶべき様相となっています(?)
両者とも服が所々やぶれ、額から血を流し、今にも倒れそうなほどフラフラ。
コイツらはクイズをしてるだけなのに、なぜそんな事になっているのかは、皆目見当がつきません。
「咲ぃー! 舞ぃー! ここに居たラピー!」
「心配したチョピー!」
「「フラッピ!? チョッピ!?」」
気が付けば、体育館の入口の方からこちらへ走って来る、二匹のマスコット(妖精)の姿が。
そうです、咲と舞が「ぼけぇー」っと呆けている間に、いつの間にか
既にキンコンカンコンとチャイムは鳴り、クラスのみんなはゾロゾロとひき上げ、この場にいるのは非常に暑苦しい大人二名と、咲&舞だけ……。
いったいコイツ等は……いや“私たち4人”は何をしているのだろう……?
そんな痛烈で
これ魔法少女物だよね? と。
「ハ゛カめッ! めざしの干物の脂質は、100gあたり6.8gもあるッ!
そ゛れに引き換え、あたりめ(スルメ)ならば、ほぼほぼ脂質ゼロ! 塩分もほとんど無い!
たしかに魚の脂質は非常に健康的だが、ダイエットに有効といえるのはイカ!
あたりめなのだァーーッッ!!!!」
「ぐぅあーーっっ!!??」
そしてあちらの方では、どうやらしょーもない事で決着がついた模様。
キントレスキーが頭を抱えて仰け反り、ストレッチマンが「ぬぅわっはっは!」と高笑いしています。
「咲! 今よっ!」
「うんっ! この隙にプリキュアに変s
「――――よ゛ーし! 今のうちに
機嫌良く笑っていたハズのストレッチマンが、突然クルッ! とこちらを向きました。
今まさにプリキュアになろうとしていた咲&舞は、「えっ」「えっ」と呆けた声。
「ちょ……待ってよぉ、おじさぁーん! わたし達プリキュアn
「――――い゛いからストレッチだッ!(カッ)」
「は、はいぃ~!?」
ドドドっとこちらに走って来るストレッチマン。その得も知れぬ迫力に圧され、咲は思わず頷いてしまいました。
そして、体操のお兄さんよろしく、彼女らの前に立ったストレッチマンが、無駄に大きくてよく通る声で、本日のストレッチを説明。
「じゃあみんなッ! 足を肩幅に広げて立ち、両手をまーっすぐ頭の上に伸ばそうッ!
そ゛してッ! 片方の手で、もう片方の手首をグッと掴み! そ゛のままゆ~っくり、横に倒していくぞぅッ!」
またしても唐突に始まる、ストレッチタイム。
咲・舞・フラッピ・チョッピの4人が、言われるままに“A”の形に身体を伸ばし、そのまま身体を横にしならせます。
カワイイ女の子、そして愛らしいマスコット達が、むっさいオッサンの指示に従っているのです。
「こ゛の時ッ! 身体が前後に傾いてしまわないように、注意するんだぞッ☆
し゛っかり前を向いたまま、真横に反らすんだッ! て゛はいくぞォー?
――――そ゛ぉ~れ、伸びぃぃぃいいい~~~~ッッ!!!!」
「「「「 伸びぃぃ~~っ!!(やけくそ) 」」」」
素直で、聞き分けが良く、とっても純粋なこの子達が、がんばってストレッチに勤しみます。
4人の肩から腰にかけての筋肉が、緩やかなアーチを描いて、ぐぃ~っと伸びていきます。
「ん゛んんッ! 伸びぃ~る! 伸びぃぃぃ~~るッ!
限界まで伸ばした所でぇ~、……はいストップッッ!!
お゛ーーきな声で、数を数えてみよ~~うッッ!!」
「「「「 はっ、はいぃぃーーっ! 」」」」
ではい~~ち! にぃ~~い! さぁ~~ん!
そうストレッチマンの指示の下、元気に声を出すプリキュア達(未変身)
四人なかよく横一列に並び、身体を伸ばしつつ数をかぞえていく内に、どんどん肩から腰にかけての筋肉が、あったかい熱をおびていくのを感じます。
「なっ……なんだこの凄まじいパワーはっ!!
光でも闇でも無い、とてつもない力だっ!!!!」
何を言うとんねん――――という感じですが、どうやらキントレスキーは真面目に言っているようです。
今もあわわと狼狽えながら、ダーダー汗をかいています。
ストレッチマン、そしてプリキュア達の身体に溜まっていくパワーに、彼が恐れおののいている事が分かりました。
「は゛ぁ~~ち! き゛ゅ~~う! し゛ゅぅぅぅうううッッ!!!!
ぬぅわーーっはっは! どうだみんなッ!
ここにストレッチパワーが、 溜 ま っ て き た だ ろ う ?(ドヤ顔)」
みんなのストレッチパワーが満タンとなり、ポカポカとあったかくなる大円筋と脇腹。
それをキントレスキーへと見せつけながら、彼が鬱陶しい顔でカメラ目線します。
「さ゛ぁいくぞ、プリキュアのみんなッ!
怪人キントレスキーにッ――――ストレッチパワーー☆☆☆」
「「ぱ、ぱわーーっ!!(やけくそ)」」
咲と舞のふたりが、キントレスキーに向けて手の平を突き出します。
それはちょうど、奇しくもプリキュアの必殺技である【ファイナルスター・スプラッシュ】を繰り出す時と同じポーズであり、そこから溜めに溜めたストレッチパワーが
「くっ……致し方なし!
勝負は預けるぞプリキュア! そしてストレッチマン!
また会おうっ! トォウ!!!!」
波動砲めいた威力に圧され、キントレスキーがヒュンと身を翻し、退散していきます。
プリキュアの聖なる力……ではなくふたりのストレッチパワーが、悪を打ち破ったのです。
まぁそうは言っても、
なんの変哲もない、ただの女の子――――いつもの咲と舞なのでした。
「ふ゛たりともッ、よく頑張ったな! もう心配ないぞッ!
た゛とえどんな怪人が来ても、ストレッチパワーがあれば大丈夫だッ!!」
「……」
「……」
それを、決して忘れるんじゃないぞッ!(ニカッ☆)
そう善意100%の笑顔で言われ、伝説の戦士であるプリキュア達は、何も言えなくなりました。
ちなみにこの変なおじさん、もとい正義のヒーロー・ストレッチマンですが……。
どうしても運動不足になりがちな知的障害や、身体に障害を持つ子供たちの為に、よく養護学校などに赴いてはストレッチを教えてあげたり、一緒に仲良く遊んだりするのが大切なライフワーク。
子供たちの笑顔が大好きな、“とっても徳の高い人”です。
この太陽のようにあたたかな笑み、そして子供を不安にさせない優しい人柄だったからこそ、咲と舞は思わず従っちゃったのかもしれません。
そしてもしかしたら、心のどこかで「この人ならば大丈夫」という安心感を抱いたからこそ、ふたりは今回ボケ~っと見ていられたし、無理やり彼を押しのけてでも変身しなかったのかも?
「さ゛ぁ咲ちゃん舞ちゃん! いっしょに遊ぼうかッ!
君達と友達になりたがっている、“まいどん”という男の子がいるんだッ!
ここに呼んであげても良いかなッ?」
「あ、はいです。ストレッチのおじさん……」
「もちろんです、ぜひ……」
その後、まいどん君とクラスのみんなも呼んで、一緒にサッカーをしました。
とっても楽しかったです――――
この一文は、【白目を剥いたプリキュアふたりと、豪快に笑うストレッチマン】の姿が描かれた、舞の絵日記よりの抜粋です☆